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特別休暇 10

修正いたしました。28.12.28

 

 まあまあ落ち着いてくださいよ。ベベリアの可愛さは今だけなのだから。これが大きくなったら?可愛さの欠片もなくなるんです。てかなんでこのベベリアはいい子でいるのだろうか。私の中で確立していた熊の猛獣説が覆される。


 会話はこのままするそうで、距離を取りつつついてきた騎士を中に入れて私は下ろされた。ベベリアはまだ警戒対象と言うことで――と言うかさすがの近衛騎士の2人もベベリアを持っている私が信じられないようで、気になってしょうがないから距離を取ってくれと言われた。いいけど。


 だからベベリアにここで大人しくしていてね?とお願いする。場所?私と『帝王』の真ん中。そこでどっこらしょ、と座っているのがベベリアです。あ。名前を考えなきゃ。熊と言えば五郎とかくま吉って名付けたいんだけどノルアの事もあるからな……あとで考えよう。


 そんなベベリアに頭が痛いとサデュローグさんとギルツェルさんが頭を抱えているがね。みんな、頭痛を患いすぎじゃない?原因はわかるけどさ。ベベリアは可愛いんだよ。ベベリアをもっとよく見てあげて!


 こほん。……さて、どうしようか。実はこっそりお父様から「おっさんと長話をしてくれ」と言われたんだけど……何を企んでいるのかな?


「ベベリアなんか見せられたら嫌でもわかる。護衛、いらねぇんだよな?」


「だって、あなたは私の護衛になる気はないのでしょう?」


「死ぬと考えたら多少の我慢はするけどな」


「嫌々と守られる私は気分が悪いですから」


「ちっせえ餓鬼が一丁前に言いやがって……俺もベベリアと同じ処置で」


「あなたは何のために私を守ってくださるのですか?」


 言葉を遮ったのは同じにさせないため。そして、一番、聞きたかったこと。『帝王』となり皇帝の下で守り抜いていたのだ。きっと理由があるはず。その理由と私は被せられても困るけど、ある程度の信念は聞いてみたかったかな。


 ほら、やっぱり時間がたったおかげで私の心が揺らいだ。ころころ変わっちゃって、自分でも困ったものだと苦笑いが浮かぶよ。


 黙りこんでしまったから質問を変えよう。私の誘拐は秘密処理にされているかも知れないけど、これも聞いてみたくなった。うん。心が動かされているかも。好奇心が出てきちゃった。優柔不断だなあ。きっと、誰か知っている人、知ってしまった人の死亡報告を聞きたくないからだ。『帝王』を護衛にする気はないんだけどなあ……殺したくも、ないな。お父様はばっさりしていたけどね。


「あの時、どうしてあんな事を?私が嘘をついたと分かれば簡単に殺せたからですか?侵入したことで皇帝への命令違反は明らかです。あなたは何を思って『帝王』と呼ばれているのでしょう」


「……俺は今、ちびに諭されていんのか?」


「どうでしょう?」


 それを考えて試行錯誤するのが『帝王』のできること。生きるために抗うのか、本当を隠して死ぬのか……ああ、わからない。人間って難しい。難しく考えてしまうから、余計に面倒に色々が絡まっていく。


 と言うか、皆さん。なぜ黙ったままこの会話を見守っているのでしょうか?私的には大人の事情は大人たちが処理してくれた方が一番いいのに。お父様も黙っちゃうってどう言うことなの……?私一人で長話とか聞いていないよ!?


「……まあ、いいか。どーせ死ぬしかなさそうだし。――ちびを殺さなかったのは我が皇帝のため――を建前に自分を満足させるための餌だ。戦争が起これば俺はまた生きられる」


 なんか、語りそうだぞ?


「私は戦争の餌ですか。皇帝も否定したように、その戦争は起きそうにありませんけど……」


「俺はな、奴隷からの成り上がりなんだよ」


 なんか、爆弾が投げつけられたんですが?爆破はしていないような気がするけど、設置はされました。しかも、なんか特大だと思われます。なぜ語る。


 しかも……私から見える範囲でみんなの目が明らかに変わった。食い付きが先ほどと全然、違う。どうでも良さそうな感じだったのに、さっきの一言で食いついた。面を食らっている、と言う顔。


 もしかしてこれは『帝王』の秘密だったのかな?ここでようやく明らかになった感じでみんなが驚いている?回りの反応をみて『帝王』は苦笑いだ。なんか、本当に諦めている感じがする。


 語る言葉は『帝王』の生い立ち。生まれてすぐに奴隷として売られ、武国の男児に生まれたゆえに貴族の盾になるために鍛えられたらしい。帝国ではよくあるのだとか。そして『帝王』にはその力があった。だから高値で取引をされたと5、6歳を迎えたあたりで知ったんだって。


 最低限の食事と動かせなくなるほどの訓練に明け暮れて強くなったんだとか。そのうち貴族に売られて傭兵となったそうな。でもその貴族がちょっとした事故で死んだから、うまいこと逃げて奴隷の枷はなくなったんだって。


 独立国ゆえに、国外逃亡はできなかったから国内を転々として流れの傭兵をそのままやっていたんだって。そしてとある戦争に参加して戦果を掲げ、爵位をもらい、また戦果で名をあげ――の、繰り返しで侯爵まで上り詰めたんだとか。すごい成り上がりだね。ベベリアがつまんなそうに腰を掻きなから欠伸をしているよ。なんかおっさんに見えてきた。


 で、なぜ戦争が起これば生きられると言うのかと言うと――『帝王』にはそれしか、腕っぷししか才能がないからだった。貴族まで上り詰めたけど、作法とかからっきしらしい。覚える気もないんだとか。だから貴族界の中では異端児。本当に名だけの、貴族だったそうな。だから普通の生活より戦場に立っていたいらしい。


 そして『帝王』と言う名は馬鹿にしてくるその貴族を黙らせるためだけに賜った呼び名だと、言う。だから無作法で色々とできたんじゃないかな?そうなると右側の人とつるりんは同意のもとの共犯者。うーん。生い立ちを聞いても、『帝王』は護衛に向かないかな。


「おっさん、面倒な人ですね」


「あ?」


 あ、誰か噴いた。誰だろう?


「私に生い立ちを話してもどうにもなりませんよ」


「ちびに同情を謀ったところでなんにもなんねぇだろうが。なんだ?うまい話をしたら護衛として生かしてくれんのか?」


「気持ちが変わらないのに?嫌ですよ。私、これでも身の回りには気を付けているんです」


「のわりにはベベリアを引き連れてんじゃねーか。前はリッスンじゃなかったか?一筋縄じゃいかねえ動物ばっかじゃねぇか」


「でも、なついてくれていますから。ベベリアだって、お願いをしたら聞いてくれるんですよ?」


「へぇへぇ、じょーちゃんに遊び相手ができてよかったなー」


「――元の大きさに戻って?」


 なんだか、イラッてきちゃった!まあ殺すつもりはない。おっさんは強いからね。お父様がその腕を認めているくらいだし。そんな奴とベベリアを戦わせてベベリアが汚れるのは嫌だ。個人的にものすごく!


 私の合図でまたゴキッ!ベキッ!とか色々と物騒な音と雄叫びみたいなベベリアの咆哮を放って元の姿に戻ってもらったら――あれ?なんか……


「最初に会った時より大きくありませんか?」


「頼むから、暴れさせないでくれよっ!」


 あの騎士が必死になって言っていますね。いやー。私はてっきり最初に会った時のサイズだと思っていたもので。その、お父様より、やや大きいサイズ?毛皮もあって大人くらいでも大きいのだけど……


 今目の前に元の姿となって体を大きくしたベベリアはアビグーア中隊長より大きく見える。背中を向けているためにグレーの塊にしか見えないんだけど……大きいな。ちょっとあれに乗りたいかも……


 乗ってもいい?て聞いたらかなりぐぅるるる……なんていいながら頑張って縮こまってくれた。けど、私ではどう頑張っても上れそうにない。お父様、ヘルプ!しかしっ!お父様がちょっと遠い目をしていた!やっぱり大きすぎるよね!


 無理だからもう少し小さくなって!とお願いすればぺきぺきといいながら小さくなるよ!?大きさの変動が少ないと可愛らしい音で収まるらしい。何気に芸が細かいね!


 そしてみんなが何か言う前に上ってみる。はしたない?いえいえ。ちゃんとよいせ!で華麗に乗って見せたよ!乗馬を習っておいてよかった!因みに乗った場所はベベリアの首?頭?あたり!ゆっくりと起き上がってもらったら高くてちょっと楽しい!


 上から見ると『帝王』はすっかりと目を点にしていて――サデュローグさんとギルツェルさんも点だ。回りの騎士はあんぐりと口を開けて動きを停止中。お父様は相変わらず苦笑いでユリユア様は笑いを必死に止めようと肩を震わせていた。ウィル様は眼鏡を外して眉間を揉んでいるね。


「あのおっさんを取り押さえて?怪我をさせたら駄目ですよ」


「ぐぅるるる……がっ!」


 いい返事!しかも頷いたよ!いやー、もう考えるのが面倒だし『帝王』には色々と腹が立っていたし、少しは真面目にしてくれれば私だってこんな事はしなかったんだよ。


 まあほとんどが面倒だと思っていますが、何か?死刑になるなら勝手になってくれていい。けど、それに私の感情が乗ってしまうから知らぬ間に終わらせてくれればよかったのだ。なのにぐだぐだと居座って……ユリユア様にもしつこいと言われているし口が悪いし無精髭だしっ!


 なんだか感情がごちゃごちゃとしてきたので考えるのを放棄しました。やっちまえ!やらかしてしまえ!目立つ?いいじゃない。もうとっくの昔に目立っていますから。7歳がここでハッスルしなくてどうするっ!今ここではっちゃけようじゃないか!!


 もうなぜここに来たのか思い出せません。頭の隅っこで『帝王』を跪かせよう、と作戦がたてられていたような、なんて思ったが知りません。なんか暴れたい今日この頃。


 振り落とされないように心の中で謝りながら毛皮の一房をしっかり握って抱きつく。でもベベリアは気配り上手らしい。私が振り落とされそうな速度では動かず、ゆっくりと手を動かして『帝王』を床に押し付けていた。肩をぐいっとな。サデュローグさんとギルツェルさんはいい身のこなしで避けていたよ。さすが近衛騎士。どんな状況に陥っても変わり身は早かった。


 ドン!と音を立てて……床ドン?するベベリア。相手が『帝王』って言うのが残念だ。


「……ベベリアに、食わせんのか?」


「そんなことをしません!おっさんが一人で身勝手な事を言うから怒っているのです!」


「は、はあ?ちびが、何をえらそうに言ってんだよ」


「『帝王』の二つ名にはがっかりしました。ただの脅し文句だったんですね?帝国の英雄でもなんでもないじゃありませんか」


「てめぇっ」


「グワルルルルゥ」


「生きたいなら態度を改めるべきです。私の護衛はお願いを聞いてくれるこのベベリアがいるので許可しませんが、誠心誠意に誰かに頭を垂れて謝るならば助かるでしょう。年貢の納め時ですね」


「言いたいこと言いやがって!……涎を垂らすんじゃねぇ!たくっ………………あー、俺はどこで間違ったんだ?たく、あの女を信じなければよかったぜ」


「なんですか。信じていた女性がいたんじゃないですか」


「そんな女じゃねーよ。餓鬼にはわかんねぇだろーが、もういねー奴だ。おい、こいつ退かせよ!俺の顔が涎でべちょべちょじゃねえか!しかも獣臭え!」


 ごめん、上から覆い被さっているからその状況が見えないんだよね。肩から覗くことも出来るだろうけど、私が誤って落ちちゃったら見も蓋もない。……それより『帝王』の獣さをグレードアップさせちゃった。近づかないでおこう。


 私もだんだんと落ち着いてきたかな。なんだか乗るのも楽しかったし。本気で私の護衛になってもらおう。奴隷って言う響きは嫌だから護衛ね。うん。みんなで個室の授業、いいじゃない。みんなで色んな意味で目立てば私は薄れるさ!


 でも、ちょっと気になる単語が出てきたかな。いや、『帝王』の女なんてどうでもいいんだけど……何か引っ掛かった。なんだろう?


「死んだ女性を追いかけているのですか?」


「知らねーよ!うべっ!?舐めんな!うぼぅあっ!?」


「知らないとは?ユリユア様に迫ったくせに」


「あーくそっ!行方を知らねーんだよ!ここに戦争を吹っ掛けるように助言したっきり消えちまった!あいつのおかげで俺は這い上がれたんだよ!!んでもって負けなしだったんだよ!!やめろっ鼻を擦り付けんな気持ち悪ぃ!!」


 あ、ちょっと怒っているのかな?喉をぐるるるると鳴らし出した。でも食べちゃ駄目。なんだかいけない事をしているような気がしないでもないけど、お父様を見たら頷かれました。つまりはまだ長話をしろ、と言うことですね?


「助言してくれた人がいたんですね。どんな人なんですか?」


「くっせ!ああっ!?もう十年近くあってねーから姿なんて覚えてねえ!くたばったんじゃねぇか?」


「決意を決めた女は、男性が考えているより強かなのだそうですよ?リディお姉様が言っていました」


「知るか!」


「涎攻撃」


「うおぉぉおおおっおっおおお!?ぶっ!――く、くたばってっかもしんねーだろ!あいつは目が見えねぇし他に支えてやる奴もいなかったからな!あんな女が一人で生きていられるわけがねーよっ!」


 目が見えない……盲目……?


「名前は知っていますか?」


「くっせえ。獣くっせえ……ここで一番の屈辱だぞ……糞まみれよりよりましか?」


「名前、知らないのですか?」


「名前は知らねえ。たしか月白の髪だったと思うぞ……ぶっ!」


「汚いですね。止めてください」


 狙ったのか知らないけど、サデュローグさんが飛んできた唾を華麗に避ける。もしかしたら涎が口の中に入ったのかな。ベベリアって涎も自由自在に出せるの?身体強化で唾液まで……


「クフィー、後は騎士に任せよう。ベベリアを小さくして帰ろうか」


「帰っては駄目です!報告を済ませて今日中に奴隷の首をベベリアに着けてください!」


「えー。私はちょっと用事が出来たんだがなあ」


「お父様、一緒に名前を考えてくださらないのですか?」


「クロムフィーア若魔法師、そこに陛下への報告も入れてください」


「ええと、一緒にやりましょう?」


「クフィーと一緒ならやらなければいつやるっ!」


 その後が続かなくてよかった!さすがに前世の流行に乗ってきたら泣く。異世界なんだからあっちのものを無闇に引っ張ってこないでほしい。とくにどうでもいい物は引っ張って来ないで!料理を引っ張ってきて!


 まあ、そのまま『帝王』をほっぽってお父様の個室に行って色々と整理してきました!あ、『帝王』はなんかいいネタを持っていたからまだ生かすんだって。盲目の女性が気になるよね。それと――ベベリアを見たロノウィスくんは卒倒してドトイルは叫んで逃げた。ちょっと情けなかったよ……まあ、ベベリアが相手ならこれが当たり前なんだって。ウィル様がまたため息をついて教えてくれました。


 それからベベリアは正式に私の奴隷……というかペットになって護衛になった。護衛だけど私の中ではペット。間違っていない。首輪はばりばりの魔術具で奴隷の首輪だけどねー。大きさはノルアと一緒の私が抱えられるぐらい。首輪には伸縮の機能がないんだけど……大丈夫かね?一応、私が言わない限りこれ以上は大きくならないようにお願いしたら頷いてくれたので信じることにする。


 因みに……陛下への挨拶は、お父様だけ行きました!さすがにベベリアは御前に持っていけないよね。見送るのが大変だったよ。あと、待つのも。長かった……


 さーて名前は決めたし、後はお母様とリディお姉様の反応がどうでるか――だよね?小さいから大丈夫だとは思うんだけど……暴れちゃ駄目だからね?襲うのはもちろん、駄目だからね?アブル。(父命名。やっぱりくま吉は否定された)




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