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縁者について

修正いたしました。28.12.31

 なぜかトールお兄様に会うたびにため息をつかれ、なおかつ眉間を揉む仕草をよく目にするような気がしてならない。遠征はそんなに疲れるものだったのかな?騎士って大変だね。もしかしたらだけど、ノルアが頭に乗っちゃうからかな?そんなわけないか。


 最近になって存在をうっかり忘れていたデュグランも苦笑いを浮かべながらこちらを見るので私は少しだけいたたまれない。なぜだ。


 本日はとてつもなく重大なお知らせがある、とお母様から言伝てがあったのでみんなが大広間に集まって団欒に洒落こんでいます!


 相変わらずツンツンの対応でアブルとノルアを触りたいと言えないリディお姉様。ちらりとこちらの様子を伺って躊躇う様子はアブルが来てからよく見るよ。しばらく日を置いたら何これから触りたい、と目で訴える仕草へと変貌している事に気づいた。


 最初はわからなかったんだけどね。私がアブルとノルアを抱えて移動していると目が追っているんだよ。振り向いたらぱ!とそっぽを向いちゃうけど。私も持っている扇を活用して盗み見ていたらノルアを目で追ったりアブルのだらりとした行動を真剣に見ていたり……極めつけは触りますか?と聞けば「まあ!っ、クフィーがどうしてもと言うのなら触ってさしあげますわ!」だもんね。触りたいって素直に言えばいいのに。手はすでに動いていたよ?リディお姉様。


 しかしリディお姉様は私がいると遠慮しながら触る。だから私が2匹に大人しくしていてね、と声をかけ席を外すフリをして扉の隙間から覗いたら両方を抱えてもっふもふ。いつの間にか出ていたワーナと一緒にその光景を見て微笑んだものだ。真後ろから咳払いが聞こえて私が大変だったけどね。ジェルエさん、これにはわけがっ。


 そんなわけで今日は捕まえててほしい!という理由で右隣に座っていたリディお姉様の膝の上にはノルアが。どちらかと言うとノルアの方がお気に入りのようで毛が!て言っていたが結局は愛でる姉に心の中で微笑んでおく。


 相変わらず眉間に軽くしわを寄せているトールお兄様にはアブルを一緒に。リディお姉様は誰かに見られていると触れないので手に持つ扇が忙しなくなる。だからわざわざ私はリディお姉様に背を向けて見ていないよアピール。ここまでしないとリディお姉様は我慢しようと四苦八苦するんだよね。素直になればいいのに……使用人は後ろに控えているが、たぶんソファーの背もたれで見えないと思ってかリディお姉様は私が背中を向けることによって撫で回しているはずだ。ドレスの擦れる音がするし。


「大人しいんだな」


「はい。ぬいぐるみのように大人しくて、今のところ問題はありません。魔法院ではほとんど動かないので本物ではなくて、ぬいぐるみを抱えているのでは?と思われているようです」


「どこか危害がないならそれでいい。でも飼うならせめて私もいる時にしてほしかった(さすがにベベリアは、ない)」


「でもこの子、着いてきたので……」


 やあ、てまた挨拶みたいに片腕をあげた。のらりくらりと動くものだから本当におっさんのように見える。間違えた。おっさんにしか見えない。


「父上にもさらに詳しく話したが――もう仕方がない。今は虫除けにちょうどいいか……」


「虫除け!?アブルにそんな力がっ……今度、実験をしてみます」


「こら、それだと相手側に失礼だろう?無駄に付け上がるかもしれないから止めるんだ」


「っ!?そ、そうですね!追いかけられたら怖いですもの」


「いや、そこまでは……」


 そうだよ怖いよ!!あいつ等は自由に飛び回れるっ。こっちは飛べなくて地面に足を付けて回避しなくてならないと言う枷があるんだから余計な事はしないでおこう!


 なぜかアブルが首を横に振っているんだが、これはどういう意味なのだろうか。まあ気にしてもしょうがないよね!アブルが守ってくれるんだから!


 トールお兄様も抱き上げてみたいと言うので渡す。ちょっとぎこちないようだったけどまるで赤ん坊に高い高いをするかのように高く持ち上げて意外と軽い、なんて言う。私には重いと言うのに……


 と言うかノルアのも実は苦しんだよね。肩に赤ん坊サイズを乗せて移動とか凝るって。重さは教本より軽いけどさ!一番近い重さは……誰か肩に手を置いたくらい?今思ったら私ってばそんなに物を持った記憶が……まあ、いいか!


「食事とかどうしているんだ?」


「ポメアが。実は見た目と違ってアブルはあまり食べないみたいで」


「食費が心配だったが杞憂だったか……」


「ポメアに詳しく聞いてみなくては……」


 手ずから渡すときはゴリンを丸々一個だけだし。まさかだとは思うけど私の前で少食の演技なんてしなくてもいい。あとでこっそりとみんながあげているのかな?やっぱりポメアに聞かなきゃわからないや。因みにアブルは雑食です。熊さんはそのままでした。


 そんなまったりとしている中――お母様を迎えに行っていたジェルエさんから報告が。こりゃあ出迎えなければとみなが立ち上がる。アブルとノルアはソファーの上ね。


「遅れてごめんなさいね?返事がなかなか来なくて……」


 やはり優雅にお母様が入ってくる。本当はその扉まで出迎えだけど私たちは家族なのでちょっとだけ気を緩くしていいのだ!これで間違えたならお母様の叱責が飛びます。みなさん、気を付けましょう。この場合はトールお兄様が一番、怒られますから……


 座りなさい、と言われれば素直に座りましょう。ここにお父様がいれば多少の礼節は見逃してくれるんだけどなあ……あいにくとお父様は平常勤務です。今日はシェムピスを探し回るんだって。お父様の普段からやる仕事がちょっと気になってきたよ。魔法関係なら何でも屋でもやっているのかね?そうだったら王宮筆頭が泣きそうだよ。


 アブル、ちょっと退いてね。ノルアも一緒に床で待機をしていてくだされ。よいせ。


「トール、遠征はどうだったかしら?」


「はい。初めてで少し肩に力が入りましたが学ぶことが多く確実に実りのあった遠征でした」


「ウォガー大隊長様も褒めてくださったのよ?よく切り抜けましたね」


「訓練では剣もですが心も乱すなと教えられています。その成果ではないでしょうか」


「自慢の息子でなによりだわ。後でなにか見繕いましょう」


「母上からのお言葉たけでじゅうぶんです」


 これは面接ですか?……堅いよ、トールお兄様……


「もうっ。トールは冷たいわ。――リディはハウジークとどうなりました?」


「順調、ですわ!ただ……順調の中でわたくし、またハウジークを怒らせてしまいましたの……」


「リディ――その強く出る性格を、直しなさいと忠告したはずよ?今のところハウジークに婚約者候補はいないようですがお互いが成人してしまえばころりと変わるものです。早く繋ぎ止めなさい」


「わ、わかっていますわ!こんなわたくしを好きだと言ってくださるのは……き、きっとハウジーク……だけ、ですもの……」


 マジで?リディお姉様ってば本物の恋をそのハウジークさんとやらと歩もうとしていたの!?この前はお茶会仲間です的な雰囲気で語っていなかった!?なにそれリディお姉様っ!――顔、グレーじゃないですかっ――…


 それはきっと真っ赤、と言うことですね?そうですね?つまりリディお姉様は成人をしたら嫁に行っちゃうのか!?相手の懐は大丈夫!?


「あちらのご両親も是非、と乗り気ですが――成人までその性格を改めなければなくなりかねませんからね?頑張りなさい」


「わかっていますわ……」


 怖い。お母様が怖い。なにか圧力的なものを感じる。


「ですから、明日はクフィーも一緒にお茶会にいきますよ。実は縁遠かったお義祖父様よりいい茶葉をいただいたのです」


 今度はこっちに来た!?私が最後とかなんか、きついな!!と言うか


「「「え?」」」


 それしか言葉が出ません。どこから突っ込めばいい?兄妹みんなでハモっちゃったんだけど。


「お、お母様?私も、ですか?あの、魔法院へは……」


「明日はお休みです。ね?」


 いや、ね?て――………………………………えー。


「母上、一応お聞きしますがどちらのお祖父様でしょう?」


「もちろん、お父様のご実家の方よ。そちらしかありません」


「どうして、そのように?」


「今から説明するわね」


 と言うことで説明です。本当はもう少しお茶会の強制参加とか魔法院へはお休みとか色々と聞きたいのだけど……きっと順番に説明してくれるに違いない。よし、今は聞こう。


「デュグランも前に来なさい」


「――は、い」


 ケーリィム男爵家に何があったのだろうか。お祖父様ってどんな人だろう……お父様の兄にはこの前ので見たけど顔の作りが違うだけで配色はほとんど一緒。似ているのかな?厳つい感じだったら笑うよ。


 お母様からのお話しは簡単に告げられる。お父様からの伝言のようで、まず始めに現ケーリィム男爵との関係は断ち切る、とのこと。私との婚約を望んでいるらしいがそれはあくまで私の魔力が高いからであって、一度だけ話を聞いてあげても政略結婚は明らか。加えて私を物のような発言をしたことでお父様は決断を固めたとのこと。


 本当は血縁者の全員と縁を切ろうと思ったが、前の一件でお祖父様は手紙を添えた上、超特急で謝りに来たらしい。私は知らなかったよ!それで私の事を思い出して祖父母たちだけを縁者として迎えることにしたって。もう隠居もしているし、祖父母たちにはケーリィム男爵家の内情など知らないそうだ。


 家督もとっくの昔に渡して隠居生活をのんびりと暮らしていますよ、と言う時に息子たちの衝突でかなり慌てたらしい。お父様が送った手紙の中身はかなりご立腹です!と言う内容だったらしく、お祖父様は別に争うつもりもなかったし上の息子がそんな馬鹿な事をしたのかと呆れ返ってご自身だけアーガスト伯爵家と縁を結び直したのだとか。


 昔はまだ家督を持っていて、息子(お父様)の方が爵位が上だしお母様の方の家とゴタゴタもしていたしで中々会う機会が出来なかったけど実は手紙でうっすらと繋がっていたし、もう自由なのだからどちらにつく?と言われたら考えなしよりお父様を選ぶって。現状を細かくは知らないが、孫(私)をそんな風にしか見ていないなら縁を結ぶのも甚だしいと怒っていたのだとか。


 その状況だとお祖父様と現ケーリィム男爵家との繋がりはどうなるのかと聞くと、引退したお爺ちゃんたちはその家の権力を譲った証拠としてミドルネームを取ってしまうから別に問題はないって。あくまでこの貴族の縁者か~ぐらいなんだとか。


 それって結局……と思ったけどその事実は即日に流したし、汚名がつき回ったとしてもアーガスト伯爵家には大した事はないとの事。あの、初めて聞きましたが?まだ大人にしか伝わってないんだって。そっか……


「と言う事で近々……そうですね、次の無の日に来ます。やっと繋がったお義祖父様とお義祖母様がわたくしの可愛い子どもたちに会いたいと言われたら断れませんわ」


「……近々、ですか。急ですね」


「もっと分かりやすく教えなくてはなりませんから。ですから、ケーリィム男爵家が便乗して屋敷に訪れたら追い返します。デュグラン――わかりますね?」


 いつも穏やかな表情しか見せないお母様が!?怖くはないけど、睨むことはできるらしい……普段はそんな顔をしないし先程までころころと笑うように穏やかだったから違和感がっ。しかも何気に怖い。やりそうにない人がやったら怖い!扇で口許を隠しているからでしょうか!?


 そんなお母様の視線の先はデュグラン。お母様の言っていることを理解したらしい。頭を少し俯きぎみに辛そうな顔で立っていた。肩が少しだけ揺れるのは……拳を強く、握っているからだ。


 ケーリィム男爵家と絶縁。もともとなかったような縁が今回ではっきりと切り離す。デュグランはケーリィム男爵家の四男。追い出すとはっきりお母様が言っている……戻されたら辛い立場になるんじゃないかな。私との婚約を失敗。成り行きでトールお兄様の従者になったけど、失敗は失敗。ここにいる理由はないしケーリィム男爵家と関係を断ち切るならこの家にデュグランの居場所はない。



「っ――発言を、お許しくださいっ」


「――許します」


「私はっ、ケーリィム男爵家の四男です。ここに居場所はないと申されましても、実家にも私の居場所はないと思われますっ」


「――貴方の生まれがケーリィム男爵家なのですから帰る場所はケーリィム男爵家のみです。もう絶縁いたしましたから、そちらの事情をわたくしではわかりません。今日中に荷物をまとめるようになさい」


「私はここにいたいのです!どうかっ、私をこのまま従者として皆様のお側に――」


「デュグラン」


 お母様が立ち上がった…………………………………………もう、睨むような目じゃない。お母様も泣きそうな顔だ。静かにデュグランに歩み寄ってその頬を撫でた。まるでデュグランのお母様みたい。


「アーガスト伯爵家当主はわたくしの旦那様です。わたくし一人の権限では貴方を救えません」


「奥様っ……」


「デュグラン――四男である貴方は選ぶ権利があるはずです。五年、堪えなさい」


「っ……は、いっ……」


「ダリス。デュグランの手伝いを。馬車を出しなさい」


「かしこまりました」


 ――そしてこの日、デュグランはケーリィム男爵家へ帰った……しんみりするね。そして私への説明はないのですか、お母様。最近はみなさん、雑じゃない?


 デュグランのお別れの流れに乗って解散ってどういう事ですか。そして私はリディお姉様に連れ去られたのですがどうすればいいんですか!?あ、トールお兄様!アブルとノルアを頼みます!!




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