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特別休暇 7

修正いたしました。28.12.28

 

 今日もお休み……今思いますに、私は別にお休みにしなくてもよかったのではなかろうか……だって、これはお父様の休暇なんだから!


 それなのに私までなんでお休みになっているのだろうか……おかしいな。今さらだけど、おかしいな!


 でもそんなおかしさも気にさせずに私までお休みでエンジョイ。もういいや。親であるお父様がそんな手続きでもしちゃったんでしょう?そんな手続きに私が関与できるわけがない。流されてしまえ!!


 そして――流された結果が、これ。今日はお父様と2人だけです。リディお姉様とお母様はとある伯爵様とお茶会だそうです。あれかな?リディお姉様と喧嘩しちゃったと言う、たぶん意中のお相手のところだと思われます。面白そうだからそっちに行きたかった!わりと本気でっ!!


 今日はとあるお店に来ています。場所はちょうど平民と貴族の間に位置しているような場所。やっぱりあったよ。貴族と平民を区切るために設置してあるちょっと高めの壁と門が。内側と外側みたいに4人体制で管理しているっぽい。すぐそこに建物があるから、きっと交代する要員はあの中にいるはず。そんな私たちはその貴族側ぎりぎりのお店へやって来ました!ここは動物店『コミャンセ』。貴族御用達のペットショップです。


 というわけで突撃しましたとさ!外装は私から見たら気持ち悪いほど真っ白な四角い家だよ!四角い窓を数えたら三階建てだね!中に入って広さはというと……広いわー。普通にホテルみたい。


 中に入ったら待ち構えていた1人の女性がスタスタと前に歩みでて軽く会釈をした。服装はドレスと言うより動きやすさを重視したワンピース。色は濃いのかな?グレーである。中も真っ白だからかなり人が目立つね。動物にも優しい緑とかだったら面白い!そしてそのたすきはなんですか?向こうの人たちも着けているね。


「本日はどのようなご用件でしょうか?」


「ふれあい場はあるかな?」


「ございます。大中小、と大きさが別れていまして、それぞれ順番に見ていかれるのでしたら鐘一つ分でお一人様につき大銀貨一枚でございます。それぞれの大きさに留まるようでしたら、お一人様につき銀貨三枚で入場いただけます」


「クフィーはどうしたい?今日はいっぱい動物と触れるぞ~」


 毛がいっぱい付きそうだね。私には問題がないが。


「順番に見ていくと全部は見られるのですか?」


「私たちはそれぞれ通れる通行書をお渡しするだけですので、すべてを見るにはご自身の行動にもよります」


 あー。なるほど。ただの通行料のお話しだったわけね。ここは――どうせ一つに留まると私は飽きちゃうかもしれないから、全部を見て回ったほうが楽しいのではなかろうか。まあ、払うのはお父様なんだけど。


 それを踏まえて丸投げします。お父様はどうしますかー、て。訪ねたら?ここは色々いるから見て回ろうか、と言うことであえなくすべて見るコース。大銀貨1枚は5000円なので……2人分に1万!?子ども料金はないの!?内容がショボかったら魔力暴走をするからね!?


 そんな意気込みを踏まえていざっ!お父様の腕に乗って抱っこされながら――お金の代わりにカード見たいなものを渡された。なんかキラキラと光っておりますよ。……これを見せれば触れあいコーナーの区間内の行き来は自由らしい。区間のところに必ずたすきを着けた職員がいるから提示してくれ、との事。そのたすきは目印か。


 触れあいコーナーまでご案内します、と言われたので着いていくお父様。コツコツと進んで……てか白いな……ここまで白かったら逆に目が痛いよ。なんか病棟みたい。


 出入り口に着いたら軽く諸注意。

 1.動物をいじめてはなりません。

 2.独占はほどほどに。

 3.持参した餌は与えない。

 4.寝ている動物の邪魔をしてはいけない。無理に起こしてしまっては怪我をしてしまう可能性がある。

 5.他者とのいざこざは避けるように。

 6.持ち帰りはできません。お買い上げはまた別のところにご案内いたします。


「では、お楽しみください。時間になりましたら先ほどお渡ししたそちらの手札が音を鳴らしますので、またこちらまでお越しください。もし、ご帰還なされない場合は騎士様をお呼びする事になりますので、くれぐれもご無体はお止めくださいませ」


 それでは――と去っていく職員さん。そうか。このカードのキラキラは音を鳴らせるために魔法具となっているからなんだね?どうりで光るわけだ。


 まあその辺は置いておいて……さっそくカードを見せて中に入れば草原が!ちょっと驚きつつも中に入れば数人が来ていて何かの動物と触れあっていた。近場にいた人の手元を見るとネコっぽいね。確かネネニャーだったかな。数匹はいるみたいで、この草原仕様の施設内を駆け回ったり丸くなって寝ていたりするものもいたり様々。


 木でできているのかはちょっとまだ遠くて判断がつかないけど、うっすいグレーの柵で犬と別けているみたいだね。因みにこの世界では犬をヌイと呼ぶらしいよ。一っ番、覚えやすかったです。また種類も豊富にあるけどだいたいはヌイと呼べば通じるんだって。コーリャも犬だけど貴族で人気が出たから別呼びが生まれたんだとか。


「これはすごいな……」


「ネネニャーとヌイと……あれはなんですか?(狐が野放しか……向こうには狸もいる)」


「あれがキーネだよ。キーネはとても柔らかいから、抱き上げるときは気を付けるんだよ?向こうのはヌタポンだね。あっちは尾に弾力があって掴むとなんだか楽しくなるやつだ」


 お前がキーネか!そして柔らかいから気を付けるってなに!?スライムじゃないんだからそんな説明はやめてよっ。そんでもって狸はヌタポンとかなんか名前が可愛いよっ!なんだそれっとも思うけどね!なんだか楽しくなるしっぽって何っ!?


 じゃあ、あっちから見ようか~とお父様が出動する。向かうはキーネだって。どうしても私に見せたかったとか。


 私はたどり着いたら下ろされるんですか?まあ、別にいいけど……この施設、意外といっぱいいるね。向こうには………………………………………………コアラ?耳がデカイ。木にしがみついている。鼻がデカイ?木にしがみついている……コアラ?動かないんだけど。


 そのまた向こうには水場があってペンギンみたいな黒い物体が岩の上で仁王立ち。不思議でしかない。あの動物は本当に私の知っている動物なのだろうか。いや、ここは異世界だ。違うのが当たり前じゃないか……


 ちょっとよくわからない事を思いつつキーネにたどりついて……警戒しているのか、見つめられた。私はそっと下ろされる。そして私もキーネを見つめる。両者、一歩も動かない。


「――おいで?」


 たっ――と、はい逃げられましたー。手をさしのべる前に逃げられたっ。……今さらだけど狐にはどうやって近づけと言うのですかね!?普通の動物園でも狐と触れ合いってないと思うよっ!


「キーネは待っていないと来ないよ?」


「先に言ってください」


「唇を尖らせてもクフィーは可愛い!!」


 そうかい。よかったね。私も動物と触れ合えるのならばそれくらいハイテンションになれると思うんだけどな!


 ここで待つ?それとも他の動物を見て回る?と聞かれたので私は少し悩んでみせる。お父様はキーネを見せたかったのだからミッションはクリアしてしまっているね。たぶん、後は愛でるだけだと思われる……見つめられるのはどうかと思うので、見て回ってみようかな?


 他のも見たいです!と言えばまた抱っこされましたがね!じゃあ先に大きいものを見て順番に戻ってこようか~て微笑みながら草原を歩く。


 この草原、どれくらい敷き詰めたのかな?さっき下ろしてもらったけど、触り心地は本物っぽかったんだよね。ここは1階だからこれって床だけは本物?でも建物の中だから成長はしないよね?どうなっているのだろうか。


























 なーんて、さっきまで思っていたんだけどなあ……


 手首が縛られていますよ、奥さん。足は縛られておりません。そして、私のような幼女があと3人も同じように縛られていらっしゃるんです。みんなくすんくすんと泣いて縮こまっておりますとも。


 回りは薄暗いせいで私もよくわかりません。それだけで閉じ込められた!と思われます。


 はて……最後の記憶は?大人の動物と触れ合えるコーナーに行って、ハムスターでけぇ!パンダもでけぇ!なんてちょっとはしたない事を思いながらお父様に許可をもらってその巨体に備わっているもふもふに飛び付いたはず。


 埋もれそうな。そうではないような。絶妙な感じでもふもふをしていたはず。けっこうな時間を堪能しながらたすきを着けた職員が特別に餌をあげますか?なんて言われたから喜んでやらせてもらっていた。


 ハムスターのハムハムルンは抱え込むように踞って食べてくれて、パンダのパダイヤはお座りをして食べていたのだよ。うん。私はそのハムハムルンの餌付けをいたしました。するとどうでしょう。抱え込まれて叫ぼうにもなぜか口を布で塞がれ――今に至る。つまり、眠らされた、と。あれは着ぐるみか。中の人は想像しない方向で行こう。


 それよりこの世界にクロロフォルムってあったんだ……きっとなんかの薬草とかを調合したら眠り薬的なものが出来上がるんだろうけど。


 なぜか冷静でいられる私は思うのです。お父様はなぜかちょっと離れたところでティータイムをしていた。私がいた場所を微笑ましく見ていただろうね。私がいなくなったとわかったらどうなるんだろうか?てか私ってお父様の目を盗んでどうやって運ばれたんだろう。もふもふの罠、恐るべし。そうなると……私ってばフラグを自分で立てちゃったのか……私は悪くないと思いたい。犯人よ、早く捕まった方が身のためだよ!!


 それじゃあ、私ができることは?うーん。状況は何となく誘拐されたな~ってわかったし、私がどうするか、であって……とりあえず魔力操作で魔力を寄せてみよう。私って実はいい目印だよね。あ、でも触れると魔力がわかるんだから目印ってヴィグマンお爺ちゃんだけになるのかな?まあ物は試しに。


「あなた、なぜ平然といられるの……?」


 えーと……か細い声で聞いたのはグレーっぽい子。薄暗いからこれが限界。髪の毛はさらさらロングだと思われます。私の隣に来てそう訪ねてきた。平然といられる理由としては誘拐はこれで三度目ですので……後はさっきまでお父様といたからかな。私はそっちの方が心配です。きっと暴れる。冷静なふりをして凄まじい事をやるに違いない。やっぱりお父様の方が心配だよ!!とりあえず……


「まだ状況がよくわかっていなくて……」


「そう……私たち、売られるのよ」


「え?」


 そんなすごい事になっているの?ごめん、どれくらい経った?


「わからないわ……でも、さっき朝の12の鐘がなったからご飯をくれたわ」


 私たちが来たのは朝の9の鐘。朝の12の鐘ならお昼だから三時間……あ。やばい。お父様が気づかないわけがない。てかこの誘拐を考えた人は杜撰すぎるよ。動物でかどわかしてその間に眠らせて子どもは連れ去る。親の目の前でよくそんな大胆な事をできるものだねっ。――となると私たちはお金を巻き上げるための交渉材料、とか?交渉が決裂したら人質が売られる?売り飛ばされるって没落貴族じゃないんだから親はしないはず。わからないけど。


 とんだ悪徳商業だね。お父様、ちゃんと調べたの?


「帰りたい……」


 私も早く姿を見せなきゃお父様が酷くなるから帰りたい!おかしい。自分の方が危ないはずなのにお父様の方が心配で心配でたまらないよ?暴れていたらどうしよう……これは棒だね。冷たい。てことは檻の中にいたんだ……あ。


「誰か来たみたいですね(展開が早いね!?)」


「あいつらかもっ――なんであなたは落ち着いていられるのっ」


「やだっ!もう帰りたい!」


「誰か!助けてっ!!」


 いや、だってねぇ?クフィィィイイイイイイ!!って聞こえたもので。


 心の中で言い終わればドゴーンと何かが吹っ飛ぶ。なんだか火の玉みたいなものも一緒に飛んでいったと思うけど、そこは見なかった事にしよう。ほら、白黒だとよくわからないじゃない。黒い板みたいなものとグレーの炎の形が渦巻いていた塊が一緒に飛んでいっただなんて、見えませんて。


 私を見つけたら目の前の檻を素手で溶かして……エジーラ様が言っていたのはこれか。そんでもってお父様が通れるぐらいに空いたら私は抱き上げられて頬擦り。心配していたそうです。私も大変な事になっているのではないかと心配しているよ。地上に出るのが怖い。いつの間にか縛られているものがなくなってて――さりげなくやるから更に怖いっ!


 一通り数時間後の再会を果たしたら子どもたちを連れて親元に返す。ここでお父様は王宮筆頭魔法師の権限をフル活動で使って城まで同行を願う~とかしこまってみんなでぞろぞろと馬車を手配して行くらしい。近くに騎士が立っているおかげでスムーズに皆を送り届けて先触れをその騎士に頼んでいた。てかなぜか他の魔法師が数人もいるの?あと……通りかかりに見えた白かった建物が煤か何かで真っ黒だよ……


「見つかってよかった……すまん、クフィー……ここはけっこう買っていく人が多いし、触れ合いもあるし貴族の中では密かに人気の高い店だったんだよ。裏であんなことをしていただなんて私もまだまだだっ」


「何が起こっていたのですか?」


「さっきみたいに親子連れを狙って、子どもを一時的に拐って親を脅すんだよ。かなり高額な金額を吹っ掛けて動物を買わせていたね。脅し文句は『買わなければ子どもを奴隷商に売り飛ばす』。買わせてさらに脅して黙らせる。いや~、さすがに腹がたって買うふりして窓から囲っちゃったよ!」


 ……囲った?


「ほら、こんな感じに。お父様、うっかり頑張っちゃった。ちょっと寒いから【火】で色々と出して暖めたら降参してくれてねー。せっかくの休日なのに、クフィーに怖い思い事をさせてしまった。すまない」


「……オウ、マイ、ゴッド……」


「ん?なんだって?あ!それより、綺麗だろう?出口を作るの忘れてさっき慌てて開けたんだ。この季節だから三日かなー?立ち入り禁止になるからちょうどいいかも知れないね、クフィー」


 秋――だから、ね。三日で氷はなかなか溶けないんじゃないかな……見えるは白にグレーの濃淡が輝く氷の壁。お昼だから魔法のキラキラと氷の輝きですごく神々しいです。言いすぎだけど、氷が反射して本当に眩しい。


 これが氷の壁か……この建物があるからまだ序の口だよね。きっと。お父様ってばやることが大胆すぎる。たった数時間で悪徳商業の暴いちゃったよ……しかも黒幕はどこの貴族なんだろうかと何やら楽しそうに連想している模様。着いていけません。抱えられているから逃げ出せもしない……


 その後、ウィル様が来て眼鏡を掛けなおすついでに頭を支えると言うとても辛そうな感じでやって来て取り調べが行われた。お父様が魔法で囲っちゃうからそれについてとか色々。お父様が投降させたからもうね、色々と聞き出すことがありますからっ!とウィル様が唸っていましたよ。


 こうして一日が終わっていくのです。お父様、休暇の意味、あった?それとなんか視線を感じるのですが……誰か、あれをなんとかしてください!


 もうっ!今日はなんなの!?何か意味がなかったらどうしようもない一日だからね!?




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