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さあ、説明を

修正いたしました。28.12.30

 じゃじゃん。


 そんな感じの効果音をつけて私、登・場!レーバレンス様の腕に乗って……


 なぜこうなったか。それは私が少し不安になったのか魔力暴走をしかけたからである!威張ることではないが、狙われているとわかって返り討ちにしてやる!とすぐに切り込める私ではないので。ちょっと空気が大変なことになったらしい。


 わしゃあと撫でていたレーバレンス様の手がビクッとなって次にはとりあえずアブルとノルアを首根っこでも掴んだのか持ってきて私に押し付けるでしょ。それでもぎゅーって抱きついてもなんか癒されると言う前にしがみつく物を見つけた、というね。あまり意味がなかったらしい。


 そうしていく内に空気が薄くなってノルアが私の腕の中から脱走。アブルは大人しく私に呼び掛けていたらしいのだけど、聞こえませんでした。


 仕方なくレーバレンス様が頭をまたわしゃあわしゃあと撫でるけど……私としては物足りなくて。意識はあるんだけどなぜか無性に一肌がほしくて体がもうね、ローブをしっかり握ったんですよ。手を伸ばさなかったのは何か踏み込めなかった――のかな?自分でもよくわかっておりません。


 呼吸をしろ、と言われたのでしましたよ。したけど魔力はちょっと収まるだけ。繰り返してもちょーっとしか変わらなかったと思います。そうしたらレーバレンス様が自ら抱っこをしてくれてですね、背中をポンポンと。ちょっと乱暴な感じだったがこれがまた安心してしまう私。精神年齢が退化していませんかね?抱っこされないと落ち着かないとは……


 しばらく背中をポンポンと叩かれて――落ち着くんだな~、これが。魔力暴走も落ち着いてきたからいっそのこと聞きに行くか、て事になり影渡り。アブルは私が持ってノルアはレーバレンス様の肩。レーバレンス様はノルアがよじよじしてもそこまで抵抗はないらしい。乗ったことを確認してそのまま飛びました。


 だからじゃじゃん。なわけです。お父様の背中が見える光景はあまりないパターンですね。ゆっくり振り向いて私を見たと思ったらぎょっ!?としているお父様の顔が面白い。


「クフィー!!」


「あ」


 ノルアがモモンガになった。いや、リスのままだけど。お父様が飛び付こうとしたらすかさずノルアが顔面にびたん。「んぶふぉ」て聞こえた。あれって呼吸はできるのかな?そして距離をとるレーバレンス様。私とそのまま離れる。もがくお父様がなんとも言えませんね。


「レーバレンスよ。喋りおったな?」


「本人に自覚を持ってもらわなければならない、と私が判断しました」


「グレストフの娘はなにかと関わりが出てくるな。――引退してグラムディアに押し付けるか……」


「こればかりは手伝ってください、父上。それにしてもレーバレンス魔術師殿も珍しいですね。子どもを抱えてくるなど……昔ではあり得ない」


「先ほど、娘っ子の魔力が大きく揺れましたからな。慰めるためにこうなったのであろう」


「黙秘する」


 よく見たら顔がキラキラでわからない陛下とイケメンに復活したグラムディア殿下に天辺が空しいヴィグマンお爺ちゃんがいる。そしてお父様がいるのだからここは――どこですかね?宰相様は?陛下とペアのイメージを持っていたんだけど……


「ほぅ……これがベベリアか。大人しいな」


 きょろきょろとしていたら陛下とヴィグマンお爺ちゃんがアブルに興味を持ち始めたよ。じぃっとこちらを見ても渡しません。今なら言える。レーバレンス様と同じぐらい安定剤として活躍しているからね!


 てかノルアがまだくっついているよ……何気にしっぽが上下にふりふりと動かしているんだけど?それって今まで見ていた感じ、喜んでいるんだよね?ミツミツをあげた時も上下にふっていたし。顔面にくっつく事がそんなに楽しいのか。お父様が引っ張っても取れないとかどんだけしがみつきたいの?心なしか顔に悦が……


 お父様はしばらく置いておくとして、私はこっちでお話しです。わかっていますよ。あったこともない、教会のシェムピスについてだと。私が関わってしまったと、さっき言われたからね。憶測のようなものみたいだけど。


 レーバレンス様は勝手にこっちに飛んで来たから近衛の騎士に連絡してくる、とのこと。連絡?と疑問を顔に出したらグラムディア殿下が片手で制した。こっちで処理するんだって。わけがわからないけどきっと陛下やグラムディア殿下がここにいることが問題視しているんだと思います。そりゃあお父様の影に飛んだら陛下とお話ししていました、となれば護衛をしていた騎士はどうしたんだ、てなるよね。


 なんと言うか、この部屋は初めて見る気がする……ちょび髭隊長様を発見。他に近衛騎士と上級騎士。陛下の執務室とでも言うのかな?奥に大きな仕事机を構えた陛下が紙の山に埋もれているね。ちょっと離れた横向きの壁際、そこにはグラムディア殿下がこれまた紙の山に埋もれている。


 ヴィグマンお爺ちゃんはお父様の隣にいて部屋の中央とでも言うのかな?そこに立っていた。お父様もここにいたから私たちも真ん中に出たと言うわけで……レーバレンス様はお父様の影に飛んだから注目の的だよ。でもお父様は陛下になにか報告があったんでしょう?お仕事って言ってはぐらかされる気がするけど。


 陛下の執務室に無断で入ったようなものだから連絡をしようとした。きっとこれに違いない。ほら、後ろの扉から宰相様が来て驚いているんだもん。


「茶の用意を」


「ただいま」


 宰相様が来たからちょうどいい、と言わんばかりに立ち上がった陛下は後ろを向いて歩いていく。どうやら奥にテーブルがあるらしい。レーバレンス様が動き出したおかげで確認ができましたよ。なぜか丸いテーブルがある。しかもたぶん白。椅子も白。やっぱり貴族には白が主流なのかな?てかこっちにも扉が左右にあるんだけど通路としてはどうなっているの?それとも部屋?なぜ2つもあるんだろう。


 お父様は放置で陛下の隣にグラムディア殿下とヴィグマンお爺ちゃん。レーバレンス様はヴィグマンお爺ちゃんの隣で私はさらにその隣。しばらくして宰相様がお茶を持ってきて皆に配ったらグラムディア殿下の隣に座った。あと一つはきっとお父様。七人って中途半端だけど誰かが用意したのかな?テーブルが大きいから問題にはならないけど。椅子がぴったりなのは驚きだ。


「グレストフ、早く来い」


 ……陛下、お父様はいつの間にかゾンビになったようですっ。必死に剥がそうとしていたお父様がぴたっと止まって手探りでこっちに来る……手なんか前に出すものだから余計に怖い。変な唸り声はあげていないけどもう動きがゾンビだよっ。見てっ!騎士様方も引いてるっ……


「ノルア、おいで」


 さすがに見ていられなかったので呼んだ。もう本当にね、あんなお父様、嫌だ!


 これで来てくれなかったらどうしようとは思ったけど、ぱ!と空中回転をいれて地面に着地したと思えばとたたたたたー!と私の元に駆けつけてくれた。椅子をうまいこと上って背もたれの上まで上ったノルアはそのままレーバレンス様の頭にしがみつく。――え?なんでレーバレンス様なの!?てかそっち!?


 レーバレンス様の眉間が一瞬でかなり深く寄せられたんだけど!?ノルアやめて!こっちに来て!!ちょっ、なに寛いでんのぉぉおおおお!?レーバレンス様のこめかみに青筋が見えるっ!?やばいよ!ノルアったら!!


「はい、ノルアとアブルは離れてー。陛下に近いから君ら護衛は下がるんだよ」


 お父様ありがとう!ゾンビから復活したお父様がこっちに来なかったらもうどうなっていた事かっ。首根っこをつかんで近衛騎士の隣に置いて戻ってきてくれました!ちょび髭隊長の隣なら安全だね!そこで待っているんだよ!


 お行儀よく座り込んでいるけど何もないからいいよね?大丈夫だよね?陛下の――顔は伺えないからヴィグマンお爺ちゃんを見る。頷いてくれたので大丈夫と言うことにしておこう。ほら、ちょび髭隊長に頼むぞ、って陛下からお言葉が!


「それにしてもクフィーの髪がぐちゃぐちゃなのは――なぜなんだろうかレーバレンス?」


「私の髪も乱れたが何があったんだろうな、グレストフ一進魔法師」


「はいはい。いいから身だしなみを整えてください。陛下の御前ですよ」


 宰相様がなだめていますよ。これはきっと宰相様が一番苦労するポジションだと思われます。……この六人で見れば宰相様かレーバレンス様が苦労人になるのは必然的だよね。うん。


 言われた通りに私も髪を直そうとリボンをとってもちゃもちゃしていた髪を直す。けっこう酷いもちゃもちゃになっていたらしく、なんだか一部が絡まって大変でした。特にお父様がやると聞かなくて……レーバレンス様はささっと手櫛で髪を戻して魔法具もぱぱっと留め直すだけで終わったのにっ。横からお父様がすごい世話を焼いてくる。もう任せた方が楽だと思ったり。


 でもちょっとした問題が発生。お父様は意外と器用だった!リボンで縛ってくれたよ!でも問題はそこじゃないっ。バランスの問題だ!器用だったが不器用でもあったみたいだ。


 まとめて結いましてあら不思議。斜めになっているらしいリボンも結びの大きさとか紐の長さが違うと、ここでお父様の不器用が発覚してしまったのでした!ちょっとくらいならいいですよ、と言ったがかなり大小となってみっともないと後ろで嘆いています。リボンで髪を結べるくせに、蝶々結びは下手だったとは……面倒な不器用だね。


 因みに宰相様も見ていたらしいんだけど、やり方は間違っていないのに形がかなり酷いらしい。やり直し!となって再度挑戦するけど……出来ないお父様。そして納得がいかなくて時間だけが……


「あの、結ばなくてもいいのでは?」


「いや!結ばなければクフィーが完璧にならない!」


 完璧ってなんですか!?


「グレストフ……お前な、こんな時に意地にならずともいいだろう」


「陛下!こんな時だからこそ直さなくてはクフィーの可愛さがより引き立ちません!絶対に直して見せます!!」


「……おい。なんとかしろ」


 おぅ。お父様に背を向けているものだからレーバレンス様が真っ正面……恐ろしくお疲れなんですね。本日も表情筋が急激に死滅されたようです。無表情が降臨なさった!


「お父様、私はこのままでいたいのです。たまに見せる姿も、新たな可愛さだと思いませんか?」


「新たな可愛いクフィーを見せるのが惜しい!!」


「(そう来たか……)お父様、下ろしている髪型は嫌いですか?」


「可愛いに決まっているだろう!」


「じゃあこのままでもいいですよね」


「だがっ――」


「いいですよね?」


 じぃー……と見つめてみる。この技は我が家の筆頭執事ダリスさんを始めデュグランもトールお兄様も納得させた技!お父様に効かないわけがない!!因みにお母様にも聞くよ!もちろんジェルエさんにも聞くけどジェルエさんはたまに我に返って効かないときがある。リディお姉様は掴み所が今一つなのでどうなのだろうか判断がつきません。ジェルエさんと同じくらいの頻度で頷いてくれるかな?


 さて、お父様は?……葛藤しています。「うっ」「あぁあ」「んぐうっ」と……え、葛藤するものあった?てかもう本題に入ろうよ。あそっか、ここでお父様へのスルースキルを発動させればいいんだね!てかもう切り替えてしまえ!


「三つ子の輝きはきっと精霊への道しるべとなるだろう……えーと――まだ満たぬ月……何でしたっけ?」


「クフィーっそれをどこで!?」


「まだ満たぬ導きに私は待つ。満たされた素晴らしき日に私は駆け参じましょう。私は諦めない。シェムピス・エル・トゥリュリュ――この話、この娘に教えるためにグレストフ一進魔法師に訪ねた」


「レーバレンス!なぜ教えたっ」


「グレストフ、落ち着け。話をまず聞け」


 陛下の一喝で押し黙るお父様はまだ理性を失っていなかったようだ。かなり圧し殺すように体を少しだけ揺すって大きく息を吐いた。一先ず私の頭を撫でる事で落ち着いた?それとも紛らわそうとしたか。とりあえずリボンはほどいて私の体の向きも変えて話の軌道を戻したようだ。


 この空気を変えるべく、かは分からないけどお父様の咳払いから話をすべて繋げるためにレーバレンス様から報告。シェムピスの脱獄の事件後、私が狙われるだろうと結論を付けて数日後に私の属性が他者にバレそうになったために当事者になりえるだろうからと伝えたこと。


 魔法具の『調べ手』が魔力過多により壊れまだきちんと把握はしていないが、壊れた魔法具を見るとちょうど私が所持する属性の部分が壊れていたので危ない、とレーバレンス様は言う。わざと数を言わなかったのはここに騎士がいるから、かな。


 お父様が私と同じか、と言えばそうだ、と返すレーバレンス様。この2人の会話でヴィグマンお爺ちゃんを始めみんなも理解したらしい。宰相様とグラムディア殿下の目が少し細くなった。


 お父様の属性は2つ持ち。たぶん、お父様が『調べ手』を使ったら2の反応が出る。だからそれで納得したんだと思う。お父様は私と違って2つある属性の均衡は一律だから。私のようにバラバラではない。【水】と言っていたが使えば結局私が持つ属性は3つと変わらないと言うことだね。


 そしてレーバレンス様はお父様に聞かされていたらしく、今までに私の魔力を求めて求婚してきた貴族の話を知っていたから“ 危機感 ”を持たせた方がいいと判断したと言う。


 あの『調べ手』だけで私の属性がわかり、それが弱味となって漬け込まれたら太刀打ちできなくなるぞ、とレーバレンス様なりにそれは私たちの意思にそぐわない事だから教えたのだと改めて説明した。


 それを聞いた宰相様はついでとばかりに私の魔力が高いことから、私の品行がこのまま問題がなければ王宮筆頭魔法師の座は簡単に託される可能性が高い。とくに親が王宮筆頭なので申し分なければお父様の性格を考えてそのまま譲ると思ってもおかしくはないので、“ 王宮筆頭 ”を狙う貴族はそれを阻止するために私を隙あらば始末しようと考える可能性も教えてくれた。


 お父様は2人の指摘によりすでに撃沈している。お父様としては私には知られずに裏でこっそりと処理をするつもりだったのだっ、とめそめそしながら訴えているけどね。とくに貴族のお見合いの話は現在進行形ですべて蹴散らす勢いで白紙にしているらしい。


「グレストフ一進魔法師殿がすべてを処理すればそれでいいかもしれないが、当人が知らずに暴露していては問題だ。クロムフィーア嬢は知るべきだと思う」


「すでにシェムピスの事も知られたので帰って話します……」


「いや、ここで話せ。今日のお前は夜まで仕事が残っているだろう?」


「陛下、私には愛する妻と娘が待つ我が家に愛しい娘と一緒に帰ると言う天命がっ!!」


「どんな天命だ。いいからさっさと話せ。でないとお前を仕事に戻し、後をウィルとレーバレンスに任せるぞ?」


「クフィー、あっちでお父様とお茶をしながらゆっくりお話しをしようか」


「ここでと言うておったろうが!グレストフ一進魔法師!」


 ……あっちって、どっち?お父様の切り替わりの早さに驚きながらも私はどうすればいいのかわからず瞠目する。


 ヴィグマンお爺ちゃんが怒って宰相様とグラムディア殿下が苦笑い。レーバレンス様に至っては無表情で介入は一切しないオーラを放って座っていますよ……陛下は声だけ。ため息が漏れだしたと思う。


 みんな大変だね。私もまた大変な事になったな、てまだ実感してはいないけど――まずは話を聞くことから考えようと思います。


 さてさて……教会の中心人物と言っていたシェムピスさんとやらはどうしてまた私を狙っている、と皆さんが判断させることしたのやら……今は不安なんてない。だから、じっくり聞こうと思う。




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