騎士棟でお仕事?
改訂いたしました。27.5.17
お父様に例の本を持ってもらって、お父様の隣を歩くわけもなく、片腕に乗せられた状態で運搬されました。はい、お父様の行動により、ここが指定位置の定位置です。なぜ。
それはお父様が娘を激愛するあまり娘を一番近くに置きたいからだ。それなら手を繋いで一緒に歩くより、抱き上げた方が顔も近いし密着度が高いしでお父様は大満足である。
いいんだよ、もう。あいつって未だに親父に抱っこされてるんだぜ?なんて指を差されても。抵抗したって父親に敵わないんだからやらせておけばいいんだよ。と、言いますか、何を言ってももう遅いからね。
1歳半―――魔法場にて散策。3歳―――食堂を出入りし、騎士棟の訓練場に見学。5歳―――私の話題はすでにあがっており、知らないものはそういない(らしい)。7歳の現在。片腕に乗せられ騎士棟へ徘徊してますが、なにか。
ここにくるまで様々な視線を浴びた。待っていた魔法院の応接室?なのかな。あそこであの分厚すぎる本としばしば格闘していれば怒涛の勢いで扉を開け放ち、抱き締める父。
矢継ぎ早しに私に会いたかった有無を伝えて次には私の姿を褒めちぎる。ついでにやっぱりバレてしまった手は早急に咎められ、延々と誰がやったがどうしてどなった。私は包み隠さず話せば悪っぽい笑顔でなにか考え込むお父様。好きにさせてあげようと思います。止められないのは事実です。そしてお父様が満足した頃にお腹が空いたと言うわけでして、片腕抱きで食堂へ。『魔法師』の注目を一身に浴びてきたよ。
お父様が一進魔法師のおかげで誰も話しかけては来なかったが、鋭い視線に好奇心の視線と様々な視線を浴びせられて食べた気はしない。
食べ終わればまた片腕抱きで騎士棟まで歩き、そこで通りすがりの人々にまた好奇心の視線を浴びさせられ、騎士棟に入れば若そうな子どもの視線か刺さる。そのまま受付のところまでいけば、受付の男性に無言の怪訝な視線を浴びた。
もうここまで来れば私は何を言われたって怖くない。いや、吹っ切れるだけかもしれない。どっちだ。どっちでもいいよ。このおかげで魔法院にいじめが出来たら魔力暴走してやる。ヴィグマンお爺ちゃんに怒られるけど………………て。あれ?
「お金は払わないのですか?」
「今日は見学ではないんだ。ちゃんと話は通してあるから、大丈夫だよ」
「ポメアからお兄様の見学だと聞きしましたけど違うのですか?それにお父様、それは大事なお仕事でしょう?私は外で待っていればいいのです?」
「見学は間違いないよ。それとクフィーをこの場所に置いていったらお父様が怒られるじゃないか。クフィーも一緒にお父様と来るんだよ」
「………本当に私が来ても大丈夫なのですか?本当に話は通ってますか?」
「え、クフィー?なんでお父様じゃなくて受付に聞くの!?お父様泣いちゃうよ!?」
いや、だって。なんかお父様なら娘息子のためなら~とか言ってごり押ししそうじゃん。現にお姉様の装飾品の数々、まだあげているの知ってるんだからね?伯爵のわりによくあんなお金ポンとでで来るもんだ。因みに本が持てないから、との理由で手袋がほしい、と言う私のお願いは即却下。理由?その前に大暴走でかき消えたよ。姉贔屓ですかねっ。
だからお父様、ではなく―――受け付けのおじさんに聞いてみるのです。だって話が通じていなかったら通れないもんね?情報を持っているってことだし。
どうなんですか、と首をかしげてみれば面倒そうに目を細めて左手を軽く振られた。ちょっと薄く残念になってる髪は白かな。これ白髪?細められた瞼の間から覗く瞳はグ、レー?かなー。うーん………群青?私、濃いめだと寒色系だと思っちゃうんだよね。
で?答えはどうなのかな?手を振られただけでわからないよ。私はさらに首を傾げてみる。あ。ため息をつかれた。
「嬢ちゃんの話は通ってるよ。嬢ちゃんがいないと出来ない事も聞いてる」
「私?………お父様?」
また私になにも言わないで勝手になにかしましたよね?そんな意味をこめてちょっと低めに聞いてみる。距離が近いので逃げられないよ?
じぃーと見つめていたら反対方向に顔を背けられる。さすがに父の顔を無理に動かしたくはない。それはお母様の役目だ。
そんな事を数分していたら短く声をかけられました!誰ですか邪魔するの!!
「あ………………(誰だっけ?)」
ちょっと勢いよく振り返ったからお父様の顔に髪が当たったような気がするけど気がするだけで気にしない。問題は誰が来たか、だよ。見覚えあるんだけど………騎士だから3歳頃だよね。あそこで初めてしっぽうはうはしたんだよ!
思わず顔がにへらと笑いそうになったので両頬を押さえる。ついでに首を傾げて考える仕草にしておいた。顔はじゃっかん笑っているが、両頬を隠してるからの大丈夫だと思いたい。大丈夫、変な顔じゃない。
さて、誰だったかな。この長身すぎる顔面凶器の人。白にツンツン髪に黒っぽい瞳と左頬に大きめな十字傷………………とっても印象に残っているから覚えているのだけど、どんな人だったか。なんであの場になぜいたのか。はてはて………しっぽの快感でいまいち思い出せない。
「お父様、名前が思い出せないのですけど………失礼ですよね?」
「ん?んー、大丈夫だろ。彼はアビグーア中隊長だ」
そんな名前だったっけ!?本当に覚えてないわー………
「このような格好で失礼します、アビグーア中隊長様」
「大丈夫」
お?よかったー。ほら顔面凶器だから怒られたら大変じゃん。まあ、杞憂で終わってくれたからいいんだけどね~。
そんな事を思いながら挨拶を交わしていたら近くからガタッと言う音が。何がなんだかわからなくてキョロキョロしていたらああ、と納得。受け付けのおじさんが目を全開にして見開いていた。どうしたの?
お父様と二人して首を捻っていれば小さく「嘘だろうっ!?」。だから何が?驚きっぱなしのおじさんは高速でどっかに行ってしまって聞けなくなるんだけと………取り残された私たちはただ首を傾げてそれを見送っていた。
「理由。俺。珍しい」
「珍しいのですか?」
「俺。言葉。少ない」
「あ、確か寡黙な方だったな。さっきの受け付けはそれに驚いたのだろう」
お父様が補足で教えてくれる。なるほど、と私は大きく頷いて納得して見せた。そりゃあ滅多に喋らない人が喋ったら驚く―――か?同じ騎士だよね?さすがになにかは喋るんじゃあ?
と思ったので聞いてみたら意外とあっさり返答をくれる。なんでもこの顔で怖がられて、まず話すこともままならなくなったとか。おまけに自分は上級騎士まで上り詰めて中隊長に任命されるほど。中級騎士よりは強く、同じ伯爵なので話し相手はめっきり減ったようだ。
ついでに言うなら私はとってつもなーく!珍しい女の子と認定されてまして。まあ、考えてみれば顔面凶器の、裏組織とか統治してそうな顔の人に普通に対等してる小さな女の子が会話していればねぇ。ホラーを見るだけならそこそこイケるのがここで役立ったようだ。
まあ、長話はよして中に入りましょう、と言うことで私はアビグーア中隊長の肩の上に移動。なぜかって?見晴らしがお父様よりいいからです。てか、アビグーア中隊長が名乗り出てきたら………断れないよ?
じゃあ、行こうか。となってアビグーア中隊長から「運ぶ。変わる?」と聞かれたらなんだか断れないじゃんか。実際、お父様も面食らった顔でぶつぶつ考えながら私を渡しちゃったし。そんな簡単に渡さないでほしかったんだけどね?
でも左肩に、巨人の肩に乗るのってなかなか体験はできない事だよね!森の民になった気分。ちょっと心が弾んだのは内緒だ。視界も良好なので文句はない。
それと理由はお父様がこれからお仕事である事を書き留めるため、両手が空かないそうです。そもそもなぜ私はここに来たか。お兄様の見学だったはず。それはあっているとも言っていた。じゃあ何しに行くの?と言うことでお父様から聞き出す。
「ここは人が通らないからいいか。その内クフィーの事も知れ渡るだろう」
「もしや、私の魔力が関係してるのですか?剣技に?」
「ちょっと関係あるかな。クフィーは魔法剣の事をどこまで知っている?」
「本では一番魔力の流れが通りやすいミスリルで作られた剣に、自分の属性魔法を剣に流して魔法剣を産み出す、と(………あれ?ミスリル?ここってミスリルが通じてる?)」
「さすがクフィー!お父様がいなくてもお勉強してるなんて偉いぞ~!………………そう。我が国はその魔法剣が出きる人が少なくなってね。誰しも魔力持ちはいる。だが、剣と魔法を一緒に考える事は少なくなったんだ。今回は素質があるのかだけの調査だ。あと、不正の調査。魔法師に依頼があったんだが誰も行けそうになかったんだが―――クフィーも遅かれ早かれその眼の力は知られるからな。力を借りようと思ったのだよ」
お父様、もう回りは知ってるから無理に威厳を放たなくてもいいよ………………そっか。魔力が見えるから、か。ならそんなに身構えなくてもいいかな?もう自己紹介で喋っちゃったけど。と言うか私に拒否権と言うか打診はないんだ。別に気にしてないけどさー。ちょっとは聞いてほしかったな。
「本当は断ったんだけどね。代わりにクフィーにはあるものを貰えるように交渉してきた。きっと喜ぶぞ~」
「なんですか?」
「それは秘密だよ」
そう言うって鼻唄を歌い始めてしまったお父様。まるでスキップもしでかしちゃうぞ、と言わんばかりの雰囲気に誰も何も言わない。むしろ私は言葉が出てこなかっただけだし。アビグーア中隊長は寡黙なためにお父様だけテンションが無駄に高い。
でも、構ってあげないとお父様が拗ねると言うまた面倒な事になるので私はしきりにその“ あるもの ”について聞いてみた。まあ、結果は意地悪く教えてくれないけど。鼻唄だけ聞こえる三人組も変なので、よしとする。
そして―――そうこうしていたらあの、見学場につく、と。ちょっと思い出せないけど、広く見えるそこはアビグーア中隊長のおかげで全体が見渡せるよ!
まるで野球場のように広い訓練場はもちろん円で、見学者が座れる一部だけスペースが。向こう側には宿舎のような大きい建物があり、そこから軽めの装備をつけた人たちが少しだけ行き来してる。
訓練はまだ始まらないようで、訓練場にはまばらな数だけしかいなかった。お兄様、お食事かな?
「ご足労、感謝する」
「おお。待たせたかな?ウォガー大隊長殿」
「いや、まだ時間はある。久しぶりだな、娘。そこはちょうどいいかも知れんな………今日はよろしく頼む」
「ここから失礼しますね。こちらこそよろしくお願いします、ウォガー大隊長様」
アビグーア中隊長は下ろしてくれないので。彼の肩から落ちないように軽くお辞儀を。本当は地面に降りたいけど………まあいいか。
私たちに挨拶をしに来てくれたのはお兄様を含む見習い騎士の教官を勤めているウォガー大隊長。毛並みがよすぎるしっぽを持つお方です!触りたい!!
しかし、すでに私の思考は向こうに伝わっているらしく、と言うかしっぽを見てしまったのが悪かったのか「しっぽは触らせないぞ?」とふりふりしながら牽制をかけられてしまった。ぬう。お預けが地味にきつい。
そんなほのぼのとした空間に近づく足音が。誰だろうと私が振り替えればお父様も振り替える。ウォガー大隊長って、顔が真っ黒な狼だけど………やっぱり耳とか鼻って人間よりいいのかな?
なんとなく普段で聞けないような気がして私は胸の内に疑問を作る。まあ、今度お兄様の友人に聞いてみるのも一つの手だよね。そんな事より目の前の人の相手をした方がいい。
どうしてこちらに来たんですか、双子ちゃん王子。
手首を見れば判断がついたけど、なんとなくアーグラム王子なスキップしそうなほど軽やかにこちらに来る。そのほんの少し後ろにローグラム王子が苦笑いで話しかけていた。大丈夫かな、アーグラム王子。その前に私は大丈夫じゃなくなる。来るなああ………
さすがにアビグーア中隊長も分かってくれたのか、膝を折る自分と一緒に私も下ろしてくれた。そのまま頭を垂れて腰を低くすれば、隣からも鎧が擦れる音と布が少し揺れる音が聞こえた。きっとみんな上体を低くしてるに違いない。よかった。間違っていないよ。
私は秘匿の話にしてあるから外見を取り繕わなくてはならないからね。うっかりミスしないようにしないと後が怖い。
「いい。表を上げてくれ」
「私たちはまだまだ一介の騎士だ。そなた達が膝まづくには私たちの技量が足りぬよ」
へぇー。普段の双子ちゃん王子たちってこんな感じなんだ。決して傲慢ではなく、ちゃんと立場を弁えていると言うか、間を計ってると言うか………あー、言葉が出てこない!
そんな中で私はまだまだ腰を低くしていなくてはならない。言われなくてもこれが本来の私たち初めてのアポイントメントだ。初対面で了承を得ぬまま顔をあげるわけにはいかない。
「そちらの娘はなんだ?」
「見慣れる娘だな」
「こちら、私の娘のクロムフィーアと申します。先日お話しした魔力が光りとなって見える魔法師の卵です」
「小さいな」
「顔を見たい。表を上げてくれ」
いや、言われたらあげるけどさ。言われるままにあげて貴族文句を垂れる私の脳内はすでにツッコミでいっぱいになっている。
お前誰だよ!とか。顔みたいってアーグラム王子が言ったんでしょ!とか。小さい言うな。まだ7歳だよ!とかとか。脳内でツッコミの大会を開けるほど賑わっています。
もう、ね。お父様とかお仕事モード?に入ったらしくて滅多に見られないキリッとした顔で王子の対応しているんだよ。そりゃあ、陛下の近衛までやっているんだから対応はできるだろうけど。
初めて見る態度の変化に色々とついていけない。
挨拶を終えた私は後ろに控えるように下がるしかないし。しばらくそのままにしたら騎士の休憩が終わったらしくて集まってくるし。居心地がすこぶる悪くなる。
それでも突き進むのがお父様なわけでして………集まったのなら、と言ってウォガー大隊長に合図を送ればそのまま整列して説明。張り上げる声がでかすぎて肩が縮こまりました、はい。
「では、試合を始める!呼ばれた者から順番に前へ出ろ!」
「「「はいっ!!」」」
………………え!聞いてなかった。いや、聞いてないよっ!?試合ってなにっ!?みんなで構えてそれを見るんじゃないの!?




