うーん。へー
題名つけるのって難しいですね。。。
改訂いたしました。27.5.17
「あれ?クロムフィーアちゃん!」
起きたと同時のガバリと体を跳ねあげて私の首に巻き付いてきた。多少は驚いてみせたがこうなるだろうなと心構えが出来ていたのでさほど驚いていなかったりする。ぶつからなくてよかった。
アトラナは私に抱きついたまま心配だったと告げて頬と首をぎゅっときつく締め上げる。さすがに耐えきれなくなりそうなので!小さくタップをしながら離れてもらった。
「い、や!」
駄々をこねるな?ピクリと口角があがりそうになったけど、ここは押さえてだね………首が痛いと言えば渋々離してくれたから良しにする。
それから私の後ろは見えていないらしく、アトラナは私の手を握って色々と語りかけてきた。そのほとんどの会話がどれも幼児向けで、どの絵本が面白いか。誰の抱っこが一番高いかとか落ち着くか。好きな食べ物や嫌いな食べ物まで語りかけてくる。突飛すぎて私のキャパが崩壊しそう。
こう言っちゃあれだけど、聞いてる私にとってどれも耳を疑うものばかりだ。この年齢で抱っこの話なんか、どれだけ甘えん坊なのか物語っている。
私の中では7歳と言えば小学校1年生ぐらいだろう。その頃はまだやんちゃで甘えたがりかもしれないが、ずっと離さない私の手や、言動が子どもっぽすぎてついていけない。
アトラナと私は決して姉妹ではない。しかし、語り掛けてくるすべてが親に話すような『今日は~があったんだよ!』ばかりで友達と話す会話ではない。
いったい彼女は私に何を求めているのだろうね?まったくわからず、ただ相づちを打つだけで答えは分からなかった。ただ、過ったのは………障害者では?と、勝手に決めつけてしまう。まだ7歳で軽率な判断だけど、貴族の子どもでもこれは幼稚すぎる。貴族を知らなすぎるとも思うんだよね。
まあ、悪いけど子ども扱いさせてもらおう。こう言う手は相手に合わせて言う事を聞かせなくてはただの駄々っ子で終わって手が付けられない。
「ウィル八進魔法師様がもうすぐ来られます。アトラナはご両親にちゃんと挨拶するよに言われたのではないかしら?」
「パパとママ?うん。言っていた!」
「ちゃんと挨拶しました?」
「あ………」
これは、有効なのかな?
「ご両親に言われた事をしないと、褒めて下さいませんよ?」
「うー………ごめんなさい」
「来たらもう一度ご挨拶しましょう?それと、アトラナはやってはいけない事をしてしまったの。分かる?」
「大声を出してしまったこと?かな………」
うん。それもあるけど………ここまで来れば子ども扱いであやせば会話ができると分かったから、このままで行こう。
考えるために私を離してくれたので顔を覗いてみれば不安な表情。仮の話で―――発達障害の類いは脳に異常がある。精神的なものもあるし、脳に異常があるからと言って脳自体になにかがある訳じゃない。
一瞬、私みたいに魔塊があるのかと思ったけど発達障害などは脳になにかができるわけではないのでその考えは捨てた。
これが今どきの7歳児?結局は分からないから私が勝手に発達障害者だと考えているんだけど………この子が今後、魔法院にいるのは苦痛だと思う。あれだけ暴れたのもあるし、言動が子どもすぎる。直そうともしない。これはウィル様がどう判断を下すか、気になるね。
「彼に怒ってしまったでしょう?どうして?」
「クロムフィーアちゃんと私を引き離そうとしたから………」
「私も離れましょう、って言いました。その時、私はなんと言いましたか?」
「年上だから、挨拶がしたいって」
「そうです。アトラナはどなたかの屋敷に訪問するさい、ご両親とご一緒に挨拶する時は手を繋いでいました?」
首を横にふった。なら、答えは簡単………な、はず。
「人にとって、挨拶は基本で大事です。ご両親は挨拶をする注意を、アトラナに伝えていたのではないかしら」
「………貴族だから………………慎みを持ちなさい。誰に対しても、淑女でいなくてはなりません」
「その意味は、分かりますか?」
また首を振った。ここまで言っているのであれば、親だって家の家庭教師などが説明しているはずだ。ならば分かりやすくもっともな事を教えようかな。
「アトラナ、私たちは貴族の令嬢です。貴族であるならば私たちは他の貴族から視線を集めます。それは他の貴族と関係性のために必要で、女性は結婚が優先的です。結婚するためには淑女が一番、相手にいい印象を与えるからです(ようは良いところに結婚話が出ればウハウハもんだから少しでも女らしくいなさい、て事だよ)」
「ママもそんな事言ってた………でも、結婚が無理なら魔法院に行ってらっしゃい、て」
「そう(淑女は厳しそうだから、親は丸投げ?家庭内事情は知らないからいいか。これが貴族の普通だと思うし)。でも、挨拶はきちんとしなさい、と言われたのでしょう?アトラナは出来ていたかしら」
「………………出来てない」
はい。話を戻したら今にも泣きそうです。私が泣かせた事になるのかな。こう言う類いって、親身になって話しかけるけどまさにそれだね。
私はお母様から泣いちゃ駄目と言われているので、アトラナの親はどうなの?と言う風に言えばちょっと我慢した顔で涙を堪えてた。これ以上突っついたらどこかで爆発しそうなのでもう言うつもりはないのだけど。
本当は今後の魔法院生活のためにハルディアスに謝らせたかったんだけど、これは保留だなー。色々と詰め込んだらやっぱり爆発しそうだし。
とりあえず一段落したところでウィル様が登場。絶妙なタイミングでちょっと目を張ったように私を見ています。眼鏡をかけ直す仕草とかたまらんです。
「また勃発していたら黙らせるつもりでしたが………必要はなさそうですね」
「ウィル八進魔法師様がそう判断されたのならば、大丈夫なのでしょう」
「私に押し付けと聞こえるが?」
「残念ながら私は若魔法師でウィル様は八進魔法師様です。発言だけで格差がありすぎですね」
「本当にグレストフ一進魔法師の娘さんか?ずいぶんと聡明だな」
聡明と思われるとは思っていなかったけどね。アトラナをしっかり落ち着かせてからウィル様より説明が入る。
チラリとハルディアスの様子を伺ってみたが、彼は仏頂面でこちらを見ようとはしなかった。間のケヤンがなぜか戸惑って大丈夫だと手を振りながら合図を送ってくれる。
まあ、ここでケンカを吹っ掛けない辺り、まだ安心していいでしょう。
ウィル様の説明は始め聞いたものとほぼ変わらなかった。魔法棟でも位置づけは『若魔法師』『見習い魔法師』『下級・中級・上級魔法師』『魔法師』となり、陛下に認められた魔法師近衛が十進魔法師となっている。
魔法院では身分など関係なく、みな同じ扱いで授業を受けるようにとの事。さっき絡んできた………………敵の態度はここでは意味がないので位置づけだけは気を付けるように、とのこと。完全縦社会ですね。年齢も関係ないそうですよ。
本来は10歳から魔法院に入ることになっていて、私たち特別組は一緒に授業を受けるから態度とかは気を付けるようにとの事。それと魔法具は魔法師の許可なく装備する事は禁じられてる。増幅していたら元々ある力が分からないし、魔法具に頼るのは魔法師のメンツとして好ましくないそうだ。あと、若魔法師がむやみに増幅なんかさせて暴走させないためでもある。
だいたいの期間は成人式までの5年間で若魔法師は卒業できるらしい。初めの2年はほぼ魔法についての雑学を学び、ひたすら学習。とくに魔法文字と魔力操作は得意不得意が激しいので重点的にやるらしい。知識もほぼ復習するだけなので、授業さえ聞いていれば間違うことはないらしいね。
3年目はここで進路の分かれ道となる。最初の2年間で得られた知識の中で、自分はどの道を進むのか。魔法師を目指すのか、魔術師を目指すのか、魔学医を目指すのか。2年の終わりに調査し、学びたい道へと別れさせ、入れ換えるのだそうだ。卒業後はみんなひとくくりに『魔法師』なんだけどね。
残り3年で学びたい部署に行き、能力を高め、すごし、最後はそれぞれ出される課題をクリア出来たら『若魔法師』は卒業とし、『見習い魔法師』となる。
「ここまでは大丈夫ですか?」
「えと、はい」
「………ふん」
「大丈夫です」
「私分かんない」
「成人してなくても『若魔法師』は卒業できますか?」
「前例はあります。問題はありません」
アトラナの素直すぎる言葉に一瞬だけ動揺してしまった………ケヤンから始めハルディアスは鼻を鳴らして返事。ジジルニアは意外としっかり返事をしていてアトラナが「分かんない」………………大丈夫なのかな?ちゃんとこの子は問題を起こさずに学べるの?
自分でした質問も忘れるのではないかと言うくらいアトラナが気になった。前例を出したすごい子どもってどんな人だろう、とウィル様に聞くはずがっ。アトラナの言葉でつい目を見張ってしまう。
思わずアトラナを見て沈黙してしまったが、当の本人は可愛く首を傾げてツインテールを揺らしている。可愛いんだけど………………可愛いんだけど、心配だ。
「それから、寮生活だからな。城で教えを乞うと言うことは将来は城、または各領地で働く意味もある。つまりは誰かの下で働くと言う事だ」
「俺は捨てられたけどな」
なんと刺々しい声が。それを発っしたのはアトラナと逆の端から。ハルディアスから聞こえた。不穏な空気を纏いながら、まだ言葉を続ける。
「飼い慣らされる場所が変わっただけじゃねぇか。あっちは俺が城の魔法院に入ったら出る金と、食いぶちが一人減るから喜んで送りつけやがったな」
「仮にそうだとして、ハルディアスは城に来た。学ぶ分に問題はないだろう」
「誰が魔法師になりたいって言ったんだよ」
「お前は魔力が高いし、異常だ。魔法を学んで城にいた方が生きられるぞ」
「誰も望んでねえよ」
「私の聞いている話と違うな」
調べてみよう。とあっさり手を引いてしまったウィル様。意外に面倒だったんではないかと思われます。だって何事もなかったかのように話を戻しちゃったんだもん。
とりあえず『若魔法師』についてはだいたい話してしまっているので、次に魔法院で使う本を手渡された。厚さは………………30センクター、かな………………なにが詰まってるの?これ、私は持てるの?
ドーン。とあるだけで迫力を放つそれに私たちはただ黙ってそれを見つめていた。見つめるしかできなかった。前世でもこんな分厚すぎる本は見たことがない。外国の教典だって辞書だってこんな分厚くはないよ!?
ウィル様は入ってきた若魔法師はだいたいみんな同じ反応をすると言うけど、当たり前じゃないかな!?こんな分厚すぎる本なんて子どもが使うわけないじゃん!!
「これは常備必要だ。属性や魔法文字の写し。有りとあらゆる魔法についてが書いてあるので、無くさないように」
「………………持ち上がりません(ビクともしないよ!?)」
「私も………ちょっと………無理、です(なにこれっ街の本屋でもこんなのないよ!?)」
「無理!」
私を含め、女の子にはこんなの無理に決まっているでしょ!?ガッ!と持ってみても動かないじゃん!!ここで諦めて私は男の子達を見てみる。なんとなく、ケヤンは無理なんではないかと期待を胸に。とか思ったんだけどぷるぷる震えながら持ってた。弱そうなのにっ。私の期待を裏切るなよっ。
ハルディアスはまず持とうともしていない。魔法院に入るのは本当に不本意なんだろうね。そこで持てない私たちのためにウィル様の懐から手袋が。これはなんぞ。聞き返したら軽くなる手袋との事なので、説明そっちのけで付けさせられて本を持てと言われてしまった。
仕方ないので持ってみればあら不思議!!「軽くなった!!」と声を揃えて喜びましたとも。でもただで貰えるわけもなく…………貴重な材料で作ってるみたいなので、金貨1枚と微笑まれた。商売ですか。
えーと、金貨1枚は………1万じゃないかね。高っ!!でもほしい!!
「父に相談してみます」
「ケヤン、ハルディアス………運ぶの手伝ってもらう事ってできる………?」
「僕はいいよ」
「ふん」
「私も誰か運んでー!」
あれ、お買い上げは私だけですか?いや、私は日帰りだから持って帰らなきゃ駄目だよね?ウィル様がちょー笑顔で「話をしておこう」て。あれ。みんな………
そんな事をしていたら朝の12の鐘となったみたい。チリンチリンと可愛らしい音がこの部屋のどこからか鳴り響いた。時間が経つの早いな………それと同時に若そうな魔法師が入ってくる。ん?ローブの長さがお父様と違う。
「ああ、忘れていた。これは『若魔法師』の、お前たちのローブだ。これは長さで魔法師の位置づけを表している。肩までが『若魔法師』。背中半分が『見習い魔法師』。腰までの長さで茶色が『下級』。若草が『中級』。黒が『上級』。『魔法師』が膝まででローブの長さで区別している」
へぇー、そんな風になってたんだ。お父様と見比べてたし、魔法場の方しか歩いてなかったからみんな一緒だと思ってたよ。因みにウィル様にもお父様にもついているチェーンを聞いてみたら十進魔法師の証だった。やっぱりね。
貰ったローブを広げて早速つけてみる。と、言っても面積はずいぶんと小さい。子ども用とか、そんな事はない。『若魔法師』なので肩までのローブ?なのだ。
実際につけてみると………セーラーの襟だね。あ、因みに紐で結ぶ感じでした。それぞれを着けたのを見終わればみなが寮に案内される事に。私はお父様を待ちます。
アトラナは離れたくないと言っていたけど、魔法師となるためならそんな事を言ってられないからね?なんとか説得して別れるのにかなりの時間を潰したよ。
残された私は暇ですけどね。仕方ないから、この本で暇を潰す事にするよ。お腹が空いたけど、これで気をまぎらわすから。ひもじいなんて、考えないよ!




