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特別休暇 5

修正いたしました。28.12.18

 とりあえず……宝石とかはお高いので、契約書とか色々と書かなくてはならない。そのためにお父様が奥に引っ込んだ。あの扉の向こうはそういう部屋らしいね。代わりに女性が出てきて――扉を塞ぐように立った。護衛?


 私とお母様とポメアは取り残されてしまったので、まだ見ていなかった宝石を見ることに……なりません。申し訳ないけど、綺麗だなんて感嘆な声があげられませんから。つるつるの石か綺麗にカットされた石、としか認識ができないよ。


 だからちょっと遠巻きに、どうしてあれを選んだのかを尋問されるのです。まあ、普通に考えたらどうして?て思うよね。1つ1つを説明しようとしてくれたペリルゴット夫人には悪いことをしたね。


「お母様、あれはたぶん純魔石です」


 こそこそ~と。お耳をちょいとお借りして呟いてみる。顔の表情はうまいこと口許だけ隠したらしい。目は見開いているけど。さすがに扇1つで顔のすべてを隠したら変な人だよね。


 ついでに“ 声 ”が聞こえてきました、と言えば何かを確信したらしい。すっ、と顔を引き締めて頷いた。それからぽそぽそっと追加で言ってみる。中にいる精霊だろう者が泣いている、と。そしてなんで聞こえるのでしょうね、と。


 確かに私は魔力が多い。測定もしたのでこれは揺るがないと思う。使ったら減るけど。今思うとちょっとおかしい事に気づいた。まぐとりと話せる。それはまぐとりが魔素の元祖だから精霊として強いのはわかる。だから私と会話ができる。次に夢の中で出会った精霊。憶測だけど、あの3人は結構な年月を生き延びる――はちょっとおかしいか。永く生きているから自我を保てるほど魔素が濃くて私に干渉ができた。


 じゃあ、アトラナの中にいた精霊は?中と言うかアトラナは最初から表に出ていた。“ アトラナ ”として。人間と言う器があったから喋れた。これはいい。けど、純魔石と会話はなんだか変な気がする。


 純魔石はこちらから見れば魔素が固まった魔石。精霊の卵と言えばいいのかな。いくら濃縮して固まったから、私の魔力が多いから、と言う理由で会話ができるとしたら私は普段から精霊と対話できる事になる。純魔石がそこまで凝縮された魔素とは思わないんだよね。だから今は魔素が少なくなったらしいが回りにいるはずの、純魔石の中にいない精霊とはなぜ対話が出来ないのかがおかしい。単純に避けられているから?この国に精霊がいないから?理由はわからないけど、純魔石は何かがある――のかもしれない。


 1人ではわからない。ならもう1人を巻き込んでいこう。もしそれでもわからないのならば、またもう1人を巻き込もう。お母様がわからないのならば今度はお父様。早く出てきて。


 その願いが通じたのか。それともただの偶然か――がちゃりと開けたあの扉からお父様ともう1人、ちょっと小太り気味の男性が出てきた。なんだか頭のてっぺんがぺたーんとしている……何気に顔を拭きまくっているんたけどさ、それってもしかして汗を拭っているの?髪は汗のせいでへたっているの?止めよう……なんか目の毒だよっ。


 あれ?そう言えばポメアは?いつの間にいなくなったんだろう……


「ほ、本当によろしいのですか?」


「かまわない。伝えておいてくれ」


 あ。お父様、そのまま引き取ったんだ……手に収まる小箱を持ってそのまま出るらしい。お母様に手を引かれたからそのまま出る。そうするとあら不思議。馬車が目の前に止まっているよ!?


「またのご来店、お待ちしております」


「冬になる前に、今度ペリルゴット主催でお茶会をいたします。招待状を送らせてくださいませ。もちろん、アーガスト伯爵様方のご都合でお返事ください」


 深い、貴族の礼で見送られて馬車に揺られる私たち。ポメアはいない。たぶん、後ろにもう1つ馬車があったからそっちに乗ったんだと思う。いつの間に手配をしていたのだろうか。ポメアがどんどん優秀になっていく。


 そのまま馬車の中でこそこそっと純魔石のお話し。お父様は触って気づいたらしくて、家に送るのではなく直接持っていく事にしたそうだ。因みに今向かっている先はお城。宰相様に報告だって。


 じゃあ、その間に聞いておこう。忘れる癖がつくのは嫌なのです。嫌とかいいつつすっぽりと忘れちゃうんだけどね!


「お父様、『帝王』の無一文はどういう意味ですか?爵位も剥奪、追放とも言っていましたけど……」


「ん?あれ、言っていなかったかな?」


「わからないので言われてはいないかと」


「うーん。……まあいいか。教えても」


「わたくしも聞いてよろしいのですか?」


「害はないと思うからいいと思う。それに、クフィーは当事者だからね。家族の私たちが相談しても問題はない」


 どういう事ですかね?首をかしげたら説明が入りました、つまりこう言うことです。


 あの人(帝王)は色々とやらかしたから罰則を与えたんだよ。て。


 聞いてもいいということなのでこのまま聞いていく。なんでも、『帝王』が我が国に無法侵入をして暴れて私を誘拐したことで帝国に賠償問題などが発生していたらしい。今更ながら私は誘拐されていたんでしたね。すぐに帰ってきたけど。国で見たらそれはかなり大きな事件だ。


 勝手に侵入してアビグーア中隊長と護衛騎士を2名も重症に追いやって、私の誘拐。『帝王』が軽くちょっと様子を見に来てお茶を誘ったと言ってもこれは明らかに犯罪である。まず、帝国とサファリナ国は友好関係を結んでいないからね。ましてや『帝王』は大層な二つ名を持っていて侯爵と言っても王城に乗り込める立場ではない。


 で、色々と王冠も返す時にやり取りがひっそりと行われていて、この前かな?お父様が必死に色々と帝国との関係を終わらせるために~とか言っていたあの時に『帝王』の処遇とかが決まったらしい。けっこう最近の話じゃんっ!


 ――賠償金額は教えてくれなかったけど、その1割ほどは私へ送られてくるんだって。怖い思いをさせたね、て意味でお父様は言っているけど……こんな時に笑顔が爽やかなのはなぜだろうか。


「魔法剣のご褒美とはまた別なんですか?」


「別に決まっているじゃないか。あれはあれ。これはこれだよ」


 そうなんだ……ぽそっと「じゃないともう少し暴れたかな」て聞こえた。深くは考えまい。


 詳しく聞いていいかと聞けばこれまたあっさり了承をとれちゃったので聞く。いいのかね?えーと、この賠償金を払うために提示された金額分は、すべてあの3人の懐から出しているので帝国は痛くないらしい。どれくらいで痛くないのかがわからないけど、丸く収まっているんだから具体的な金額は教えないって。あくまで教えないつもりらしい。


 で、お金を渡して許してね、でこちらが許すわけもなくあっちのちょっとしたミスもあるからあっちの特産の流通と技術と戦力の後ろ楯を手にいれて、当事者たち3人は懐がすっからかんになっているし勝手な行動を取ったと言うことで皇帝がばっさりと切り捨てたんだとか。爵位も剥奪してこれ以上帝国は戦争を望んでいません!と宣言するために追放処分。これだと押し付けになるから帝国の方で発展している技術で3人の魔力とか武力を低下させて我が国に贈呈。此度の犯人たちをあげるから後は好き勝手に使ってください、とお手紙をつけて――あの3人はユリユア様のところで預かりになっているらしい。


 なんで処刑までに繋がらなかったのかを聞いてみると――直接な表現すぎてお母様に怒られたっ。もっと遠回しに言いなさいって……処分と言えばよかった?あ、それも駄目なの?もっと濁せって言われてもっ……


「クフィーは素直だな~」


「もう。今度は貴族の言い回しを教えなくては……」


 たぶん、それなりに覚えるけど忘れると思うから止めて。


 それで?と聞き返せば苦笑いがお父様から返ってきました。いや、別に殺せーとか思っていないから。でもなんで?って聞くとそう思われるのかな?貴族って難しい……


 まあそれは置いておいて、『帝王』たちがなぜ処刑されなかったのかと言うと『帝王』たちが馬鹿みたいに帝国では有名らしい。『帝王』は言わなくてもわかるくらいあちらでは武勇伝が今も語られているらしいよ。お父様は鼻で笑っているけど……剣も国一番のままだとか。ソマディオさんも名医だから有名だし、つるりんも実は魔術師として魔法具に長けていたとか。その実力はトップクラス。そんな人を3人も消すのは勿体ない、とグラムディア殿下が。


 グラムディア殿下の考えは、その力を我が国に使えないか。使えるなら使いたいと考えたらしい。お父様は恨んでいるのではないかと憶測を立てているんだとか。当たり前だけど、そんなトップクラスがころっと主を変えられるわけがない。だからどうせ処刑にするなら選ばせてこっちで使おう、と言う魂胆。もし我が国に属さないと宣言した時点で首と胴体は別れを告げるらしいよ。だから保留なんだね?お父様。


「本当は切り捨てたいんたけど……ソマディオ殿はクフィーの目を治せるかもしれない名医だし。ジャビャ殿はレーバレンスの助手に据えるほどの魔術師だから検討中。おっさんの方はクフィーさえよければ護衛にでもしようかなー、て。おっさん、クフィーを誘拐したからその見返りにそんな案がでただけだから。実力は悔しいが、私も知っているからね。嫌だったら切り捨てかな。私はお薦めしないが、こればかりは陛下にも聞いてこいと言われたからね……できたらちゃんとした理由も言ってくれると嬉しいかな」


 ずいぶんざっくりだ。もしここで腹をくくらなければ処刑は決定。今の彼らは我が国に“ 生かされている ”という感じなんだとか。もちろん魔法契約で厳重に縛り付けてるんだとか。一応は奴隷よりの扱い……かな?


 と言うことでどうする?と言われましても……


「私の護衛にはアビグーア中隊長が付いていますよね?……無理になったのでしょうか?」


「クフィーの護衛兼、中隊長だとアビグーア中隊長が今後動けなくなるから止めてください、だとさ。騎士側はアビグーア中隊長の腕を知っているので部隊に戻ってほしい。本人は護衛に付いていたいが、中隊長という部隊の上に立っているので早々に抜けられない。ちょっと揉めているんだよ」


「でも『帝王』を私が魔法院に引き連れようとアビグーア中隊長が入れないように『帝王』も中に入る制限とかがあるのではありませんか?」


「クフィー、『下品』か『おっさん』でいいよ。おっさんは奴隷と思ってくれた方がいい。それと……クフィーには悪いが、今後も考えて個室で受けてもらおうかと考えている。エリエリーチェくんとジジルニアくんとハルディアスにケヤンも一緒にね」


「え?」


「クフィーも含めて今あげた3人は異常なんだ。個別に目をつけて魔法師が引き抜くのは別におかしくはない。まあ、まだ決めてないけど……完全じゃなくてたまに個人授業を取り入れようかな、とは思っている。おっさんが護衛につくのなら、個人授業をちょっと優先かな。それならおっさんも中に入れるからね」


 えー……あ、でも個人授業の方が捗るかも。余計な小言を聞かなくてもいいし。でも個人で受けたりしていたら目をつけられるのかな?それはみんなも一緒か。今後を考えると……目立つ?もう遅いか。対策はしているけど婚約者がどうとかもうるさいんだよね?でも個人授業って引きこもりのイメージか特別扱いのイメージが……


 しかも『帝王』を護衛につけたら個人授業を取り入れる頻度が増すらしい。なんか嫌だな、それ。そもそもあのおっさんは好きではない。守りたいと思ってもいないだろうから護衛としては遠慮するべきだね。奴隷って言うのも……ちょっと、嫌かな。


「おっさんの護衛を拒否します。どうせ嫌々とやられると思いますから。そんな人に護られたくはありません」


「クフィーはしっかりしているから、わたくしは少し寂しいわ」


 ふぅ、とため息がっ。つまり頼ってほしかったと言う事ですか!?お母様からそんな声が聞こえるっ。


「迷うかな、とは思ったが……それじゃあこの話は終わりだ。――ちょうど着いたようだね」


 かたん、と止まればポメアが声をかけてきた。本当に着いたらしい。お父様ったらよくわかるよね。私を最後に順番に出たら御者に待っているように告げて門へ。全身鎧がどっしりと待ち構えております。片方はウェルターさんで決まりだね。私たちを見て頭を支えているよ。


 そう言えば私……『処刑』と言う言葉にあんまり怖いと感じないんだけど……斬首とかそんな感じで終わるって想像がつくのに、なんで怖くないのかな……日本でそんな日常的に聞く言葉じゃないんだけどな。自分に振りかからないから?その場を見ないから?何が私の不安の引き金なんだろう?


 ちょっとウェルターさんにお小言をもらって何かを書くためにちょいと移動のお父様。そのまま待つ――と言うわけにもいかず、お母様だけは返された。リディお姉様の様子を見てくるんだとか。私はオブディンのことでお話しですね?わかっていますよ。普通に帰りたかった!!


 さすがにお母様を1人で返すわけにもいかなかったからポメアが代わりについていったけど……私を見ないで。お父様の方が偉いから。


 もう片方の喋らない門兵さんと佇みながら待つこと気持ち……いや、気にしていたら長いって!まだかな?まだかな?なんて思っていたら例え1分で帰ってきたよ!て言われても遅い!って言っちゃうよ!


 無言のまま変に居心地が悪くなったところでひょいと抱き上げられたらスタスタと魔法棟へ。まったく……置いていかないでよ。……気にせず入っていくので私も気にしないで笑顔でいることにする。視線?私も気にしません。気にしたら疲れるので。


 そしてスタスタと歩いた結果――普通にお父様の個室に付く。なにも問題がなかったです。コンコンとノックをしてね――て、自室じゃなかったの!?じゃあ誰の部屋?


 疑問はすぐに解消……扉の解除?をキラキラさせながらさっさと中に入ってしまいましたとさ!そうすれば本日もお疲れ絶好調!で表情筋が死んでしまったレーバレンス様が紙の山に埋もれながらこっちを見てくる。怖いっ!怖いよぉぉおおお!


「休みの奴がなにほいほいと出向いてやがる。嫌がらせか?」


「いきなり休んだことは謝るが、これで手を打とう。今は預かっていてほしい」


 紙の山をうまいこと退けてレーバレンス様の前にことりと、さっき買ったばかりのオブディン入りの小箱を置く。表情が抜け落ちているおかげで目が怖い。なぜ私を見るんですか、レーバレンス様っ。


「純魔石だ。【火】か――【闇】か――興味があるだろう?」


「純魔石がなぜあんたの手に渡った?」


「偶然だね。宝石で有名な『ミスター・ペリルゴット』の店に行ったらこれが飾られていた。ベルック宰相様宛に私の著名入りで魔法契約が届くはずだ。あとで清算してほしいと、言っておいてくれ」


「純魔石の証拠は?」


「クフィーには魔力が光って見える。その意味は分かるだろう?それと……魔力操作をすればわかるが何かいるぞ。精霊の可能性があるかもな?」


 なんか、お父様があくどい。


 何かを交渉しているみたいだけど……何かを企んでいるようにも聞こえる。私は精霊を伝えてはいないね?お母様には伝えたけど。今も出してって聞こえる。けど、それはとても弱々しい。でもなんだか落ち着きを取り戻した声が微かに聞こえるんだよね。蓋を閉めているからか、うまく聞き取れない。だから弱々しく聞こえるのかな?


 短く分かった、と言えばレーバレンス様はすぐに指をキラキラさせて魔力を溜め、文字を書く。何を書いたのかはわからなかったけど、『結界』だと思う。集えと短く言って完成させたらあの小箱が真っ黒に包まれながらキラキラと輝いちゃったんだもん。


 じゃあ任せたぞってお父様はそのまま踵を返して出ていくの!?用件が短すぎるよ!?………………用事はこれだけだったみたい。そのまま出ていって私たちは家に帰ってリディお姉様の様子を伺いに行った。


 ねぇ、お父様。私、お母様と一緒に帰ってもよかったんじゃない?え?話があるの?あ、はい。




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