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今、これから……

修正いたしました。28.12.31

 さらっと一年が過ぎました。ええ、さらっと。嘘ですけどね!


 数日も平和が続くとなんだか暇だな、て。こう……火の粉が7歳児の時のようにないし?平和だったので、ね?つい嘘もつきたくなる。


 まだ冬しか越してないけどさ。


 春真っ只中で今、現在、その平和がなくなるわけですが……もう少し春を満喫しててもいいじゃないかと呟いちゃったのは仕方がない。もう口から言葉が飛び出ちゃったんだから、仕方がない。


 実は私が知らないだけで凄いことか起こっていたのです。とりあえず思い付いたものから追って考えよう。


 まず、冬に欠かせないけどすっかり忘れてた風邪が流行して私も引っ掛かった。相変わらず親馬鹿ーな両親はジェルエさんとダリスさんを始め家臣と扉一枚を隔てて攻防を繰り広げてうるさかったです。


 風邪が移ったら困ると言う発言を建前に私から必死に離そうとするダリスさんたち。うるさくて治るもんも治りません。だから近づけさせないように頑張っていたのに。


 そんなのお構い無しなのがお父様とお母様。どうしても通れないならと魔法を使うのは止めてください。扉が破壊されて私、泣いちゃうよ?


 ぽやんとしか白黒の世界でもわかるように破片がヌイグルミに突き刺さったのを、私は見たからね?ジェルエさんがせっせと取ってくれたのを、私は知っていますとも!


 しかも叫ぶもんだからうるさい。たぶんこの時から口が緩んじゃったんだと思う。ほら、熱にうなされていたから……


 病人ってば人恋しくなるってよく言うけど構いすぎると全力で(最後の力を振り絞って)攻撃するんですよ!!けどポロリで「うるさい」なんて言っちゃったのが駄目でした。




 大 ・暴 ・ 走 !




 家が壊れるとかそんな事はなかったけど一気にお通夜モードに変身した両親の行動は……そりゃあ、もう。


 尖ってもいない扇で死のうとして焦ったよ!嫌われたから死ぬとか病んじゃってるから!?お母様は力が弱かったからジェルエさんでも止められたけどお父様が酷かった。


 ダリスさんがさらに老け込んでトールお兄様を呼び戻すほど。刃物が出ない代わりに何を思ってか壁に頭突きを切り返すカオスだって。


 私はトールお兄様が来るまでアブルに大きくなって上にのってあげなよとお願いしてお父様は取り押さえたけど……


 なんでだ!?とか。嫌われたならいっそ!とか。何か叫んでいて寝れずに困ったものさっ。


 後で……静かになって(その後、あの騒ぎの中で私は寝ていたらしい)からわかったのだけど。トールお兄様と家臣の皆様以外は風邪を引いて熱があったらしい。


 お父様たちはそれを魔法であたかも普通に見せていたのだからすごいと言えばすごいよね。大変めんどくせぇーと廃れましたとも。私も風邪でおかしくなっていたさ。


 もうトールお兄様は疲れきっていました。ええ、もうこんな事で呼び戻さないでほしいと涙ぐんでましたとも。


 ノルアがトールお兄様の頭に乗っかって頭をすりすりして慰めていたよ。羨ましい。


 そんなアーガスト家の不名誉は我が家と陛下の近衛たちしか知らない。だから会いたくない。のに。


 春になったら「話があるからいらっしゃ~い」とお手紙が届くし?


 お父様も行ってみたらー、なんて拗ねちゃっているし。なんだか嫌な予感しかしないのだけど、お父様が止めないのは珍しいことだなあと思いつつ行くしかない。


 そこで聞いてしまったのはとてつもなーく!あり得ない話。今。




 なぜ私がもう一度アーグラム王子と婚約せねばならんのだ。




 それまたうっかりポロンと呟いてしまったのだからさあ大変!お父様と未だに顔を見たことがない陛下は大笑い。グラムディア殿下とローグラム王子は苦笑いでアーグラム王子は泣きそうな顔で必死に平常心を保とうと表情が色々とヤバかった。ひきつっているよ。


 女性人は俄然として微笑むだけでちょっと私には分からない。取り乱すこともなく、どこか当然でしょうとでも言うような姿勢で静観しかしません、と空気を漂わせていた。


 そんでもってまたまたポロロンと呟いちゃうんだよねー、私。やっぱり風邪の影響で口が緩んじゃったのかな?呟きが飛び出していっちゃうよ。


「アーグラム王子は幼児愛好家の方だったんですね。私、近づかないようにいたします」


「……僕、クロムフィーアに拒絶されて死にそうっ………………」


「アーグ、素が出ているぞ。頑張れ。負けるな」


「まあまあ。それを決めるのは話を聞いてからお願いできるかな?」


 息子の背中をあやしつつ間合いに入るのはグラムディア殿下。そして話を詰めていく。


 なんでもこの話、双方の親がちょうどいいからじゃあするか?で決まった話だという。もちろんすんなり決まっていないけどね。


 簡単に言えば、私とアーグラム王子の婚約者避けである。アーグラム王子はちょっとロリコン(私)を拗らせちゃったのか未練たらたらで、私は八歳でこれから婚約者候補がたくさん来るからその対策に。


 お父様的には渋りに渋って成人直前で解消すること、お茶会などの呼び出しなし、公の場以外でアーグラム王子から声をかける事を禁じ、健全なお付き合い(むしろ接触なし)で私の意見が最優先を条件で陛下と話を付けたらしい。


 だからか。私のうっかりポロリ発言で小躍りしながら笑い転げているのは。投げやりでも了承したのは。陛下も大爆笑となれば親的にはこの婚約はそこまで真剣な話ではないかも。


 陛下が味方なら心強いね!裏がないことを祈ろうっと。


 しかしアーグラム王子は未だに私を好きで……かなりダメージを受けたらしい。どこに惚れる要素を私が持っているのか知らないが、一目惚れだっけ?やっぱりロリコンだと思う。


 ローグラム王子に支えてもらいながらかなり落ち込んでいる。どっちか分かりやすくて助かりますなぁ。


 まあこの婚約は(仮)と付ける事にして表向きだけ私とアーグラム王子の婚約はまた成立した。お父様の確認の下でしっかりと調整はされているそうなので、だからと言って下手な言動はしないようにとのこと。


 もし何らかの回避できない事が起きてしまった場合、陛下の采配で仮初めの婚約は本当に、正式に成立させて外堀を埋めちゃうらしい。


 つまりは後は陛下しか持つことを許されない刻印を押すだけで未来が変わる、と。お父様はそんな事はあり得ないからといい笑顔で言ってのけた。


 ……聞いてからお願いとか言っておきながらもう決まっているじゃないか!グラムディア殿下の嘘つきっ。と言うかね、この前のグラムディア殿下の馬に乗せられたのがいけなかったらしい。


 微妙に私が王家入りに公認かも?て噂がうっすらとあるそうな。噂が出ているけどひそひそと大きく言わないのでうっすらと。


 特にとある公爵家がうごうごと妙な動きをしたりしなかったり……今後を見極めるため、私は餌さとなったようだ。


 でもどっちにしろ私がまだ子どもだからアーグラム王子は私に近づく暇なんてないんだけどねー。


 トールお兄様に聞きましたとも。小隊長に早くも昇格したんだって?これからビシバシと厳しくなり遠征も頻繁に行うそうじゃないか。トールお兄様になかなか会えないのは寂しいけどね。てか昇格が早すぎるんだよ!まだ十五でしょっ。どんだけ強いんだ!!


 それに私は未成年。未成年と成人の差はかなり大きくて私は習い事三昧。アーグラム王子はお仕事三昧。甘い一時やらは忘れた頃に一度あればいいんではないでしょうか。


 と、お父様が大手を振って説明してくれた。打ちのめされるアーグラム王子の目に光るものが見えるけど白黒なので絵が微妙である。


 残念!!


 またまたまたつい口にしてしまえばもうアーグラム王子は膝から崩れた。どんまい。私的にはもう少し大人になって現実を受け止めてくれ。


 ロリコンと呟く前にっ!


 そんなアーグラム王子を見てそう言えば……ローグラム王子の話はどうなるのだろうと聞いてみる。ここでようやくこの婚約の出所がわかった。


「ローグラムは帝国の姫の元に婿入りするつもりだ。年が一つ下のアニルフィア姫がいて帝国と同盟を結ぶ事になっている」


 ちゃっかり情報を陛下から聞いてしまった私。王家よ、それでいいのか。


 意外にもローグラム王子は乗り気でこの話は即OKしたらしい。政略結婚だがローグラム王子的にはノリノリだそうだ。


 はっはーん。ローグラム王子の結婚が決まっちゃったから残された次期国王の息子が国に一人となればこの国に残らなければならない。


 しかも陛下が王妃に対する夫婦愛と政略結婚と言ってしょんぼりした顔を見る限り、陛下は恋愛結婚をさせたいと見た。


 そこでアーグラム王子の話を聞けばまだ私に恋心を寄せているとなればそっちを結ばせようとするわけで。早くしないと成人を迎えた殿下に婚約者候補が集まってくるか先手を打った、と言うことかな?


 よく他の名も知らぬ貴族がでしゃばって来ないね。私、他の名も知らぬご令嬢に囲まれていじめられるんじゃない?


 まあ、けど――お父様と笑いあって楽しんでいるあたり本気にしていない、かな。だからこの恋でアーグラム王子を試しているのかも?真相はまったくわからないけどね。


 風邪から復帰してなんだか妄想が絶好調だよ!人の考えが手に取るように分かる!また嘘だけどね!!春だし本当にエイプリルフールを流行らせようかな……


 まあそんなこんなでアーグラム王子から「絶対に振り向かせて見せる!」と言う意気込みをもらった私はさくさくっとお父様に抱えられて帰る。


 手首に濃いグレーのリボンを目撃したが、そこはあえて見なかったことにした。


 そう言えばトールお兄様が小隊長へ昇格すると共にアビグーア中隊長は――今はアビグーア部隊隊長へと昇格をしたそうな。


 トールお兄様から教えてもらって更には偶然にも鉢合わせしたから「おめでとうございます」と笑顔で言ったらなぜか高い高いして去っていかれましたとも。


 みんなどうした!?驚愕ッ!!て面白かったよ。


 そして右側の人は私が寝込んでいる間にヴィグマンお爺ちゃんたちに挨拶をさらっと交わしてポコポコと馬車に揺られ婿入りしていかれました。まだ連絡が来ないので今度会えるのは春を忘れて初夏ぐらいじゃないかな。


 なんだか会えないような気がするね!


 そんでもって私は色を付けるために魔法具作りを頑張っちゃうぞ!とかいいつつもう盛大に挫折しております。


 なんで気づかなかったんだろう。魔法具を作ればいいじゃない!これからの人生が面白くなるぞっ、とかすっごい楽しんでいたのに……


 私ってば属性が三つあってその均衡が崩れると死にそうになるじゃないか。下手したら死んじゃうんだぞ。


 思い出してみなよ、あの熱を。思いだそうよ、あの痛みを。


 属性の魔力の影響で苦しんだじゃないかっ。水の属性でどうにかなるだなんて今のところ思い付かないし。もしあったとしてやはり複雑になることは否めない。


 やっぱり光とか別の属性で考えるしかないのかね?混合させるとしたら属性を十分に考えなきゃならないし私の体への負担も考えると複雑すぎるっ。


 前途多難。しかも目の前の壁は高すぎて飛び越えられないし分厚すぎて力業で突破もできない。


 しかもお父様ったら風邪が治ったと思ったらちらちらと私の様子を窺うし。なんだろうね。季節一つ分をまとめただけなのに濃いね。


 あれ、これ平和だったのかな。いや、まあ私の事以外は平和だね。たぶん。うん。何を基準に考えたらいい?


 因みに早くも今年から王宮はごたごたするらしいよ。なんと帝国と改めて和平を強く結ぶためにローグラム王子の婚姻発表。アーグラム王子はそれとなく暈してお祭り騒ぎになるって。


 これから帝国とも仲良くやれればいいね。これからローグラム王子は帝国のアニルフィア姫と逢瀬を交わして愛を育むのだとか。


 本当は貰う側だけどローグラム王子が行くことで帝国の主力をほんの少し奪っちゃおう、て事らしい。帝国にはもうそれと言って野心はないらしく、民が飢えて困らないのであればそれでいいって。


 血の気の多い帝国民の半数は納得していないようだけど……今の皇帝を知っているので矛は納めているらしい。大丈夫かな?


 帝国の評価はまばらだけど、これから手をとりお互いに仲を深めていく方針だとか。あくまでサファリナ国が優位なんだって。この話の裏側にはシェヌピスの足取りを追うために協力を仰いだ結果もあるとか。


 他人事のように言っちゃうけど、大人のやり方に口出しが出来るわけがないので頑張ってほしい。


 そんでもって翌年にはグラムディア殿下が即位。グラムディア殿下の完全復活と帝国との同盟に新たな礎となるため交代するらしい。その来年はローグラム王子が婿入りで――


 ぶっちゃけて言うとアーグラム王子の婚約とか結婚相手って今年を抑えればそこまで騒ぐほどでもない。グラムディア殿下が盛大に噂の的になる。――娘がほしいらしいよ。


 今年から三年先は慌ただしくなるね。私が平和ならそれでいいな。なんだか無縁の言葉に聞こえるけど……


 後は……進路をちゃんと決めるしかないねー。


「お父様、お話しがあります」


「――いいよ。私もクフィーに伝えなくてはならないことが、ある」


 まだアーグラム王子の事で伝え忘れがあるのかな?まあ聞けば分かるか。


 揺れる馬車の中ではやはり膝の上に乗せられて帰る。珍しくしんみりとするお父様を少し不審に思いながら……帰路についた。




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