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お悩み相談?

修正いたしました。28.12.31

 パタン、と扉がしまったと同時に私の腕を掴んでいたリディお姉様はすぐさま離していそいそと備え付けてある椅子に座る。私は呆然とそれを見た。


 痛くはなかったけど、強引に引っ張られただけあって思考は全然ついていっていない。辛うじてアブルとノルアをよろしく!見たいな事を口走ったかそれとも思っただけか……どっちだったかな。とりあえずリディお姉様に呼ばれたから素直に行動しようか。対面の椅子に座れ、とのことです。なんなんでしょうね?


 促されるままに座って……座って……………………沈黙。どうしろと言う。顔を伺うけど口許は扇で隠されているし視線はあっちこっちに泳いでいる。ついでとばかりに意味のない咳払い。リディお姉様が変すぎる。仕方がないのでこちらから仕掛けることにしますかね。たぶん……ハウジークさんの事でしょ?とりあえず聞いておこうかな……


「リディお姉様、先ほどの話でハウジーク様と結ばれるのは本当ですか?」


「な!?そっ、ちっ、なぜその話ですの!?」


 それしか今吹っ掛けられる話題がないからです。


「私もお茶会に出席になりましたから。リディお姉様に助力するためにお話しをと思いました」


「ほ、本当に?わ、わたくしの手助けをしてくださるの?ハウジークを横取りしましたら許しませんわ!」


「リディお姉様、私は節操なしではありません。まだ結婚も恋も早いでしょう」


 いや、もしかしたら普通に恋はこのくらいから始まってもおかしくはない。けど7歳児の恋って共感が出来るから一緒にいたい最高の相棒、って言うポジションだよね。そのまま好き!て一途に想い初恋が成就するか、好きだけど年を重ねる事にいつの間にか初恋が終わっちゃうパターン。私は精神年齢がアレだから恋に落ちるのはずっと後だと思う。


 さて。私の言った言葉に納得したリディお姉様。一つ頷いて真剣に私を見る。私もそれを見返す。何も言わずに見つめあって……やっぱり視線を反らしちゃうリディお姉様。にらめっこは私の勝ちだ!じゃなくて、何か言いたいんだろうけど……


「あの、」


「な、なんですの?ワーナがまだお茶を持ってこないのよ。もう少し待つべきだわ!」


 いや、来るの……?思わずそんな視線を投げたらガチャリとやって来るワーナ。我が家のメイドさんは優秀ですね。後から来れば予想ができていたかも知れないけど。ポメアが来ていないとなればアブルとノルアの面倒を見てくれているのかな?


 ほとんど音もなくぱぱ!と準備をしていくワーナ。それを見つめる私たち。会話はない。聞かれたくないのかな?まあ話し出してくれないのだから待つしかないのだけど。今日の紅茶はミルクたっぷり!言わばミルクティーです!味がそんな感じ!色はなんとも言えない薄いグレー……右側の人の手術ってまだ決まらないのかな。


 ほとんど私の耳には食器がぶつかる音を出さずにワーナは準備を終えてリディお姉様の後ろに控えた。何かあればすぐに行動が出来る距離。しかし、リディお姉様は聞かれたくないらしい。下がりなさいと言えばすっ、とベルを置いて立ち去っていきました。


 私、思うんです。このベルでメイドさんを呼ぶじゃない?チリンと可愛らしい音を鳴らしてさ。メイドさんはどうやって聞き取っているのでしょうかね?そこが気になって気になって仕方がないのだけど……やっぱり魔法具なのかな?実は対になっていて相手に音を送っていたり?わからないねー。


 もっとわからないのがリディお姉様。こほん、とわざとらしく咳払いをしたかと思うと誰もいないか辺りを確認?して身を少し乗り出してきた。なんだろう?と言う顔で見ていたら耳を貸しなさいだって。ちゃんと返してよー?なんて心の中でふざけつつ身を寄せる。テーブルが広めでそんなに差は縮まらないのだけどね。


「クフィーに聞いて差し上げますわっ。わ、わたくしの性格をどうすれば直せるか、言ってみなさい」


 なんとまあ……照れているのか、一向に顔を向けませんよ、私のお姉様。でももじもじして忙しなくあわてふためく姿がとても可愛く見えるのでさすが私のリディお姉様だと思う!


 しかしですね。リディお姉様の性格を直すにはどうしたらいいかって………………何を直すの?やっぱり金遣いの荒さ?え、素直になれない性格ですか?リディお姉様――どれだけハウジークさんが好きなの!?


「わ、わたくしも常に努力をしていますのよ?ですが限界と言うものがあるのです。ですからここは一つ、クフィーからも意見を聞いてあげますわ!」


 その聞き方がもう駄目なんだと思うんだけどね。さすがリディお姉様だよ。まさかの相談ですか。


「あの、まずリディお姉様は自分をどんな性格だと思っているのですか?」


「相手が恐るるに足りぬ方でしたらはっきり物を言ってしまう性格だわ。で、ですが……真逆の相手ですと強気にでて思わぬ事を言ってしまう事がありますの」


 結局ははっきりと物申しちゃうんだね。お金に関しては触りなしですかリディお姉様。てか本人が理解しているとかさすがだね。そして問題は後者。相手が自分では事足りぬとわかれば自分を守ろうと強気に出ちゃうんだね?ハウジークさんにはこれが当てはまるのかな。喧嘩しちゃったって事は強気にでて相手を怒らせちゃったって事でしょうし。


 一筋縄ではいかないとは思っていたけど、はっきりとした性格ゆえに婚約者と仲違いはまずいよねー、将来的に。しかもお母様が乗り気ときた。答えねば怖い。


「ハウジーク様はどちらの性格がでて揉めてしまわれたのですか?」


「前者ですわ!」


「(そっち!?相手ってそんなに劣るの!?)因みに、何を言って怒らせたのですか?」


「ドレスの色で揉めましたのよ。成人の儀で着るドレスで型はもう決まりましたのに色が未だに決まりませんの」


「リディお姉様はお母様と同じ輝く色ですから何にでも似合うと思います。ハウジーク様はどの色を薦められたのですか?」


「このわたくしに紺色の一色ですわっ。暗すぎてわたくしに合いませんのよ!!」


 うーわー……藍色じゃなくて紺かあ………………金髪碧眼に紺のドレス。聞くところによるとデコルテをいかすために肩まで素肌を見せるらしい。腰はきゅっと絞めて腰から右はストレートのドレスに左は布をかき集めてブーケみたいなアクセントを取り付けるらしい。これを紺一色のみとなればちょっと苦しいかな。下にしっとりした青色とか濃紺を付けたら映えると思う。けどハウジークさんと張り合っていたら頑固に一色!と言い張ったらしい。


 紺の一色でそのドレスの魅力を引き出せない。だからリディお姉様は他の色を混ぜて――紺ではなく花の色、つまりは赤や黄色とか言った暖色をあしらいたいと主張。これで言い合いになったのだとか。


 これはハウジークさん本人とも直接お話しを聞いた方がいいような気がする。さすがに紺はちょっと暗い色だし……紺ってなんか黒っぽいよね。それにリディお姉様は可愛い系ではなく綺麗系だ。ドレスを寒色系にしたら似合いすぎて私は近づけないような気がする。迫力がありそう。それと目立ちそう。


 とりあえず気になるところだけ聞いてまとめてみよう……ちょうど怒りで興奮しているようだからすらすら~と喋ってくれるかもしれない。


「リディお姉様、ハウジーク様は成人の儀でずっとお側にいらっしゃるのですか?」


「ハウジークと一緒にいますわ。わたくしの旦那様になってもらう方ですもの。逃がしませんわ」


 あれ。もうリディお姉様って決まっているのになんで相手から送られた従者がいないんだろう?いないとこの人は私の大切な人だ!て主張ができないよね?まさかお父様が難色を?……まさかね。


「当日に着るハウジーク様の礼服はどのような色なのですか?」


「紺を基調として金や青で装飾をすると言っていましたわ。わたくしは紺の一色でなぜハウジークには金と青がつきますのっ!納得がいきませんわ!」


「リディお姉様、落ち着いてください………………あの、ハウジーク様のお髪と瞳はどの色なんですか?」


「ハウジークは渡しませんわよ?」


「いりません」


「明日が嫌になりそうですわね。髪は紺で瞳は水色ですわ……っ!?クフィーにこんな事を話すだなんて、わたくし、駄目ですわね……」


「いいえ。大丈夫です」


 むしろ考えていないと色を忘れそうになるから困っています。今はまだ前世の記憶がはっきりと残っているから色を例えで付けられるけど……何色とか言っていないと白と黒が当たり前になりそうで怖いんだよね。


 そんな事より!ぶっちゃけて言うとハウジークさんてば独占欲が強そうな気がしますよ、リディお姉様。


 よく異世界の恋愛小説であるじゃないですか。この世界にも活用されているのかさっぱりだけどドレスに相手の髪色をまとってもらうことでお手付きの主張とか。きっとそんなまじないが施されていると思うんだ。


 ハウジークさんは紺に金と青でしょう?紺はたぶんその家の基調とか男だからって理由で通ると思う。金と青ってリディお姉様の持っている色だし。そんでもって紺のドレス一色で着せようとか丸々ハウジークさんの髪色ですよ。独り占めって事じゃないですか。


 これをリディお姉様は気づいていない。たぶん、相手の髪の色とかはこの世界に通用する。私的には結婚式のドレスで使われるのかと思ったけどね。まあ成人の儀も社交の場だから唯一主張ができる場面。ここぞとばかりの見せしめに言いかもしれない。


 あとはこれをリディお姉様に伝えるか……いや、伝えたいんだけどリディお姉様の性格が邪魔をするような気がするんだよね。よくよく考えたらリディお姉様はまっすぐにハウジークさんを好きだと言っている。逃がしはしないまで言っているのだから骨抜きと言ってもいいかな。恋が邪魔をして素直さが拗れている……ひねくれは元からか。


 いや待て待て私。深く考えちゃ駄目。今回の話はドレスの色で揉めている。リディお姉様はただ自分の事を主張しているだけにすぎない。しかも相手は恐るるに足りずの人。強気にでて当然で、相手が好きだから綺麗な自分で隣に立ちたいはず。


 対してハウジークさんは好きだから相手を自分の色に染めたい。独占欲丸出しだけど相手が難色を唱えたので両者が怒っちゃったんだよね。で、きっと両者とも細かいことを聞いてない。相手のなぜ、どうしてがまだ明かされていないだけなんだと思う。もう素直がどうとかじゃないよこれ。


 つまりこの2人は頭を付き合わして話し合う必要がある。お互いの曲げない理由を伝えれば……曲げないからそのまま衝突しちゃったのか………………面倒だな、この2人。目の前で恋愛結婚が成立しているのに、なぜこじれるの。わけが分からないよ。


「リディお姉様、本当に紺一色のみとしか駄目と言われませんでした?」


「なんですの!?クフィーまでわたくしに合わぬ紺を纏えと!?お母様と同じことを言うのでしたらもうこの話は止めにしますわ!」


 お母様は気づいていらっしゃるー。リディお姉様はなぜ気づかないの!?てかこのままじゃ明日のお茶会が険悪な雰囲気のまま開かれるとか嫌なんだけどっ。


「リディお姉様」


「なんですの。もうお話は終わりましたわ!」


「いいえ、言わせていただきます。水色ならきっとハウジーク様のお心に届きます」


「っ……なんですの?クフィー、それでもドレスは暗すぎますわ。わたくしが折れろと言うの?」


「リディお姉様が言ったんですよ?ハウジーク様のお髪は紺色で瞳は水色なのだと。加えてハウジーク様はご自分の色を基調にリディお姉様の色をあしらっていらっしゃるではありませんか」


 ここまで言えば、わかるよね?綺麗な眉がきゅっと寄せられているので私はここで退散いたしましょうか。まだちょっと考えているようだからその内答えにたどり着くと思うし。


 ついでだからお手紙を書いてはどうですか、などを言ってみる。社交辞令の手紙しか書いていないと言うなら何時もより手を加えた特別な手紙を準備すればいい。本当の気持ちをぶつけた手紙をしたためてはどうでしょうか、と。その手紙は特別な手紙なのだから、自由に書いてもいいのだ。特別な手紙に礼儀などいらない。それこそ、本当に言いたいことを余すことなく書けると思う。


 リディお姉様は真っ直ぐだから素直に見えて言葉が足りない時がある。だから秘密の手紙を書けば本音を言えると思うんだよね。素直になりなさい、とこの前お母様に言われていたようだし。手紙なら大丈夫だよ。秘密で特別な手紙なら!この手紙の時だけは素直になれると思えば自然と書いちゃえるもんだよ!


 だがしかし!明日会うのに手紙は遅すぎたかもしれない!でも私はもう退出してしまっていると言う事実!なんてうっかりだ!


 かといって引き返すのも馬鹿らしい。言い切った感じで出ていったくせに戻るのは馬鹿らしいよ!私の馬鹿っ。だからアブルたちを回収するしかありません。あ、でもその前にお母様に聞いてみようかな。リディお姉様のドレスの意味とか。間違っていたらどうしよう。知ってます、みたいな感じで言い切っちゃったよ。


 やっぱりお母様のところに行ってこよう。そして正直に話そう。もし色にそんな意味合いがなかったらリディお姉様とハウジークさんに更なる亀裂がっ――それは、やばい。まずい。


 お母様あああああああああああ!?どこですかあああああああああああっ!?




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