表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/242

説明会

改訂いたしました。27.5.9

 

 次は私です、と。少しばかり身を乗り出してきた宰相様に私は頷く―――けど、なんだかやっぱりお腹がすいたので軽い朝食を用意してもらった。


 双子ちゃんの片割れから呆れたような声があがったけど、なんだかお腹が空いちゃったんだからしょうがないのだよ。言ったのはローグラム王子に違いない。


 とりあえずパンを2個ほどもらって食べる。注目を浴びたけどなんのその。『いただきます』と心では言ったけど口にしていないはず。はて、何をそんなに気になる事があるのやら。パンはなんとなく柔らかい感じで味は牛乳っぽい。


「その小さい体によくあれだけの量と今もパンを食べられますね?どうやって消化しているのか………」


 え、そこ?そこなの?てかやっぱり量が多かったんだねっ!分かってたなら減らしてよ!!


 食べ終わってちょっとだけ宰相様を見たらなんだか目を反らされました………なんで?まあいいや。お話は朝の内に終わらせましょう!早く家に帰ってみんなの顔を見たいです!!


「そう言えば、なぜ王子たちがここに?」


「え。それはお前、アーグラムを婚約者に認めたからだろう?」


「認めたら一緒にいなくてはならないとかあるんですか?」


「王子たちは貴方を心配したのですよ。アーグラム王子の前で倒れたでしょう?」


「そうでした。皆様、ご心配をお掛けしてすみません。ありがとうごさいます」


 いけないいけない。これは人として言わなければならないところだよ!


 慌てたようにお礼を言ってしまったけど、なにやらお父様が絶賛、娘を奉っているので私の恥は薄らいでいくと言う不思議………お父様、実は侮れない?


 なんて考えて止めておいた。すぐに静まり返った部屋はお父様の真剣な顔で変わる。もう話が進むならなんでもいいや、と思ってしまったよ。


「まず、ですね。ご婚約おめでとうございます」


 やはり恥ずかしいので顔を少しだけ暑くしながら頷いた。声なんてもう出せない。発狂しそう。アーグラム王子も見ないようにする。これも発狂しそうで見てはいけない。てかあれは言わされたんだ。そう言う事にしておこう。


「つきましては、クロムフィーア嬢には後宮に上がって頂きたいのですが………年齢に問題がありまして、この事は伏せさせて頂きたいのです」


「私がまだ幼く、伯爵家では抗う力がないからですね?」


「―――そうです。ですが、王子たちは次の季節で成人の儀を迎えます。彼らは王子ですからそこで婚約発表を行わなければならないので、せめて顔を隠して出典してほしいのです」


 伏せたいのに出てほしい、ですか。面倒だね。顔だそしなくてもいいならそれに越したことはないけどさ。あと、そんなに驚かなくもいいじゃん。この世界は7歳でもまだ頭が弱いのかな?


「代役は頼めないのですか?」


「クロムフィーア嬢は成人の儀をどのように執り行われるか知っていますか?」


 え、城から城下に下りて往復するお披露目じゃないの?もう少し控えた表現でそう言えば苦笑いが返されましたー。すみません、説明をお願いします。


「それは進行ルートだけですね。成人の儀は成人した王太子の祝福と、これからの発展のために儀式が執り行われます。その準備のためと、未来の王の顔を覚えてもらうために城下を回るのです」


「(あれ?婚約者どこでいるの?それに王太子って?)………どんな儀式を行われるのですか?」


「成人の儀にも二つあるのですが、今回は王太子のための儀式ですね。これは未来の王を確約にするために契約する魔法と魔術で名前を刻むんです。そこにもう一つ、婚姻の発表と同時にその婚約者はほんの少しの魔力を示さなくてはなりません。因みにグラムディア様の場合、当時は隣国の王女がお相手で言葉のみの発表です」


 あー、その後に事件だっけ?それで取り止めか。じゃあマルカリアと一緒にいたあの人はこの国の公爵令嬢だったのかな?


「栄えある二人を民の心に刻ませる二つのお披露目ですね。もう一つは王子のお披露目です。これは王を支える人を紹介ついでに婚約も紹介しようか、と言う簡単なお披露目ですね。内容はほぼ一緒ですが重々しさはかなり違うものになっています」


 いやいやいやいやいや!なんかおかしくないかね!?王太子って、次期王の座に座る人の事を言うよね!?王子のお披露目ではなく、王太子のお披露目に変換するのおかしいのではないでしょうか!?しかもさりげなく婚姻(・・)っ。


 婚姻はすでに結婚しますよ、って意味だよね!?なんで婚約が消えちゃうかな!?


 そもそも、私は知らないけど陛下はグラムディア様以外の息子はいないの!?王宮関係には関わらないだろうと気にしてなかったけど陛下に息子一人っておかしいよね!?


 私がおろおろしていれば説明に入ってくれる宰相様っ。よく分かって下さる!!ただ、なんでピンポイントで私が気にしているところをほんのちょっと混ぜて説明してくれるのかが気になるっ。別にいいけどさ!色んな意味で疑っちゃうよ!!


「本当は王子なんでしょうがね。グラムディア様以外の王子は生まれず、姫は全員嫁いでいかれましてね。グラムディア様はとある事件で表舞台を降りられましたから、今の王位継承権はグラムディア様の息子であるアーグラム王子とローグラム王子に譲られているのです」


「あの、婚約者は今、必要なのですか?それに先ほど王太子で婚姻の発表になってましたよね?どう言う事ですか?」


「ああ、失礼。王太子の理由は………陛下は長く王座に君臨しています。王が変わらないと言う事は、その息子である王子が不出来であると他国に教えているようなものなのです。ここで発表しなければ我が国は受け継ぐものがいない事を意味し、衰退か他国に取り込まれる恐れがあるのです。先ほど婚姻は本来であればの内容で、実際は婚約です。いますよ、と言うことさえ言えれば問題ありません」


 そんな国単位でえらい事になっちゃうの?そりゃあ代替わりしないとお前の息子はどうした、と思っちゃうけど。そうか………これなら私も大丈夫?本当に婚約の方だよね?


 なんか今の話を聞けば私は逃げられない気がしてならない。別に、結婚がどうとか深く考えてなかったって言うのもあるんだけどっ。


 なんだか頷いちゃいけない案件を手軽に考えてしまって足を突っ込んだようです。むしろ王子からの告白でなぜ私は了承した。そこが一番馬鹿だろう。


「グラムディア様が復活すればっ………」


「馬鹿な事を言うな。口には出来ないが父上は顔を気にしているんだ。今では人に逢う事も拒むんだぞ」


「クロムフィーアは………もしかして私との婚約を悔やんでいるのか………?」


 ええ、悔やんでいますとも。そもそも双子ちゃん王子が王位継承権争いしてるなら自分の姫を連れてくれば将来は安泰で決まるよね。馬鹿だったわ………なんでここまで考えつかなかったんだろう。ああ、興奮していたからか。


「グラムディア様の状況にもよりますけど治せるのではないのですか?それとアーグラム王子。悔やむとはなんですか。それでしたら返事などいたしません。ただ私にはまだ時間が必要と言う事は変わりないのだと考えたのです。顔を隠すと言っても大衆の前に出るのですよ?緊張してしまいます」


 嘘八百………………いや、緊張するけど。あー、でも………って考えは止めよう。ここで無駄な事を言ってこじれて面倒な事になるのは嫌だし、アーグラム王子のあの捨てられた犬のような顔を見たら………駄目だ。美少年パワーに負けるっ。


「その、アーグラム王子の前で言う事ではないのですが、クロムフィーア嬢に分岐点はあります。婚約とは仮の制約でしかありませんから、相手が王子、王太子と言うだけで覆せます。クロムフィーア嬢はまだ幼い成人していない女性、そして身分は伯爵………何処からか湧いて出てきた娘など公爵辺りなら何か理由を付ければ簡単に潰せますし、残りの8年でクロムフィーア嬢にもアーグラム王子にも恋変わりはあるでしょう。ですから、今は伏せて婚約を行って魔法を少し使って頂きたいのです。その間は申し訳ないのですが、隠す意味もあって魔法院に入ってもらいますがね」


 なるほど。無理強いではない事がよく分かりました。王太子ならアーグラム王子も下手に動けないもんね。ただ、納得はお父様以外の大人組だけのようだけど………宰相様は気にしなくてもいいとおっしゃる。


 いや、待って。魔法院って?どうしてそんなの出てきの?魔病?


「お主の魔力が強すぎるのと、魔病の監視、それにその魔力が見える眼についての研究じゃ。そのままでは婚約も危ういからのぉ。それと先程のグラムディア様の事も聞かせて貰えぬか?娘っ子はわし等が考えているものより、面白そうな答えを見つけてきそうじゃ」


「お父様は否定したんだよ!だが、陛下があんな事を言うから日帰りで我慢する事にっ!!!!」


 お父様の説明プリーズ。


「ええと………魔法院は基本10歳から入れる機関で、特別枠に7歳から入れるんです。魔力が多い子どもや特殊な子どものために早めに教えを乞う事ができる施設ですね。それでクロムフィーア嬢は魔病についてもそうですし、魔力が見えると言う事がとても魅力材料らしく、ヴィクマン魔法師が推薦したそうです。あとは王子たちとの接点を作ったと言ったところでしょうか?それでグレストフ魔法師が懸念しているのはその施設に入った子どもたちは“ 預かり ”と言う形で帰宅はありません。ですから陛下とそれはもう長く抗議を繰り返していまして………日帰りで解決しました」


「………陛下に、父がご迷惑をお掛けしています、と………」


「はい。確かに承りました」


「クフィーはそれでいいのかい!?お父様と逢えなくなってしまうんだよ!?」


「………………………………お父様、逢いに来てくださらないのですか?」


「絶対にいくに決まっておるだろう!トールも連れて!」


 お兄様、ごめんなさい。知らぬところで巻き込んじゃった………


「では、お父様が逢いに来てくれるのを待っていますね」


 そうやって微笑めば胸を打たれたらしい。胸を押さえてとっても嬉しそうに倒れた。うん―――倒れちゃった………


「よし、邪魔物はいなくなった。先程の話をしようかのう」


 もうお父様の扱いはぞんざいだね。王宮魔法師筆頭、十進魔法師の一の席で二つ名が―――確か異色の覇者でしょ?威厳なんてあったもんじゃないね………


 双子ちゃん王子と私の顔が同じだったらしい。宰相様が「三人同じ顔で残念な人を見る目ですよ」って言われてしまった。残念な人の目………ごめんね、お父様。こんな娘で。


 さらにヴィクマンお爺ちゃんが総無視で、私にお父様を見せないように回り込んできた。そんなに聞きたいんだ………どうせ子どもの戯れ言で終わっちゃうのに。


「で、娘っ子はなぜ治ると言うんじゃ?気持ちだけか?」


「ええと、魔法で?」


「そうじゃの。魔法はすべて試しておる。薬も、出きることはすべてじゃ」


「魔法は水と光、両方ですか?」


「試しておる」


「いいえ、同時発動(・・・・)含めての両方をやったのですか?」


「………………ふむ。わしの眼に狂いはないな。なぜ同時にする必要がある?光は奇跡と言われておるのじゃぞ」


 うわ。ヴィクマンお爺ちゃんが見開いてきた。てか同時に行う発想ってないんだ………自重すればよかった………


「逆になぜ同時にしないのですか?」


「光が奇跡ですべてが治る」


「―――偏見です。私が得た知識は【水】もじゅうぶんに奇跡ですよ。それに、【光】の回復は外傷した部分を補うために魔法が産み出す奇跡です。グラムディア様は火傷で皮膚がただれていると見聞しました。ただれただけの傷に何を奇跡で産み出すのですか?」


「奇跡だからこそ産み出すのだ。ただれた傷に皮膚の生命を産ませ、蘇らせる」


 むう。お爺ちゃんは頑固で睨んできます。でも言わせてもらいますからっ。


「蘇るのですよね?なぜただれた物をそのままで魔法を使うのですか?」


「それ以外に何をすると言うのじゃ」


「これは私の主観ですが、両方を使えば私は治るのではないかと持論します。回復魔法で体に影響が出ない事は分かるのですから、水は身体強化で傷を塞ぐ促進、光は産み出す奇跡で治るのでは、と考えました。痛みは生じるでしょうが、ただれた皮膚を取り除いて皮膚を促進させ、奇跡で産み出せば元に戻ると思うのですけど………出来ませんか?」


 あ。ヴィクマンお爺ちゃんが悩みだした。私はこの異世界が進んでいるのか進んでいないのか悩みどころだよ。


 魔法陣でそこまで種類がある訳じゃないみたいだし。ただ応用で【氷】と【雷】。それに【爆】とどうしてそうなる【木】。土からの最上位魔法だそうです。どうして土から木になったのか………さすが異世界。攻撃は進んでいるのに回復系は進んでいないとみた。あ、でも代わりに魔学医が存在するのかな?


 それで、私が提案した回復方法は誰も思いつかなかったようで検討すると言われてしまった。ので私は後日もう一度その説明をするように言われた。やらかした感がハンパない。その日に実験を行うらしい。立ち会わなければならないのかな………?


 お父様も復活ですごく真面目にイケメンを発揮しています。そうか。私の考えは根本的に違うよね。同時にしようとしないんだもの。てっきりお父様は2つの属性を持っているから同時に魔法とか放てると思ったのに………聞いたら「下手したら均衡が崩れて死んじゃう。お父様はクレラリアやクフィーたちを置いて死ねない」との事。できる事はできるんだね。お父様はすごい?


 他にはレーバレンス様からお願いがあったり、アーグラム王子からリボンを貰ってようやく帰れた。リボンは交換です。身に付けたいそうなのでとりあえず交換と言う形になった。お姉様、気づくかな?


 お父様と二人して馬車に乗り込んでようやく城からでる。まさかこんな面倒そうな感じで王族と絡むなんて本当に思ってもみなかったよ。私が馬鹿なだけなんだけど。


 お父様には再び抱き締められて心配を教えてくれた。みんなが待ってる、て言葉になんだか泣けてしまって瞼を閉じておく。


 そっか。あの時、泣いても暴走しなかったのは私が不安じゃなくて安心して泣いたからなんだ―――今も泣き出しそうだけど、帰ってこれて嬉しいから泣いても魔力暴走はないね。


 ようやく体から緊張の糸がほどけて静かに鼻をすすった。泣くのは家に帰ってからにしよう。みんなに抱き締めてもらって、安心して『ただいま』と言いたい。


 またお母様に「泣いてはいけません」て言われるかもしれないけど、今はその言葉でも聞きたい。実感したとたんにこれだと、涙がまたボロボロと出ちゃうかも。


 お父様が撫でてくれる頭は夢と一緒で安心する。これで本当に終わったんだ、とみんなの顔を見るのが待ち遠しくなった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ