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私たちの進路先

 まずは魔法院へ、と言う事でいつも通りトールお兄様にお見送りされて別れました。


 軽く頭を撫でて「後でね」て。後でって事は今日はトールお兄様が迎えに来て一緒に帰るって事かな?


 実はでもないけどお父様よりトールお兄様の方が安心するので私にとっては嬉しい事である。


 でもどうしよう。今さらだけどどうやってヴィグマンお爺ちゃんに会えばいいんだろう。


 会いたいなーと思った時に限って会う方法が分からないって……ダメダメじゃん、私。


 ちょっとだけ愚痴りたいなー、と思っているんだけど。ヴィグマンお爺ちゃんにほ色々とお世話になったからそれも含めて色々とお話をしたいのに。


 お父様に聞けば早そうだけど面倒そうなんだよね。


 まあ、気を取り直して……すっかり忘れていたアブルを抱き上げていざ行かん!


 最近のアブルってばなんか気配を消すのが上手いんだか私の忘れっぽさが発動しているだけなのか抱っこしていないと忘れちゃうんだよね。よいしょ。


 で。いつも通り玄関から入っていつも通り個別で使わせてもらっている部屋に入る。


 中にはすでにハルディアスがいて……あれ?他のみんなは?


「おはようございます、ハルディアス」


「……ふん」


 あんまり会話をしていなかったからかな?鼻で返事をされてしまった。なんか悲しい。


「みなさんは?」


「知らねー」


「ケヤンは?」


「知らねー」


 同じ男なら寮だって一緒でしょ?なんで知らないの?


 と聞いてみるけど……やっぱり知るかよ、で終わってしまった。


 あれ?私とハルディアスってこんな仲が悪かったっけ?レーバレンス様がいないと駄目なの?


「ハルディアスは魔術師になるんですか?」


「他に選択肢がないからそうだろ」


 なんか不貞腐れています、って顔もだけど体全体からにじみ出るってなんかすごいね。


 でもなんでそんなに不機嫌なわけ?


「怒っていますか?」


「別に」


「そうですか?」


「ああ」


 なんだろう。言われてみれば怒っていないような?よく見たらピリピリもしていないしイライラもしていないね。


 つまりあれか。ぶっきらぼうってヤツかな?うん。そうに違いない!


 なら別にまだ話しててもいいよね?エリーたちがまだ来ていないだけなんだし。


 今日って実は早く来すぎたのかな?時計がないって不便だよねー。


「エリーとケヤンはどこに行くと思いますか?」


「さあな。お前に着いて行くんじゃないのか?」


「なぜ?」


「友達だからだろ?」


「友達だからって同じ所に集まるのはおかしいと思いますよ?」


「そうか?お前たちはみんな一緒のところを選びそうだけどな」


 んー?


「ジジルは私と一緒ですがエリーとケヤンはわかりませんよ?」


「ケヤンは俺と真逆だ。魔法師として道を進むだろ」


 あ、ちょっと目線が悲しげ。さすがに瞳に影がかかったとかハルディアスは全体的に黒すぎてよく分からないけどなんだか不貞腐れてるな、と言うのは分かる。


 もしかして……寂しかったり?


「ケヤン自身が選ぶ事ですよ。魔法師から勧誘もあるかもしれませんが、決めるのはケヤンです。魔術師になると言うかも知れませんよ?」


「でもあいつ、魔術師に向いてない」


「どうしてですか?」


「集中力がないんだよ。どこかぽやっとしている。あれじゃあ魔石に書き込むことも出来ない」


「まだ一年ありますし、集中力が駄目ならどこも無理ではりませんか」


「判断力もない。あいつ、一人で決められない。いっつも俺に聞いてくる」


「他人の意見を聞いて何が悪いのですか?まあ、それ全部を鵜呑みにしていたら駄目ですけど、人の意見を聞ける人ってすごいと思いますよ?」


「なんで」


「聞いた数だけの情報を手に入れれるもの。それに悩みを素直に相談できるなんてケヤンは不安だから聞いてるのでしょ?」


「でも、結局は俺と同じ答えにする。ケヤンは考えていない。あいつは聞いたあと必ずへらへらと笑って同じものを選ぶんだよ」


 んー?ちょっとつり目になったけどそれほど怒っていないよね?何が言いたいの?


 もしかしてやっぱり寂しい?否定してるけど怒ってる訳でもなく軽蔑――は、ちょっとあるけど突き放す事はしていないみたいだし。


 ハルディアスってツンツンしている態度が多いからなんとも言えないんだけどね。


 むしろ接点がレーバレンス様ぐらいしかないからね。これはもう少し探りをいれるべきか……よくある愛情の裏返しに近い気もするんだけど。


 でも下手するとハルディアスの方がキレちゃいそうだよね。ここはズバリで聞いちゃえ!


「離れるのが嫌なのですか?」


「違っ……ケ、ケヤンの奴が……」


 いや、そんな反応されたらだいたい分かったよ。天の邪鬼さんめ。


 もう一度ケヤンが?と言うところで本人ご登場!のおかげでハルディアスが黙っちゃった。


 タイミングよすぎない?と言いたい。やっぱりおどおどしながら挨拶。おはようございます。


 で――私を素通りしてハルディアスにはにかみながら挨拶。ハルディアスはふんっと鼻で返事をする。


 それがいつもの光景なのかケヤンはそのまま隣に座ってハルディアスをちらりと見ながらそわそわと待つ。


 なんだか……初々しい恋人にしか見えないんだけど。


「ケヤンは聞いてますか?」


「え、何をですか?」


「来年の進路先です」


 首を傾げられてしまった。知らないんだ?なんで?ジジルは知っているだろうし、ハルディアスは当然だし……


 エリーとケヤンだけが知らない、知らされていないのかな?だとすると私が教えるのもどうだろう。


 ――誤魔化しちゃえ。


「進路をどうするのか、知りたかっただけなんです。ケヤンも聞いていいですか?」


「僕、ですか?えっと……」


 ちらりとハルディアスを見る。そっと私を見る。ケヤンがちょっと可愛いぞ。


 ハルディアスはふぃっと私たちと視線を合わせないように壁を見る。私はケヤンの言葉を待つんだけど……


 もじもじ。ちらり。もじもじ。あせあせ。


 ケヤンがなかなか喋らない。男の子でしょ。頑張りなよ、と心の中で応援して辛抱強く待つ。


 口をぽかっと開けて喋る?と思えばきゅっと口が閉じる。じれったいね。


 で、そんな事を数分もしていたらエリーとジジルが元気よく登場!その後ろにはポメアもいてどことなくしょんぼりしている。


 たぶん置いていっちゃったからかな。お父様が私を抱えて強行しちゃったから侍女のポメアじゃあついてこれなかったんだよね。馬車が二つあってよかったと常々思うよ。


 で、挨拶を交わしたエリーとジジルがケヤンのそわそわ雰囲気に気づいて私にどうしたと聞いてくる。


 不思議そうに声をかけてくれるんどけどね。何でだろう。下手したら私が悪者になる気がする。


 時間はまだ大丈夫かな?いまいち体感で時刻が分からないものだからポメアに聞いてみると大丈夫なんだって。


 やっぱり私ってば早く来すぎたんじゃん。お父様どれだけ急ぎたかったんだろう。


「二人は進路、どうするか決まりましたか?ケヤンにも聞いていたんです」


「私は魔法師になるよ。なんか新しい部署の魔法師に勧誘されたからそこに行く予定」


「え、なにそれ?」


「ジジルには話が行っていたんですね」


「クフィーちゃんもでしょ?よろしくね!」


 元気よく挨拶。幼女ならこれくらいの元気が必要だよね、なんて思いながらエリーが焦ったように説明を求めてきた。


 まあ、ここでバレたんだから誰が説明しても変わんないでしょ。後で魔法師が説明してくれると思う有無を伝えて簡単に話した。


 新しくできた魔法騎士隊を知ってる?よかった知ってたんだね。実は新たに“ 魔法武装隊 ”と言う新しい部隊もできるんですよ。


 新しい部署を作るから魔力の多い私や光属性を持つジジルみたいな若魔法師を早めに集めよう(引き抜こう)としているんだって。



(どうせ他の希望する魔法師もいるんだし出鱈目を言っても通るよね。理由としては筋が通ると思うし。引き抜きにしか聞こえないしグラムディア様ならやりそう)



「へえー。魔法武装隊……魔法師が戦うのかな?」


「私が聞いた話では魔法師の体力作りみたいなもんだと聞いてますよ。詳しくは説明にきた魔法師様に聞いてくださいね。私はほんの少ししか聞いていませんから」


 余計な事を言って自分の首を絞めたくありません。うん。後は丸投げでどーにかなーあれ!


「と、言うことでケヤンとエリーはどうなのかな、と」


「ハルディアスは?」


「……魔術師」


 不貞腐れていますねー。因みにケヤンを見てみると眉が下がって残念がっている。


 んー?まさかハルディアスの追っかけの如く一緒にいたかったのかな?どうなんだろう。


 あとエリーも気になるんだよね。以前、私の思い込みでエリーこそ追っかけのためにここに来たと思っていたからね。どうするのか気になる。


 エリーって商家の娘だからかしっかりしているんだよね。女の子って何かを吹っ切れると結構我が道を一人でも行けるし。


 まあ、一人で進みすぎて甘える、頼る事が出来なくなっちゃってそのまま年を取ると本当の独りになっちゃうけどね。


「そっか……うーん、実は悩んでいてね。私、一応は商家の娘じゃない?商売がしたいの。売り子が特に。だから魔術師になって魔法具を、商売をしたいって言うか」


 やっぱり強かになってた。いつの間に……あれ、まだ八歳だよね?ずいぶんと考えていますね?


「家に帰った時に相談したんだ。どうする?って聞かれたからこのまま学ぶよ、って。じゃあ何になるの?って言われて将来的には売り子したいって言ったら魔法師のままじゃ無理なんじゃない?って言われて……じゃあ自分で作った魔法具を売る!って話になったんだよね」


「なるほど」


「エリーちゃん、ちゃんと考えてるんだねー。魔法具、難しそうだけど」


「本当はみんなと一緒に楽しみたいんだけどね。今聞いてクフィーの聞いてすっきりした!私は魔術師になるよ」


 おお!まさかの決意表明。拳をぐっと握ってエリーはやる気に満ちているね!


 てか魔術師になってから商売なんて出来るの?お父様に聞いてみよう。


 それよりエリーが少し見ないうちに変わっているよ。お互い頑張ろうね、って言えば当たり前でしょ!なんて返された。


 だから勉強を手伝って!と言われたので教えますとも!!やり過ぎないようにするけど漢字ドリルくらいならいいよね?復習って大事だし!


 紙がもったいないなら地面で練習すればいいよね!ここのグランドっぽいところやたらと広いし!よし、まずはよく見る漢字から……いや、それとも画数の少ないやつから……いや、でも文でまとめて覚えた方がいいのかな。一つの漢字を細かく説明したらそれこそ疑われそうだし。むむむ。


「みんな……決めてたんだ……」


 あ。ケヤンを忘れていたよ。ごめんごめん。


 でもケヤンはどことなくしょんぼり顔。眉尻が下がっているからさらに悲しそうに見える。


 個人的にはその眉尻はどうやって下がっているのか聞きたいんだけどね。片眉をあげることすら出来ないんだけど。因みに耳も動かせません。たぶんやり方を聞いても出来ないと思うけど。


 さて、ケヤンはしょんぼり。隣のハルディアスはそっぽをむいたまま。むっすり。


 あえて言わないけどこの二人って友達なんだよね?いや、つきあい方って人それぞれだけどさ。


「ケヤンくんは?もう決めた?」


「えっと、僕……」


 ……………………………はい、沈黙。うーん。気弱だなあ。


 ジジルがん?て顔をして様子を窺っている。ケヤンはキョロキョロ。ハルディアスに助けを求めるような視線を送って……もじもじ。


 うーん。少年でよかったね。もう少し大人になっていたらきっと回りがイラッとしていたかもしれない。まるで女の子で黙っちゃうんだもん。おーい?って思っちゃうわ。


 で、なんとか待って見るとようやく決意したらしいケヤン。ぎゅっと拳を握ってなぜか私を見る。なぜ。


 大きく息を吸ってえ――


「僕、魔法師になりたいんだっ!」


「……え?」


 以外にもハルディアスが驚いた。




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