今を少しだけ知る
改訂いたしました。27.5.6
時が流れるのって、早いね。体も少しだけ大きくなった!けど脱幼女はまだまだみたいです。
どうやら私は春に生まれたらしく、すでに5歳になっていました!やったね5歳!
その間に私だってパワーアップしたんだよ~。今では教師なんかいりません状態。教師泣かせの天才児だそうです。まだ奉るか。
ふに落ちない名前だけど、まあいいや。おかげでこうして読書タイムなんてものが午前中に作られたんだから。
今の私の日程は大雑把に言っちゃうとこんな感じ。
午前中→読書。または自由時間。
午後から→マナーやダンス。
こんな感じで一日が終わる。もちろん、傍にニアキスが控えている。
ジェルエさんはお母様の侍女に戻ったんですって。侍女長だから当然だよね。乳母でもあるけど、私には必要がないから最近では滅多いに会えなくなった。
ニアキスは相変わらず私を試す。本来は間違ってはいけないと思わせるギリギリの境で試すからもう慣れっこ。
いったい何をやりたいのかわからないけど、危機感を持てるから良しとしている。いざって時の対応も、必要だからね。
それを踏まえて私に試すようにやってるのかは謎だけど。まあ、読書を楽しもうじゃないの。
今となってはお父様におねだりした甲斐があったと言うもの。
お父様に本が読みたいと言えば書斎の本を読んでいいと言うじゃない。しかも、どれでも好きなものを読んでいいとな。
太っ腹だね、お父様!
ウキウキと棚を見たら魔法関係が4割。歴史書が4割。残り2割が雑多だった。○○大図鑑!的な。あと手書きの何かがあった。そう―――何か。
ちらりと見てみればまるで誰かさんの日記のような………んんっ。
もちろん読んでいない。最初のページで『愛しの』から始まったあたり、すでに読む気はうせているんだよ。
なんとなく、ポエムっぽかったのは私の想像で止めておきたい。
それはどこかに放置しておいて、とりあえず、魔法書と歴史を交互に読みながら今ではすっかりのんびり知識を高めている。
本の厚みは私がうんざりするほど分厚い。だからいつもニアキスにもってもらってる。なぜかって?文字は言ってしまえばすべて平仮名のように、漢字で言葉の縮小がないからだよ。
だから文字数のおかげで紙が増えていったんだろうね。そりゃ分厚くなる。
でも読みがいがあるんです!それに魔法も面白いけど歴史もなかなか面白い!異世界さすがだね!
とくに、この国に関してけっこう細かくかいてある本があった。
この世界―――『ルディアリア』は一千年の歴史をほこり、神から始まって人類が生まれたとか。ちょっと地球を考えたのは………まあ、ファンタジーだからね。そんな事もあるよ。
そこから誰がどのように国を作り上げ、内政を作ったり戦争したりして国を取っ替え引っ替え。お金の流通に食物、物質に剣と魔法が広がって。今がある。
そして私がいる場所。それは王都の貴族街。城があるものね。王都だろうとは思ってたよ。王都サファリナだってさ。
今はちょっと複雑な感じだね。なんでも12年ぐらい前かな?その時、王都を狙って隣の国が捨て身で戦争をおっ始めたって。理由は残念ながら書き留められてなかったけど、その時の様子から王子が狙われていたのだと記されている。
今ではとても表に出られるほど丈夫ではなく、それほどの深手を負っているらしい。内省も出来ぬほどの傷を負った王子は王位継承権を運よく身籠っていたその息子に委ねたのだとか。
現王はすでにいつ崩御してもおかしくない年齢で、この王位継承権を持つ小さな王子に託されている状態。大変だねえ。今12歳ぐらいで聡明な方なら回りが支えればいけると思うけど。本ではそこまで詳しく乗っていないので情報はここまで。すごく知りたいけど王族絡みはネタだけでじゅうぶんだと思っている私にはこれだけでいい。それより魔法。
属性は全部で6種類の王道。火、水、風、土、光、闇でこの世界に存在する。それとなんと、魔法と魔術は違うって。魔法が水とか、火とか魔法陣と詠唱を使って出したりする事を指して、魔術が道具に魔法を付与させる事を言うんだってさ。
この国の魔法師がお父様。魔術師がレーバレンス様が筆頭に国に貢献しているらしい。王宮筆頭だって。何度聞いてもビックリだよ。
この世界の時間は嬉しい事に24時間。3時間ごとに町の鐘が鳴るらしい。時計塔の中にある砂時計が時計の本体。
レーバレンス様が管理しているんだって!昔の人はなぜ時計を作らなかったんだろ。てか鐘の音もあんまり聞こえないんだけど?
魔法も面白くてね。魔法陣の見方とか、詠唱はなぜ必要なのか書いてあった。面倒そうだなー、なんて思ったのは内緒にしとかなきゃね。だってここ魔法師筆頭様のお屋敷で私はその娘なのですから。
腕に嵌められている腕輪を見ながら苦笑い。淡くキラキラと光りながらピッタリと腕輪にはめているけどもうそろそろ寿命らしい。
この腕輪は抑制魔法具だけど、抑える魔力を外に放出させるのではなく、自分で吸収するらしい。
この埋め込まれた濃いめの宝石がその役割を担っている。
私も抑えるようにしていたのだけどね。やっぱり魔力を暴走させていた時がけっこうあったみたい。前にレーバレンス様にあった時にあの無表情が目を見開いて唸ってた。早いって。
だから私が5歳となった今、すぐにでも魔法の基礎ぐらいは覚えるようにと、お達しが来た。魔法具では荷が重すぎるみたいだね。
そして今日のレッスンを潰してお城に行かなきゃならないのか、と憂鬱。本の中身が全然頭に入ってこない。
仕方ないのであと少しの時間は庭に出る事にした。今日はお兄様がいて庭で素振りをしているのだ。見るだけなら構わないと許可を貰ってるから、遠慮なく見ることにしよう。
庭師のボテガイラが整えてくれる花に小さく感嘆をあげて先に突き進む。ここの花は綺麗なんだよ。本当は立ち止まって愛でたい。
でも………色がわからないから迂闊な事も喋れないし、白と黒の明暗で何を楽しめと言うのか。色がほしくてたまらなくなる。
そうしたら腕輪に魔力が吸われていく感覚が来るでしょ?つまりは苛立ちで魔力が暴走し始めようとしていると言う事。
全くもって腹ただしい。私は白と黒で色の深みを考えなきゃならないのかな?先が長くて遠すぎるよ。それなら魔力が宿っているキラキラの花を見てるから普通のは遠慮したい。余計な苛立ちは捨てておかなきゃね。
悶々と考えてたらちょっと鈍い音がだんだんと近づいてきた。お兄様だ。
お兄様もここ2年で少しずつ筋肉が付いてきたみたい。赤ん坊の頃に触った時の筋肉より断然、今の筋肉は堅くなってて驚いたもの。
邪魔にならないように近づけば、私に気づいたお兄様が素振りをやめて、横にいたお兄様の侍女がタオルのような布とコップ1杯の水を差し出してる。
一口ほど飲んでこっちに来てくれた。お兄様は忙しくても私の時間を作ってくれるから、つい甘えてしまう。最高のお兄様だよ。
「珍しいね。今ぐらいなら読書をしてるんじゃなかったか?」
「息ぬきです。集中がかけてしまって。きっとこのあとお父さまにあうから………ゆううつで」
私とお兄様の間ではこんな軽口は日常。ここにいるものは気に止めない。
私もずいぶんと口達者になったものだね。
「ああ………頑張るんだよ。クフィーが一言で打ちのめせば静かになるんだ。大嫌いの言葉をチラつかせばまあ、普通より遥かに楽になるだろう」
「心えてます」
私、この2年でお父様の対策にかなり鍛えられましたから。
うるさくなれば「そんなお父様、好きではありません」とか一言放てば最近は静かになるんだよね。扱いやすくて何よりです。
お兄様もこの効果を教えたらすごくいい笑顔で私の頭を撫でながら誉めてくれたもの。これは素敵な言葉だよね。
失敗したら叫びながら突っかかってくるから言葉と状況は選ばなきゃならないけど。
「お兄さまは、午後からどうなさるのですか?」
「僕はダリスと少し、政務を教えて貰いながら社交だな」
そっか。それはまた面倒そうだね。
私たち伯爵家となれば夜会は必須。しかもお兄様の将来は王に仕える近衛を目指している。礼儀作法はどこでも必要だよね。
社交は苦手だな、と言えばお兄様も苦手みたいで二人して笑いあった。慣れないことはしたくないね。
それからお兄様はまた素振りを始めたのでちょっと見てみる事に。大丈夫。邪魔はしないようにする。はず。
だってうっかり言っちゃいそうなんだもの。お兄様、剣を振るたびに刃がキラキラと光るんです。それって、振ったら魔力が刃に移動してるんですよね?つまり付与を着けている。
この国は魔法剣と言うものがあるみたいで、近衛になる条件の一つ。と、本に書いてあった。書斎の本はなんでもあるから助かるよ。
見ていればずっと振るたびに魔力が飛んでいくのか、キラキラ光ってやはり面白い。どうしてそうなっているのか、聞いてみようかな?でも邪魔になるか。
あれ?お兄様、もう休憩ですか?じゃあ聞こう。
「お兄さま、お昼にいかれるのですか?」
「いや………情けない話、ここ最近は剣を振っていると余計に疲れるんだ。一応はみなについていってるんだけどな。どうも疲労感が昔より酷い」
お兄様はだいたいの事を私に包み隠さず離してくれる。いいのかな?
「走りこみは、してるんですか?本に、かいてありましたよ?」
「前から取り入れて最近では素振りの回数が増えたんだけどな。微々たる成果だ」
「ではお兄さま………むいしきにしていたのですね」
「ん?」
多分、その疲れは魔力の使いすぎからなるんだろうなぁ。無意識にやってお兄様は体力の問題だと思ってたみたい。教えてあげたいけど………
ちらりと隣のニアキスを見れば鋭い眼光で私を見ていた。頭はすでに私を見ている。侍女にしては、近づきすぎるんだよね。
前世で色々と読んだけど、一つの例として侍女は仕える主からある程度は離れて傍にいなくてはならない。それと、目線や顔はどんな事があろうと、下だ。貴族と視線を合わせてはならない。
その侍女が例え爵位持ちであろうと、今は主に仕える侍女なのだから。
それなのに、ニアキスはなぜか私のすぐ傍。下手したら隣に肩を並べている。図々しい態度となっている。
身内同士だからこんな距離?ううん。お兄様の侍女は駆け出せる距離だ。やっぱりおかしい。
お兄様も私の視線に気づいたのか、自分の侍女にもう少し下がるように言った。ならば私も習うように下がらせる。
「ありがとう、お兄さま。やはり侍女には言ったほうがいいのですか?」
「言った方がいい。クフィーはまだ5歳でも、主に仕えているのなら指摘しても構わないよ」
「でも、うまくかわすのです。………お兄さまは彼女をしってますか?初めてであったとき、まだ半年しかはたらいてないって、ジェルエが言ってました」
「クフィーが3歳で半年しか働いていないのに侍女?それだけ彼女が優秀………なわけないな。おかしすぎる。しかし父上が見過ごすとは思えないな。僕の時でさえも優秀な人材を探すのに手を抜かなかった。それに………僕は彼女を今初めて見た気がする」
それはなんと言うか。2年近くもいて逢わないのもおかしいよね。そう言えば前にジェルエさんとダリスさんもおかしい事いってた気がする。
でもそうだよねー。おかしいとは私も思ってる事なんだよ。ほら、お父様は親馬鹿でしょう?でもニアキスはあからさますぎる事が多々ある。先程みたいに。気づかないものなのかな?
「こんど、変なことしたらお父さまにお願いしてみます」
「そうするといい。それが一番速い。だがその前に自分で言っておく事。何もしない状態は逆手を取られる。………それはそうとさっきの事なんだが、クフィーの意見を聞きたい。些細な事でもいいんだ。何かあるのだろう?」
「はい。お兄さまは私がまりょくが見えると、知ってますよね?」
やはりニアキスが気になるので声を少し落としておく。
「家であれだけ騒げば嫌でも分かるよ。今は箝口令を出したから誰も口にはしないけど。それが?」
「じつはお兄さま、ぼうを振るたびに光ってるんです。見たことないけど、本でよんだまほうけんみたいでした。ふるたびにぼうがキラキラ光ってます。まほうは使いつづけるとつかれる、と書いてあったので、もしかしたらお兄さまは、まりょくの使いすぎでつかれたのでは、と」
そう囁くと、お兄様は愕然と驚いて―――次にガックリと項垂れた。なにやら体内に収まってるはずの魔力が本当に少なくなってるって。
本当に無意識で魔力を使ってたんだね。ご愁傷さまな。
通りで、と嘆くお兄様に私はエールを送るしかできない。やり方がまだわからないので。でも体力作りは大事だよ?続けてね。
お父様に聞いておきます。そう言えば頼んだと短くお願いされたので笑って頷いた。最近は帰りが遅いから逢えないもんね。
そしてちょうどお昼となるタイミングの良さ!今日はお兄様と食べよう。
着替えてくると言われたから私は先に食堂に行きますかね。午後からお父様と会うなんて、憂鬱だけど。晴れ晴れとしたお兄様の顔を見たら吹っ飛びましたとも!
久しぶりに合う人たちがいるのだから、それを楽しみにしようかな!




