初対面のお姉様
誤字・脱字・加筆・修正いたしました。27.4.5
思う事は多々あります。ありすぎてもう、白目を向きそうです。ごめん、こんな私で………………
お姉様が来てからようやく中に入れたのがドレスの話が終わってから。絶対に数十分じゃないぐらいその場で語ってみせたお姉様に私、涙がちょちょきれそうだよ。
素材だけの話でもお腹ぱんぱんなのに、ドレスのデザインがどうとかドレスについている飾りがどうとかドレスについてる宝石がどうとか………ドレスばっかり。ごめん。もう勘弁して。立つの疲れた。
げんなりしてる私に気づいてくれたのが後ろに控えていたメイドさん。ワーナって言うんだって。貴方のおかげで私は倒れなくてすんだよ。心からありがとう。
ようやく中に入れた私たちはなんとなくそのまま中央に歩きだして………個人的には絵本を読んでくれたら嬉しいのだけど。
残念な事に『私自慢』は収まる気配がまったくないようです。座ったらなぜか対面に座られて説き伏せられました。
“ 美 ”とは、など言われても、ね?私まだ赤ん坊なんで。唾液まだいっぱいでるんで美貌は保たれてるはずだよ。ダリスさんもほっぺたを満足げに突っついてるからね。問題ない。
しかしながらお姉様は自分の話を私に聞かせたいのか。はたまたただ言いたいだけなのか喋り出す。いわゆるマシンガントークですね。
ぶっちゃけて言うと、7歳半(ジェルエさん情報)でパックとか顔の細胞がおかしくなるよ?いかに高級な物を使っているか言われても、私は気にもしないのだけど。
これはやっぱり自慢話ゆえのお話か………子守唄にもならない長話に私はちょっとぶーたれた顔でお姉様に訴えます。
でも気づかない強者がここにいました!なんてことでしょう。
本当に自分しか見ていないのか?これがお父様とお母様が甘やかせて育てた結果とな。
実に眼に痛い。頭も痛い。ついでに胃が痛くなりそうな姉だね!絶対にお近づきにはなりたくないな!
そんなわけで、私は離脱します。こんな自慢話を聞かされていい子ちゃんではいられませんので。ヌイグルミを盾にさせて下さい。
「あ、待ちなさい!まだ私の話は終わってないのよ!!」
いや、長すぎなので。流れを変えさせてもらいます。
「う?あい!」
はい。大丈夫。お姉様にぴったりなヌイグルミはこの部屋にあるんで!
お母様とまったく同じ色合い(明暗的)にツインテールのドリルお姉様にはこのヌイグルミなんていかがでしょう!
なんと、ドーベルマンみたいな格好いいイヌのヌイグルミ(しかもリアル)を何故かもらっちゃったんだ!強そうなつり目には強そうで忠誠心の高いドーベルマン(仮)とお似合いだよね!
ヌイグルミでどうやってリアル出せているのかが謎なんだけど………
満面の笑みでそれを持っていってあげればお姉様は唖然と私を見ていました。ん?お気に召さない?そんな馬鹿なっ。
これはお姉様のために一瞬の想像でお似合いのヌイグルミを持ってきたと言うのに。え、他の?動物園で見れるような可愛い容姿の子たちばかりだからお姉様みたいな高飛車には似合わないよ。
首を傾げつつ―――私のお気に入りで肌触り良しのウーモルス(牛)を擦りあわせてこんにちわ。
これからこれを持って少しだけ駆け回るから、挨拶は大切だよね。今更だけどまだお姉様名前を本人から聞いてないや。知ってるけど。
ヌイグルミ同士をくっつけて挨拶。はい、こんにちは。お姉様はと言うと………めっちゃ見てる。めっちゃドーベルマン(仮)を見てる!
え、まさかの食い付きですか?そんなによかったんだ。私はリアルすぎて遠慮したんだけどな。お父様が
『こいつはクフィーを守ってくれる番犬だ!』
とかなんとか言って置いていったんだよね。番犬と言うより私には魔除けにしか見えないんだけど。いつも隅っこに待機してるから大丈夫。何が大丈夫かはわからないけど、大丈夫なんだよ。
さて。お姉様が固まったまま動かなくなりました。私がなにかしてしまったのかな?ジェルエさん助けてー。
しかし、ですね。こんな事は初めてみたいです。はい。
助けを求めるようにジェルエさんとお姉様お付きのワーナさんをみる。でも二人とも一歩を踏み出せずにおろおろと踏みとどまってます。お姉様がなにもしないからこっちも何も出来ないみたい。
まったく、どうすればいいのか分からないみたいです。じゃあ私もどうすればいいのか変わんないよ。
お姉様は固まったままだから触らぬ神に~とは思うけど………つまんないからね?私、遊び盛りの2歳なんです。
「ねーしゃま?」
「っ!?な、なにかしら………?」
「ねーしゃま、あしょい、ましょ?」
ぬ。舌足らずではあるが言葉に出来たぞ!私も成長しているではないか!
首を傾げてお姉様におねだりなう。ようやく現実に戻ってきてくれたお姉様はヌイグルミの肌触りを確かめながら戸惑ってるご様子。
え、まさか飯事なりごっこなりした事ないとか言わないよね?物心ついてそうそう貢げと言ってたの?これは酷い。
いつまでたっても進みそうにないのでウーモルスを手にポーテも持参。両手いっぱいに持ってきてお姉様の前に並べていく。
もうこうなったらジェルエさんたちも巻き添えにしよう。
ヌイグルミは壁にいっぱいあるんだし。二人に一つずつ持たせて、やっぱりウーモルスを持って
「うーもー!」
鳴いてみる。さて。みなは乗ってくれるでしょうか?
お姉様のドーベルマンに襲いかかるように突撃したウーモルスはまるで………意味をなしてないけど。何度も軽く叩きつければワーナさんがヌイグルミでちょっかいを出してきた。ワーナさんに渡したのは鹿。
柔らかい角でウーモルスをぷにぷに。因みに鳴き声はなくて「まあ、なんて楽しそうなのでしょう!私も混ぜてくださいませ」と会話でした。そうか、そうきたか。
我に返ったジェルエさんも渡したシマウマで会話しつつ参加。いつの間にかウーモルスはもみくちゃだけど私にはポーテがいるからね!
すかさずウーモルスを放ってポーテで参戦。ぐいぐいヌイグルミの押し合いでなにが楽しいのか分からないと思ってたけど、意外とワーナさんがノリノリで楽しかったりする。
でもまだお姉様はリアルドーベルマン(仮)を掴んでいるだけで何もしてくれない。お姉様は本当に自慢しにきただけなのかな?
「ねーしゃま、うあい、わうい?」
「な、何よ。うあいってなんですの?」
「クロムフィーア様はリアディリア様が何もなさらないので具合が悪いのではないかと、伺っております」
「まだ小さい貴方がなに心配しているの?元気ですわ!」
「あい!」
じゃあヌイグルミで飯事なりなんなりしようよ。私は遊びたいのです。
じゃあ、みたいな感じでポーテを「ねーしゃま~」と押し付ける。お姉様の挨拶はまだ交わしてないのですよ。
でもお姉様はリアルドーベルマン(仮)を掴まえたままやっぱり動かない。さて、これ以上のお姉様の持ち上げは出来ませんよ?お姉様、私にどうしろと言うんですか。
「これは楽しんですの?」
「あい」
しっかり頷く。だってお姉様は高慢高飛車のイメージがついちゃったから、絵本を読んでくれるとか想像できないんだもん。
だからって不貞腐れた顔は止めてくださいな。貴方は何しにきたんですか。妹に気遣われる姉の方が屈辱でしょうに。赤ん坊に過度な期待はしないでよね。
「なぜ私にはこれを持ってきましたの?」
怖いし気高いからお似合いかと。
「ねーしゃまに、にちぇう!」
「に、似てるそうです」
あ。お姉様の眉間にちょっとしたしわが………
「私はこんな穢らわしい姿と言いたいのです?」
黒っぽいヌイグルミだと思ってたけど外見は前世と同じと考えた方がいいのかな?じゃあ後は呼び名を照らし合わせるだけだね。
で。穢らわしいとな。リアルなだけあって可愛くないからそう思ってるんですかね。怖いとは思ってたけど、まさか穢らわしいとくるとは思わなかったよ。
お姉様の扱い、難しいな。
「ん?きりっちょ、しちぇう!ねーしゃまみたいで、かっこいー!」
「女性に格好いいと使いませんのよ」
女騎士は格好いいと思いますよ。
「………………らぁめ?」
「………今日はもう戻りますわ。ご機嫌よう、クフィー」
早口で告げて出ていくお姉様はワーナともども出ていく。その手には何故かリアルドーベルマン(仮)を持って。すごい早さで。
あっけらかんと見送った私は呆然と見送ってポーテを取り落としてしまう。ジェルエさんが声をかけてくれるまで気づかなかったよ。
はて。お姉様はいったいなぜ急に出ていかれたのでしょうか?しかもヌイグルミを持っていって。
ジェルエさんも対応できなくて後になって気づいてた。さすがに仕える屋敷の令嬢から物を取り上げる事ができないので、私が眠りについた頃にワーナさんに事情を聞きにいったとか。
そうしたらなんと。お姉様はあのリアルドーベルマン(仮)を気に入ったらしい。あれか。お姉様は嬉しい?とうまく表現できないタイプですかね。
別に私は魔除けとしか思っていなかったからあげてもいいんです。でも、ね。
替わりに超!高級!なリボンを寄越すのはどうなんだろう。お姉様、初めてお逢いしましたが、ツンツンデレ認識でいいですか?




