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待つ、ジレンマ

今年もよろしくお願いします!!!!!!

がんばるどー!!!!!!

改訂いたしました。27.5.8

 我が息子のトールがあれを使って面会をしてきた。もしもの、万が一のために渡してあった私にすぐ面会を取り付けられるように出来る勲章だ。預けた事により相手との信頼が伺える。


 王宮魔法師となれば我が家族とも手軽に逢える事はない現在に、この勲章はなけなしの通行証。その1度きりの面会勲章はトールに渡していた。


 あれは言わば王が認めたもの。それを出されてしまえば、どんな素性な者でも私の元まで会える。もちろん、誰に手渡したのか王とその近衛に報せなくてはならないが。


 トールと一緒にやって来たのは見習い教官からそのまま就いているウォガー大隊長殿だ。なにか、あったのだろうか?


「父上、緊急です」


「それは分かる。そのためにあれをお前に託したのだ」


 深く頷いて一度だけウォガー大隊長殿を見て私を見た。聞かれては不味いことなのだろうか。トールの顔は平静を装っているが険しい。


 ウォガー大隊長殿が離れてくれるとは思えないのだがな。なにより彼は獣人だ。その獣の聴覚はどこまて通用するのだろうか………


「ウォガー大隊長殿、退席を願えるのか? 」


「王宮魔法師殿との緊急面会だ。さすがに無理と言える」


 やはりそうか、面倒な肩書きだ。


「他言無用にしてほしい」


「話の内容による」


「トフトグル。聞かれては不味いものではないだろう?」


「身内の話です。父上が言いと言うなら私は話します」


「話なさい」


 本当は我が家の諸事情など、外に知らせたくはないのだが、しかたあるまい。ウォガー大隊長殿はきっと醜聞を広めたりしないだろう。


 この部屋はあらかじめ防音の魔法具が備わっている。トールにはそのまま言ってもらう事にした。


「クロムフィーアが誘拐されました」


「なにい!!??」


「場所は庭です。足跡があるので調べればどんな人物が履く靴なのか、分かるかもしれません」


「知らせたのは誰だっ」


「リアディリアです。無理を言って魔法棟に匿ってもらうよう言伝てました」


「回しておく。お前も私の部屋にいなさい」


 なんて事だっ。あれだけ警戒したのに油断した!今日はリディだけが屋敷にいる状態。王からお借りした騎士はクレラリアに付いている。


 結界の魔法陣は強化してあるはずだがどうやって中に入った?まさか綻びがこんな時に出たのか!?いや、実際に見てみないとわからないっ。マルカリア様がなにかしたか、それともっ―――…


 すぐに魔法棟への許可を出してトフトグルを向かわせる。ウォガー大隊長殿も察してくれたのか、送ってくださるそうだ。


 できたらそのまま護衛についてほしいが無理はよそう。彼は私たちの護衛ではない。城なら下手な事はそうそう出来ないだろうから送って下さるだけでじゅうぶんだ。


 私はこのまま陛下へと連絡を取ってクフィーを探しにいかなくてはっ。きっとドミヌワ伯爵とマルカリア様がやったに違いない。ここ最近やけに静かにしていたと思っていればこう言う事かっ。


 マルカリア様の件も絡んでいるので余計に厄介だ。どうもあのニアキスがまだ引っ掛かりがあって真相に近づけないでいる。


 我が家にいると思えば城下に降りているし、いないと思えば王都最北の港にいるという情報。貴族街はほぼ中央に位置するので、そこから馬車を使って半日と遠い。


 朝は必ずいたとクフィーに聞いているのだから夕方に顔を出す事になるが、昼にも一度だけ顔を出していると聞いている。


 いったいどうなっているんだ。そのくせマルカリア様とドミヌワの回りにも浸出している。奴は複数もいるのか?いや、名前だけなら多用できようが姿は多様でき―――魔法具があったか。


 レーバレンスが陛下の影武者を作るのに試しで作っていたはずだ。しかし、あれは結局のところ写し出しただけで動かないを理由に処分したはず。


 姿だけその場に出させるだけなら?いけるかもしれないがそんな現れて消えたり動かないなどの情報はない。


 まあ、どのみち裏を見つけなければ審判は下せない。くっそ!どうするっ。ロノウィスはまだ掴めないのかっ。


「ドトイル、ドミヌワ伯爵の動向をさぐり、見張っておけ。動き出したら連絡しろ」


「御意」


 もし動きがあれば確実だ。ドミヌワ伯爵が誘拐に噛んでいたらそれはそれでマルカリア様関連をなんとか引っ張り出して潰せばいい。


 クフィーを出汁に使っているようで、非情に心が痛いっ!クフィー!!お父様は頑張っているから!!早く助けに行くからもう少し待っててくれっ!!!!


 鼻の奥がつんと痛いが我慢だ。この涙はクフィーと再会した時に流そう!


 陛下の政務室にいつの間にか着いていたらしい。部屋に入ってようやく気づいた私は貴族の礼とともに考えていた言葉を口にした。


「陛下。私用が出来たので帰ります」


「お前は阿呆か。せめて急用にしてくれ。私に胃痛薬でも飲ませる気なのか?まったく………何があった」


 何があったか、ではないのです。大事件です!


「私の愛娘が拐われました。おそらくドミヌワ伯爵だと思われます」


「………動いたか。養子縁組みを無理矢理にでもして成立すると思っているのか愚か者め」


「するわけないでしょう?陛下、急用なのです。許可を」


「ならぬ」


 っ―――はあ………………どうしてもマルカリア様を捕まえる気でいらっしゃるのかっ。


 私はすぐにでも駆け出してクフィーを助け、抱き締めたいと言うのに!どうして貴方はこう焦らしてくださるか!私の可愛い可愛いクフィーはもう7歳なのですよ!?あの円らな瞳にドミヌワを見て汚れたらどうするんですかっ!!


「心の声が出ておるぞ。ところで、お前に聞きたい事がある。この前に聞こうとしたがグレストフはさっさと帰ったからな」


「ぐぅんぐっ!」


 これは何か!?陛下は私で遊んでいらっしゃるのか!私は急用と言ったじゃないですか!!


 しかし、陛下は私をとても残念な顔で見つめている。どういう事ですかそんな目で見ないで下さいっ。


「お前の娘が言っていた王家の刻印なんだが、どんな模様か聞いているか?」


「聞いてますが………何か」


「これは王家のみしか知らぬ事だが………まあ、時間も経っているのでそもそも無効のような気がするが、仮にその縁組みを成したとしても、覆せるやもしれぬ」


「本当ですかっ!?」


 では、すぐにでもお伝えいたしますよ!さあ、聞いてください。今すぐに聞いてください!!


「お前は腕は確かなのだがな………どうして家族絡みはこうも抑えが効かないんだ?」


「それはもちろん!私の愛はクレラリアから始まり」


「止めろ。本当に胃痛になる」


「これだけは止められません。まず、クレラリアですが初め眼にした時から私は心がもうきゅっと締まって息も出来ないほど苦しくなるのです。そして眼が離せなくなるにつれ私はまるで蜘蛛の糸で絡めとられたかのようにクレラリアにぞっこんしてしまいました。彼女の仕草一つ一つが私を魅了していくのです!最初はあまり言葉も交わせなかったのですが、ある夜会で私は好機を得たのです!いつも」


「おい。レーバレンスに頼んで沈黙の魔法具を持ってこさせろ」


























「いっ、た」


 小さく声をあげてボロ毛布に踞る私。ただいま実験中です。


 ニアキスの姉と言うヒアニスが明日にはドミヌワ伯爵が来ると言うのを聞いて、私がどこまで抵抗できるか考えた結果………


 やはり魔法でなんとかならないか、とそこに落ち着いてしまった。


 寝て起きてようやく首に違和感を覚えて触って見たところ、ここに何か着いてた。悪く言うなら首輪。もう少しよく言うならチョーカーが私の首に嵌められている。


 これがいったいどんなものかわからないけど、魔力を一定の場所に集めようとするとそこに痛みが生じる。耐えきれるかと言えば断りたいのが本音。でも耐えきれる。この衝撃は指を挟んだ時に生まれる痛さに近い。痛くて、じんじんと長く痛むあれ。


 しかし、そこまでして私が最終的に出られるのかと聞かれたら首を横にふるでしょう。耐えきった私の体が動くのかと聞かれたらきっと動けない。痛みを耐えるようにもがくし、体を固くして抑えようともすると思う。


 これは痛みを伴う抑制魔法具と思っておこう。ある一定量を過ぎるとその魔力を打ち払うように電流が流れる仕掛け。でも魔力を扱うだけなら痛みを伴わないんだけど………意味あるのかな?


 魔力は威力だから集められなきゃ使えないって考えならまあ、あながち間違ってないけど。ちょっとは使えるから意味がないような………あるような?


 さて、魔法でやるならばその一定量を越えなければ痛みは伴わない。窓の外はまだ真っ暗なので、夜のうちに把握しておかなければ作戦も建てらんないよね。


 体力がないんだ。あるものを工面していかないと私は死ぬ。よしっ!死の脱出ゲームに取りかかろうっ。涙は後回しだよ!


 恐怖を振り払うように指先に集中する。試した時はほんのちょっとで痛かった。そのほんのちょっとはどれくらいか。集めて―――知らなきゃ。私の魔力はまだ、いっぱいある。


「っ―――ふう………………4、5センチ。じゃない。センクターか、な?」


 さっきは大きさを意識しなかったから分からなかったけど、けっこういけるような気がした。


 4、5センクターとなれば初めての魔法講座で扱った魔力量だ。それなら威力もそこそこだし、当たっても………………多分、死なない。


 ただ、人に当てるとしても他の魔法はどうかな。複数の魔法文字はすでに知っている。お父様、あのぶっ厚い魔法の本、役にたったよ!!今なら私から抱きついてあげてもいいぐらい喜んでます!


 複数なら魔素があればじゅうぶんいける。問題は私がそこまで動けるかだけど、水球を顔面にでもぶつければ少しは時間が稼げるでしょう。まだ私は小柄だから大人の隙間を掻い潜れると思う。


 結界も張りたいけど………私に複数の維持は魔力によるものだから出来ない、よね。水球にギリギリで使ったとしてさらに結界のために魔力を使えば痛みで隙を作る。ならば、やはり水球一点で行こう。複数を出す方法は水球を出す時の魔法文字に『数多』を加えればできる。


 始めに魔力を一定量で集中。中に誘導するために魔素は出来るだけ集めて入ってきた瞬間に書き始めればもっと近づいてくるはず。それで扉と入ってきた人とのじゅうぶんな距離が出来たら集中砲火。このベッドと扉の距離なら書ける。もし警戒して近づいてこなければ狙い撃ちで痛い目にあってもらおう。うん。


 いけるかな………もちろん相手は抵抗する。水球を放った後、私の走る速度にかかってると思えば動悸が少しだけ激しくなった。いっそ魔力暴走で―――などを考えて打ち消していく。まだどうやったらそうなるか、分かっていないし。


 大丈夫。まだ大丈夫。ゲームオーバーじゃないから………もう少しだけ寝てよう。


 再度シュミレーションを重ねて眠りにつく頃には無意識に手首を撫でてた。そこにあったのは幼い頃から着けていた抑制魔法具の場所で………なにもない手首に自分の指を絡めてた。




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