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魔法具創り

改訂いたしました。27.5.10

「来たか。遅かったな」


 出迎え開口一番でレーバレンス様に言われました。はい。遅れてごめんなさい。


 お父様と手を繋いで部屋に入ればため息とともに放たれた言葉。理由は簡単です。お父様があれはこれはと説明していたので遅れました。


 今日は前に来たことのある十進魔法師たちの個人部屋ではなく、先ほど説明があった魔法廊の所に移動してます。長い長い廊下です。以上。


 その長い長い廊下にたくさんの扉が張り付いていて、各部屋に色々となんの部屋か自己主張してあった。だいたい多いのが『研究室』で、魔術研究室はその扉に円陣が書かれてる。と言っても例の魔法文字(漢字)ではなく、この世界の文字で書かれてる。『魔術研究室1』だそうです。漢字を使うのではなく、一文字で書いていくので11文字。いい感じに円陣となってます。真ん中に数字ね。


 それが1~10部屋あるようで、迷わないように一応は左右で魔術と魔学が別れているみたい。


 魔学は薬の研究室が主だって。庭にある花や魔物から出る素材を使って魔病に対する研究。こっちはシンプルに白い扉。そこにやっぱり数字がぽん、と書いてあるだけでとっても分かりやすい。


 魔学と魔術が主な通路は本当に長くて困るよ。ぶっちゃけ疲れる。だってレーバレンス樣の使っている部屋が入ってきた出入り口からほとんど向こう側の扉に近い。お父様曰く、百部屋はあるんじゃないかな?との事。そんなに必要なのかね。ただの研究者のための部屋が増えただけじゃないかね。個人名っぽいものがたくさん並んでいるんだけど?


 お父様もそこまで気にしていなかったようなので、なんでこんなに部屋があるのかはわからないそうだ。ちなみにレーバレンス様に聞いたら魔術と魔学医の関係上と、研究対象の違いから一部屋では収まらなくなり、増やしていったらこうなったそうです。個人名はどこぞの貴族が私用にお抱えの魔学医や魔術師に使わせているんだとか。


 じゃあ、レーバレンス様の部屋の位置は?答えは魔法場が近いから。そこから城の中心部に行くのが楽だそうです。


 あ、魔法棟は『コ』の字型みたい。玄関ホール→魔法場→魔法廊→魔法院→庭→城側面内部。魔法場の前が通路と玄関ホールで繋がる城門なので、魔法場よりのおかげでレーバレンス様にとっては出入りも近いし資料も近くて助かっているそうです。本音は与えられている自室が近いからとも聞こえたけどね!


 あ、魔法の研究に使う花とか咲いている庭は魔法場のどこかの庭だよ。どこがどう繋がったか分からないけど、そうらしい。ふふふ。迷子確定だね!


「まあ、後は魔法院に入ってから色々と聞き回ってくれ」


「そうですね。そうしないと楽しみが減ってしまいますよね」


 これ以上聞いたら面白味がなくなっちゃうよ。と、言うことでちょっとごちゃごちゃした話を終えてお部屋に足を踏みこんで………気づいたんです。今。


「なぜここに王子たちが?」


「「面白そうだから」」


 ダブルパンチで返さなくてもいいんだよ。そんな双子ちゃんの奇跡を起こさなくったって、驚いてるから!


 レーバレンス様しか見ていなかった私はようやくソファーに寛いでいた双子ちゃん王子に目がいった。ここの配置は扉から入ってすぐにL字のテーブが見え、そこにレーバレンス様がいたので気づいたから話しかけられてそのままだったんだけど………


 向こう壁側にL字の長い方であっちに紙の山がいくつも………それでなんで短いL字の対面にソファーが置いてあるのかが謎。しかもテーブルはソファーの後ろって………配置おかしすぎるって。いやレーバレンス様と対面しているからいいのか?わかんないっ。


 招かれるまま私はなぜに双子ちゃん王子の間に入れられるのか。お父様が泣きながら「迎えに行くから!!何かあったら叫ぶんだよ!!すぐに駆けつけるからね!!クフィー、呼んでくれよ!!むしろ引き留めてもいいんだよ!!あークフィー!!!!」と泣く泣く出ていく。そんな父に私も泣きそうだわ。別の意味でも泣いちゃいそう。


 右手はしっかりと片割れ王子に握られてますからね。よく見たら手首にリボンが巻かれているのできっとアーグラム王子な訳でして。そうか。7歳児にもアピールしちゃうか。振りほどけない事が非常に涙を誘いますっ。


 因みに左側のローグラム王子はソファーに肩抱きです。下手したら私の肩を抱かれているような構図。うむ。帰りたいです!


「あの、本日はどのようなご用件でしょう」


「はあ………やっぱり話していないのか。お前の父親はずいぶんと適当だな。わざとか?」


「それは父に聞いてみない事には」


「まあいい。お前の父グレストフには許可をもぎ取った」


 もぎ取ったんだ………


「今回はお前の魔力を少しばかり欲しくてな、今から説明するからまず聞いてくれ」


「王子もですか?」


「一応は関係がある。今は別にいても意味はないのだがな………」


 そ、そそそんな、髪をかき上げないで下さいな!美男が無動作に前髪をかきあげるだなんてなんか素敵なツボに入って胸キュンしてしまうっ。しかも私から見て下を向いて無表情―――それで憂いがっ憂いが!!


 うっかりドッキュンしそうになって慌てて目線をずらしたのは言うまでもない。私は仕草に弱いのだっ。ネクタイ緩める仕草も大好きです。前髪をかきあげるのはもちろん、食べ物くわえて慌てる姿も大好きだ!疲れてそのまま寝ての寝起きも大好きだ!!


 お父様はイケメンだけど日頃が痛い人だからドッキュンこなくてさ………レーバレンス様は私から見たら黒髪だし、何気に長い髪がたまに肩にかかっていた時とかもうこの人はドッキュンのツボなんだけど。


 小さい頃はその髪の毛を紐として遊んでしまったけどね。あの時はすみません。今なら私がみつ編みを―――


「クロムフィーア、何か………変な事を考えていないかな?」


「え。へ、変な事ですか?…………なぜ」


 やっばい。なんか焦ってしまった。まさかのアーグラム王子から質問されるとはっ!?恋をしてしまえば勘が鋭くなっちゃうの!?き、気を付けねば………おかしな私がバレる。


 適当になんとかレーバレンス様の話の方向に持っていって誤魔化せばアーグラム王子はそれ以上は何も言ってこなかった。よし。変わりにローグラム王子が突っついてくるけどここはレーバレンス様が押さえてくれたので説明に入ります。


 えー、なぜ私は呼ばれたかと言うと魔力が欲しいからでしたよね?さて、それはなんででしょう。


「今度、王子たちの成人の儀が行われるのは知っているよな?婚約者を頼まれていたし」


「夏の終わりぐらいに催させれるそうですよね?」


「ああ、あと…………100日をきったか………終わらんな」


「ええと、何が終わらないのでしょう?」


「私が魔術師筆頭と言う事は知っているな?実は陛下から王子二人のために魔法具を作ってくれと頼まれてる。成人の儀に使うもので、期限も成人式までと言う無茶苦茶な申し出だ。私の魔力ではもう間に合わないので、小さいのの魔力を使わせてもらいたい」


 腕を組んでとっても疲れきったような顔で言わないで下さいな。なんだか手伝わなくてはいけないような気がしてくるじゃん。


 でも、魔法具を創るにはそんなに時間がかるんだ。えーと、確か魔法文字を魔石に書き込むんだよね?円陣を描きながら。


 対象が小さいから神経もすり減るし、魔法文字の魔力維持でけっこう魔力がとられるって書いてあったかな。でもそんなに掛かるとは書いてなかったと思うんだけど………?


 レーバレンス様がほしいのは魔力。じゃあ、作業事態はレーバレンス様が主体となって私は提供するだけ。技術も見れるし………割りといいお仕事?なのかな?うーん。


「私の知識では魔法具を作るに対してそんなに掛からないと思うのですけど?」


「その知識は一般的に作られる生活用品類の物差しだろう。私が行うのは複合魔法具と言って、一つの魔石に複数の魔法陣を書くんだ。補助魔法なので字がやたら長くて私の魔力では期日まで間に合わない。だから、お願いしている。どうだ?ちゃんと見返りも用意する」


 そんな事を言われたってなー。どうやるのか聞いたら逃げられないような気がするし。そもそも双子ちゃん王子のせいですでに逃げられないって。それにレーバレンス様には色々とお世話になっているし、見返りも聞いたら出来る範囲でなんでもいいって言うし………てかこの双子ちゃん王子からもらえばいいんじゃない?王子だから無理なのかな?


 あ、でも今思ったけど魔病のために私の抑制魔法具も作ってくれるのはレーバレンス様なんだよね?ここは私も協力を惜しむべきではない気がしてきたっ。


 いたたまれなくなってきたのでレーバレンス様にはOKを出す。ホッとしたような顔で微笑まれたらなんだか本当にやばそうだったんだな、て思うなあ。


 で、さっさく始めちゃいたいとの事なので、双子ちゃん王子の間から抜けてレーバレンス様の隣へ。テーブルが少し高めなので椅子に座ることになった。なんだか道具がいっぱいあるね。


 手形付きの鉄板?が一つ。それにやや太めの糸が手形の真ん中に乗っていてく………反対側のそれをレーバレンス様が小指に結んだ。これが赤色だったら面白かったんだけど、残念ながら私が見る限り白の領域で薄い色。つまらないよ!


 さっそくやるみたいで、レーバレンス様は机に視線を落としながら説明です。もう、研究者モードのようで、言葉だけがこちらに飛んできた。


「この糸は特殊なもので出来ている。材料は聞くな。その糸を掌で押すように手形に手を。魔力操作でそこに集めてくれ。力はじょじょに加えるように。指示は出す。それだけだ」


「長時間やりますか?」


「まずはお前の魔力を掴まなくてはいけないからな。今日は調整して明日から出来るだけ長時間で進めていきたい」


「………何かあったら離してもいいですか」


「魔法陣に中途半端はない」


 うげえ。それってほぼノンストップて行けるところまで行っちゃいます、て事?聞いたら頷かれちゃったよっ!


 一応、ちゃんと休憩とか取るらしいけど………レーバレンス様は果たして止まってくれる人なのだろうか………?いやほら、よく言うじゃん。研究熱心の人は回りが見えなくなるタイプが。


 まったくそう言う素振りを見ていないし、始まってからわかるのは遠慮したい。本当に休憩を入れてくれるのか、念押ししてさっそく実験をスタートさせる。双子ちゃん王子から緩い応援を聞きつつ、魔力を流していきますよ!


 まず、いきなり本番と言うわけにはいかないから私の抑制魔法具を作ることになりました。


 ちょっと濃いめの輪っか。たぶん腕輪の台座部分と、濃い黒よりの子どもの握り拳サイズの石を用意。これが魔石だね。キラキラしてる。


 そこでレーバレンス様も人差し指に魔力操作を開始させた。キラキラです。ちょっと目にも魔力操作で集めたら………なぜかキラキラが回りに出来るんじゃなくて輪郭を描き始めた。なんで?


 とりあえずそのまま見ていたら指先に溜められて大きさは頭一つ分。かなりの量な気がするけど、レーバレンス様はそのまま文字を宙で書き始めた。魔力はだいたい同じ頭一つ分。これを維持しろとの事です。


 漢字は読めないけど、一文字書くのがすごく丁寧でゆっくり………終わるのか心配になってきたのは当然だよね!一文字が完成してようやく二文字目。魔力は今の調子でいいそうなのでこのまま。これまた遅くてどうしようか悩んでます。


 一定の魔力で書いていった魔法文字は、全部で約26文字。何を書いたのか教えてもらったらこんな文だった。




 宿理子派水出有他之魔力乃干渉派許差麗奈意之出抑制世余※宿りしは水であり他の魔力の干渉は許されないので抑制せよ。




 こりゃ確かに疲れるよね。時間にして3時間ぐらいは込めてた。私はずっとレーバレンス様の手元を見ていたんだけど、ぶっちゃけつまらなかったです。危うく寝そうになった。ごめんなさい。見てるだけでも長すぎるよ。レーバレンス様は指しか動かないしっ。


 書き終わったら円陣を描いて(たぶん。キラキラしすぎて分からなかった)今度は両手を使って魔石にハンドパワー。押し込む感じで魔法文字を魔石にやってました。激しく輝きすぎてあまり分かっていないです。しかも魔法陣が石に定着するまでもが長い。


 そうして出来上がった石はなぜか小さくなっていて、腕輪の嵌まるところにピッタリと当てはめちゃいました。なんで?ちょっと呆気なく見えたから聞いてみました。


「簡単に言えば押し込んで凝縮した。魔石に覆うように刷り込ませるから出来上がる魔石は魔力の圧縮にによって小さくなる。因みに魔石が耐えられなければ壊れてやり直しだ」


「これ………どれくらいやるんでしたっけ?」


「あと100日前後で4つの魔法陣を組み込んだものを2つ。お前の魔力がすごくやり易いから早く出来上がるかもしれん」


「………すごく疲れるのですが」


「そこは調節するしかないな。もう少し長い魔法文字を書くから頑張ってくれ」


 肩をぽんぽんと叩いて労ってくれるけどね?これよりしんどいとなると泣いちゃうよ。因みに意外とやり易かったから、と言うことで私の属性抑制魔法具は完成したのでそのまま着けることにした。金属が冷たいです。


 もっと泣けるのは忘れていた双子ちゃん王子がソファーでうたた寝していた事だね。もうね、あ。寝てる時も同じ格好なんだ。とか感想はすぐに出てこなかったよ。


 こっちは数時間も見つめるしかできなくて、寝たら魔力操作できないから起きてるしかないけど手持ち無沙汰でやる事がなくてどうしようと思ってたのに!!


 二人を見たらなんだかイラッとしてしまったので私のうっかり病を発揮させて水が頭から降ってきてとか!うっかりならしょうがないよね?!


 ずぶ濡れになってしまって早々に帰る事になった双子ちゃん王子はなんだか脱力した感じだけど………鍛えているはずなのに王子たちは二人とも風邪を引いてしまってお見舞いに来いと勅命されたのは言うまでもない。まさかこんな事で勅命を受けるなんて思わなくて、家族全員で眼を点にさせて固まった。


 理由を知ったお母様は「さすがにそれはひどい」と言うことで、笑顔のお怒りは絶頂のままこんこんと説教が始まってしまったのです。お兄様とお姉様は遠くから「これはクフィーが悪いね(ですわ)」と。さすがのお父様も無言でどこかに消えていた。私に味方はいないみたいっ。


 それから私がアーグラム王子の婚約者だと報告がはいり、さらにお母様から「なぜ私が知らないのかしら?」と通りすがりのお父様を捕まえて半日と言う長い長い説教は続いたのだ。


 これらから私は心に強く誓ったことがある。もう二度と、王子に水は降らせないと。お母様を怒らせてはならないと。強く、心に決めた。




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