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私が問題事の発信源じゃないよ!

改訂いたしました。27.5.17

「お前はやはり、問題児だ」


「たまたまいただけです。間違いなくあのサーフェン魔法師様に関しては私が悪いわけではないですよ」


「それはわかるが、面倒事になんでお前はいるんだろうな。むしろ発信源じゃないのか?」


「発信源とはなんですか。私が問題事を放出している風に言うのは止めてください」


「言いたくなるほどお前が関わっているだろう」


 ぷりぷりと怒ってるレーバレンス様に私はぶーぶーと言いながら対抗。大人と子どものケンカなんてたかが知れているけど言わざる終えないのだよ!


 いつから私は問題児になったんですかね!?しかもそれはこの前も言っていましたし!決して自分から突っ込んでいるわけじゃないのになんでお小言を受けなきゃなんないんだ。


 ジジルニアの手をぎゅっと握ったまま私はまだレーバレンス様に抗議していた。なんだかさっきの気持ち悪さが残っているような違和感が拭えない。だからこうやって話すことで気を散らしている。


 最初はジジルニアと細々と話していようと思ったけどね。彼女は集まった人たちによって恐縮しちゃっているんだもん。これ以上なにかしようものならきっと緊張で倒れちゃうよ。


「それから面倒事と言いましたけど、私はなにもやっていませんよ」


「それがやっているんだ。そこから入り口を覗いて光るところを教えてくれ」


 指差すのはさっきの短いトンネル。そう言えば光るものを見つけたね。なにかあるのか聞いてみたら早くと促されたので聞けないけど………………まあ、いっか。


 ジジルニアの手は振りほどけないのでそのまま入り口まで歩いて中の様子を伺う。中に入るな、と言われたけど今のところ入る気は更々ないので踏みとどまる。因みに結界が張られているらしく、足元をよく見たらキラキラの線が入っていた。


 結界って門みたいに全体がキラキラで入ろうとしたらオープンするヤツばかりだと思っていたよ。結界にも色々あるみたいだね。


 で、私が気になっているのはトンネルの中に数人の見知らぬ人が虫取網を持って待っていると言う光景に瞬きを頻繁に行っています。目が痛いんじゃない。眼が見ることを拒否しているんだよ。


 ジジルニアも私とおんなじ事をしていた。むしろ目を擦って確かめていますよ。私の想いは彼女にえらく通じるらしい。私は間違っていない。大の大人が虫取網をもって何してるんでしょうね。


「いいから」


「………あの辺りです」


 もう、気にしないよ。私だって早く魔法院のところにたどり着きたいんだから。指を差して2個の光っている部分を教えてあげる。すぐに手前の魔法師が近づいて天井に虫取網を振り回した。暗くてわからなかったけど、そんなに高くないらしい。


 ガガガ!と擦ったかと思えば2個の光りは避けるように右に移動。うわ。あれ生き物か………………今度は右に避けた事を教えたら逆に行ってしまうと言うお約束。鏡でみたら教えるの大変なんだよっ。


 結局、私が彼らの向きで教えてあげることになり、4人の虫取網を持参していたる魔法師はあっちこっちに奔走してようやくなにかを捕まえていた。その瞬間にこのトンネルが普通に明るくなって薄いグレーの色に早変わり。向こうの景色も見えるくらいに明るなった。


 なんだったんだろう?レーバレンス様が近づいてきた。


「これが正体だ」


 なんの事ですかね?と首をかしげたらずい、となにか黒っぽいような塊を差し出された。よく見るとそれは真ん中がなんだか白くて、だらんとしている。さらによく見ると動物の形になっていく。まるで首根っこを捕まれた猫のように固まっていた。


 全体を見れば小さな体。手足も小さくて顔が少し丸く細い。耳がちょこんと生えていて円らな瞳か私を見ていた。それはなんと言うか―――モモンガ?にしか見えないんだけど。でもモモンガってしっぽが狸みたいに太かったっけ?


「こいつはモモルガ。魔物だ。狭い空間が好きで、気に入ったところを住みかに外敵から身を守るため幻覚を使う。擬態しているため人には滅多に見破れない魔物で、こいつの目玉は幻覚を目覚めさせる材料によく使われる。四日前から逃げ出していて探してた」


「………………目玉」


「私は幻覚にかかったと言うことですか?」


「まあ、かかっていただろう」


「でも、幻覚とは惑わす意味ではありませんか?」


「普段ならこいつの幻覚は気づかない。この小ささで魔力は大きい。こいつの領域に入っている間は違和感があるが幻覚にかかっているとは感じさせない。惑わされていることも感じさせない。しかし、その違和感に少しでも気づけば幻覚と分かる。さらに本体となるこいつの眼を見つけるとこれは幻覚だとはっきりとするんだ。お前はまずこの幻覚を認識していないから分からなかったし、こいつを発見しているから違和感があり、それ以上の幻覚に惑わされない」


 因みにウィル様たちはなぜ違和感に気づかなかったか聞いてみたところ、数回このモモルガの幻覚にかかれば耐性がついて幻覚が引っ掛からなくなるのだとか。つまり、テリトリーに入ってもいつも通りで幻覚にかからないらしい。魔力は強いが威力はそんなにないんだとか。だから気づかないし、ちょっとした違和感が感じられる程度なのだ。


 だからウィル様は素通りで私は初めてなので引っ掛かった。私も耐性がついたって事なのかな?因みにこのモモルガはそんな危険な魔物でもないと教えられた。ただ素材として稀少価値が高い魔物だそうです。へー。ところでレーバレンス様、


「これは私が発信源だから起こった事件ではありませんよね?」


「事件あるところにお前がいるんだ。なにかと関わっているなら発信源と断言してもおかしくない」


 むう!それはちょっとひどいんじゃあありませんか!?あ、ちょっと話はまだ終わってませんよっ!!


 引き留めるわけにもいかず、説明が終わったとたんに籠へそのモモンガ………じゃなくてモモルガを入れて立ち去っていく魔法師たち。ウィル様はこのモモルガの存在を思い出して呼びに行っていたそうだ。


 なんでそんなに時間がかかったのかをさりげなく聞いてみると、逃がした研究室がどこか知らないので聞き回っていたらしい。捕まえるにしても、ウィル様には専門外で耐性も付いているし、さらに一人で捕まえるにはちょっときつい。


 そんな訳で手の空いている魔術師に声をかけて、ついでに材料ならヴィグマンお爺ちゃんを、と思ったらいない。代わりに素材にも知識があるレーバレンス様も呼ぶ事になってあの不思議な団体の出来上がり。


 さすがにやりすぎじゃないかと思ったけど、普通はあのモモルガの姿を特定できるのは難しいらしい。小さいしウィル様には擬態でどこにいるかわからないし、幻覚にかかった他の魔法師には姿が溶け込むような闇だったのでなおさら分かりづらい。それで私が見つけられたので、あのてんやわんやの行動に出たらしい………………


 それと―――四日も行方が分からなかったそうなんだけど、見つけられなかった理由は初日に全体を調べたが見つからず、人数を減らして順番に見ていたらここにモモルガが留まったのではないかと言う話。


 それでも見つけられるのでは?と思って聞いてみれば『魔法師』となると『魔法院』のこの通路をほとんど使わなくなるので最初に見ただけで気にしていなかったらしい。日帰りに魔法院の子は通るけど、違和感に気づけたものもいないので見る価値なし。と断定を付けて他の散策に力をいれていたらここにいた、と………………節穴ですね。


 これでようやく魔法院へ進めることにジジルニアと二人並んで安堵をもらしながらついていった。もう疲れたから説明をちゃんと聞けるか不安だけど、ここはあえて気を張っていく。


 ウィル様が言うには私たちは最後らしい。あそこで待ちぼうけしてたからね。時間もすでに越えているとか。先触れは送っているので待っていてくれているらしいよ。それにそこまで遅れてはないとの事。でも貴族も混じっているのでしょう?絶対わがままな坊っちゃんとかいると思うんだけどな。


 とりあえず今日に集まるはずの子どもたちのもとへ移動する。短いトンネルを抜ければ王宮側の右手が大きく庭となっており、左手は壁になっていた。玄関と中庭が繋がってる感じ?向こうに花壇が見える。トンネルの目の前が玄関になっていた。


 どん、としっかりと広めの玄関から入ってまるで学校の廊下みたいに通路と並ぶ扉が両サイド。合計10部屋あり、突き当たりは階段である。目指す場所は控え室で、玄関からすぐの左手の扉にウィル様はノックで入っていく。じゃあ、私も入る。


「うっ」


「ようやく逢えました!クロムフィーアちゃん!」


 入ったとたんにこれってどうなの………?まるで私の首を締め上げるようになにかが巻き付いてくる。私の名前を呼ぶ声はどことなく聞いた事のある声。ちょっ、マジで絞まってきそう。


「アトラナ嬢。急いで部屋に向かいますから離してあげなさい」


「ん?いいですよ」


 いや、何がいいの?よくわからないけど自信満々に頷いて離してくれたよ。危うく口から乙女にあるまじき物を出すところだった。危ない危ない。


 ウィル様のおかげで離れてくれた少女―――思い出した。アトラナ・ロン・セチェフ男爵令嬢だ。えーと、薄いグレーは銀髪………は、王族のみだから水色と予想して、黒に近い方の濃い瞳だから濃いめの緑を所望したんだったかな?今日はおめかしで髪がツインテールのようです。少女のあどけなさが出ていてまあ、似合ってますよ。私は遠慮したい髪型だ。


 まさかこんなところで再会をするなんて思っていなかった私はちょっと驚いてみせてアトラナちゃんを見ている。彼女はえへへ、とでも言うように笑ってなぜか私の手を握っていた。


 そのままウィル様に促されて6人は一つの扉に向かい出す。まるで手を繋いだ私たちの後ろに控えているようについてくるジジルニアと、他に少年が2人。自己紹介が出来なかったために今のところどう言った人物かは想像だけでしかできそうにないね。


 一人は黒っぽい少年。どこが黒っぽいって全体が黒っぽい。レーバレンス様みたいに髪も黒ければ瞳も黒。遠くから見ただけなので薄いのかも分からないや。冷めた目で顔は嫌そうな表情をしている。歩き方は貴族ではないでしょうね。完璧ながに股で蹴るような―――どこぞのヤンキーだ。ポケットに手を突っ込んでないだけマシか。服装も黒なので、まず境目がどこなのかも分からない。今のところ謎でしかないね。


 もう一人はグレーっぽいような髪に瞳は濃いめのグレー。うーん………なんなく、赤系に青い瞳?なんだかそんな感じが。表情は緊張しているのか、なんだか強張った顔できょろきょろしていた。服装は貴族ではみないような白?のシャツに皮っぽそうなベスト。多分同じ色だと思わせるズボンに濃いめの膝丈ブーツ。たまに右手と右足が出ているからかなり緊張してるのかな?危ないよ?


 ジジルニアはそんな彼に感染したのか、ちょっと不安そうに前を見て付いてきていた。手が胸元でぎゅっとなってるからやっぱり不安なんだろうとは思うんだけどね。


 逆に私は幼稚園、小学校、中学校、高校と自己紹介を同年代の見知らぬ人たちに4回も同じ挨拶などをしているのでどうって事ない。緊張するだけ無駄。伝えたい事を言えばいいので私はリラックスしている。


 階段を上がって奥の部屋にたどり着いたウィル様はここで待つように私たちに言って先に中に入っていった。気分はまるで転校生。転校生は初めての体験なのでちょっとわくわくしているのは内緒です。


 でも、その初めてを壊す人物がここにいる。それはアトラナちゃんです。私の手を離そうとしません。私は保護者ですか?止めてよ恥ずかしい。これでは笑い者である。


「アトラナちゃん、離してくれる?」


 こっそり言ってみる。


「なんで?」


「これから挨拶するからです。手を繋いだままなんて、失礼でしょう」


「なんで?」


 私がなんで?って聞きたい。普通、貴族が人様の手を繋いで挨拶する?お母さんとかなら分かるけど、姉妹とかもギリギリに分かるけど!!そんな親しくないアトラナちゃんと私が手を繋いでみなの前に出るなんて………さすがにないわー。君はもうアトラナと呼ぶことにしよう。年下を甘くみてはならぬ。


 中身は三十路近いからさらにありえない。なんで仲良くお手々つないでやらなければならないのか聞きたい。


「相手はこれから一緒に学ぶ同じ若魔法師ですが、それ以前に年上です。挨拶はしっかり交わしたいのです」


「同じだからいいじゃん」


「私は嫌です」


「クロムフィーアちゃんは私の事、嫌いなの?」


 きゅうにうるっ、と瞳が揺れて下から見上げるように懇願してきた。前にも言ったけどそれは男の子にやりなさい。そしてなんでそんな話に持っていく流れになったのかが意味不明である。


 戸惑ってはいないが、ちょっとこの子の残念さに思わずため息をこぼした。それがどう見えたのか、私も無意識にやっていたのでわかっていない。黒っぽい男の子が割り込むなんて考えていなかったのだから。


「お前、うぜぇ。貴族がそんななよなよしてんなよ。気持ち悪ぃ」


 なんとまあ、中身まで不良君じゃないよね?ちょっとトゲトゲしすぎる発言はどれだけやさぐれてるんだろう。アトラナが驚いて私の手を締め上げる。止めてください。いたたたたっ。


「女の会話に割り込んで来ないで!」


「アトラナちゃん、落ち着いて」


「クロムフィーアちゃんは黙っててよ!私はこの男に言ってるの!気持ち悪いとか、失礼だわ」


「耳が痛いの。お願いだから静かにしてください」


「私は悪くないもの!!悪いのはこいつよ!」


「貴族はきゃんきゃんうるせぇな。離れたくないなら母ちゃんにでも擦りよってろ」


「なんですって!?」


 アトラナが叫んだ瞬間。私の手に熱すぎるのではないかと言うぐらいに熱がこもり始めた。あまりにも熱すぎるそれは軽度の火傷で済むだろうか………遅すぎるが無理矢理にアトラナの手を振りほどいて距離を取った。


 彼女の回りはなにかチカチカしながら飛び交う。それは何かが判断できなくて、私に近寄ってきたジジルニアが心配してくれた。巻き込まれないようにか、あの緊張していた男の子までこちらにくる。


 いがみ合うようにあの男の子とアトラナちゃんは対立。まるでこれから一対一の対戦をするかのような―――て、あれ。なんで膝ついちゃったんだろう?


「何してるんですか」


 あ。ウィル様………………どうやらウィル様が何かをしてくれたらしい。お似合いの眼鏡をくいっとあげて二人を睨んでいた。




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