ついに大人への第一歩
改訂いたしました。27.5.8
ついに―――ついに来ました認定式!この日のためだけにいったいどれだけのレッスンを積んだ事かっ。
来る日も来る日も読書とレッスンに明け暮れて板についたと思われる礼儀作法やマナー。それと知識が毎日のように私を締め上げるっ。
まあ、いいや。知りたいものもいっぱい知ったし。異世界を痛感したよ。
文字は全部ひらがな対応でアラビア?に近い。そしてここでなぜか漢字が登場。漢字は魔法陣によく使われている。
契約書にも漢字が多々、使われているようで契約書=魔法契約と思っておけばいい。儀式とか縁組みに使われているみたい。なんでたまーに日本の物が使われたいるのか謎だけど、私が分かりやすいからいい事にする!
でも、実際の魔法陣は面倒です。なぜかって?漢字が使用されてるのはわかるけど、なんか文が書いてあるのはわかるけど………………当て字じゃあ、ねえ?
読みずらいだけで面倒極まりないです。誰、魔法陣を考えたの。この本に載ってる水をだす魔法陣なんて単純に解読すると『水よ集まれ』だよ?平仮名のところ、適当に漢字を当てはめただけでしょ。読みづらい。中国語かっ。
あと、長さを表す言葉はセンチではなく、センクター。メートクター。語尾に『クター』がくっついてきている様子。因みにミリはない。ミリとかになると『ほんのちょっと』とか適応に答えてるみたい。適当だね。
どうしてもミリ単位で動かしたいのなら物で例えて応えなきゃわからないそうだ。そうそうそんな細かい作業なんてしないけどね。
動物も、植物も、食べ物も、なにやら言葉を少し弄っているだけでたいした事はない。言い方を少し変えればすむだけの話だから。リンゴがゴリン、みたいに。なんと単調な………覚えやすいんだか覚えにくいんだか………………
お金の種類も覚えた。この世界には鉄貨、銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨、白金貨、水晶貨と9つの硬貨で流通していて、それぞれ十、百、五百、千、五千、一万、十万、百万、一千万となっているらしい。
1円はないみたい。10から始まるからまあ覚えやすいかな。いつかお店に行ける日が来るのだろうか………あれ、謎だ。生きてる間に水晶貨を見れたら奇跡だね。
「クフィー?準備はいいか?」
「あちらでは決して粗相のないようにするのが淑女ですよ。挨拶は基本です」
「大丈夫です。お父様、お母様」
服装を何度も何度も見直さなくても、何もしてないから変わってないよ。お願いだから私を視界にいれる度に見直さないでくれるかな………少しの身動ぎもできない。
今朝からずっと私の服装やら髪型やら飾りやらを終始気にし出す両親に苦笑いを送る。
なんだかお遊戯のお披露目にかなり熱をあげに来る親だよね、これ。子どもより親が心配でたまりません、てやつ。
前世の親は母がちょっと騒いで父が冷静にそれを宥めていたんだけどな。未だにダリスさんやジェルエさんに確認とってて二人とも同じ台詞しか返していない。ここまで来るとすごいとしか言えない。このやり取り、何回目だっけ?
えーと………………うん。認定式は貴族としての心得はもちろん、我が子の人生が少しわかる日だ。一歩大人に近づくんだよ~。
属性や魔力量。魔法師に向いているのか、騎士に向いているのか。色々とこの日に最初の人生の別れ道が用意されるらしい。
私はそのまま魔法師で決定みたいだけどね。ただ、お父様にヴィグマンお爺ちゃん、それに魔法陣を少し訪ねたら食いついてきたレーバレンス様からもお声が掛かっているので成人までに決めなければならないらしい。
お父様も諦めていなければお爺ちゃんも諦めない。そこでうっかり教えちゃったレーバレンス様もさりげなくお誘いがかかるから引っ張りだこだよっ。
道が多いって言うのも、凄いね私。前世でありえないくらいモテモテだわあ。師弟フラグだがね!!
と、時間だ。もうお父様たちウザいから早く馬車に乗り込んでください。ダリスさん手伝ってー。はいはーい乗り込んでー。
無理矢理2人を押し込んでいざ出発。これからお城に言って、挨拶を聞いて、色々と確認してもらって、必要なところに話をちょっとだけ交わして帰るんだから大変なんだよ?
カタカタポコポコと聞きながら間に挟まれる私は悟られないようにため息をこぼす。この馬車、過去に乗った時はお尻が浮いて大変だったな、とかちょっと思い出に浸る場面だと思うんだが?
なんでこのせんまい中、2人が座ってまあ少しだけ間がてきるこの場所に私を入れるのかね?もう一度言うけど狭いんですが?
しかも両手をちゃっかり握られています。振りほどく?出来そうにありません。そんな無駄な体力はここで使うものではありませんっ。
仕方ないから結局このまま王城へ参りますけど、なにか?ダリスさんいいなー。外でお馬さんにはいよーだよ。私もそっちへ行きたいです。
そんなちょっとした苦痛を味わいながら門に着いてしまうと言う悲しいお知らせが。あれ、私の安寧はどこですか?やばい、何かと思いたいのに時間が流れていく。
ピシッと着こなしたらお父様はローブと違ってお貴族様の衣装で身なりを軽く整えて先に降りていった。お母様と私をエスコートするためだ。
次にお母様がゆっくりと上品にお父様の手を借りて降りる。さて、次は私です。
私も同じようにゆっくりと身を乗り出さない程度に前へでる。エスコートする手が出されないと出れないのだ。
お父様の手が伸びてきたところでその手をとる。下を見ずに、ゆっくりと馬車から顔を出せば全身鎧のマントを着た騎士が待ち構えていた。………………そのマント、隣の人と色が違うんだけど意味があったりする?
最初に見た騎士のマントは濃い灰色。つまりは赤とか青の原色だと思われる。けど一緒に待ち構えていた騎士のマントは白に近い。何かあったり、しないよね?
「グレストス・フォン・アーガスト伯爵。認定式にて、娘のクロムフィーアと妻を連れて参上いたしました」
目の前でお父様が会釈を………………様になってるっ。さすがイケメン!!
「妻のクレラリアと申します」
「娘のクロムフィーアです。本日、この良き日に行われる事、嬉しく思います」
「ご苦労。私が本日の案内を努めます、ローベルク・ストットです」
互いに会釈を交わしてローベルクと名乗った騎士に黙ってついていく私。マントは原色。一応、覚えておこう。
大人の歩調に会わせるのは正直きついけど、鳴り響く靴の音を必死に乱さないように動かす。
真ん中を堂々と突っ切ってひたすら、歩く。正直、回りなんて見ていられませんっ!
キョロキョロするよりはいいかも知れないけどこれはキツいよ!思わず顔が引きつりそうになったけどなんとか堪えて大きな扉まで足を運ぶ。筋肉痛になったら恨むよっ。
そこで騎士は私たちに一礼して扉を開け放った。
解放したその先は30ほどの椅子が中央に列を作って並べてあり、奥にも横長のテーブルが一つ置いてある。椅子の数は………5人分。
両脇は丸いテーブルがたぶん真っ白なテーブルクロスを敷いていくつも置かれていた。そのまま右に案内される。これから挨拶回り。とても面倒だよね。
その後、私は真ん中の並んでる席へ移動。親は両脇に置かれているテーブルのどこかにはけるのだ。面倒だね。
教えられた挨拶を何回をやって疲れた私は笑顔を崩さないように微笑むので必死でしかたない。お父様と別れるときなんか顔がいかにも惜しんでます、って顔に出ててすごく困ったものだ。お母様も何気に離れないので私の気苦労だけが増す。
ちょっと疲れたけど席について黙ったまま前を見据える―――つもりで回りを見学。
どうも、お偉いさんがかなり集まったみたいだね。挨拶してて思ったんだけど、ヴィグマンお爺ちゃんがローブを着てこの場にいる。
挨拶回りも聞いてると公爵とか、伯爵がすごく多かった。貴族だねー。お父様とお母様、頑張って。
そんな私の回りも貴族がいるんだけどねー。色とりどり………まあ、白の薄い濃いがいっぱいと濃いめの黒と薄めの黒と。清々しくも白黒ですがね。
なんか色がわかんなくてちょっと悔しくなってきちゃった。な、泣かないからねっ。
そんな私にも社交の場があるらしく、声をかけてくる女の子がいたり。これは何色なんだろうか?白に近いけど、何となく灰色が入る薄さ。水色の髪?あ、銀髪かな?目はパッチリの女の子。
瞳は濃いめの黒だから、銀髪なら群青を。水色なら緑を所望します!
「貴方の髪、とても綺麗ね。私、アトラナ・ロン・セチェフと言います。お名前を聞いても?」
ああ。確か、子爵の方ですか。東側の離れたところに所帯を持っていたと思う。なんだ、お父様の貴族社会本、役にたつじゃん。あと地図。
それより私、さっそくピンチ。彼女の色がわからないので誉め返しが出来ない!や、相手も色を言ってないし、普通の言葉でじゅうぶん、かな!?
「ありがとう。でも、貴方の髪も綺麗ですよ。私の名はクロムフィーア。今年はこれだけの人数なのかしら?アトラナは知っていますか?」
「ごめんなさい。私は知りませんわ。でも、少ない気はしますね」
そうだね。ほほほ。
なんて談笑の気分でもないから。他愛ない話で交わしに交わしまくってなんとか持ちこたえました!
無闇に関係を作る事じゃないかな、と思って家名をわざと名乗らなかったんだけど、どうやら相手は気づいていないみたい。嬉しそうに私と小さめな声でお喋りして笑っていた。
いやだこれ。疲れるね。アトラナちゃんは話し相手がいる事に嬉しいのか、どんどん話題を振ってきて正直、このまま時間を潰そうと思う。てかどんどん声も大きくなってきた?気のせいかな?
てか彼女はまるで心細かったけど仲間を見つけて安堵したかのように肩の力を抜き始めちゃったんだけど。
悪い子に見えないから、無下に出来ないと言うなんとジレンマ。いや、無下にしないよ?面倒な奴だったらこんな対応しません。アトラナちゃんだからするのです。
ついでに彼女からとれる情報を色々と探ろうじゃないか。これは実験だよ。私が社交で生きていけるか、見定めなきゃ。
さっそく他の子の事を聞いて見る。
「みなはどこの貴族の方なのでしょうか。私、こう言う場は苦手なので、教会の方で受けなかったわ」
「教会?でも確かあそこは………」
「はい。少し高いですがお金を払わなくてはなりません。平民と一緒にですが、教会はとても落ち着くのです」
へぇー!じゃあ、平民は別に受けるからこれだけの人数なのかな?で。他には?他にはないの?もうどんどん聞いちゃうね
「揃いましたでしょうか。皆様、お静かにお願いします」
私の意気込み返してくださいっ!せっかくの意気込みが貴方の速攻なでしゃばりで散りました。
本当にタイミングよすぎ。でも、終わるなら早くしてほしいかも。




