相談しましょ。そうしましょ。
修正いたしました。28.12.31
さてさて。
帰って来ました我が家。すぐ帰ってきたからどこか外装や内装などが代わり映えしたとかはないね。当たり前だって。
そういえば何かが変わったと言えばポメアのお仕事が色々と増えた事だろうかね?
ポメアは私のお世話に加えてアーガスト家の侍女。ついには魔法師として覚えることが山ほどあるらしくパタパタと姿を見せたり消したり。
今だってお父様に抱えられた私たちを出迎えてお父様がこのまま書斎にこもるなんて言い残し歩き出したらポメアは深くお辞儀をしたまま、ある程度離れたと思ったら素早くどこかへ行ってしまった。
ちょっと寂しい。
最近ノルアもつれない。トールお兄様の頭の上がお気に入りで見つけた時には大抵なぜかそこにいる。本当に、なぜ。ねえ、なぜなの?何回でも聞きたい。なぜなの!?
警戒心が強い動物じゃなかったっけ?おっかしいなーと思いながらボテボテと歩いてきたアブルを連れて書斎についた。
トールお兄様から止められて久しぶりに入ったここもやはり代わり映えなんかするわけがない。
ソファーによいしょとそのままお父様が座って私は――おやあ?膝の上じゃなくて隣とな。……何かあるの?そう言えばお父様も何か私に話したいことがあると言っていたんだっけ。
そのわりには私の膝に乗せないようにアブルを下ろしたり抱き上げて逃げられて……最終的には私の足元で丸まってもらう事で落ち着いたようです。
そんな時ポメア、入場!ティーカップとポットを手にようやく私も理解しました。お茶の準備だったんだね!ささっと淹れ終わったらあの綺麗なお辞儀と共に行ってしまったので……一口飲んで早く沈黙を破りたいと思います!
「お父様からお話になりますか?」
「いや……いや、クフィーからでいいよ」
なんか歯切れが悪い。じぃー、と見つめてみるけど苦笑いを浮かべながら私の頭を優しく撫でる。なんだろう?
いくら見つめても騒ぎ出さないお父様に違和感を持ちながら私は話し出す。色々と気になるけどまずは疑問を一つ一つ解決していこうっと。
「今後についてなのですが」
「……アーグラム王子との再婚約を怒っているのかい?」
ぶっちゃけて言うとそれはどうでもいい。結果的に考えて無理だと思うから。特に魔病と感情。話は盛り返さないよ?
「違います。私の将来を関して、今後です」
「それは……どういう意味かな?」
お父様は幸いにして私が転生している事を知っている。と言うか知られてしまっている。なので一人で相談するより何かいい知恵が絞れると思う!
と言うことで説明します。
今年の残り一年、若魔法師としてまだまだ習うことの多い私。今の状態は私とエリーとジジル、ケヤン、ハルディアス、ポメアも入れて6人で個別授業。
ひたすら教本を暗記したり雑学について学んだり魔力操作をマスターするとかそんな感じしかしていない。
しかし私が懸念しているのはそれらを身に付けたと仮定した翌年。魔法師として進路が決まってしまうと言う事。
みんなそれぞれの行きたい所とかあるからバラバラになるのは分かっているよ。高校の進学とか大学の進学とかで友達と別々になる経験はもうしているからそこまでショックを受けるほどじゃない。新しい出会いだってある。
私が懸念しているのは自分の進路先ただ一つ。
前から自分の目を治すために決めていた魔学医を目指すのか、治す道具を作るため魔術師に乗り替えるのか、目を諦めて魔法師になるのか……候補にあえてあげないけどリディお姉様のように最終的にお嫁さんになるとかね。色々ある。
でもね、今のところよくよく考えても私、どれにもなれないんだよね。
まず魔学医。まあ言わば魔法に関するお医者さん。魔力が関わる。それは問題ないけど、別のところに問題がある。
元々が水属性なのだからまず軽傷者までしか治せない。これはまあ少しは役立てれるとして問題は薬が作れない事だと思う。
私は未だにキズナオ草とドクデス草の見分けがつかないでいる。これは魔学医としても医者としても致命的でしょう。
色で微妙な誤差を見抜かなきゃいけないなんて白黒の視界では無理な話。確実と言う判断が私には難しすぎる。
知識を得ても物を見て活かせないなら意味がない。物の判別が出来ないなんて医師としてまずダメでしょう。
次に魔術師。魔力を作る時に魔法文字を書くでしょう?残念ながら私には魔力を込めれば込めるほどキラキラが増し手元が見えない。
文字は今までどうしていたか?あのですね、お父様。実は魔法文字って私がいた世界の文字だったと、私が転生者だとバレた時に話したじゃないですか。
だいたいどう書いたか分かるんです。さすがに画数の多い漢字になると怪しいけど大体は習っていた漢字だし目映いだけで目隠しをされている訳じゃないから目でなんとか追えるんですよ。
因みに瞬きをしたら目で記憶した指の形跡がブレて魔法文字は歪み失敗です。全く見えないわけじゃないので重なったりはしないよ!多少のズレで終わる。
で、ここで問題。魔法文字を知っている私がスラスラと書いて作ると怪しまれる。
とくに私はうっかりが飛び出てきちゃう時があるんだよね……もしお遊びでレーバレンス様には出来なくて私が魔法具を作れてしまったらもう終わりだよ、と。
バレた時にレーバレンス様から逃れられるなんて到底、思えません。間違いなく自滅コースまっしぐら!レーバレンス様に問い詰められたらポロリのオンパレード間違いなさそうだし……
あと魔法師も同じことで難しいと言われる魔法文字をさらさらと書けたら私は浮きまくり。それこそ――今はアーグラム王子の婚約者となっているから阻止したい人はいっぱいいるよね。下手をして何かを決めつけられ排除されるのが目に見えている。
しかも魔法師となると体力勝負が目に見えているから足の弱いとされている私は魔法師として足手まとい。おまけに属性を見抜けない。
一応言うけどアーグラム王子の婚約が滞りなく解消されたとして、私は無事に嫁げるかと言えばそうじゃない。むしろ欠陥令嬢を嫁に迎え入れようとしている王家の意図がわからない。単純に恋愛結婚をさせようとしているなんてまず考えないよ。
婚約破棄された令嬢なんて貴族社会では外聞が悪いから私が結婚するのはどこかの後妻になるか無理だろうけどアーガスト家なら出来そうな実家暮らしか。
――色盲、若干の足の不自由を掲げただけで欠陥令嬢。魔力が多いだけのただのお飾り令嬢を誰が嫁に迎えるか。それこそ私が保持している魔力を狙っているとしか思えない。
加えて目には魔石。体の内部は均衡がギリギリに保たれ魔虚像混合の治す目処がない魔病持ち。
それらを色々と考えると欠点が浮き彫りになった。そこで相談。私の進路をどうすればいいのか。
このまま適度に力を抜いてやると生意気だとか恨みをいつか買いそうだし。初めから出来ない子のレッテルを張られ逆転劇~なんて美味しい話、私は器用じゃないから無理です。
もう私にはどうしたらいいのかわからないんですよ!
「あー……そっか。クフィーの枷が酷すぎて魔法師も魔術師も魔学医にも無理があるのか……」
「そうです。これでは私はアーグラム王子のお嫁さん行きです」
「娘はやらんっ」
――私に向かってそれを聞けるとは思わなかったよ……いや、お父様だからね。あり得るって言えばあり得るんだけどね。
じゃなくて、えーと、そう。無理があるでしょう?魔法文字を理解ができる私は魔法師も魔術師も危険な気がする。特に魔術師。そして私の年齢がネックだ。神童とかのハイレベルじゃないから物凄ーく!怪しい。
気にしすぎであればそれでいいんだけど……何度考えてもこればかりは決まらないし、どこで恨みを買うかわからないからね。自分がそう思っていなくても相手は、て。
白と黒でしかわからないのは痛い。そして魔力が光って見えるのも痛い。強すぎれば強すぎるほど視界なんて光りで消されてしまう。
さてお父様、どうしましょう。
結婚願望がないと言えば嘘になるけど8歳から結婚とかなんて早すぎでしょ。この世界では普通でも私はまだ馴染めて――いるよね?
そんな私の思考なんてお父様に伝わるわけがない。見上げたお父様の顔は真剣な表情で私を見ている。
「実はクフィーに話さなければならないことが二つある」
この真剣さは……本当に真面目な話、なのかも?
「なんでしょう」
「一つはヴィグマン様から私へ教えられた話。もう一つはグラムディア殿下からの大事な話だ」
ここで間を置くと言うことは選んでほしいってこと?結局は両方とも話を聞くんだからどっちから話してくれてもいいんだけど。
「グラムディア殿下からお聞きします」
「わかった。あのね、クフィーの将来なんだけど魔法師を目指してもらいたい」
「魔法師をですか?でも、色は分からないしキラキラで魔法文字の視認が難しく足が少し不自由な(設定の)私には体力がなく魔法師になるのは難しいのでは?それに水属性は支援が出来るほど多くの魔法は存在しません」
「それなんだけどね。グラムディア殿下が確立した魔法騎士隊があるだろう?魔法騎士はまだ始まったばかりだけど将来的には規模を軍の半分にまで大きくする事にしているんだ。これには魔法師と騎士との関係に向上の一役を買っているんだよ」
……ええっと?
「規模を大きくするには準備が必要なのはわかるよね?そこでグラムディア殿下から少し面白い話をいただいたんだ」
ふむふむ。面白い話。私に関係があるんだよね?
「クフィーを、魔法騎士隊の専属魔法師として加入してもらおうかと思ってね」
ふむふむ。魔法騎士隊の専属魔法師として加入……。魔法騎士隊の、専属魔法師として、加入……ん?
魔法騎士隊。魔法剣を扱う騎士の事ですね。これをグラムディア様が発表して確立させました。そこに専属魔法師として加入してもらおうかと思っているんだね?
誰が?グラムディア様からお父様へ。お父様から私へお鉢が回ってきた。
と言うことは――
「私が、魔法騎士隊の専属魔法師に加入、ですか?」
「そう。まだクフィーは若魔法師だから専属も出来ないけどね。光属性で魔力量が多いジジルニア若魔法師と一緒に魔法騎士隊の未来専属として、もう加入してほしいって言われてるんだ」
「それ、やっかみが来ません?」
「来るだろうけどクフィーは魔力が光って見えるからそこをグラムディア殿下は活かしたいと言うし、さっきクフィーが悩んでいたから出来る道を示すのもいいかなーと私は思う。どうだい?」
「一緒に個別で受けていたエリーとケヤンとハルディアスはどうするのですか?」
とくにポメアは?やっぱり私と一緒なんですかね?
「どうするも彼女らの好きにさせるよ。ハルディアスは魔術師の可能性が高いけどね。珍しくレーバレンスが興味を持っているみたいだし。ポメアも選ばせるよ。まあ……着いてくると思うけど」
ハルディアスはレーバレンス様に気に入られていたのか……ポメアは何となく分かる。あの忠誠心はどこも偽りがないからね。
て、そうだよ。いくら幼女だからってお友達と一緒がいいとか都合がよすぎる。
それに、エリーたちも自分がやりたい事をしなきゃ困るよね。
ハルディアスはきっと魔素を寄せ付けない能力のせいだ。魔法具作りなら魔法を放つために必要な魔素を使わないから。
ジジルは光属性だもんね。今後を考えて回復役としての人員確保もあるかもしれない。エリーとケヤンは何て言うのかな?
「私の場合、魔法師は建前ですか?」
「まあ、そうなるね。魔法騎士隊と一緒に魔法を学びながらゆくゆくは専属として着任してもらうつもりで魔法騎士隊の成長をクフィーの魔力が光って見える能力で謀ろうとしているんだろうね。因みに他に若魔法師を数人と見習い魔法師と下級、中級、上級をともに複数を呼んで私が総監督としてまとめる方針だ」
……一瞬だけ思ったけどアーガスト家が固まりすぎていない?って過った。トールお兄様も魔法騎士隊に選ばれているよね?ユリユア様もたまに来るよね?まだ姿を見ていないけど。
もしユリユア様が来るとしたらもれなくウォガー大隊長も来るよね?残念な事に叔父と呼べないのがまた悲しい事実なんだけど。そうしたらあのもふっと!ふわっと!しているしっぽを触らせてもらえる可能性が高くなるのにっ!!
内緒って辛いねー。重要度が高すぎて言えないから喉に詰まる感じがまた辛さを引き立てる……私、忘れっぽいけどね。
「別に強制じゃないからクフィーの好きなように選んでくれていいよ。たださっきどれになるか悩んでいたみたいだからね。あえて魔法師を薦める。クフィーと一緒にいられるし。建前と人を増やす事で誤魔化す気満々でいらっしゃるからね、次期国王陛下様は」
今一瞬だけ本音が聞こえてような気がする。スルーするけど。
と言うか狙ってんじゃんグラムディア殿下。恐ろしい……
「入ったとして、何をするんですか?」
「若魔法師の基本は先輩魔法師の見学と魔法の知識を学ぶこと。騎士からは軍で必要な知識と訓練を学びそれぞれの知識を得る。これにより新たに魔法武装隊を築きたいらしい。クフィーはどちらかと言うと魔法師として知識を得て私やエモール九進魔法師殿とウィルと一緒に魔法剣を使う場合のみ騎士たちの魔力管理、かな」
なんだか大変そうだな、と言うのがよくわかる。色々と学ぶのが多そう。しかし私は基礎訓練の類いなど足に負担がかかりそうなヤツは少しして止めていいそうな。私にはそういう設定が付いていますから……面倒臭いねー。
そして言わせて。魔法武装隊とか物騒な単語が聞こえてきたんですけど?いや、ギャグじゃないよ。ギャグに聞こえなくてもつっこませてほしい。え、何それ。
騎士が魔法剣を扱うことから“ 魔法騎士 ”が生まれたのに新たに魔法武装隊?魔法師が武装するの?つまりなんか武器を持っちゃったりするわけ?魔法騎士だけでいいんじゃない?
対っぽいものなんか作らなくていいじゃん。それって魔法師の方が魔法を早く学んでいるんだからその魔法武装隊?なんか早く出来上がるんじゃない?魔法騎士の意味があんまりないような気がする……
「いや、基本的に魔法師たちはあくまで体力作りまでだから。武装って言っても武具そのものを扱うわけではなく身体強化を習得し自分の身は自分で守って後方支援の強化をお願いします、って言うだけの防御面を強化した部隊って意味だからね」
「それなら別に魔法武装隊などの肩書きを掲げなくても……(むしろそれって魔装なんじゃない?)」
「グラムディア殿下の立場はまだ脆いからだよ。今まで王子たちを王に、と騒いでたのに殿下が急に表に出て次期国王となったんだ。これはもう正式に決定して殿下を支持する臣下はだいぶ集まっているがまだ王子たちを推す派閥が存在してね……それにこのままだと次期国王陛下は騎士だけ優遇している形になるから片寄った支持を得ることになる。それを殿下は見過ごせないと言われてね」
だから魔法師も一緒に、と言うことらしい。魔法騎士隊とは別に魔法武装隊を作ることによって平等にし、臣下を静めているのだとか。
グラムディア殿下が新たに画策するものは今まで別々の指揮下だった騎士と魔法師の統一。
グラムディア殿下が最高司令官として両方をまとめあげ騎士と魔法師との溝をなくし国をまとめあげる第一歩として新たに企画したらしい。
その第一歩が魔法騎士隊と魔法武装隊を統率する事。グラムディア殿下、大変だねー。
で、何だかんだ巻き込まれている気がする私はちょっとした厚待遇でおいでおいでされている、と。私がそこにいて本当に大丈夫なのかな?
て、聞いたらアブルがいるしトールお兄様ともう一人を護衛につけてまた別のものを教えたりするから大丈夫だとの事です。
どこが大丈夫だとか言ってくれないからなんだか不安だけしか残らないけど黙っておこうかな。無理だろうと思うけどお父様が常にいるからね!なんて大見得はっていて聞くのも疲れそう。
さらりとアブルもいいよーなんて言ってくれたから良しとしよう。因みにノルアもいいんだって。ついでにたまにだけどキャロラリンも来るよ!なんて言われたらちょっとどうでもいいやって思ってしまいましたとも。
構ってあげてね?馬も好きだからそりゃあ構うよ?顔が濃いけど……キャロラリンだし。
「で、どうする?もう少し考えてみるかい?」
うーん。そう言ってもねぇ?
お父様がちょっと心配そうに見つめてくる。頭をそっと撫でて私を落ち着かせようとしているように思えた。うん。
「グラムディア殿下によろしくお願いします、とお伝えください」
なんだかんだ言ってそれしか方法がないし。うだうだ言ってても心配なものは消えないんだからいいやって事にする。お父様がすごい破顔して抱き締めて来るけどね。
やっぱり相談してよかった!
じゃあ私の方はスッキリしたから後はヴィグマンお爺ちゃんの伝言でも聞こうかな。
いったいなんだって言うんだろうねー?もう次の診察日が決まったのかな?




