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目に余る家族愛

大した事ではないのですが一文字補正しました!

主人公の名前にラ行があった事に今更気づいただけです。。。

誤字・脱字・加筆・修正いたしました。27.4.9

 

 じゃん。じゃじゃん!


「まあ。リディがいたから華やいでいたけれど、クフィーもいるともっと華やぐわね!」


「お母様、それは当然ですわ!私たちはお母様の子どもですもの!」


「朝からこんな華を愛でられる私はこの至福の一時を永遠に味わっていたいよ。そう思うだろう?トフトグル」


「父上、母上。可愛いのは分かりますが食が進んでいませんよ。今日は朝からクフィーをヴィグマン侯爵様にお披露目されるのでしょう?母上はどうしても外せないお茶会があると僕に言っていたではありませんか」


 お兄様、えらく冷静に対応しておりますね。呆れ返るようにため息を吐いて食事を再開させています。


 そんなお父様は「目を養わなければ今日の仕事は出来そうにない」とマジな顔で語るので私は見なかった事にするよ。


 まさか3歳になったらこんなイベントが始まるなんて思っても見なかったです。


 ただいま私こと、クロムフィーアは屋敷の食堂にて家族揃って朝食を摂っております。20人かけの長いテーブルに親と子で向かい合いながら端っこで家族団欒です。


 最近はお一人様だったので寂しさは一気になくなったけど、初日から見てはいけないものを連続で見てます。


 まず、お父様のデレ。鼻の下が伸びていない―――と思いたい顔で「愛しい」とか「可愛い」を連発で褒めちぎるから疲れました。


 お母様は私を抱っこ………いいえ。熱い抱擁で朝を迎えてくれます。ええ、熱い、抱擁で。朝から親馬鹿全快ですでに私のライフゲージはなくなりそうです。


 しかもこの両親は溺愛の流れをお姉様に延長。甘やかされたお姉様はずいぶんと慣れた様子で返していた。さも当然のように………


 次のお兄様は遠慮するように挨拶だけ受け取って交わしていました。なんだかお兄様とはすごく仲良くなれる気がします。


 私は今日からここで食べるんだよ、なんて聞かされた時は雷に打たれたかのように驚愕したよ。うっかり顔に出さなかった私は自慢じゃないけどすごい赤ん坊だと思う。


 なんとかスプーンで頑張ってライフゲージを戻そうと思ったけど、構いたがりの両親はうかれて話が止まらないらしい。


 お兄様が無言で食べ終わった時にはお母様のお皿にはまだ半分も残っているね。


 貴族って、お残しオッケーなんだよね?勿体ない。


「それでは、僕はもう出ますね。父上は後ほどお逢いしましょう」


「わかった。お前も頑張りなさい。それはそうとトフトグル、堅いぞ」


「あー、急がなくては」


 え、お兄様すごい棒読みなんですけど!?


 大袈裟にも目を逸らしながら急ぎ足で去っていくお兄様に唖然な私。なんだろう。お兄様の心が透けて見える。あえて避けたんですね。わかります。


 娘にデレッデレの父を見て幻滅しない息子はいないよ。私もショック受けてるから。目に余るもんね。


 そう言えば、お兄様は魔力がちょっと少なくて魔法師の道を辞めたんだって。代わりに騎士になるんだとか。


 最初はお父様がかなり渋っていたようだけど、今では見習いの中でメキメキと延びているらしい。それを見たお父様はもう口出しもしなくなったとか。よかったね、お兄様。


 お兄様が出ていった後はお母様がやっぱりお残しで早々に退出。時間は迫っていたんだね。お兄様の株がうなぎ登りだよ。


 お父様も習うように手早く食べてダリスさんに今日の確認。早くから私と登城して夜は友人の夜会があるらしいね。ダリスさんさすが出来る執事だ。


 今日のお姉様はすべてマナー、ダンス、社交、お茶と様々なレッスンがあるみたい。私ももう少し大きくなったら教え込まれるのかな………


 そんなわけで揺れる馬車、再びっ!!やっぱり膝の上は逆らえない!


 カタカタポコポコと揺られながらたまに弾んだり揺れたり―――1年半ぶりに乗った馬車は相変わらずお尻に痛いです。しがみついてたらお父様の満面な笑顔にちょっとイラッとしました。


「お。ちょっと大きくなったか?」


「そして可憐になったよ」


「お前は相変わらずか…………早く入れ」


「ああ。クフィーの可憐な姿を広めてくる」


「お前、何しにいくんだ」


 呆れながらお父様を押し込むウェルターさん。わかります。その気持ち。私も何言ってんのこの人レベルで半眼状態です。


 ここにも理解者がいるみたいで何よりです。誰かこの父がどうしてこんな親馬鹿思考なのか教えてください。自分の子どもじゃなかったら犯罪者の匂いがして泣けてくるんですが。


 軽く挨拶を交わして(ウェルターさんには敬意を払って頭を下げておいた)久しぶりに通る玄関ホールはやはり広いです。入る時はキラキラオープン。


 あれから魔力の暴走はしていない。しないようにけっこう抑え込んでみた。それに、寂しくないように誰かが一緒だったから泣くことはなかった。みんな心配性だなー。


 今日は魔力を見てみよう!的なノリで私の魔力みてくれるんだって。まだ正式には見ちゃいけないらしい。それでここに来ているんだけど………ヴィグマン様とはお初で逢うんだけど、どんな人なんだろうね?


 どんな人なのか、期待に胸を膨らませながら抱えられてあのドアへ。今回は止まる事なくスムーズに入っていく。


 右を見れば本が壁一面にずらり。左を見れば人がキラキラを放ちながらたくさん。今日も不思議なファンタジーです!ひゃっふー!


「おはようございます、グレストフ様。久しぶりだね、クフィーちゃん」


「ん?ロノウィス。なんか親いな」


「え!?あ、いやっ。それよりヴィグマン様がお待ちですよ」


 あ。頑張って話題を変えたね。


 お父様が娘馬鹿発言にオロオロするロノウィスくん。ごめんね、こんな父で。これでもお父様はすごい人らしいから。


 らしい、と言うのはお母様の自慢話から聞いたからなんだけど。如何せん。家族贔屓にしか聞こえなくて本当なのかが分からない。お姉様の自慢話はお母様譲りかな。あのおっとりした感じはカモフラージュか………


 それに実戦を見たこともないし、そんな事を他に聞く人がいないから半信半疑。ロノウィスくんが下についている感じだから偉いんだろうけど。やっぱり実感がないからね。そうなんだ、で終わっちゃう。


 いつも通り笑顔で回りを見渡しながら、お父様の顔をチラリと覗く。そうすれば瞬時に気づいて破顔する表情は―――どうしても、威厳とかけ離れて疑ってしまうよ。


 きっとオンオフの切り替えがあるんだろうけど………オフがこれじゃあ、ね?不信に思うしかないでしょうよ。


「今日はここだぞ」


「ここ?じゃあ、おりう」


 あ。濁音が言えた!よし!でもらりるれろ失敗!


「お父様はこのままで行く」


「あいさつは、しっかりしなきゃ、らめです、て。じぇうえが、いってた!」


 まだ繋げられません。もう少し会話の回数を増やさなきゃ。ジェルエさんに色々聞いてみよ。


「クフィーちゃんはずいぶんとしっかりしてるんだね」


「私の娘だから当然だろう?だがしかし!私はクフィーを抱っこしながらヴィグマン様に見せつけたいのだ!」


「み、見せつけるんですか………?」


「本音だ」


「くふぃーは、あいさつしちゃ………らめ?」


 どうだお父様。娘の可愛いおねだりに屈してください。その娘大好きを控えたらもれなく私の中で好感度があがります!頼むからこれ以上ダメ親父を見せないでっ。


「クフィー!なんて可愛いんだ!!」


「確かに可愛いですけど」


「けど!?ロノウィス、お前はクフィーの可愛さを否定するのか!!」


「ええ?なんでそんな解釈に行き着くんですか!?」


 はい。ロノウィスくんがお父様の溺愛モードの被害者になりました。可哀想に。無理矢理に言葉さえもかぶせて勢いよく迫ってる。


 イケメンに迫られたらキャッ!とか思うんだけど、内容が内容なだけにとても残念に思う次第です。なんて残念な人なんだろう。


 そのまま畳み掛けるように私の可愛さを語りだしたお父様に、私は止める術を知りません。むしろ、ここは距離を取って他人のフリをしたい。抱っこされているから何も出来ないんだけどね。


 こんな廊下のど真ん中でロノウィスくんの胸ぐら付かんで揺さぶるお父様は本当に偉人?なのでしょうか。誰かまともな人、求む。


「ええいうるさいわい!!さっさと中に入ってこんかっ!迷惑じゃ!!」


 わあっ!人でた!お爺ちゃん出た!すごい真っ白長髪髭もじゃだあ!


 バアン!と登場してくれたのは真っ白(白いし絶対に白だよ!)な少しウェーブがかかった長髪に髭もウェーブロングでお父様と同じ?ローブを着たお爺ちゃん。


 ビックリしたけどその外見が魔法使いっぷりにちょっと感動して思わずガン見したのは愛嬌だよ。誰だってあんな扉を叩くような開け方をしたらガン見するって。


 てかよく見たら天辺が………光ってらっしゃいますなぁ。もみ上げから生えてるなんて、天辺はいったいどうしちゃったんでしょう。トンガリ帽子を被れば完璧な魔法使いに違いない。いけるいける。あ、ようやく下ろしてくれるの?仕方ないなあ。じゃあこの足にでもくっついているよ。


「これはヴィグマン十進魔法師様。お騒がせしてすみません」


 お父様変わり身はやっ。


「相変わらずか変わり身が早い奴じゃの。グレストフ一進魔法師殿。入らないのなら帰ってくださらんか?」


「いえいえ。今日の予定にお取り立て頂いているはずです。こちらが娘のクロムフィーアです」


「くおむ、ふぃーあ、です。きょうは、よりょしくおねあい、します」


 ぺこりとお辞儀。おしいなー。よろしくが言えなかったよ。名前も言えなきゃ惜しくも何ともないんだけどね。


 そんな私を見てお爺ちゃん事ヴィグマン様は驚いたように見つめてきた。それも疑うように。ちょっと失礼じゃない?


 少しだけ見つめ返すけど、お爺ちゃんとそんな長くは見つめあいたくないので首を傾げてお父様の足に隠れる事にした。上から名前を呼ばれたけど、見ないよ。お爺ちゃんまだ見てる。私、警戒中。


「なるほど。では、中へ」


 目を細めたのはなんでですか!?ヴィグマンお爺ちゃんは一つ頷いて中に入ってっちゃったんだけどっ。


 よくわからないままキョロキョロしていたらお父様が結局は抱き上げて部屋に入っていく。ロノウィスくんは会釈して帰ってっちゃった。


 え、三人でお話しするの?すこぶる嫌な予感がするんだけど………


 誰かー。まともな人もう一人お願いしまーす!






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