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質問攻めをしてみる

修正いたしました。28.12.29

 

「アブルの年はいくつでしょう?」


「ぐるあ」


「――9。これ以上は言わない」


 熊の寿命は5歳で20歳。1歳で4歳と計算して……36、歳?でもこれは前世の知識を引用したものだからこれが正しいと言う訳じゃないんだよなあ。でもこの計算でいくとおっさんに足を突っ込んでいるよ。


「ビーランヴァ様はおいくつですか?」


「俺か?俺は――」


「がっ!」


「……黙秘する」


 ………………言わせないようにしたよね?ならば比例していると思ってもいいのかな?チャンスがあれば聞いてみよう。アブルがいない時っていつだろうか。そんでもってその時にビーランヴァ様と会えるのはいつだろうか……全くもって確約ができない相談だね。


「アブルはなぜ私についてきたのですか?」


 だいたい私になついて(?)いるから間違いはないと思うんだけど――間違っていないよね?じゃないと私が頓珍漢で笑い者だわ。いや、欠伸をしてもいいから答えて。なに顔の毛繕いに勤しんでいるの?


「くぅぅぅぅぅ……」


「…………………………………………………嬢ちゃんから懐かしい匂いがするからたまには人間と関わるのもいいだろう?それに嬢ちゃんは可愛い」


 ビーランヴァ様の素顔が見れなくてよかった。いくら通訳だからって素で可愛いと言われたら照れてしまう。そんな私はぶっとんだ前科と“ 通訳 ”と言う前置きがあるおかげでアブルを凝視するに留まりました。むしろビーランヴァ様の通訳に感情が全く乗っていなかった事が大きいかも知れない。やばい。おっさん説が濃くなってきた。


 もう何から突っ込んだらいいのだろうか。誰か解説を頼めないかな?


 懐かしい匂い、ねー……私って、匂うの?どれを懐かしいと言っているんだろうか。しかもよく考えたら私はアブルと会った時はお父様に抱っこをされていた。ぶっちゃけお父様の匂いが強いと思う。


 お父様が懐かしい?でもお父様にはそんな素振りを見せていない。あ、もしかしてノルア?なんかノルアと最初から上下関係が……いや、和やかだったけど。動物的な匂いを嗅いだのかな?


 ちょいと捻ってもわかりません。わからないならスルーしてもいいじゃないか。別に拘る部分じゃないはず。えーと、次の質問は何にしようかなー……


「ベベリアは身体強化の達人と聞きました。私たち人間の身体強化は魔法として魔素との共鳴が必要です。アブルはどうやって身体強化をなしているのでしょう?」


「ぐるうあ」


「先程と一緒で私がいると言えないらしい。が、ベリア族であるこいつが知っているので説明は任せた。……ここで任すのか」


「がう」


 はあ。とため息が聞こえてきました。ビーランヴァ様がお疲れになっている模様。アブルも投げたね。ビーランヴァ様がいると言えないとか言いつつ丸投げは如何なものか。どっちかにしてほしい。説明が面倒なだけじゃあ……このやり取りでもビーランヴァ様ってば人がいいよっ。ちゃんと説明してくれるっ。なんていい人っ!


 説明によると、身体強化の達人と言うには大袈裟すぎるらしい。よくわからないので首を傾げるとさらに説明してくださいました。


 まあ簡単もなにもそれほど身体強化は大きく違いがあるわけではないらしい。一般的に魔素と魔力が共鳴して各々の属性ごとに魔法として強化される。で、何が違うのかと言うとベベリアはその一般的な部分を省略しているだけなんだとか。


 まずベリア族はベベリアの人間版と思わないことを先に言われた。一緒にするなと言うらしい。形が一緒だから間違うな、と言いたいのかな。確かに一緒くたにしてしまいそうだね。それとベベリアは例外だと言う。はて――何を聞かされるのかな?


 えーと、本来は人間に魔力が蓄積される事はないらしい。しかし、濃い魔素の中で生活をしていたおかげで長い時を得て人間に魔素が蓄積された。純粋ではないからここで魔力と言い換えた。どっかで似たようなものを聞いたような……ふむふむ。


 で、ベベリアなんだけどベベリアは精霊に愛された者として精霊から恩恵を授かっているらしい。詳細は省かれたけど、誰も助けてくれなかったのにベベリアだけが精霊を助けだした事から加護のようなものが贈られたんだとか。だから精霊に愛された者なんだって。それに何か関係があるのだろうか。


 まだ続くようなのでしっかり聞きましょう。で?


「その恩恵は体の内部に隠されていると聞く。魔法陣を授かっているのだとか。その魔法陣は魔力を一部だけ純粋な魔素に変える力があると。だからベベリアは魔力を通すだけで魔素ができ魔法が完成し、身体強化ができる」


「体内で魔法をいつでも完成させられると言うことですか?魔素にする事と身体強化をすることだから2つも魔法陣がある、と言うことですよね?」


「二つを一つにしていると聞いている。俺は魔法について詳しくはないがちょっと魔力を流せばあとは思いのままに身体強化をできると聞いている」


「あの、私の父はご存じの通り魔法師です。ウィル様も魔法師です。私は生体を詳しく調べられなかったから『精霊に愛された』ゆえに出来ることだと教えられたのですがなぜビーランヴァ様は詳しいのですか?」


「俺がベリア族だからだ。ベリア族は眷属に当たる」


「ではなぜ魔法師がこの事を知らないのですか?」


 なにか最近、質問ばかりしているような気がする。


「昔はベリア族とベベリアは同じ存在となっていた。だが、ベベリアは見た目が()ではない。ベベリアとベリア族との大きな違いはその身体強化。他にも対話など色々とあるが一番の脅威は身体強化だ。精霊に関わってから特に同じ存在のはずであるはずのベベリアとベリア族との差は大きく開いて――違いがあるのは個性として受け止められる。しかしそれが差別となり、ベベリアは人間を襲ったことがあるんだ」


「ぐるあ」


「――もちろん、ベベリアの暴走と言う類いではない。まず差別をするようになったのは人間だ。その差別はのちに大きな溝となり、今の人間とベベリアとの隔たり、ついでとばかりに獣人との共存もなくなったんだ。さらに今までは出来ていた動物と対話ができる者がいなくなり、獣人と動物との共存もなくなった。今となってはそんな過去があった事を忘れさせるように共存が進んでいるが昔は差別をきっかけにそれぞれの国で別々に生きていたんだぞ」


「昔はみんな知っていたことでも、分断してしまったために歴史が他種族を交えて受け継がれなかったんですね」


「そうだ。そしてその昔話を鵜呑みにする相手がいない。それが事実だと確証がないから例え真実でも信じてもらえない」


 それなら仕方がない。差別はとても怖いもんね。みんな欲望をいっぱい持っているのは当たり前だし、恐怖に思えたものを遠ざけたいのもわかる。受け継がれなかったのはそれぞれ語り継ぐ間柄に亀裂が入ったから。互いの情報を囲ってしまったから。その一族のみの伝承となった。


 そして今となって遥か昔の歴史を語るにはそれだけの見返りが求められる。ビーランヴァ様が言ったように()のベベリアに昔が当てはまる確証がない。しかも体内で構成されるとわかって信じるものは少ないと思う。


 実際の身体強化を見て「へぇ!すごい!」と思えばこんな凄いことをしているのだからそんな凄いをするのは当然だね、と信じそうだけど……専門家に分類される人はきっと証拠はあるのか?と問う。体内にあるから、と拒んだところでそれが相手に通じる事はないよね。相手から見て証拠がないのならそれは嘘だ、何か仕掛けがあって騙そうとしていると疑うね。


 だから話さない。聞かれたら答える程度には思っているらしいけど聞かれてもいない事実をペラペラと喋るのは得策ではない。との事でした。ずいぶんと奥が深い話になったなぁ……


「そんな事があったんですね。今は和解しているようで、よかったです」


「貴族連中はそうでもなさそうだがな」


「そういう人たちは器が小さい小物ですよ。たまに大物がひっかかりますが」


「それはクロムフィーア嬢の経験からか?」


 器が小さい人たち?まあ噂とか広まっちゃっているからね。


「お父様の娘で『野獣の調教師』。加えて魔力が高いですからそう言う人たちが寄ってくるみたいですよ」


 媚って来た人は……お父様の実家の方がそう捉えられるのかな?実際はお父様へ、の方かもしれないけど。適当に言ったら納得されました。まあ間違ってはいない。ニュアンス的には聞いた話のようだけど凄いらしいし。いったい候補はどれくらいいたのやら……


 あ、あれ気になる。


「さきほどレーバレンス様の質問に石に秘められし謎は消化できないと言いましたけど、それは中身の話ですよね?」


「ぐるうぅ……」


「中身の話に決まっているじゃないか。誰が好き好んで中身を食べるか」


「外はどうなっているのでしょう?レーバレンス様は上級魔法を使って中を手探りしていますけど……どこにいったのでしょう?」


「……がう」


「想像に任せる」


 いや、想像に任せるって……お腹になかったらどこに行ったと想像すればいいの?口にも手を突っ込んだのに出てこなかったら下に行っちゃったって考えるのが普通じゃない?と言うか石を消化なんてできないよね?


 まあいいや。じゃあその中にいた謎と会話はできるのか、と問えば出来るって……やっぱり精霊のことなんだね。てかどうなっていると想像すればいいの。石がお腹じゃなくて背中にあると思っておけばいい?


 まだレーバレンス様が帰ってこないのでさらに突っ込んだ話をしてみよう。気になっていた事は言わなきゃ忘れる。


「声が聞こえるなら、今のその子の気持ちを教えてください」


 助けて、って泣きながら言っていたもんね。助けたいけどどうすればいいのか――普通に壊すだけでも魔法師には躊躇いもんだよ。純魔石って早々お目にかかる物ではないからね。私としては……価値がわからないけど。輝いていればその価値にうっとりとするだろうに……


 これに対してアブルは教えてくれなかった。短く鳴いた答えは「教えて何になるか。眷属の前ではこれ以は教えられない」とな。ベベリアが上の立場なの?


 ぶっちゃけ石に秘められし謎が会話できます、って言っているあたり何を飲み込んだ?と考えるよね……本当、兜が憎い。でも兜を取っても真っ黒シルエットだからわからない。どっちでも駄目じゃん!


「まだ来ませんね」


「グレストフ魔法師をつれてくるのは時間がかかるだろう。彼は陛下の傍から離れない制約があったはずだ」


 え。ちょいちょい抜け出してきた感じで見るんですが?制約があるように見えないんだけど……微妙な顔を作っていたらしい。ビーランヴァ様から表情を指摘されてしまった。慌ててにこりと笑ったのは誤魔化している証拠だね!取り繕いすぎっ。


 でも、本当に遅いなあ。お父様なら飛んで来そうなのに。でも来ないとなるとウィル様あたりにでも止められているのかな?ありえそうだね。


 それとも――もしかしてアブルについてだったり?私の言うことを聞かなかった、と言うのがネックだ。護衛(奴隷)としての契約には誓約を設けてある。レーバレンス様の前で誓約違反はもう逃れられない、よね。あれ?誓約違反したら首輪が絞まる仕組みなのに……なんで発動しなかったんだろう?……私が否定しなかったから!?


 えーと、誓約の条件は――

 ・雇い主であるクロムフィーア・フォンアーガストの言葉は絶対服従。

 ・人、物、生き物へ無闇に攻撃しないこと。威嚇は雇い主と要相談。

 ・一人で勝手に動き回らないこと。

 ・護衛としている場合、雇い主の目の届く所にいること。

 ・必要以上に鳴き声は出さないこと。

 ・大きさは変わらないこと。


 ああ、うん。私が止めなさい、と止めなかったからあの混沌が生まれたのか………………………………………………ん?私の言葉に絶対服従、だよね?曖昧な会話と濁されて言葉があったけどこれって……まさか、ね。


「アブル、適切な自分の年齢を述べよ」


「……………………………………………………ぐるあ」


「ベベリアの年齢は9。俺はベベリアゆえに9が適切である」


 ちょっ。絶対服従の効力が薄いじゃん!言葉遣いの問題?服従……支配下に付き従うこと。従ってこそ言葉をうまく利用しているの?確かに従って回答している。服従の意味を取り間違えたっ。あと聞き方に問題あり!難しいっ。


「人間の年齢に戻して実年齢を述べよ」


「ぐぅるるるる――がう……」


「気づいたのかっ。そのような言葉を使うとなると俺も従うしかない、か――人間の年齢で四十だ。俺にだって隠したいことはある。すべてを暴こうとするのはどうかと思うぞ」


 アブルがおっさんだった件について――どうしよう……一瞬でも『帝王』と変わんないじゃん、て思ってしまった私がいる。


「すべてを聞く必要があれば聞くまでです。そこまで知ろうとは思っていません……それより、ベベリアの寿命はいつまでですか?40だとお父様とほぼ一緒と考えそうで……」


「がっ!」


「人間に合わせたらそう言う数字となるだけで、9歳はまだひよっこ扱いだ。ベベリアの平均寿命は三十年だから俺はまだ若い」


 動物として見て意外と長寿なんだね。でもよかったー。わざわざ人間の年齢に合わせたらそうなるだけで平均寿命が30と考えるとまだ若いね。ちょっと感覚がおかしくなりそうだけど、そう言うことなんだよね?因みに最長は何年ですかと聞くと40年なんだって。動物で見るとかなりおじいちゃんだ。


「あ」


 来た――


 たぶん影の大きさでビーランヴァ様の後ろに出るはめになったんだろうけど。目の前で下から出てくる光景ってなんだか奇妙だね。ずずずー、と私から見たら黒っぽい人の形がにょきにょきと伸びてくるんだから。


 あれ?レーバレンス様は影渡りを使った本人だから分かるとして、もう2人の内にお父様がいないね。エモール様にウィル様だ。エモール様はすぐに出ていってしまったけど、ウィル様は眼鏡をかちゃりと直してすぐにテーブルへ進んで厚みのある紙の束を置いて書き留めの準備にかかっている。と言ってもあとはウィル様が座るだけだけど。


 ウィル様が担当なのか聞いてみると「君の父君は手が離せませんから」と。きっとお父様と私が一緒にいるとお父様が抑えられないからだ。だから別件を押し付けたに違いない。これなら話がスムーズに行きそうだね。でも、ビーランヴァ様には教えられないような事を言っていたけど……どうするんだろう?


「ビーランヴァ十番隊隊長。申し訳ないがベベリアの通訳を担ってもらう。内容は極秘ゆえに、魔術誓約に著名をもらいたい。口外しないこと、このただ一点のみを守ってもらえればいい」


 ばばんとキラキラな紙を――アブルの次は紙を目の前に見せて告げるレーバレンス様。内容を読んでいるのか、しばらくは誰も動かなくなった。そして最初に動いたのはビーランヴァ様。短く承ったと紙をもらってテーブルに集まり出す。


 私はひょいとレーバレンス様に一番近かった椅子に座らされて全員が座り、著名を完了させればキラキラがちょっと輝いてさらにキラキラしだした。そしてタイミングよくエモール様が帰ってくる。空いている席に座れば魔力を集めて指先をキラキラに。魔素を呼び込めば回りもキラキラ。円陣が完成すれば弾けてキラキラが舞う……これ、結界だね。そして同じようにウィル様も結界を作った。キラキラがちょっと2割増しで眩しい。


「ガストレア近衛騎士隊長殿から許可を得、この一室に結界魔法を使った。これで外部に漏れることはない」


「では、始める。今回はベベリアのアブルが飲み込んだオブディン――精霊が入っている純魔石を飲み込んでしまった事について話を聞こう」


「精霊……!?――、石に秘められし謎とはそう言う意味か。対話がどうのと言うから変には思っていた」


「あとで聞こう。まず、順を追って説明をする」




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