待ちに待った
修正いたしました。28.12.31
とっても疲れたお祖父様たちを終えて私は実にゆったりと過ごす――のを後回しに次の無の日にはヴィグマンお爺ちゃんからお呼び出しである。
怒られる訳じゃないのだけど、前世では日曜日といったら宿題がなければはっちゃけてもいい日でしょ?少なくとも幼少期ならすくすくと元気に育ちなさいと親が積極的に外へ遊びにいかせるはず。
しかしここは異世界。前世と比べてしまってどうするんだ、と言われてしまうけど思ってしまうのだからどうしようもない。ボケ防止だと思っておけばなんとかなるよ!
――それはどこかに置いておくとして……私が言いたいのは遊ぶ時間が少ないと愚痴りたいだけですごめんなさい。
だって休日と言ったらお友だちと遊ぶのが通でしょー。そうでしょー。どちらかと言うとアウトドアよりインテリだけどたまには体を動かしたいと思うでしょー。なのに平日を魔法院で過ごしたかと思えば週末にお呼びだし。不満です。
でも不満だ不満だと言っても行かなきゃならないんだけどね。事が事なのだし……
お父様からもらったヴィグマンお爺ちゃんからの手紙はあの右側の人との面会でした。本当は冬を越えて春に診察する予定でいたつもりだったらしいのだけど、右側の人が解放されたから早く状況を見てみたい、との事です。
解放されたと言うのは我が国で自由にすると言う意味で、こちらに永住するんだとか。帝国にはもう戻らずこの国で大気に還ると言っているのでグラムディア殿下と契約を結んで取り込んだらしい。
しかしまだ裏切らないとも限らないので監視は着いている。その監視はお嫁さんがするんだそうな。とある辺境の地にコムトーヴ子爵家があるのだけどその子爵家にはご令嬢しかおらず、没落寸前なんだとか。右側の人にその土地を復興させると言う名目で婿入りし、結婚する事で国に永住。いつでも城へ馳せ参じる手はずらしい。実際はどうなんだろうね?
確か、コムトーヴ子爵の領地は土地が大きければ人も多いのだけど食物の恵みがよくない。長年に渡って領主と町の人々が奮闘しているが現状維持しかできずに発展がなかなか出来ない土地だったはず。
これから復興のためになんて言っているのだから状況はかなり傾いているんじゃないかな。辺境の地だから貰い手もいなかったのでちょうどよかったとヴィグマンお爺ちゃんは綴っている。
私が関与する筋合いはないので、あちらがで決めたのならいいのではないでしょうかね。コムトーヴ子爵令嬢はよく帝国のお婿さんを受け入れられた……受け入れるしかなかったのかな?
土地柄とか名前と嫡子ぐらいしか読んでないから詳しくはわからないんだよね。コムトーヴ子爵令嬢の年齢も知らないし。これはどちらの都合がよかったのか……こっそり右側の人に聞いてみようかな?そう言えば名前が朧気なのだけど、どうしようっ。
それで、春に結婚をして向こうに一度向かうらしいので先に診察をしたい、と言う事。辺境の地コムトーヴ領は確か王都から片道三十日ぐらいの距離だったはず……そりゃあ、先に診ておきたくもなるね。それが今日なのだけど。
あ、レーバレンス様のは簡潔な一文だけ。『魔力提供を求む』――これだけ。だから私も一文だけで『何を作るのでしょうか?』と返しておいた。魔力をただであげるわけにはいかないよ。だんだんレーバレンス様から受ける私の扱いが雑なのだとよくわかるね。
今回は珍しく魔法棟の医務室にいます。ここは設備がいいらしいです。一回だけ行ったことがあるけどもうほとんど忘れかけています。城が広すぎるのが悪い。あと私をさっさと運んだレーバレンス様が悪い!影渡りで一瞬だよっ。去るのも一瞬さ!
「こんにちわ、クロムフィーア嬢」
「こんにちは……ソマ*¥#§、様」
「ソマディオだ。言えていないよな?前回も危うげではなかったか?」
ごめんごめん。なんか右側の人とか言っていたら忘れちゃった。つるりんさんも忘れてるんだよねー……なんか言いにくい名前だったな、と言うぐらいしか覚えていないのだけどね。うん。
にこーと笑って誤魔化してみたけど、右側の人はちょっと強めの口調で訂正されました。本当にごめんなさい、右側の人。もう関わらないだろうと思っていたのとまあいいか!と思っておりましたとも!
お互いに変な空気になってしまったけど始めましょう。うん。時間は有限ではないのです。何やら自国から必要なものとか皇帝へのご挨拶とか色々あって日にちが足りないらしい。
なんでそんなにぎゅっぎゅうになっているのか知らないけど……急がないほどコムトーヴ領地は酷いのかな?でも領地経営は急いで出向いたってなんにもならないような……?
でも自分の復興させる土地をみておかなきゃ何も出来ないよね。それを見越して春とか?とりあえず忙しいと言う事はわかるね。
右側の人がぐるりと自分の監視騎士が二人、ヴィグマンお爺ちゃん、私、ポメア、ここまで案内してくれた騎士を見渡して、切り出してきた。契約を交わした騎士たちなんだって。フル装備なので細かくは知りません。
「では――本当は保護者としてグレストフ殿に付き添っていただきたかったのですが、時間がどうしても合わなかったのでヴィグマン様が代わりです」
「今グレストフ一進魔法師が抜けられると困るからのぅ。本来なら家族の誰かに来てもらいたかったがクレラリア夫人お一人では城に来るのは無理じゃったから代わりにわしじゃ」
「お母様では駄目なのですか?」
「そうじゃ。ここには色々な貴族がおるからの。伯爵夫人では太刀打ちできん」
あー、つまりその肩書きだけじゃ駄目ってこと?ちょっと捻ればお父様の夫人なんだから仰々しいものになると思うんだけどな。でもお母様一人をお父様が城に来てほしいなんて言わないか。なんか通信機みたいな魔法具があるもんね。
じゃあ城じゃなければよかったんじゃない?と思ったけど右側の人が申し訳なさそうに理由を教えてくれました。
まあ普通に右側の人はまだまだ監視をつけていなければならない状態なので外に出てしまって余計な騒動が起こっては困る。ので、問題を最小限に抑えるために城で行うことになった、と。あと設備とか。移動が面倒だった理由だって。そこは教えないでほしかったです。
「今日は眼を診るだけだ。出来るだけ細部まで診て今後を相談していきたい」
「わかりました」
「それで診るときの流れなんだが帝国では『透視映写』と言う魔法を使う。これは今は私しか出来ない魔法で診たい患部などの奥を透視して宙にその部分を写す魔法だ。つまり、クロムフィーア嬢の眼の奥を診るためにこの魔法を使って透視し目の前にその透視した部分を写し出す。それで目がどのようになっているのかを診る」
意外だ。しっかり患者さんに伝えてからやるらしい。帝国も捨てたもんじゃないかもしれない。
「これを使うのは光属性のみ。クロムフィーア嬢は光の属性を持っていないので影響はない。ここまでは大丈夫だね?」
口調がズタボロですよ。じゃなくて大丈夫です。まだ続くようだけど他に何があるの?
「注意点がある。私は魔病を診るので間違いなく魔力を使って診断する。先ほど言ったように魔法で診察だ。グレストフ殿から聞いているが君は魔力が光となって見えるらしいね?とてつもなく研究したい」
「そう言うお話しはなかったと思うのですが?」
ヴィグマンお爺ちゃんの咳払いまで聞こえるよ。アブルなんてぐるぅううと喉を鳴らしたのですが?私が喉を撫でているせいだろうか。
アブルの声?に驚いて右側の人に少しだけ距離ができました。
「そ、それは本物か!?以前はリッスンだったろうっ」
「あの子はお留守番です」
「そ、そうか……攻撃をさせないでくれ。絶対に」
「不審な行動さえしなければ大丈夫です。それで、なんでしたっけ?」
「え、ああ……研究――では、なくて。そう。光りとなって見えるのだろう?肝心の本人が眼の状態をみれないかも知れないと言うことを理解してほしいんだ」
なんとっ……そっか、よくよく考えたら魔法=魔力。いつものように魔法を放ったらキラキラが……あれ?ちょいとお待ちください。
振り返ってみよう。どの辺まで振り返るのかは適当で最近の記憶からたどるに、ちょっとおかしな事が起きているではないか。
確かに私は魔力がキラキラと見える。それは3歳の時に複数を交えて確信した。面白い具合に光ってはしゃいでいたと思う。むしろはしゃいでいました。
そこで気になるのは『水球』『魔素』『結界』の3つ。その中でとくに『水球』と『結界』に違いがある。この城にきた時に見た結界や自分で張った結界、これには『キラキラ』が見える。
でも私が初めて出した時やイライラしながらたくさん出した『水球』、お父様が助け出そうとして放った『火球』に『キラキラ』が~とはしゃいだ試しがない。同じ魔法のはずなのにこれはどう言うことなんだろう?
思い違い?じゃあ『魔法剣』は?『キラキラ』が見えていた。何が違うの?
「どうした?そんなに見たかったのか?眼球だから生々しいぞ?」
「ソマディオ殿。もう少し言い方を変えてくださらんか」
「しかし私は魔学医だ。患者に嘘はつかない」
「嘘じゃなくでも言い方は他にもあるじゃろう?気分が悪くなったのかと聞くだけでいいはずじゃ」
「だが会話から考えてそう言うことだろう?わざわざ遠回しに変える必要はないだろう」
とりあえず、右側の人は医者になると印象が変わるんだな、と言うことがわかったよ。さっきまで優しそうなお兄さんだったのに……なんかいきいきしていない?
このままだとヴィグマンお爺ちゃんと喧嘩になりそうなのでやんわりと仲裁に入る。私が反応しなかったのがいけないのだから私が謝るのが筋ってもんだよね。そしてなぜか2人ともばつが悪そうな顔つきになっちゃったけど。
――今思えばようやくだね。ようやく私の眼が治る……かもしれない第一歩だ。人から聞く話でどこまで理解できるかわからないけど、とりあえず始めてくれませんかね?
暇なのかアブルがバリバリいいながらお尻を掻き始めてなんとも言えないんだよね。本当におっさんに見えるからやめて。これで寝転がっていたら中年親父様だよ。絶対に下着姿で寝転んで肘をつきビールを煽りながらテレビを見て休暇を満喫していそう。
イメージがなんとも言えないが、アブルってどうしてもそう見えちゃうんだよね……あ、始めるそうです。ヴィグマンお爺ちゃんは保護者兼助手の2役をやるらしい。紙と羽ペンをもってスタンバイしてますよ。いつの間にか私がもし見えなかったらの対策が練られていたよ。
「では、始める。魔力酔いをする奴は距離を取るように」
……誰もいないらしい。しっかり確認してから右側の人は呟く。「集え光粒よ、我が力の礎となれ」とな。光は『こうりゅう』なんだね。土って『どりゅう』になるのかな?もぐらに変換しそうっ。
ぷぷぷと吹き出しそうな笑いをなんとか止めて続きを見れば早かったです。けっこうな量を集めたらしい魔素を纏いながら指先に集めた魔力をさらさら~っと仕上げて円を描く。そのまま私の眼にそれを宛がうようです。
ふわっと触れてきた手のひらは眩しくないけどキラキラはしている。思わず眼を瞑ってしまったけど痛みとかはない。ちょっと暖かいかな。
でも不思議……目蓋の裏を見ている時(瞑っている時)に太陽や光を見れば視界が照らされたおかげで黒から皮膚が照らされて赤色っぽく変わるのにそれがない。暗いまま。でもうっすらと眼を開けると白い光が入り込む。
光の刺激で眼が痛くなるわけではない。なので、ゆっくりと閉じられていた目蓋を持ち上げていく。ちょっとから半開きまでいけばじゅうぶん。刺激も何もないのだから開けばいい。
ただ問題がありまして……どうやらこの白い光は魔法であり、キラキラの粒子のようです。しかも、かなり細かいもの。それが私の目元にまとわりつくように視界を塞いでいるね。白くてこれ以上がわかりませんよっ。
でも向こう側では何やらどうのこうのと話し合っている。動揺する声から驚きの何かがあったのかな?腕の中の存在を確かめるようにアブルをぎゅっと。絞まりすぎたのが「ぐあ」っとやられ声。人間臭いね!
「クロムフィーア嬢はやはり見えないのか?」
「見えません。魔法が眼に留まっているのかキラキラで真っ白です」
「そうか……体調はどうだろうか。君には光の属性をまとわせている。何か変化があったらどんな小さな事でも構わない。言ってほしい」
「何も変わっておりません。魔法で視界を遮られているだけです」
「わかった――出来たら本人には細かく説明をしたいのだがクロムフィーア嬢はまだ小さい。ここは手早く報告をまとめて後でグレストフ殿に伝えた方がいいか」
いやいやいや。待ちきれませんよ。




