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幕閉じは痛手と

改訂いたしました。27.5.9

 言っちゃったー!!なんて心の中でぎゃーぎゃー騒いでいたらあっさりOKでました。陛下から。しかもなんでもこーいと結構………寛大、ですね。




 なん、………だと!?




 て顔に出すぎたのか、遠い玉座から複数の笑い声が聞こえます。2人なんだけど。え?なにそれそこ笑うところ?


 はっはっはっーと押さえながら笑う、陛下を守るために携わっている近衛騎士は微動だにしないのに、近くにいた宰相様からそりゃあもう優しげに笑って笑・っ・て!私を見ています。


 なに、その労る感じ。子どもだから泣いちゃうよ!?


 おろおろしてたらようやく治まったのか、陛下は気にしないように聞いてくる。………思うに、私はあんな畏まった(私の知恵をフルに使った結果に)意味はあったのだろうか………


 いいんだ。子どもはみんな大人にからかわれるお年なのよっ。もうこのさいだから色々と聞いてやるんだから!!


「け、契約書は、魔法具をよく用いて行われるのですか?」


「作る契約書の内容にもよりますよ。今回のように行われた養子縁組みは貴族絡みで、国から貰った家名を変えなくてはならない故によく使います。貴族はたまに節操なしがいて、どこからか「あなたの子です。見捨てないで」と言われないためにでもありますね。ですから魔法具で厳重に名前と個人を縛るのです」


「ベルック宰相殿!失礼だが私の娘に教育によろしくない単語をいれないでいただきたいのですがっ!!」


 はい、お父様は黙っていられませんでしたー。しかし、宰相様は華麗に笑顔でスルーです。強そうだね。


「よくこれが魔法具だとわかりましたね?父君から教わったのですか?」


「父は忙しい身でありますゆえ、私の知識は本でございます。今まで言う機会がありませんでしたので驚かれると思いますが、私は小さい頃より魔法が光りとなり見えるのです」


 言ってもいいよね?


 事後報告?になっちゃうけどお父様に視線で訴えてみた。でもなんだろう。あの満足そうで満面の笑顔。大きく頷く素振りは………すっごいお父様だけ輝いてるわー。


 もう、自分の事だからいいよね?別に隠すほどでもないし。家族で言っちゃだめだよ、って言っていたけどさ。もういいや。はっちゃけよう!私は子どもなのだ!!


「以前目にした契約書は魔力が宿っていたようで微量ながら光っていたのですが………今拝見したその契約書は2枚とも光っていおりません。契約書の魔力は日が経てば消えるのでしょうか?」


「魔力が見える、ですって………?嘘おっしゃい。そんな事、ありえないわ」


 貴方が、ありえないわ。マルカリア風に言ったらこんな感じかな?なんて。よし、邪魔。排除。


「見えます。例えば、マルカリア様が身に付けている髪飾り。ドレスの腰元にレースを束ねる止め飾り。胸元はネックレスですか?魔力が宿ってますよね?後は耳飾りと―――ドレスの中にとても強い魔力が込められておりますね」


 強いと布越しでも見えるんだ、へー。


 あと、陛下とか?因みに私は陛下の顔がさっきからどんな顔なのか確認が取れていません。色がどうのこうの言う以前の問題で、魔法具を体にいっぱい着けているせいか―――それともネックレス系を着けていて、それにとてつもなく強い魔力が宿っているせいか、キラキラに埋もれて見えないんです。


 キラキラの頭部で人の形をしながら何か喋ってる感じにしか私は見えないので、ある意味では未知との体験だよね。色んな意味で恐い。


 恐いと言えばマルカリアも負けない!なんと素敵な驚愕。目を限界にまで見開いて私をみてます。そうか、人ってあんなに見開くんだっ。この世界にもアイメイクと言うものがあるせいでくっきりとした感じがとても恐い。恐怖ものだよ!!剥げてるからさらに怖い!!パンダだっ。


 あまりにも驚いた顔に私はとりあえず宰相様に視線をパス!お父様は向こうで「うちの娘すごいだろう?」と小声で自慢が始まったので私も華麗にスルーです。


 そして気づいてくれる宰相様!驚きつつも、契約書の説明をしてくれました!気が利くね!!


「素晴らしい瞳をもっているのですね。そうです。魔法具として生かされない、使われない魔力は魔素となって散っていくのですよ。契約書の紙にも見えない魔法陣を書いて魔素と共鳴させているのですが、魔力が足りなければ魔素を留める力が失われ、消える仕組みです」

 

「でしたら―――もしそのまま署名をしてしまっても、効果は発揮しないのでしょうか?」


「そうですね。紙としては残るかも知れませんが、いくら王家の刻印を使ったとしても魔力で契約していないのですから、燃やせばなかった事になります」


 消費期限つきとか、契約書ってずいぶんと制限があるんだね。てっきり作ったら残ってしまうのかと思っていたよ。あ、でも魔力契約だもんね。そうそう放置する事がまずないのか。


「そちらの、もう架空の名が刻まれてしまった契約書も魔力が見えませんがこれは契約完了、なのですか?契約完了で魔力は消えるのでしょうか?」


 ここ大事!一番知りたかったところ!!


 まあ、ドミヌワになった覚えはないのでありえない話だと思うんだけどさ。憶測って、時にはえらい方向に飛躍しちゃうじゃん?


 確認は必要なんだよ。宰相様ー!


「無効です。クロムフィーア・フォド・ドミヌワなど存在しませんから。仮にこれが契約となった場合、魔力はそのまま維持され、契約者以外は燃やす、塗り潰す、切り裂く、破くなど覆す事は出来ません。例外は我が国王陛下ぐらいでしょう」


 よし!


「ご教授、ありがとうございました」


 立っていないから出来ないけど。私は先程から背中やら腰が痛い痛いとずっと言っていたあれでお礼をとった。


 なんだかお父様の方角から「クフィー!可愛いぞ!!」と叫び声が聞こえなくもないが。気のせいってすごいね。ぼやっとその場を忘れさせてくれる。


 さて、大体は私の方で終わりを告げちゃいたい訳なんだけど………まだ納得していない人が1名様ほどおりまして、すごい睨んでいます。


 でたらめ言うな、とでも顔に書いてあるみたいに雰囲気がまるわかりで私は心の中でため息をついた。


 どうせ私がやった証拠がない、とか言い出し始めるんだろうなー。て。思った矢先に言ってくれるマルカリアに眼が死にそうになった。どうしても自分じゃないと言い張るらしい。


 はて。もし本当にマルカリアが関わっていなかったら?いったい誰がブタさんをそそのかしたのだろうね?いったい誰が王家の刻印がついた契約書を作ったのだろうね?


 逃げ場がまるっきしない状況でよく頑張るものだ。そこだけは誉めてあげたい。


 それはこの場にいた人たち、一同が思ってくれただろうこの場で、代表として陛下が声を張り上げる。


 マルカリアが認めないなら別のところから攻めよう作戦に出たらしい。今までの悪行をつらつらと宰相様の口から出るわ出るわ悪質な裏話。


 孤児院で賄うお金が足りないから色々な下位の爵位持ちから金品の押収。一番ひどいのは自分で育て上げたと言う孤児の子を売って稼いでいたらしいね?きっとルートはもう一つの孤児院ではないだろうか。あんだけ隅っこなんだもん。人目はつかないしやりたい放題でしょう。もう、マルカリアの株がドン底を通りすぎて奈落に到達してますよ。奈落の次は深淵かな。


 あんだけ子どもが好きって言ってたのがこれか。女の人って恐いね。


 宰相様………………父の口から漏れる悪行。その顔は無表情で人形のよう。声にさえも、無機質差を感じられた。


「―――以上、マルカリアが孤児院に携わってからの所業。ついでに陛下に対していつまで経っても頭を垂れぬ高慢。図に乗るな、愚行ものよ!」


「マルカリアよ。申し開きはあるのか」


 それはあるなら言ってみろ。試すように、見下すように地の底から出された低い声は国王なるものか。思わず目を閉じた私は悪くない。


 下を向いたままの体勢は辛いけど、頭をあげるべきではないと分かる。むしろ怖くてあげられないのが本音!!


 布の擦れる音が近くで聞こえた。たぶん、マルカリア。彼女はなぜこんな事をしたのだろうか………未だにその理由がわからない。


 私はそれを聞けるのかな?あとでお父様に教えてもらえるような気がする。


「集え風粒(ふうりゅう)よ!我が力の礎となれっ!!」


「っ!?」


 怒鳴り声。その言葉の意味を理解するには少しかかった。言い終えた瞬間に私の頭にはガラスが割れる音が甲高く響いたからだ。


 それと同時に体全体に走る激痛………呼吸が止まった瞬間、私の体は右側面にも衝撃を受けて止まった。暖かみがあるそれは弱々しく私の肩を叩く。


「うっ………………あ…な、に………?」


 本当に何が起こったか分からなかった。体全体に痛みはまだあるけど、右側面が痛い。呼吸が戻ってきたおかげで少しだけ思考が回転する。


「大丈夫、かっ」


「っ………グラム、ディア、さま?…………わたし」


「……っ、僕たちの力では駄目だな。クロムフィーア、今は喋るな。ヴィグマン魔法師を呼んでくるからっ」


「ヴィグマン魔法師を呼べ!―――それとお前は動くな。無理に動くものじゃない」


 似たような声が被せるように声をかけてくる。ちょっとだけ視線をさ迷わせれば、見えてきた。同じ顔の、凛としてまだ幼さを残す青年。


 髪の色はグラムディア様と一緒か。白に近いグレーが2つ。心配そうにこちらを見る瞳は黒よりのグレー。その色は紫を思い浮かべさせる不思議。なんとなく濃厚が違うのは私が痛みに悶えていて、ちゃんと判別していないせいか。双子ちゃんが顔を覗かせている。


「わた、し………」


「マルカリアが魔法を、お前に放ったんだ」


「お前は風で吹き飛ばされた。お前の父が咄嗟に防御を放っていたと思うが………」


「い、痛む、のか?」


 頭上から、右側から心配そうな声が聞こえる。今はどういう状況なのだろうと顔を少しだけ動かせば、ホラーがっ!?………………………………失礼。間近で見ると、こればかりは心臓が跳ねるから!白黒でも近くで見れば描写はえぐい。


 驚いて固まってしまったけど、もっと驚く事は別にありましたっ。私、グラムディア様に抱えられてますよ!?なんで!?


 もしかして吹っ飛んだらここに着地!?それはそれですごいな!!


 おかげでちょっと理性だけは戻ってきた。けど、体はまだ動かなくて―――こりゃ失礼と退きたいが身体は言うことをあんまり聞いてくれない。仕方ないので断りをいれてその場に止まることにした。だって双子ちゃんも動くなって。


 呼吸しやすいようにか体勢を変えられて後ろから。前二方向から。トリプルパンチで言われてしまったら何も出来ませんて。グラムディア様はちょっと挙動不審に大丈夫かと聞いてくるけど。


 大丈夫ですのでそんな心配しなくても私より貴方の方が痛いでしょうに………


 心配させないためにも笑顔を作ったら固まってしまいました。はい。私は何もしていません!


「小さいの。今すぐ水の魔素を集めろ」


 その声は!?と振り向きたいけど動けないので目線だけ。てかその呼び方はもう固定なの?レーバレンス様。ため息つきの登場も、格好いいですよ?


 しかし、言われた事が今一つのために呆然と見返してしまう。双子ちゃんも怪訝な顔でレーバレンス様を見返す。


 レーバレンス様はそのまま私の前に膝まついて手首を取った。まるで脈を計るみたいに。しかし、それは魔力を見るためらしい。眉間にしわが少しよった。


「乱れがひどい。早く水の魔素を集めた方がいい」


「………っ、どえ」


 そこまでしか動かなかった。さっきまでだるいな、て思ってたのに急に体が重くなる。でも言われた通りに集めた。頑張ったよ。


 『集え』だけでよかったみたい。ちゃんと集まってきただろう魔素がなんとなく入ってくる。するとなぜか体が軽くなってきた。また不思議。


 瞬きで自分の様子に不思議がってたらレーバレンス様が軽く頷いて背を向けてしまった。双子ちゃんとグラムディア様が心配そうに尋ねるのでもう大丈夫だと力こぶを作る感じで笑ったら3人から安堵のため息が。


 なんだか心配させてごめんね?私もよくわかってないから。


 なんとか動くようになったので、気遣いながら下ろしてもらってようやく辺りを見渡せると思ったら………そこは―――マルカリアの敗北で幕を閉じていた。




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