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まだ続く騎士棟のお仕事

修正いたしました。28.12.28

 

 さてさて。アブルも護衛として仲間になったので家族にお披露目を果たした私、クロムフィーアです。


 結論から言うに、我がアーガスト家の阿鼻叫喚が!?――と言う事にはなりませんでした!なんだかよくわからないけど、まずジェルエさんとダリスさんに見せたら2人ともふらりと倒れそうになって頭を抱えていましたよ。やっぱり熊は刺激が強すぎたかな?


 ジェルエさんたちの髪の毛が白っぽいので、けっこうなお年……だよね?もう少し労るべきだったかな?でも見せちゃったから後の祭りです。


 でも強いぜ我が家の筆頭家臣。ふらついた体勢をなんとか元に戻して咳払い1つで元通り。うん、元通り……なぜかお父様とともにお説教ですっ。ダリスさんが怖ひっ!しかもジェルエさんも後ろで待機!お次が待ち構えていてちょっとアブルは早まったかな、と思ったのは内緒です。


 2人からお説教をもらって今度はお母様とリディお姉様に。流れに乗って最後に家臣へお披露目。と言ってもみんなほとんど一緒にお披露目をしちゃうんだけどね。


 ダリスさんたちが先に伝達をしてくれたおかげでみんな落ち着けたんだと思う。あと、ノルアのおかげかな。リディお姉様は途中退場になっちゃったけどね。興奮しすぎて。


 集まってくれた大広間(サロンのだいたい隣)に集まってもらって、私がベベリアのアブルを抱えて中に入って来れば誰かが盛大に息を飲み込んで失敗。かなり噎せ込んでいる。因みにボテガイラだったよ。どうした?


 まあ、ポメアが看病?背中を撫でてあげてなんとか紹介ができたんだけどね。このアブルを下ろして挨拶をして、とお願いすると――2、3歩ほど歩いたな~と思ったらその場にどっかりと座って片手をあげて「ぐるぅあ」……やあ、とでも言ったのかな?おかげでみんなの目が面白い感じに見開く。


 そして私が一番に気にしていた砦。ノルアと仲良くできるのか……と言うすごい重大な時がやってきた。お父様の頭に乗って登場したノルアは中に入ったらぴょんと降りてとたたたたー!と私の下にやって来てくれた。だからそのままノルアを抱えて、アブルに振り向くように言ってご対面。私はストッパーである。


 これまたゆっくりと回転して座り込むアブルなんだけど……ノルアに対しても「やあ」とでも言うように片腕をあげて対応していたよ……てかこの図って肉食動物の前に餌を押さえつけている私の図が……でもノルアは逃げ出さない。根性、あるね。


 逃げてもいいから手を離してみたらとたたたたー!とアブルに突進。本当に頭から突っ込んでいったので自ら食べられに行った!?と驚いたのは私だけではないはず!慌てて追いかけて離そうとしたけど……これまた面白い光景が広がっているので思わず笑っちゃう。


 突進したノルアがなぜかアブルの上に乗っかろうと必死。アブルはアブルでノルアをいなしつつ体を乗れるように動かす。するとどうでしょう。下にうつ伏せ大の字のアブルに同じくうつ伏せ大の字のノルア。しかも頭に顎乗せ。同じサイズがまた




 可愛い!!




 ぽへ~、って!ふぅー、て!なんか2匹がそれで落ち着いちゃったよ可愛い!!


 その光景を見て同じことを思ったのがリディお姉様とお母様。お母様は控えめに――いつの間にかお父様の隣を陣取ってにっこりと笑ってます。ちゃっかり抱き寄せているあたりお父様がぬけめない。


 そしてリディお姉様は「まあああああぁぁぁああああああ!?」と叫んで倒れた。ワーナがすごい反射神経を活性させて支えてたのが一番すごいかも。リディお姉様の絶叫……歓声?はわかるけど、あれは驚くからやめてほしい。あとでワーナが「リアディリアお嬢様は幸せそうな顔で眠っています」と言われなかったら勘違いしていたかもしれない。


 そんなわけで……家の主人であるお父様が決めたことなのでアブルはみんなに少し恐々とされながらも迎え入れることに成功しました!まずノルアと仲良くなっているのが突破口になっているね!


 因みに料理長のマルセスが真っ先にアブルの食費について相談をしていた。あ、お世話はポメアかだいたいでみんなが補佐的な感じになったよ。最後にボテガイラが一生懸命、庭は荒らさないでね?とお願いしていた。


 トールお兄様はなんて言うかな?ベベリアだし、トールお兄様も喜ぶかもしれない!男って強いものに惹き寄せられるよね!帰ってからの反応が楽しみ!


 そして今日は騎士棟である。おかしい。全部が終わったと思っていたのにっ。まだこっちに用事が残っていたとは……因みに今回はアブルをお供にコデギス近衛補佐の肩の上……なんだろうか、これ。私はここに来るたびに肩に乗ることがデフォルトになっているのでしょうか?七不思議に加えられそうだよ。作ろうか?探したら出来るかもしれない。


「今ならアビグーア中隊長の気持ちがわかる」


 何をわかったのですか?と言うか、このつるつるの頭部を触るのを躊躇ってしまうのですが……私はアブルを抱えているし、コデギス近衛補佐は私の腰を支えているし……大丈夫だと思う。


「やはり蹴飛ばしそうなのですか?」


「ああ、下を向いていないとお前さんがどこにいるかわからん」


 そ、そんなに小さくないよ!?120はあると思うんだけど!?測っていないからわからないけどっ。そりゃあ、騎士の人ってなぜか背が高いよ?いや、平均な人もちゃんといる。けどね、なぜか重役の騎士はみな背が高いのです。


 今さら何を言ってんだと思ったけどここに来てほとんどはアビグーア中隊長の肩の上なんだから高さ感覚なんて麻痺します。私はおかしくない。


「よし!行くぞ!!」


「お前、熱くらしいって言われねーか?」


 そう言えばまだ何も聞かされていないのですが、コデギス近衛補佐の上に乗りながら私は試合を観戦しているのです。本当に、なぜ、と思う。


 対戦相手は近衛騎士が交代で10人、各隊長クラスが3人と『帝王』。なにやら模擬戦をやるそうです。『帝王』は連戦で13対1。容赦がない。因みにどこかで陛下とグラムディア殿下が見ているんだって。そんな事よりそろそろ教えてほしい。なぜ私がここに?白状しないとアブルを頭の上に乗せますよ?


「なんかよからん事を考えなかったか?」


「いいえ?アブルが暖かいな、と」


 そう言えば熊って冬眠するよね。まだ秋だから動けるのかな?となると寒いからアブルってばこんなのんびりとした態度を取っていたりして……まあ、首輪を付けてしまったのだから深くは考えないでおこう。今は私の湯タンポなのです。


「絶対にベベリアは離すなよ?牙で刺されたくないし、食われたくもない」


 その前に私の腕が食べられるよ。


 そう言えば『帝王』と対面している人、誰だったかな。一度くらいは会っていると思うんだけど……登場に『帝王』へ勝負をわざわざ挑む人ってなかなかいないと思うんだけどな。


「それでな、嬢ちゃんに頼みがあんだ。『帝王』が魔力を使ったら言ってくれないか?使ったその時に随時」


「魔力、ですか?」


「『帝王』がどの程度なのかを、純粋に見る試合だ。まだ決まっていないがグラムディア殿下は『帝王』を使いたそうにしているからな……まあ、俺らがその様子見相手なんだよ。純粋な試合に魔法剣なんて、野暮だろう?」


 な、と言われましてもね。まあ、純粋に見るのであれば魔法剣なんて野暮だとは思う……?そんな事で私の魔法の授業を削るのはどうなのでしょうか。別にいいけどっ。


 ジジルとエリーがいなければ私は孤立していただろうな……なんて思いを馳せてみる。そんな事をしても意味はないけどね。ほら、始まった。


 いきなりガツン!と剣をぶつけてどういうわけか動かなくなりました。たぶん、力押しで勝負しているのではないでしょうか。近づいたらぷるぷるしていそうだね。そのままちょっと交差した剣がたまに揺れるだけで押し付けあい。部が悪いのは?こっち、だね。名前は知りません。


 なんとなーくだけど、こっちの人は重心がすごく前に行っている。まるで巨大な岩を押し退けようとしているみたい。私は実際にやって気づけるかなんてわからないけど、横から見たらかなりこっちの人は押していることがわかる。これに気づいたのなら右か左に避けてしまえばバランスを崩しちゃうんじゃないかな。


 そんな事を思っていたらふっ――と『帝王』が力を抜いた?大きくは動いていないけど、こっちの人が少しよたったのがわかった。……これ、13人分を見なくてはなりませんか?


「やっぱ女にはつまらないよな」


「怖い、ですから」


 そう言うことにしておこう。


「ベベリアを抱えて怖いと言われてもな。おっさんたちにはそのベベリアの方が怖いぞ」


「こんなに可愛いのにですか?素直でいい子ですよ?」


「他のベベリアに痛い目をあわされた事があってな」


 ……アブル、狙われたりしないよね?


「勝負あり!」


「あ」


「六番隊隊長のレジフォンで駄目か」


 その前に実力がどれ程だ、とか教えてくださいよ。例えられてもわからないですけど。


 向こうで見事なおーあーるぜっとになってショックを受けている隊長さん。うぉぉおおおおおっおっおっおおっ!とか言って泣いてらっしゃいます。頭が下に向いていたために兜がぽろりと。


 覗かせる髪は黒っぽいね。うーん。距離があるからなー。熱血だし、黒見を帯びた蘇芳の色とか。まあ、負けたので彼は退場です。引きずられて次の対戦へ。私が魔法剣を使えばたちまち紅蓮の炎が~って言っているよ……それは負け犬の遠吠えだって。ついでに思い出したけど、『紅蓮の剣』って言う私に勝負を吹っ掛けてきた人だ……そう言えば隊長だったね。なんとか引きずっているのは副隊長さんだったりして。


 そんなお見送りの後は小柄な女性が……女性!?うっそ!女性か隊長!?じゃなくて強いのあの人!?髪なんか短く切っちゃって!なんか輝いて見える。私は薄いグレーの色から金髪を所望する!美人は金髪でいける!と言うか格好いい!!


 ちょっ、『帝王』の肩ぐらいしかないのに!?いや、人は見かけによらないって言うけどっ。てかあの人左利きだ!珍しい。


「あいつは『右の落雷』テルマリアだ。剣も出来るし魔法もできる。魔法騎士の別離版だ」


「別離、ですか?」


「うちには珍しい剣と魔法を両方とも使うんだよ。魔法騎士には二つあってな。魔法と剣を別々に扱うものに別離魔法騎士。魔法剣として両方を扱う奴を融合魔法騎士と呼ぶことにしたんだ。で、いちいち分けるのも面倒だから魔法関連を用いる奴は魔法騎士」


 てか剣と魔法を別々に使おうとする騎士がいたとこに驚きだよ。しかも女性……若いよね?騎士をしているおかげで体とか引き締まると思う。年とかわからないけど、二十代だとは思うなー。そんな人が隊長って……


 でもそれってさ、彼女はちょっと嫌われていたんじゃない?だって、魔法剣が使わなくなったのってグラムディア殿下がきっかけで分断したんでしょう?よくいられたね。女だから、て舐められそうなのに……


「あいつは剣も強いぞ。左の相手なんて滅多にない。ゆえに、戸惑う騎士もいる。あと身軽だからなかなか狙いが定まらないんだよな」


「一度、手合わせを?」


「あるぞ。ちょこまかと動いてくれてなかなか当たらん。剣が交わったと思ったらさっさと距離を作って油断させたら突っ込んでくる。それか魔法で死ぬ」


「あの、落雷と言えば【雷】ですよね?風の最上位魔法だと思うのですが……」


「あいつ魔力をたっぷりと保持しているぞ。正確には知らんが最上位の【雷】が三回も放てるんならけっこうあるだろう」


「女性で隊長各は辛かったのではありませんか?テルマリア様はどうして魔法師ではなく騎士を続けたのでしょうか?」


「さあな。それは本人に聞いてみないとわかんらんな。後で来るからその時に聞いてみろ」


「聞いていいのでしょうか?」


「それは嬢ちゃんが決めな」


 しかたがない。聞ける雰囲気なら聞いてみよう。


 そんなわけで律儀にも短く拝礼をして剣を構えるテルマリア様。『帝王』はちょっと見下して肩に担いで挑発をしている模様。真剣なテルマリア様には無意味だったようだけどね。


 だっ――と駆け出したのはテルマリア様。下に剣先を向けて掬い上げるのかな?走ると言うより飛んでいるように大股で近寄って私の目にはすでに『帝王』の懐まで迫っているように見える。けど『帝王』も左、それも逆手に持ち変えてそれを受け止めちゃった。いつの間に……


 すぐに距離を取って次の攻撃。お次は突き刺しかな?脇をしっかりと閉めて水平に構えて突進。スピードはかなり速い。しかし、今度は攻撃範囲内に入る前に『帝王』が動く。右手に持ち変えた剣はテニスラケットでラリーを打ち込む姿勢のように構えたみたいに。柄の上をギリギリに持って手首をつきだす右手に、左手がいつでも空いている柄を握れるようにそっと空中に添える。腰を低く落としたら、一閃。ぎりぎり私が見えたのはここまでだ。


「……本来の大きな剣なら、テルマリア様の胴体は真っ二つ………………ですよね」


「寸止めとはまた――テルマリアには屈辱だろう」


 騎士ならそうかもしれない。構えはなんとなくここから見えたけど、今の2人は剣の寸止めで停止状態。『帝王』は低く構えた事によりテルマリア様の脇を一閃で狙った状態。テルマリア様は突きで『帝王』の首を狙った状態。審判をしていた騎士の声が高らかに上がってしまった。


 また軽く拝礼をするとこちらにやって来る。ちょっと早足でなんだか怒っているように見えるけど……眉間にしわがよっているからそう捉えられるだけでどちらかと言うと悔しそうな顔だった。


「あんな大柄なら突きは大勝負だろう」


「体力勝負にも持ち込めそうにありませんでしたから……あれは私の苦手な相手です」


「だろうな。だがお前はあいつより小さい。より小回りも利く。もう少し翻弄させてやってもよかったんじゃないか?」


「それでも私が負けます。『帝王』の目は私の剣しか見ていませんでした」


 剣を見ていたら何が駄目なんですか。私にはさっぱりわからんぞ。私の中では剣を扱う人って相手の行動を見て予測を立てながら自分がより早く動けるように……みたいな感じじゃないの?誰かヘルプ。


 しかしそんな掛け合いは喉からでずに飲み込んでしまった。だってしょんぼりとしていたテルマリア様と目があったんですもの。眉を八の字に見ないでください。近くで見たら美人さんなのでうっかりアブルを抱き締めちゃう!もう抱き締めちゃったけどね!


 ぐぁう、なんて悲鳴が聞こえてしまった。コデギス近衛補佐の顔は真横なのでいい感じに聞こえたんだと思う。咄嗟に右にぶれたと思ったらカチャリと音が聞こえました。剣を抜かないでね?


「嫌われました……」


「あ、違います!初めてお会いするので緊張してしまいました」


「頼むから、そのたびにベベリアを鳴かせるな。実はベベリアが真横にいるのだっておかっねーんだぞ……本当に食われないか疑ってんだからな?」


「す、すみません……」


 じゃあ私をわざわざ肩に移動をさせなければいいじゃん……なんて言えずに謝るしかない私。アブルの頭を撫でて謝ったらぐるるるる~と鳴るんだけど……これも駄目らしい。怒られた。なんかちょっと頭が私と反対側に傾いているのは気のせいじゃない。


 そこまで拒絶しなくてもいいのに……渋い顔でコデギス近衛補佐を見ていたらテルマリア様に笑われてしまった。ちょっと恥ずかしい。


 挨拶もそこそこになぜか3人で続きを見ることに。私はいい加減に帰りたいんだけどね。寒いし。アブルがいなかったら絶対に駄々をこねていたかな。


 さて、お次は……うん。知らない人だ。




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