初!お出掛けのお茶会?
改訂いたしました。27.5.6
暇です。とてつもなく暇、です。ちょっとぷらぷらと足を揺らしながら私はとある椅子で待ちぼうけです。
事の始まりはお母様の一言で決まった。
「出掛けましょう」
「では、準備をいたします」
「クフィーも一緒よ」
「旦那さまの許可を聞いて参ります」
「わたくしが取りました。ユリユア様の所に行きますからリディも呼びなさい」
え、なになに?どこに行くって?ユリユア様って誰ですか?
「かしこまりました」
「お昼はあちらで食します。帰りは夕方です」
てきぱきと指示をだすお母様に呆気にとられて呆然とその姿を見つめる私。
何がなんだか分からないけどとりあえず、かしましい3人でお出掛けと言うことが決まりましたよ。初のお出掛け!
だからあんなに名残惜しくわいわい騒いでたんだね。朝っぱらからなんで離れないんだろうと思ってたらそんな理由か!
それでもお父様を見送ってのお告げで私はただ受け止めるしかない。突然すぎて対処が出来ないだけなんだけどね。
しかし、4歳と半年はもう経ったかな?と言う私に準備なんかそんなにあるわけがなく、身なりを整えて挨拶がちゃんと出来るか確認して終わってしまった。
私が準備できたらさあ行きましょう、て言うわけにも行かずただひたすら立派なサロンで待つ私。足をぷらぷらさせて、ひたすら待つ。
話し相手?ニアキスはやっぱりどっかに行ったので私一人ですよ。もうなんなんだか。いないと思った方がよっぽど楽だったりします。
「まあああああ!?」
あ、お姉様が珍しく大声で叫んでる。きっとお母様の思い付きでビックリしたんだろうね。叫ぶほどか。お姉様なら準備が忙しくて泣き叫んでるのかな?
ドタバタは聞こえないけど、なんとなくバタバタしてる感じでダリスさんやジェルエさんたちが動き回っている。
私はそれをサロンと言う一つの大きなお部屋で待機。足をぷらぷら。首をきょろきょろ。さて、何をすればいいのだろうか。
準備が出来次第、すぐにでも馬車に乗り込んでお出掛けらしいので中途半端な事はしたくない。
かと言ってわざわざ2階まで上ってヌイグルミを取ってくるのもアホらしい。ふむ。本当にどうしたものか。遊ぶものがあればそれとなく時間を潰せるのになー。
娯楽が全くない。そうだよ。この世界は娯楽アイテムがないに等しい!なにか遊ぶものがないかとこっそりメイドさんに聞いたけど慌ただしさもあって短く「ありません」と言われちゃったし。
まだ小さな体で何か作れるわけがない。じゃどうするの?と振り出しに戻って結局は足をぷらぷら。首をきょろきょろ。うん。見飽きた。
しかたないので向かう先のユリユア様について考えてみる。そもそも誰なんだろう。お母様の知人?はたまたお父様か。
はい、考えるの終了しました。駄目じゃん。いったいどんな人なんだろう。そうやって夢を膨らます事しか出来ない?ふんぬぅ。
「クロムフィーア様、お出掛けの準備が整いました。こちらへ」
「はい」
やっと?やっとなの?しばらく虚を見つめていた私には短くてもえらく待たされた気がしてならないのだけど。
けど何も言えないので呼ばれたダリスさんの後を追う。玄関ではすでにお母様とお姉様が並んでいました。お母様はシンプルで白系統(淡い色)ドレスで穏やかさマックス。お姉様は逆に灰系統(原色系)でリボンなどの装飾で華やかさマックス。
この間に私が入るとなるとかなり浮いてると思うのは不思議ではない、はず。私もシンプルに腰に大きなリボンをあつらえたヤツだ。きっと可愛い、よね?実は着けてる頭のリボンとお揃いにしてるんだよ?可愛いよね?
いや、ここで見比べちゃダメなんだだって。空しくなるのは私だよ。
未だに鏡でまともに姿を見たのが一度だけ。お姉様と遊んだ時。なぜかまたリボンを貰ったのだけど、その時に見せてくれた鏡でようやく自分の顔を拝んだ。
まあ、可愛い系だったよ。ちょっと自分だと評価できないのが残念だね!第三者から見れないのが本当に辛い!
「やはりクフィーには青が似合うわ。お母様もそう思いません?」
「ええ、よく似合っているわ。淡い翡翠に並ぶ青がとても印象をつけますね」
そうか。頭の後ろに付けているんだけど自分じゃあ見れないから分からないよ!
でも可愛いって誉められたから笑うよ。にへら。そうすれば大満足のお姉様に微笑み返しのお母様。まだまだ誉め言葉は続くようで、その場で少し立ち話をしてしまったのはお母様のせいだよ。
ジェルエさんに促されるまで私の笑みがどうとかリボンがどうとか、髪型は今度こうしようああしよう。次から次へとよく出てくるよね!
それはもちろん馬車の中でも続けるんだ!マジかっ。私はそんな事よりユリユア様の事を教えて欲しいんだけどね!
しかし、口を挟もうとすればなんと言うタイミングか、お姉様が相づちを打つ声に遮られて延々とトークショー………
クロムフィーアは喋るのを止めた。
頭の隅で一瞬だけそんな事を思ったのきっとお話についていけないからだ。この2人で話すと会話は全く止まらないんだもん。そっとしておいてあげようじゃないか。
空気を読む4歳児ってなんだよう。違うか。話についていけないだけだもんね。
この二人を見ていると似た者同士。お姉様だけを見てるとしっかりお父様のDNAを受け継いでるな、って事がわかる。いや、どっちもか。
何か言われたら笑ってやり過ごす私は一緒についていく意味があるのかね?まさかお父様と一緒で、お家自慢ならぬ娘自慢ですか?
まさかのお母様までやられると私の拠り所が狭まるんですが。もう狭い気もしなくもないけど。
私の最初に描いていたお母様はどこへ行ったの?隣でうふふ。ほほほ。と笑い会う2人はまだまだ止まらない。大したものだよね!
ずっとそれを眺める私の身にもなってほしいもんだ。こんな気持ちを回避するために混ざった方がいいって言う人もいるけど、私は出来ない人なのでひたすら待つよ。
この2人にかかれば迂闊な発言はすべてネタになると言う事はもうわかってるから!!
じゃっかん心が折れそうになってようやくとある屋敷に着いた頃には既にぐったり状態。それでも笑顔の私はいつの間にかとっても素晴らしい忍耐が備わっていたらしいね!倒れなかったよ!
自分に称賛を送りたい気分だ!
「よく来た。遅かったじゃないか」
「ごめんなさいね。お姉様、今日は娘たちも連れてきたの」
「ふふ。クレラリアの事だから娘の可愛さに身動きが取れなかったのだろう?」
「当たり前じゃない」
当たり前なんだ。
すぐに突っ込みを入れて頭を抱えたくなったよ。まさかそんな事を真っ正面からどうどうと肯定するお母様がいると思わなかった!
馬車から降りて早々に話しかけてくるご婦人にかなり親しげに話すお母様。
わざわざ出迎えてくれた方は、一目で言えば女性からしてすごく背が高い。騎士の180はいってるんじゃないかな?て思わせるほどピン!と立っていた。
それでもドレスは全体的にスッキリとした形でその高さを殺さず、キリッとした夫人…婦人?の雰囲気を馴染ませてる。
黒に近い色はどことなくグレーのその色はきっと紺色のようにたまに青を見せるはず。それをしっかりと頂に一つ、団子に纏め、しっかりこちらを捉える瞳はグレー色はそれもまた青に近い色だと思わせる。
そんな風に感じるのはやっぱり私の願望かな。とても寒色が似合う婦人?夫人?もうどっち!?―――で。外は冷たくけど中は熱いぐらいの人だと感じた。
そのまま軽く挨拶を交わすとまるで男性のように男らしい表現と行動でテラスに連れていってくれる。けど、優雅は忘れさせないその態度がすごく人を惹き付けてた。
なんかすごい人がでたなー。私、必要ないんじゃない?
促されるままみんなとついてくるけど、さっきまでお母様とお話ししていたお姉様はなぜか堅くなってぎこちない動きに変化してるし。
でも眼はキラキラしてるんだよね。おかしいな。魔力とはまた違うキラキラが見えるなんて。私の眼球がおかしな事になってるっ。
そのままテラスまで来て進められた椅子に座る私たち。でもなぜでしょうね?どうして私はユリユア様に持ち上げられてそのまま膝の上なんでしょうか?意味がわかんないよ?
思わず顔に出してキョトンとしていれば口元を少しだけ持ち上げて笑うユリユア様。音をつけるならニヤリ。男らしく見えるのに、なぜ女性らしくも見えるのかが謎だよ。
対称に座ってるお姉様が羨ましそうにガン見してるのは私の思考がもはやおかしいのか。誰か、教えてください。
「本当に魔力が多いな。体は軽いのに、面白い」
「もう。まだ4歳ですよ?軽いのは当然です」
「リアディリアも会った時はこれぐらいだったな。綺麗になったものだ」
「ユリユア様にそう言っていただいて私、とても嬉しいです」
「私の言葉一つで喜んでもらうのも、悪くないな」
今度は華の乙女よろしくとお姉様が照れだした。やばい。眼科に行った方がいいかもしれない。いつものお澄ましお姉様どこへいったの?
ユリユア様と話しているとお姉様がどんどん恥じらいを持つ乙女になっていくっ。しかもこのまま会話が続くんだ!?
それはそうと………………ユリユア様って、おっとこ前だね!




