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お出迎え

修正いたしました。28.12.31

 日が経つのが早いな、と思った貴方!それは一日の中でゆっくりしている時間がなかった証拠ですよ。言われなくてもわかるけどさ。


 私の一日がいつの間にか終わっている件について誰か語りませんか?いや、語れませんよね。うん。知っていたよ。終わっているのに何を語ると言うのだっ。


 そんな感じに日を跨ぎましたが何か?魔法院に行ってもちょっと疎外感を直に感じてしまったけど、何か?てかお父様が悪いよね。娘にもっとお友達を作る環境を整えてやってよ。


 私、ちょっとやさぐれたかもしれない。……今さらだったらどうしよう!


 嬉々として魔法院に顔を出したら男の子と妙な壁が出来てるとか何。エリーとジジルはそのままだったけど男女の差を分け隔てなく埋めようと2人が動いたら私はどことな~くぽつんと1人になる。


 本当に1人になってはいないよ?ちゃんと話題を振ってくれるし、私だって……ノ、ノルアとかアブルで気を引いたり……した、けど。ちゃんと聞き手にも回って相づちもばっちりだったし。


 でも気づいちゃったわけですよ。早めに気づいてよかったのかもしれない。




 共通の話題、少ないよね。うん。




 ぶっちゃけなくても私とみんなは家柄の格差が存在する。私以外は平民なんだし。けど私は気にしていない。たぶんエリーたちも気にしていない。気にしていたらきっとお父様は同じ部屋に5人をまとめて個室を取ってくれるとは思えないからね。


 でも話題と言う共通点が少ないことに気づきました。平民の暮らしを知らない私。貴族の暮らしを知らないエリーたち。魔法院の寮に滞在するエリーたちと家に帰宅していく私。


 魔法に関しての話なんてどこの真面目ちゃんか。他愛ない程度で終わってしまう。試験とかテスト前だったらよかったかも知れないけどさ。


 騎士に憧れているかって?まあ憧れてはいるけどそこまでとは言わないかな。だって私、剣を持ち上げられない。その前に護身用のナイフでさえお父様が持たせてくれないのだし。逆に憧れる以前に鍛えるとか強くなるとかを考えたことがないので論外である!でも体力作りはちょっと考えています。運動をしていないからちょっと走っただけで息切れが酷いからね。


 好き嫌いの好みも5人が合わさるなんて早々にない。私が「そうなんだ!」と言う話しで着いていくしかなくてちょっと残念だ。


 私、コミュ障なのか……ちょっと思ってしまったのはしかたがないじゃないか。うん。聞き手に徹する事にしよう。思い込みはいけません。頑張れ、私。食らいつくんだ。


 そんな感じで日が過ぎまして、まあ持ちつ持たれつ?私の魔法院生活は平々凡々です。変わりません。そんな風に悩みながら過ごしていたら今日がお祖父様をお招きする日でございます。帰りたいなー、と思わず考えました。そして家はここじゃん!と1人ツッコミが痛い。


 なぜそう思ってしまうのか――この数日で私はお祖父様たちの情報を得てそう判断したからだ。まとめてみるとこんな感じ。ただ、音信不通だったためにそれぞれの情報は10年前のものなので誤差が生じると予想がつく。


 お祖父様

 ・髪の毛や瞳はお父様と一緒で魔法関連はこれっぽっちも才能がない騎士の人。もう引退はしている。

 ・騎士では上流騎士で鍛え上げた筋肉がすごいらしい。トールお兄様はその筋肉によって幼い頃に一度抱き締めあげられたとか。ぎゅっ、て。

 ・厳つい顔。ちょっと豪快な性格。

 ・現在年齢は67のお祖父様。鍛える事が好きだったのでそこそこ筋力と体力が落ちている……はず。今も筋トレを続けている可能性が高い。ダリスさんの予想。

 ・準男爵から男爵に乗り上げた人なので切れ者でもある。


 お祖母様

 ・青い髪に群青の瞳。魔法を少々ののんびり屋さん。

 ・可愛いものが大好き。興奮するとすごいらしい。ダリスさんは私から目を反らしながら言ったよ。

 ・当初は夫を支える出来た嫁。こちらも切れ者。

 ・足が悪い欠陥令嬢だったため裁縫など座って出来る事が得意。一級品と言ってもいいほどだって。


 この情報を集めまとめてみて思ったこと。よくこの二人が結婚したな、と。真逆じゃないだろうかと言う祖父母たちだ。だから引かれ合ったのかもしれないけど。


 ここで注目すべきところはお祖母様ではなかろうか。特にダリスさんが教えてくれた可愛いものが大好きで興奮すると凄いとかね。お父様のあれはきっとお祖母様から受け継いだに違いない。間違いない!


 抱きつきはお祖父様だね。そんなところまで遺伝しなくてもいいのに。魔法が駄目なお祖父様と魔法を少々のお祖母様の間によく魔力が多いお父様が生まれたものだね。不思議が一杯だよ。


 さて――この2人の情報を聞いた時に必ず最後に皆が口を揃えて言った言葉がある。とても気になる言葉なんだけど。


「いいかい。絶対に捕まるな。捕まったら絞め殺される」


 トールお兄様の真剣さと。ダリスさんの警告と。ジェルエさんの懇請と――危険な匂い。絶対に誰かの側にいるようにと言われた。通りすがりのお母様もトールお兄様の後ろに隠れているようにと言うし。


 そんなに大事な事になるの?と不思議に思えば意外にもリディお姉様がその説明してくれる。こちらも真剣でした。ツンがないほどに……


 トールお兄様が4歳。リディお姉様が3歳の頃のお話し。巡りに巡った秘密の顔合わせでお父様の実家に行ったら挨拶としてトールお兄様はお祖父様に抱き締めあげられて意識が落ち、リディお姉様はお祖母様に抱き締められて意識が落ちたらしい。


 出会いがあまりよろしくないけど、その後は年に1、2度ほどこっそり顔を合わせて気を付けてもらいながら交流をしていたので、牽制していれば優しい老夫婦なのだとか。でもうっかり近づいたり興奮させたりすると抱き締めあげられるらしい。気を付けなさい、と最後に締め括られた。


 なんですか、そのホラー。両親も危険な香りがするのに祖父母にも結局は危険が漂うとは……ゾッとしていたら優しく声をかけてくるお母様。


「実は、今まで連絡も取れなかった事からクフィーの存在はつい最近に知って舞い上がるほど嬉しいようなの。楽しみにしていると手紙からそれはもう読んでいて呆れるくらい書いてありましたわ。――クフィーを抱き締めすぎる危険性があります。ですから、今日はトールの後ろで距離を取って出来るだけ隠れるようにしているのですよ」


 お母様に言わせる危険って、相当なものだと思う……少なくとも私はそう感じ取った。みんな真剣に対策を練るんだもの。作り話ではないかとくらいわかる。


 だからこうして私はトールお兄様の斜め後ろを陣取って玄関で迎えようとしているのですよ。もうすぐ着くと言うのでみんなで迎える事になっている。


 玄関の両脇には見かけないメイドさんたちも混ざってずらりと14人。その中にはポメアもマティスさんも含まれているんだけど実はそんなにいたんだね。気づかなかったよ!


 あとボテガイラも。今回はお祖父様たちを迎えるから全員参加のために正装です。ボテガイラの髪がオールバックにバンダナを巻いて固定。バンダナで押さえているだけだからなのか後ろの毛がぴょんぴょんと色んな方向に跳ねているのが気になる!今日も癖毛が最高潮に凄いよ!


 実は執事がダリスさんしかいなかったから急遽で案内人になるんだって。執事不足だからとりあえずボテガイラが駆り出されたみたい。仕事は知っているのかな?尾っぽが短い燕尾服みたいな格好がちょっと似合わなくて笑いそうである。因みに執事の仕事は向いていない、と自分で言っていました。見たことがないので私には計り知れませんよ。大丈夫?


 あ、向こうから蹄の音がっ。ダリスさんが迎えに言っているから後は目の前の扉が開くのを待つだけ。気を付けなくては……むしろ部屋に閉じ籠っていた方がいい気がする。姿だけ見せるってどうなんだろう。まあ爵位が関係しているからなんだろうけど。でも親族だからその辺がごちゃごちゃだ。


 こっそりトールお兄様の袖を掴んで不安だな、って呟いらトールお兄様とリディお姉様に頭を撫でられながら笑われてしまった。今日は出迎えだけで、挨拶は明日なのだから緊張する必要がないって言われても、ねえ?部屋に着くまで伯爵令嬢でいられるようにって言われても――ねぇ?


 お祖父様たちは隣の領土から来るので頑張っても夕方に着くから今日は顔を見せて明日に挨拶なんだけど……親族だから顔だけでも見せてあげなさいと言われたから並んでいるのであって――ちゃんと弁えているから安心なさいと言われてもね。いつ抱き締めあげられるのかが怖いのです。初めては不安になるものなんだって。


 ちょっとドキドキしつつ待っていたらついに扉が開く。ダリスさんが開けた扉から堂々と入ってくるのは背が高くて体もがっしりとした濃いグレー混じりの髪にふさっとしたちょび髭の厳つい男性。髪はオールバックなので獲物を捕らえるような鋭い眼光がかなり上に立つ騎士みたいでちょっと足が引いた。


 その隣にはしずしずと伴侶を立てるために控えめに後ろを歩く、にこにことしわを増やしながら穏やかに笑う女性。うすっぽいグレーはアトラナを思い出させる色だった。ゆったりと後ろに結んでいる。髪が揺れないからお団子にしているのかも知れない。


 この2人が私の祖父母に当たる人たちなのだろう。


 お祖父様とお祖母様だからね。髪の毛は所々に白っぽいものが混じっていて歳が感じられた。顔のしわの数とかもそれ相応の年齢を感じる。


 適度な距離まで近づいたらお母様が一歩、前へ。その光景をじぃっと見ていたら……トールお兄様とリディお姉様の隙間から覗いていた私と目があったような気がした。ハハハハハ……まさかね。


「お久しぶりですわ、レムリエグ男爵、トフリア男爵夫人」


「お招きありがとうございます、クレラリア伯爵夫人。グレストフ伯爵様には息子がご迷惑をお掛けして大変申し訳ありませんでした」


「夫はもう許しております。長旅で疲れておいででしょう。今日はゆっくりとしてくださいませ。明日は家族として語りましょう」


 お父様は今日もお仕事でまだ帰ってきていません。不在です。だからお母様が対応しております。明日はお休みを取ったんだって。騒がしくなるんだろうなあ……


 挨拶はしっかりと上下関係を表しているから変な気分。相手は自分の祖父母だけど私たちの方が爵位が上だからお祖父様達が下手に出て挨拶をするこの光景が慣れそうにない。でもこっちは家臣を含めて総出で出迎えなんだよね。親族に対しては出迎えが必然なんだって。明日には身内同然となるんだろうけどね。お父様はそう言うのきっちりするような気がしないし。


 時刻は夜の6の鐘がってしばらく経っているから8時かな……ポメアに聞いてみないとわかんないや。私の感覚ではまだなんだよ。誰かに聞かなきゃ時間がどの辺なのかさっぱり。みんな本当にどうやってわかっているのでしょうねー。


 お母様の指示でお祖父様たちは早々に部屋へと案内された。客間は私たちの部屋と離れているのでばったり会うとしたら階段付近かな。


 後は大人の時間なので私とリディお姉様は部屋に戻って明日に備える事になる。トールお兄様はアーガストの名を襲名するから挨拶を含めてお母様と一緒にもう一頑張りだ。


「さすがに玄関ではありませんでしたわね。よかったですわ」


「お祖父様はとても強そうですね。お祖母様はとても優しそうに見えました」


「わたくしが覚えている体格と変わりませんから、あれだと力も落ちていませんわね。クフィー、本当に明日は気を付けるのですよ?」


「挨拶をした後はトールお兄様とリディお姉様の側にいますから大丈夫だと思います」


「……まとめて危険になりそうな気がしてきましたわ。悪い方ではありませんけど――わたくし、少しだけ心配ですわ」


 今から心配事を増やさないで。明日が怖くなる……


「お父様もいますから大丈夫でしょう。……………………大丈夫ですよね?」


「わかりませんわ。まあ、クフィーはまだ小さいのですから――わ、わたくしが守って差し上げてもよろしくてよ?」


 え、ここでツンデレになるの?ハウジークさんの一件からちょっと態度がまた変わったな、と思ったのに不意打ちですか?しきりにこっちをちらちらと窺って……リディお姉様がちょっと可愛い。姉が可愛い!


「お願いします!」


「で、ではわたくしの後ろにいればよろしいわ。きっとトール兄様もお相手するために一番近くにいなくてはなりませんから。わたくしが全面に前に出て差し上げますわ」


 おお。リディお姉様がなんかやる気に満ちた顔で部屋に戻っていったよ。でも最後に何をおねだりしようか悩む一言は要らなかったかな。


 ポメアは残っていてくれたらしいので私はそのままポメアの後ろについて行く。部屋に入ったら早速寝る準備。着替えとかも全部お任せなのでここは抵抗さずにポメアに委ねましょう。


 最初の頃はやっぱり緊張したなあ。他人に体を見られるのも抵抗があったし。他人に体を洗ってもらうのも抵抗があった。


 でもさ、自分の体を凝視するとつるぺたのお子ちゃまな体型でしょう?自分で言うのもなんだけど子ども特有のもちもちした柔らかい肌はすべてを物語っているんだよね。


 もう私は真綿ではないんだ、て。クロムフィーアなんだな、て。そう考えると抵抗するのが馬鹿らしくなるんだよね。別にポメアは変態じゃないんだし。私のために尽くそうとしている侍女なんだし。


 それでも抵抗は少なからず残っていたけど7年は大きな積み重ねとなったのかな。もうポメアの前では恥ずかしがったりしないよ!と言うかこうして考えていると恥ずかしがる前にもう終わっているんだよね!


 今日は汗をかいていない事から布で丁寧に体を拭いてもらって終わり。髪の毛もちょちょいとポメアに任せれば終わってしまう。


「では、私はこれで下がります。何かありましたらベルを鳴らしてください」


「ありがとう、ポメア」


 日に日に上達していくポメアに私は心を込めてお礼を言う。最近はジェルエさんにしごかれたのかのか顔の表情をがなかなか読めなくなって困っています。無表情ではないのだけど真面目にやっています!と言うきりりとした顔はちょっとベテランっぽいな。ポメアは可愛いだけじゃなくて凄いと思う。


 ポメアが出ていって少ししたら鐘がなりました。つまり夜の9の鐘ですね?9時とか早すぎるわー。


 まあ寝ないとバレちゃうんだけど。ポメアはいつの間にか私の健康管理も出来るようになっているので嘘を見抜かれてしまうのです。


 寝不足を問われたら困るので寝ましょう。娯楽がないので言い訳がかなり難しいからね。ベッドの脇に置いてあるアブルとノルアの寝床(大きめの籠に布を詰め込んだ)を覗きこんでお休み。


 今日も2匹の寝顔に癒されながら私も寝ようっと。本当は抱き締めて寝たいけど毛がいっぱいついてポメアとジェルエさんのコンボで怒られるからやりません。大人を怒らせたら駄目なんです。


 なんか忘れているような気がするけど、お休み。明日は絶対にリディお姉様から離れないぞ!よし。




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