大人組のターン
修正いたしました。28.12.31
起きました。おそようございます。いや、昼は過ぎたからこんにちわでいいのかな?まあ何にしてもお昼寝タイムを逃げ道にちゃっかり寝ておりました。ベッドがふっかふかなもので、つい。
ダリスさんとコルマルト家のメイドさんの案内によりある一室でお昼寝タイムと洒落こんだ私はそっとベッドから下りる。
起きたらコレを、と言われていたベルを鳴らせば可愛らしいちりんちりんと言う音が室内に響いた。ってこれメイドさんを呼ぶやつじゃん!
そしてすぐに来てくれるメイドさーん。あ、ダリスさんと一緒にいたメイドさんだ。来て早々に会釈して身だしなみを整えてくださいました。幸いにしてドレスにしわがなかったみたい。手早くささっとやって髪も直して出来上がり。満足がいったのかうんと頷いて案内してくださいました。そういえばお茶会の場所からそんなに離れていなかった部屋だよね、ここ。
それで――思うに不思議な光景を目にしているのは気のせいかな?いや、思わず目をごしごししてみたけどなにも変わらなかった。むしろあれが当たり前のように出来上がっている。
歩いてしばらくしましたらジルクセド様にハニャーツァ様。そしてお母様がゆったりとお茶を飲んでいる。別にこれが不思議ではない。不思議なのはその場所であって、そこは間違いなくお茶をする場所ではない。
まるでリポーターのように言わせていただこう。もしかしたらまだ寝ているのかもしれない。
さてお気づきでしょうか皆様。私は部屋から出ましたが、まだ部屋に入ってはおりません。メイドさんを呼び、身だしなみを整えてもらって部屋から出たのです。現在は歩いています。そして連れてこられたのがここです。まだ歩いている最中で前方には優雅に3人の大人たちでお茶会が展開されているのです。
もう一度いいます。まだ歩いている最中で、前方には優雅にお茶会――お気づきでしょうか。なんと貴族が廊下でお茶会をしているのです!
ゆーたちは、キゾクだろー?と問いたい。
貴族の常識がもう木っ端微塵で吹き飛んでしまっている。いいのか?いいのか!?一つの扉の前を陣取って廊下でそんなことをして、いいのか!?さすがに足を止めてしまったのは、ね。当然でしょう?メイドさんに苦笑いを返されてしまった……あれ、私がおかしいのか。これ何回ほど言っているんだろう……
「まあクフィー、いらっしゃい」
よ、呼ばれちゃった……呼ばれたら行くしかない。いや、いかないとこれがどういう意味なのかまったく理解ができないんだけどね。教えてくれるよね?お母様や。
ダリスさんによいしょとされて……はい、どういう事ですか?
「若い二人を閉じ込めてみたの。でも、心配でしょう?だからこうして一番近くで見守っているのよ」
「ハニャーツァ様、それだけでは誤解してしまいますわ」
「あら。嫌だわ。閉じ込めただなんて物騒なことではないのですよ?二人の時間を作ったのでしたわ。冗談が過ぎましたわね」
「クロムフィーア嬢をからかうのはほどほどにな」
どの辺からからかわれているのでしょうか。私はそれを詳しく知りたい。絶対に最初からだ!
改めてメイドさんにお茶を入れてもらう。なんとハーブである。つまりあれですか?起きろってことだね!意気揚々とそれを飲みまして……現実が変わりませんでした。むしろ熱かった!
もう一口?いえいえもう結構です。猫舌じゃないけど淹れたてはさすがに熱かったです。あれ、猫舌って本当はないんだっけ?どうだったっけ?
まあそんな事実を確かにしてくれる人もいないので自分でスルーしよっと。あれ、落ち着けているのか謎だ。
私がカップを置いて扉を――見ていたつもりだったが、その扉側にいるジルクセド様を見つめたら観念したように肩をすくめ出した。まいったな、て。私にはさっぱりわからないけどね。
見つめられたら嘘は付けないらしい。そうか。この人はやっぱりお父様と近い感じがするよ。
「そろそろ説明してあげてもらえないだろうか、クレラリア様」
「あら。どれをかしら?」
「場所、だろう」
え。やっぱり廊下ってちょっと気にしていたんだ。だったらやめればいいのに……でも何となく顔が仏頂面で機嫌が悪そうでもこの女性陣に勝てないような気がするんだよね。
案の定と言うかなんと言うか……一言二言、お母様と話すとジルクセド様の苦笑いで完敗である。かかあ天下って貴族の中であるんですか。でもお茶会とかって、女性の方がイメージが強いよね。つまりお母様たちの方が場馴れしているので男性はたじたじなのかー。
お母様とハニャーツァ様を見ているとそんな事を思ってしまう。男性だって社交を教えられているから貴族風の遠回しな交わし方とかわかっているはず。
怯むことなく体勢を崩さないお母様とハニャーツァ様。適度に身を引くジルクセド様……触らぬなんたらだったりして。ジルクセド様がわかんないや。
そんな事よりお母様から説明です。主に場所とか場所とか。あとリディお姉様とか。うふふと扇で口元を隠しているけど分かる。楽しいんですね?お母様。
「クフィー、人様の屋敷をあまり詳しくは教えられないから簡単に言いますけど、ここは館の繋ぎ回廊なのよ」
「繋ぎ?……北館と西館を繋いでいる回廊、と言うことですか」
「ふむ。やはり聡明だ。すぐに理解しているようだ」
「息子がいなくて残念ですわ」
なにか恐ろしい単語が聞こえたがスルーで!お母様、続きを。にこにこと私の様子を伺っていないで続きをっ!
「ふふふ。そうね。それでいいと思うわ。ただ回廊の間に繋ぎの部屋が作ってあるのですよ。どの部分が、と知るのは失礼ですから探らないように」
「はい。――あの、お母様。お聞きしたいのですがそうなるとここは部屋の中なのですか?」
「中ですよ、クロムフィーア嬢。ずいぶんと細長い部屋でしょう?繋ぎを三つにしましたの。決してここは回廊ではありません」
三つ……寝室と応接室はいるとしてあとは――侍女部屋とか?でもそうなるとここが応接間となるわけで……どれだよっ。
それよりもなんでこんな扉の前で飲む必要があるのだろうか。むしろなんで端なの。扉との距離が5メートルもあるかないか……常識がわからない。こんな長い部屋の真ん中でも困るけどね。
思わずジルクセド様の後ろにある扉をまた見たらああ、と納得したように顎を触って頷いた。髭は生えていないと思うけど……
で、今度はその悟ってくれた理由をジルクセド様が言う。ここの方が面白い、とな。どんな理由だ。
訳がわからないって顔をこれでもかとしてやったらハニャーツァ様が笑うし。お母様も気にしないようにとか言っちゃうし。ジルクセド様もそのままはぐらかしちゃうし。ちょっとのけ者である!
なのでほんの少しの希望を胸に……ダリスさんに視線を向けてみる。じぃっと見つめて……軽く首を振られた!?なんとっ――くぅっ。これじゃあ誰に聞いてもわかんないよっ。――はっ!
「そういえばリディお姉様とハウジーク様のお姿が見えないようですがその扉の奥でしょうか?」
「ありあら。ええ、二人には少し話し合う時間が必要ですから置いてきました。結ばれる二人だからこそ、話し合いと言う場を設けなければなりませんからね」
「リディお姉様は大丈夫でしょうか?」
色んな意味で。とくにツンツンの意味で。ドレス一つであそこまで憤慨していたのだから喧嘩が絶えないような気がする。
私は知らないけどリディお姉様のあの性格なら生活の手綱はリディお姉様が持ってしまうんじゃないか心配だよ。ハウジークさんはどんな人かまだわからないけど。少なくともリディお姉様と言い合えるからお互いの相性はそんなに悪くない……よね?
でもそんな私の心配は数秒で打ち消される。みんながにこり(ジルクセド様のは悪どい)と笑みを作って何も心配しなくていいって。先読みされてしまった……
どこからそんな自信が来るのだろうか。大人の事情なのかもしかしたら聞けないような気がしたけど――意外にもすんなりお話ししてくれるらしい。ただ、あまりにも面食らう内容にちょっとついていけない。
元々は仲の悪かった二人なんですって。でもハウジークさんは一目惚れしていて、一年ぐらいでそれを修復したのだとか。でもリディお姉様はこの時からすでに高慢高飛車っぽかったらしい。同じ伯爵としても、さすがに性格で嫌われてしまうのではないのかと最初はただのお付き合いだったのだとか。
しかし時が経ってもハウジークさんは高慢な態度をとってしまうリディお姉様を見ても恋は燃え尽きず、今となっては2人とも恋人のような関係になっていた。ついでに親も良好になっていたり。
アーガスト家はまだトールお兄様が結婚していないのでリディお姉様が外に嫁がなければならない。婿入りしてきたらアーガスト家の家督がリディお姉様に軍配が上がっちゃうからね。リディお姉様は嫁入りしなければならない。
けどコルマルト伯爵家のお家事情とハウジークさん自身の決意で数年前には家を出ることになっていたんですって。兄夫婦の自営業を引き継ぐのだとか。
ハウジークさんは三男であり、すでにコルマルト伯爵家には兄が結婚してお嫁さんも貰っている。なので結婚するのならば出ていかなければならず、自営業を引き継ぐならば爵位はもらえずに降格するようなものなので最初はリディお姉様との結婚は後ろ向きで保留だったみたい。
なのでリディお姉様に嫁ぐことによって降格宣言を言い渡してそれでも好きならその性格を改めなさい。でないとハウジークとの結婚は認めませんとお母様は言ったらしい。今までと同じ生活は出来ない有無もちゃんと説明してリディお姉様に決めさせたとか。これがお母様のせめての親心だと言っている。
結果、それを聞いてもリディお姉様はハウジークさんを忘れられず、諦められず……降格を受け入れたんだとか。あの性格でよくそれを認めようとしたと驚きだよ。愛ってそこまで変わるんだね。
それでも2人の喧嘩は絶えることなく、やっぱり心配の両家の両親はこうやってすぐ側で見守っている。それが現在進行形で――いや、扉の奥ってあの2人がいるってことでしょ?見守るにはずいぶんと近すぎるような……
「心配ですから」
「ええ、心配ですもの」
「心配だから仕方がない」
お母様、ハニャーツァ様、ジルクセド様……心配でも節度と言うものがあるでしょうよ。もしかして盗み聞き……?聞こえないから違うはずだっ!
今この瞬間で両親の言動が凄まじく心配である。
何がって?加減とか。てかよくお父様が許したものだ……いや、待てよ?許してはいないけど我が娘の事を思って血の涙を流しながらリディお姉様の結婚を許した反動が私に来ているのではなかろうか。ほら、トールお兄様にはうまく避けてリディお姉様はお嫁にでちゃうからその心配のない私に全部がくる……
あれ?そう言うこと!?今までってそう言うことだったの!?やたら叫んで抱っこしたり一緒に居たがったりしたのってそう言うことだったの!?ただの性格なだけだよね!?
「因みに降格はただのはったりですよ。内緒ですからねクフィー」
「来年の驚く顔が楽しみですわね。お店の方をわたくしたちが買い取ったといつ気づくのかしら?」
「それは来年だろう。そのためにゼドロムには内緒にしておくようにと言っておいた。タタナは申し訳なさそうに笑っていたがな」
「まあ。タタナったらまだ遠慮していますの?実家を買い取ったのが不味かったかしら?」
「いいではありませんか。ご主人にも了承を得たのでしょう?」
「ええ。ちゃんと別も用意いたしましたし、わたくしたちが後ろ楯で支援もしやすくなりますから圧倒されながら頷いてくださいましたわ」
おほほほ。
そんな感じでどんどん、進むよ。降格じゃないって。お店と言うか実家を買い取ったって。ゼドロムさんとタタナさんはどなたですか。後ろ楯ってどう言うことですか。え、もう訳がわからない。
ええーと?……自営業していた所の家を丸ごと買い取ったと言うこと?兄夫婦って言っていたからゼドロムさんとタタナさんてその兄夫婦だね。の、自営業をハウジークさんに譲る形なんだよね?
自営業をハウジークさんにそのまま譲ると降格。つまり庶民の仲間入り。だよね?
それを阻止?しようと両親ズが根回ししてごっそりお店を買収。そうすれば降格をせずに貴族の名で卸せる……なのかな?貴族が買い取ったのだから店は貴族の物で………貴族としてやれる?だから降格はなし、なのかな?
駄目だ。この両家の暴走っぷりにどんな思惑が絡んでいるのか全く理解できない。実家を買い取るって何?嫁いでいくのだから主流はやはりコルマルト伯爵家の方だとは思うけど……
「孫はいつになるのかしら。さすがにまだ二人は若いからゼドロムご夫婦も携わるのでしょう?」
「そうですわね。飲み込みが早ければ二、三年かしら。そうなるとタタナは外せなくなるから孫も先伸ばしになるのかしら。タタナが早く孫を作ってくれて助かったわ」
「気長に待てるがハウジークの子も見たいな。これは二人には頑張ってもらわねばならぬ」
なんか会話がさらに進んでいた!
いつの間にか孫の話だよ。気が早いよこの人たち!でも止められない止まらない某お菓子のように未来像がもくもくと膨れ上がっていく。すごい創造力だね。そしてその矛先に私を混ぜないでほしい。私が大きくなったらどうなるとかわかりませんって。
きっと美人になるとか言われても『野獣の調教師』で台無しになると思うから止めて。いや、認めていないけどね!
それからしばらく弄られて私はくたくた。リディお姉様とハウジークさんが戻ってくる頃には笑みが張り付いてしばらく顔の筋肉が固まったままでしたよっ。
帰りの馬車の中ではリディお姉様が標的にされて馬車の中がずいぶんと賑やかだった。楽しいけど……楽しいけど!もう遠慮したいな、と思ってもにこりとお母様から今度の予定を言われてしまった。と言うか来週の件を忘れていました。
お父様のお父様――お祖父様はどんな人かな……お父様の性格がどちらから受け継いでいるのかは知らないけど普通では終わらないのだろうな、と考えがつくので気が遠くなったのは私だけではないはずだ。
トールお兄様から性格とか聞いてこよう。ダリスさんとかジェルエさんにも聞いとこう。前準備は必要だよ。そして心の準備もね!
頑張れ、私!きっと嵐がやって来る!備えるんだ!!




