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決意を

ご指摘を含む修正をいたしました。28.12.17

 改めて思うことが。季節もだいぶ冬かなー?とか考えていた今日この頃――日も過ぎていたし、肌寒さも実感してきてこれは冬に近づいたとかなんとか。


 そんな風に考えながら魔法院でどこも変わらず授業を受けて日々をね。うん。人数がかなり減ったな、て事くらいしか変わっていない。かなり読まされているけど授業内容は変わらず。読まされて説明とか意味を訪ねられたり。雑学だって魔力操作をちょーっとやってみたり。でも私は先生側に回っちゃうんだけどね。誰も耐えられないって。むぅ。


 そんな中で今日は無の日。どこもお休みできっと城下町のお店は賑わっているんじゃないかな。行ったことがないけど。もう少し落ち着ける時が来たらお父様におねだりしてみようかな。いや、私はいつでも落ち着いているんだけどね。周りの環境と言うものが落ち着かない。


 今日だってお休みなのにわざわざ、私の護衛にアビグーア中隊長。お父様の代理として――えっと、保護者としてユリユア様とヴィグマンお爺ちゃん。ヴィグマンお爺ちゃんはなぜそんな名代になっているのかがわかりません。保護者って……親戚でもないのに……でもここはあえてスルー。


 あと、目の前に右側の人がいます。名前はソマディオさんと言うらしいです。この人にも護衛が3人もついて監視だとみんなが言う。身動きが取りにくそうだよね。


 で――今いる場所なんだけど……よく分からない、と言うのが正しいです。私がまったく知らない場所。外に出なかった証拠だよね。出れなかった、て言う方が正しいけど。


 ユリユア様に珍しくウパカラマに乗せられ走らせてもらい、右側の人とヴィグマンお爺ちゃんと護衛さんはウママンとウパカラマに引かれた馬車に乗って森の中へ。私の視界はやっぱり森の多い繁っている場所へ行けば行くほど真っ暗で所々の木漏れ日にホッとすることもできなかった。


 うっすらと入ってくる光が怖いんですよ!なんか出そう。そう言う理由から目を閉じていました……うん。だから景色を堪能するとかしていません。わかるのはウパカラマたちの蹄の音と、何となく閉じても入ってくる光とユリユア様の声かな。


 そして到着。ユリユア様が出してくれた紅茶を飲みながら一息を着いたところです。とりあえずどこかの森の小屋です。木で全部できているから陶器のティーカップがすごく不自然である。いいけどね。


 みんなが入るとぎゅっとした感じにならない広い空間の小屋。それぞれ私生活の場所は隔離してあってけっこう変な家でさ。キッチンに一部屋。トイレに一部屋。お風呂に一部屋。リビングに一部屋。個室?が二部屋。物置が一部屋。玄関に一部屋。なんでこんなに区切ってあるのかがわかりません。廊下は玄関とリビングに繋ぐ分しかないよ。あと全部が繋ぎになっているの。あ、階段も部屋の中にあったよ!


 面白半分に探索したらこんなのばっかりでさ。私は何回ぐらい扉を開けたのだろうか……なんで全部が部屋に収納されているんだろう。階段はむき出しでいいと思うんだけどね。


 お茶を飲んで一息をついたら右側の人が話しかけてきた。


「ソマディオだ。グレストフの娘さんで……いいか?」


 何も……起こらないよね?


「改めて、お初にお目にかかります。グレストフの娘、クロムフィーアと申します」


「あいつに娘ね……『帝王』が羨ましがっていたよ」


「羨ましがる?なぜでしょう?」


「『帝王』は未だに独り身だからだ。そしてただいま失恋継続中なのに諦めが悪い」


「ああ、本当に諦めが悪い。クフィーも『帝王(げひん)』には近づいてはいけないからな?汚れる」


 ん?なんかユリユア様が真剣に言ってくるんだけど?しかも『帝王』が『げひん』って聞こえる不思議。耳がおかしくなったかな?


 思わず頷いたら極上の笑顔で返されてしまった。私も笑い返しておこう。にへら……


 そんな事をしていたらヴィグマンお爺ちゃんから咳払いが!まあ、話が進みそうにもないからね。こればっかりは誰か進行役が必要かもしれない。でも始める前にヴィグマンお爺ちゃんの指先をキラキラにさせて魔力を集める。なんだろう?――て見ていたら円を描いて魔法を完成。


 頭上からちょっとキラキラが降り注いでいる事から結界の魔法を放ったんだよね?でもなんでまた結界なんだろう。


 そしてヴィグマンお爺ちゃんから紙が渡される、と。そこには漢字……魔法文字がずらずらーとね。つまりはえーと……当て字って読みにくいよね。




 水余膜出中乃音葉護理防具。※水よ膜で中の音は護り防ぐ。




 中の音を守ると言うことは防音対策?あ、お父様かよくやっていた魔法ってこれなんじゃない?へー。ぱぱーっと書いちゃうから文が短いとは思っていたけど短いし『護』以外ならそんなに面倒な字じゃないよね。


 ………………あれ。なんでこれを私に差し出してきたんだろう。……………………………………………………………………あれ。もしかして【水】って私だけだった、とか言うオチじゃないよね?護衛騎士の人にも【水】の人っていると思うんだけどね。まさかね。ねー、ヴィグマンお爺ちゃん。私がやるわけじゃないよね?深読みのしすぎだと言ってほしいな!


「うっかりしておってのう。わしがちゃんと見ておるからこの書いてある魔法を使ってくれんか?」


 おう……期待を裏切らない。なんと言ううっかりだ。ヴィグマンお爺ちゃんのうっかりって洒落になんないよ!?


 でも一応は本当にいいのか、とか色々と聞いてみたり。ほら、やっぱり嘘でしたー……て――そう言うの、ヴィグマンお爺ちゃんには備わっていないんだね。普通に魔法に関して説明されてしまった。


 この魔法は防音対策の魔法で間違いないんだって。結界にも色々あるのは知っているけどさ。勉強していたから本当は知っていたけどさ!なぜ【水】の魔法師を連れてこないのか。うっかりにもほどがあるよ。


 しかたないので――そう言えば久しぶりの魔法だ!マルカリア以来じゃん。あの時はあんまり意識していなかったから魔法を放ったって実感がなかったけど。まあ、せっかくだから魔法を使わせてもらおうっと!


 集え、だけで済ませたら右側の人がビックリしています。まあ、お父様と条件が一緒だもんね。やっぱり魔力が高いのか!?て思われちゃったかな。


 気にせず。書かれた紙とにらめっこしつつ、不馴れなように見せるためゆっ――くり書く。魔力はたっぷりあるからね。途切れることはない。因みに魔力の量はテニスボールくらい。この部屋に結界を張るから少し多目にね、と言われたのでこれくらいにしておいた。ちゃんとヴィグマンお爺ちゃんが私の肩に触れて感覚を図ってくれているから大丈夫。ヴィグマンお爺ちゃんのうっかりさえ発動しなければ事件にはならないよ。


 ゆっくり書いたおかげで書き間違えることはなく、完成したので円陣を描いたら魔法の完成。ぱ!と弾けたと思ったらキラキラが舞って……消えちゃった。あれ?失敗かな?んん?


「あれだけでこの威力、か……恐ろしいな」


「失敗ではありませんか?」


「手のひらが少し熱かろう。とくに指が。その熱は魔力を継続して使っている証拠じゃ」


 う~ん……まあ、確かにちょーっとだけ暖かいような?ティーカップで手のひらを暖めていた後なのでわかんないや。


 でもヴィグマンお爺ちゃんが言うには、ヴィグマンお爺ちゃんの結界を通り抜けてこの小屋を覆うように大きく張ってあるらしい。威力が思ったより広がったんだって。だからなるべく魔法を教わる時はお父様に教わるしかないんだとか。大きすぎるから自分の感覚と誤差があるらしい。ヴィグマンお爺ちゃんの予想では自分より少し小さめだったんだって。魔素を集めるにも誤差があるんだね。教本にそんな事は書いてなかったと思うけど……


「外部への漏れ、攻撃を防ぐ二重の結界。それほど彼女の目を診るだけに厳重にしなくてはならない理由がある、と思ってもいいんだな?」


「当たり前じゃ。だから、今から話す内容は秘密にしなくてはならぬ。騎士も交えて契約書に著名をしてもらうぞ」


「……眼、だろう?極秘にしてはやりすぎだ。私には眼だけでそこまで内密にしなくてはならない理由がわからない」


「お主は帝国側の人間じゃ。まだ和平も結んでおらぬし、結んだとしてもこれだけは絶対に他者へ漏れてはならぬ。最低限を伝えるなら、この娘っ子は少しの間違いで死ぬじゃろう」


「死ぬ……?眼だけで?おかしな発言はよしてもらおう」


「いや、嘘ではない。これはただの親馬鹿なグレストフが心配して診てもらう過保護な処置ではない。治すに治せず、手がつけられない状態ゆえに帝国のソマディオ殿にも力を借りたいとこうしてお願いしている」


 なにか、大事になってきているね。本人はとりあえず真剣な場なので邪魔しないように真面目な顔をしておきます。


 話す準備はできたけど……この右側の人はどんな判断をするのかな?


 ヴィグマンお爺ちゃんはお願いとして情報を漏らさないように契約で縛り付けようとしている。右側の人から見ればたかだか眼の治療を診るだけになぜそこまで厳重にしなければならないのか。核心をついていないからこそ頷けない。


 私から見れば治せるならお願いをしたい。けど出来るのかがまったく分からないんだよね。いかに属性を刺激せずに治療するか、だもの。幸いにも【光】は私の属性ではないから反応はないけど。魔塊の影響力って分かんないからね。魔力の塊だし。


「病名だけでも効くことは難しいのか?」


「眼の病名なら説明してやれるのう。その他は言えぬ。その他は契約後、じゃ」


「つまりは複数の病気が絡んでいると。失明ではないな?焦点が合わないようでもないし……出すぎ、へこみでもない」


「……色がわからぬそうじゃ」


「……色?」


 そう言って見ないでくださいな。私はあなたと見つめ合う趣味はないので。でも眼を反らすと私がおかしいわけで……首を傾げておいた。


 それでも見つめ合うのか……どうしろと?ここは証明して見せろと言うのかね?それとも色が見えない、他に病気を持つ私の治療を診るか見ないか悩んでいる?相手を悟れないので私が悩んじゃうよ。


「このお話しはなかったことでもいいのですよ?」


「君は治したいのではないのか?」


「治したいと思います。しかし、無理なものは無理と言うのならそれを諦めなければなりません」


「ずいぶんと呆気ないな。それならば私がこうして話を持ちかけられた意味がない」


「ソマディオ様はまだ選んでおりませんので、意味がないと判断なさるのは早いでしょう」


「君だって早い。諦めるのだろう?」


「ええ。ソマディオ様を諦めます。後は自分で治すためにやりましょう。まだ私には未来がありますから、天を迎える最期まで課題として私は生きます」


 まだ諦めてはいない。投げやりになったりちょっと落ち込んでみたり。まだまだ全然、私の力では探し出せなくてもどかしくて、やれることも少なすぎて何も手がかりがないけど……


 ここで終わるわけにはいかないんだよ。


 せっかく異世界に来たのだから体感だけじゃなく視覚も潤いたい。彩り豊かで様々な髪の色や瞳の色、魔法から産み出す光は淡く輝いて綺麗だと思う。他にも前世と違う色があるかもしれない。この色だと思っても想像だけで本当の色ではない。


 そんな異世界で満足ができるのか。私は物足りなくて満足はできないよ。もふもふ、ふさふさでちょっと和んでも、黒っぽいとか曖昧な私と他が違うと独りになっちゃう時もあるからね。不安に思ったら魔力暴走になっちゃうから切り替えるけどさ。多少は暴走するけど。


 だからね、協力者じゃないのならここでさようなら。この事を回りにバラして私を欠陥女として虐げられても痛くも痒くもないので好きにすればいい。こっちだってそれ相応の対処をすればいいんだもん。私は敵に、容赦はしない。


「私には無理でも、自己満足でも、迷惑でも、私はやりますよ?自分の事ですから。煩わしいと思われようとも、私はただ色がわからないだけ。不自由と言うほどでもないので、どうとにでもできます」


「クフィー」


「――ユリユア様のように心配してくださる方もいますから、治したいと思うのです。私自身では何十年もかかってしまう。もしかしたら一生……そう考えると、可能性にすがりたいと思うのは当然ですよね?」


「っ……こんな小さな子どもにそんな事を言われたら断りにくい」


「決めるのはソマディオ様です。これ以上は私の命に関わるので深くは教えられません。契約書を……よく読んでお決めください」


 私の決意証明、以上です。嘘偽りはない。確かに治したい。でも大っぴらに動けない。ならできる人にすがってもいいじゃないか。


 真っ直ぐ右側の人から眼を反らさない。彼も反らさない。判断の決め手は?私の熱意を伝えること。でも少ししたら眼を反らされた。その目線の先は契約書。ヴィグマンお爺ちゃんに聞いたけど、内容は私の病気に関する重大な部分を他言無用にすること。もしそれを破れば記憶を一部分、ごっそりとなくすと書いてあるらしい。


 記憶を一部分をごっそりとは?と聞けば一部分じゃ、と返された。光魔法で真っ白になるように幻術などをかけて混濁させ、元々あった記憶と幻術を一緒にかき消すんだって。聞いただけで怖い。その内容があの書面に書かれてあるらしい。今更ながらすごい厳重だと思う。でも、無理だとわかったら抜け出せるようにまた違う契約書を書かせるんだって。色々とごちゃごちゃしているね。


 読みきった右側の人は考えるためか、一度その契約書から眼を離して宙を仰いだ。そして息を吸い込むと同時に私に向き直る。私と言うより――ヴィグマンお爺ちゃん。


「話を聞く。医者が患者を放っておけるか」




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