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グレストスの決意

改訂いたしました。27.5.17

 クフィーをトールに預けて家に帰した。本当は私も一緒に帰りたかった。ああ帰りたかったとも!!


 しかし、用事が出来てしまったのだから仕方がないじゃないかっ。お父様はもうちょっとお仕事してくるから待ってるんだよ!息子たちよ!!


 そんな気持ちを胸に早足で私はあいつのところに行く。本当はすぐさま部屋を破壊してでも突っ込んで行きたかったのだが、私にも仕事がある。魔法剣は魔法師と騎士との架け橋にでもなってもらわなければ今後もやりづらい。


 長年どうしようかと悩ませていた理由がクフィーの力を借りてできるようになったのだ。これは絶対に成功させなければならない。ああ。そうだとも!!


 今現在で魔法剣として扱えるのは近衛騎士10人とウォガー大隊長殿。アビグーア中隊長殿の計12名。他に形となるのが上流騎士と中流騎士に固まっている。まあ、剣だけ、魔法だけ、という意思が強いせいなのだが………今回の功績で魔法剣は多いに拡張していくだろう。


 まあ、それもいい。そんなものは後でいいんだ。今はどうしてクフィーが怪我をしてしまったのか問い詰めなくてはいけない。絶対にしなくてはいけない。報告?いや、こちらの方が重要に決まっている。


「いた」


 どうやら私の第六感は味方をしてくれるらしい。私になんの報告もなくクフィーを置いていったのだ。わかっているよな?


「ウィ~ル~」


「うぐっ!?」


「お前に聞きたい事あるんだよ。分かるよな?分かってるよな?あれはどういう意味だ?ああ?お前がついていてどうしてクフィーが怪我してんだっ!!ああん!?」


「ちょっ、―――入ってるっ、はいっ、て………」


 入れてるんだよ!!


 後少しで落ちそうになったウィルをわずかだけ解放してやる。首はまだ絞めたままだ。私が逃がすわけがない。私の腕を叩くから仕方なく、緩めているんだ。さあ、ウィル。説明してもらおうか。納得いかなかったらどうなるかお前が一番分かっているだろう?


「っ、私は、まだ仕事中なんです!貴方に構ってる暇はないんですよ!!」


「よかったなあ、私も仕事中だ。だから早く私の納得する素晴らしい説明をしてくれないか」


「仕事放り出して何やってるんですかっ!?終わらせてから来てくださいっ!!」


「待てるかあ!!私の可愛いクフィーが左手に包帯と痛々しい姿でか弱く痛みを私に悟られないように健気に笑っているのだぞ!?そんな私にしてやれる事は犯人を摘まみ出して二度とクフィーの目の前に顔を出せないようにお灸を据えるのが私の仕事でもある!!」


「………………仕事を塗り替えないで下さい。あと、原因を今目の前で処理してます」


 目の前だと?誰だ。私の可愛いクフィーに傷を追わせた奴は。私の可愛いクフィーを泣かせようとした奴は!!………………………………んん?お前らだな?


「この子たちか?」


「ええそうです。ごたごたしていたので今になってしまいましたが………そちらの少女、アトラナ・ロン・セチェフ子爵令嬢。少年がハルディアスです」


「私の娘を怪我させたのは二人か」


「いいえ。アトラナ嬢の方です。属性は【火】の魔力暴走ですよ。少年の方は焚き付けた方です」


 アトラナ・ロン・セチェフ、か―――確か息子と娘の家族は4人。息子は大人しくそつなくこなして娘は言う事を聞かない自分勝手な娘だったか。これは多分、育児放棄………魔法院に預けようとしているってところか。


 少年の方は知らんな。髪も瞳も黒とは珍しい。仏頂面は癖か?服も黒とは属性も闇だったらレーバレンス行きだな。レーバレンスならこいつの扱いがうまいかもしれん。なんせ、同じ(・・)だろうからな。


 ウィルがまとめた話ではアトラナ嬢が手を繋ぐ繋がないでわがままをいい放ち、ハルディアスが茶々を入れられ癇癪を起こして魔力を暴走させた。その時にも手は繋いでいたので、クフィーが火傷。親を呼べ。


 ついでにクフィーが教えてくれなかった容態を聞いたが、ウィルも知らないと言われた。あの痛々しく儚げに伏せた表情からきっと重度に違いない。今日一日で治るとは言っていたが明日、朝一番にヴィグマン様のところに押し掛けよう。よし。


「処分はどう決まった?」


「今から決めるんですよ。いい加減離れて下さい」


「………………いいだろう。仕事に戻らなければならないからな。変わりにハルディアスはレーバレンスに預けろ。アトラナ嬢はお前の判断に任せる。私にいい結果を伝えてくれよ」


 絞めていた首を離して肩を叩いてやる。少し強めに叩いて喝を入れてやった。眼鏡の位置を直して文句が言えるなら問題ないだろう。私は早足に報告を済ませるべく、陛下の元へ向かう。


 陛下も色々ととんでもない事をして下さる。魔法剣の改良に魔法騎士の増量育成。確かに魔法剣を使えるものが減った。それはグラムディア様があの戦で狙われ、魔法剣で自爆した馬鹿な奴らがいたせいだ。


 グラムディア様の部隊は総大将をグラムディア様筆頭に、因縁の隣国との防衛に当たったあの戦。本陣の部隊から謀反がいた事に誰も気づかず、そいつがグラムディア様の近衛の魔法騎士だったせい。


 裏切った魔法騎士はその魔法剣の魔力を肥大させ、爆発。そのさいに巻き込まれてグラムディア様は消えない傷を負わされた。そのおかげで総指揮官であるグラムディア様が意識不明。現場の指揮をなくした我が軍はほぼ終わっても同然だったが、援軍のおかげでなんとか国を繋いだ。


 この事件はグラムディア様の近衛、“ 魔法騎士 ”の処分が一番厄介だった事は今でも覚えている。まあ、陛下の采配によりその一族もろとも消したが、ついでとばかりに魔法剣も霞み出したのはこの頃だろう。魔力の扱いを失敗すれば爆発できるのだ。誰もやろうとは思わない。


 あれから10年以上は経ったのか………おかげで魔法剣の存在は薄れつつあったが、クフィーのおかげで持ち直せる希望ができた。魔力が見えるっていい。色が見えないのは私も辛いが、クフィーが笑っているなら、私も受け止めるつもりだ。


「だから、クフィーはやはり渡せませんね」


「今度はなんだ………色々と吹っ飛ばして何を言いたい。アーグラムの事か?それは二人に任せただろう」


 うっかり口にしていた。本当は今日の事を話すつもりだったんだが………いいか。クフィーに関しての話には代わりない。


「今日、息子のトールとアーグラム王子が軽い試合をしたんですよ」


「………仕組みおったな?どっちが勝ったんじゃ」


「勝敗は決めていませんが、魔法剣の乱れはアーグラム王子が早く、体力もアーグラム王子が先に落ちた。トールの勝ちと言いたいですね」


「ふん。最後までしてから言え。アーグラムもまだ逆転はある」


「トールが負けるとでも?私とトールに勝ってたから言っていただきたい」


「魔法でお前が敵う奴がいるか。娘なら勝てそうな気がするが………お前は二人に任せる事、邪魔をしない事を厳命したはずだ。余計な事はするな」


「陛下。それで一つ確認する事ができました」


 任せる、邪魔をするなと言いますが、手助けは違いますよね?私も負けるわけにはいかない。


「レーバレンス魔術師に聞いたんですが、婚約のさいに王子と二人で王家の家紋に魔力を通して天に映し出すそうですね?成人式で使われるのです。それは王家、陛下の承認の家紋のはずです。私が一番気にする事はその家紋を写し出せば婚約ではなく“ 婚姻 ”の契約を結ぶのではないかと危惧しているのですが、どうでしょう?」


 騎士の近衛の間をぬって陛下の机に身を乗り出させた。無礼は承知。これで投獄するのであればしてくれてもいい。私の勘違いで笑い者でもいい。ただ、黙ったまま私を見る陛下は否定もなにもしない。それだけで理解できる自分に嫌気がさす。


 肯定とみなした私はすぐにクフィーの元へ行こうと足を動かす。しかし、私の後ろには騎士が取り囲んでいた。まあ、そうだろう。こんな近くで陛下に詰め寄る馬鹿はいない。それでも私は知らなくてはならなかったのだ。


「帰らせてもらいます。今日の報告はすべてこちらの書類に。私は失礼させてもらいますので、何かありましたら―――すみませんが後日、お呼びください」


「………お前がそれを言うと、気持ち悪いな」


「陛下」


「そうだ。王家の魔石に触れる。その時点で娘は逃げられん」


「どうして黙っておられたのですか?それで私が黙っていると?認めませんよ。王子がなんですか。我がアーガスト家は誰でも幸せを一番に考えているのです。政略結婚の道具になど、させませんよ。今後は邪魔させてもらいます」


「邪魔はするな。これはお前に厳命した事だ。覆すと言うならばお前は反逆罪だぞ」


「では、手助けをします。口答えします。もしこのままクフィーが嫁ぐ事になるのならば、私は王宮筆頭、一進魔法師の席を外させてもらいますね」


「………………出来ぬだろう?娘が王家に嫁ぐ。ならばお前はここから離れられない」


 陛下………なにか間違っていませんか。


「王家に嫁いでしまえばクフィーと私との関係は白紙にされます。このままは絶対させませんが、仮に、もしも!そうなってしまった場合、私は未来の陛下に近衛となる気はありません。クフィーのためになら守ると誓いましょう。しかし、未来の陛下に私が従う義理はない」


「―――十進魔法師の掟を述べてみよ」


「一、我が身を捨て陛下を守り抜くこと。二、陛下に害なすものはすべて消し去ること。三、陛下に従い、陛下の手足となること。これは陛下と魔血酒まけつしゅを交わした者のみ、適用です」


「お前は私の孫と魔血酒を交わせないと申すか」


「私がこの魔力と、血と、誓いを交わしたのはアルグレット・ロスト・フェルニ・サファリナ国王陛下ただお一人。他の誰とでもない貴方です。貴方だからこそ、私は十進魔法師となりすべてをなげうって貴方の御身を、貴方のみ守ると誓いました。アーグラム王子に私が委ねさせられる技量はありません。クフィーを王家に嫁がせた時点で、アーグラム王子との忠誠は誓えません」


 それだけ言って私は満足だ。そう、王家が私に一言もなく勝手(・・)に婚姻を成立させてしまうなら私を切り捨てる。クレラリアは納得してくれるだろうか。トールは分かってくれるだろうか。リディは怒るかもしれないな。クフィーは………泣いてしまうの、か?いや、私がそうならないようにするのだ。それしか明るい未来がない。


 陛下が近衛を下がらせてくれておかげで私の道を示される。この無言はどうなのだろうか。アーグラム王子に従えない私はどう処理されるのだろうか。クフィーが幸せになれるならそれでもいい。しかし、今日のを見てもわかる。まだ、クフィーの心は傾いていない。今はそれだけでじゅうぶんだ。


「御前を失礼します」


 さあ。この事をクフィーに伝えてこよう。もしそれで嫌と言うなら全力で私がクフィーを守る。もう賭けなんて意味はない。最初の賭けからすでにおかしいのだ。


「待て、グレストス。………娘がこの事に気づいたら、婚約、婚姻、すべてを取り止めてもいい。お前がいなくなれば魔力が高い娘は王宮筆頭の尻拭いになるのだぞ?いいのか?」


 尻拭い?ご冗談を。誰が成立させると言ったんですか。


「いいえ。伝えます。これは邪魔ではない。それにクフィーが私の尻拭いと言いますが―――そんな事は絶対にさせないと、私が断言させましょう」


「私の勅命だ。私が王を辞した時、次の王に誓え」


「陛下―――お戯れを。魔血酒を交わした時、誓ったではありませんか。貴方のみ(・・・・)と。誓いこそ覆すことはないのです」


「………………………よかろう。揺るがぬお前の心、しかと受け止めた。お前だけだぞ、ここまで言えるのは」


「覚悟が足りないのでしょう。私は家族のためなら陛下と同じぐらいこの身を捨てられますよ、アルグレット国王陛下」


「ふん。その家族と私は同列か。舐められたものだ。いいだろう。娘に言ってしまえ。それでもアーグラムがどうにか出来たのなら、その時はお前を解放する。家族揃って私の前から消えるがいい」


「もちろん、クフィーを連れて行きますよ。まあ、そんな事はさせません(・・・・・)が。これから忙しくなりそうですね?」


「はあ………………何を考えておるのだ」


 それは秘密ですね。そもそも、私抜きで事を進めた罰ですよ。今考えた計画、そちらで受理してくだされば、問題事にはならないだけですから。




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