服装チェンジ!
ご指摘を含む修正をいたしました。28.12.11
もう、秋だね~。秋と言えばスポーツの秋とか読者の秋、食欲の秋とかがよく耳にするのだけど……この世界では社交の秋、だそうです。うん異世界だわー……
ようやく家の方から出入りができるようになった私も、帝国との接触がないまま一週間はすぎた。ユリユア様はかなり頑張って屋敷から視察団の3人を出さないように管理しているらしい。でも我慢をさせて暴れられるのも困るので、今日は城の訓練所で見習い騎士の訓練に参加なんだって。ここでウォガー大隊長といちゃこらをお披露目してくるんだそうな。
なぜお披露目してくるのかと言うと、お父様が言うには『帝王』がユリユア様に惚れ込んだとか。女で強い。凛とした立ち姿に見目も美丈夫。『帝王』のお眼鏡に叶ったんだって。
しかし、当然ながらユリユア様はウォガー大隊長に心を寄せているので断ったけど同じ屋敷にいるのでぶっちゃけて言うと『帝王』よりユリユア様の方が限界に到達したんだって。お父様に「ウォガーに逢わせろ。さもないとこいつらを野に放つ」とまあ……かなりのお冠と聞いています。て言うか『帝王』たちを野に放つって……猟犬か何か?
そうそう。視察団を厳重警備(お父様とコデギス近衛補佐)を配置して、特急でウォガー大隊長にユリユア様とセットで「しっぽを!!」とせがんだらかなり渋って折れなかった!涙がだばだば出るよっ!!実際に泣きそうになって大変でしたあぁああっ。
なんでも、番を見つけた獣人の体はすべて相手のものと決まっているとかっ。だから触られたら不倫になってしまうから無理だと丁寧に断られちゃったよっ!それなら仕方がないね。
因みに相手から許可が出るとどうなるんですか?と聞いてみたらそれは俗に身売りになるので裏切り行為だと言う。あれ。ユリユア様ってば軽く許可しようとしていませんでしたかね?思わずユリユア様を見たら微笑まれた。黙れって事でしょうか……表情から読み取れないっ。
ついでにウォガー大隊長から「獣人の中では尾や耳や角など亜人の特徴的な部分を誇りに思う者もいる。勝手に触ったら敵と見なされ攻撃してくるからな?」と釘を刺された。さすがにそんな事はしない。でも、触りたかった……
しょぼーんとしていたら代わりにあの白っぽいしっぽの、トールお兄様の友人が現れた。なんだか私を見た途端に硬直して「うっ」て――私は彼に何かをしただろうか?
そして代わりと言うことでその人のしっぽを堪能させてもらいました!ちゃんと本人から了承を得たから大丈夫!ウーウやノルアを撫でていたから腕は上がっていると思うよ!!てかトールお兄様が頭を抱えてしまった方が気になる。大丈夫だよ、トールお兄様。ほら、こちらのアルトライトさんなんか身悶えしながら地面にへばりついたじゃん。気持ちよかったんだよね!
でもまだ物足りない……他にリザードマンみたいな鱗で覆われた太いしっぽも触ってみたいけど……さっき言われた誇りを持っている人なので駄目と言われた。ショックである。じゃああの角がくるんと丸まっている人は?と聞くと駄目だって言われた。あの角もあの種族は大事な誇りだそうです。因みにヒッジ族だって。つまりは羊だそうです。どうりで髪の毛もパーマがすごいわけか。
それでもめげずにあの人は……と言うところでトールお兄様に止められました。何しに来たんだ?と呆れながらに言われたのでね。理由はもちろん、ウォガー大隊長のしっぽを触れるかどうかである!動機が不純すぎてすぐにアビグーア中隊長の肩の上に戻されました。ちえっ!
話が大幅にずれたけど、今日は『帝王』が城にいるので――私はお城に鉢合わせ、なんて偶然はあいたくない。ので!保留にしてしまっていたクリミアのお茶会に参加することにしました!!ジジルとエリーも一緒だよ!!クリミアがいいって!!
実は、何度か手紙が来ていたりする。けどタイミングが悪くてね……魔法剣に気合いを入れている時だったし、ベラーナの咲き終わる前に手紙がもう一度ね、送られたんだけど……私が城から出られなくなった時に出していたからどうしてもお茶会に参加が出来なくてさ。お母様がお詫びの文を代筆で何度も送ってくださいました。おかげでアマンツェ子爵夫人と交流が深まったらしい。
秋だから夏のベラーナは終わっちゃったけど、お茶会にどうですか?と文通しているお母様に打診が来たから行きましょう、とな。親同士ではとっくの昔に顔合わせは済んでいるので子どもたちもそろそろお茶会を、とのこと。
ようやく私も戻ってきたから、じゃあ近いうちにって。それが今日。三日前に言われました!ちょっと遅いよ!?でもやんわりとそんな事はないと主張するお母様。勝てるわけがないので信じることにしましょう。
だがしかし!一人でクリミアの相手は疲れるからジジルたちも呼んでもいいよね?またおろおろして会話が弾まなくなるのは嫌だし。ベラーナの話を延々と聞かされるのも嫌だし。一応、聞いてみたらいいって言うし。じゃあ、いいよね!?
平民だけど……と思ったけど親が子ども好きだからさ。即OKの返事が来たよ。でも城の寮に滞在しているのにどうやってくるんだろうかと疑問に思っていたんだけどね。近くで――隣で聞いていたお父様が馬車で家まで送ってみんなで行けばいいと言い出しましたよ。手配しておくよ、なんて清々しい笑顔で言ったからジジルとエリーは驚いちゃうんじゃないかな……
「……おは、よう」
「お屋敷って、初めて……」
「おはよう。エリー、大丈夫ですか?ジジルもそんなに固くならなくてもいいですよ」
驚くを飛び越えて恐縮していました。今思うと私ってば初めてお客……お友だちを家に招いているよ!?今度は私の家でお茶会をしよう。お母様に言わなきゃ。
で、服もここで取っ替えます。相手は貴族ですから。今から既製ドレスを買いに行きますよ?驚きと恐縮だけでは終わらないのだけど2人は大丈夫かね。
と言うわけで私とお母様の準備は出来ているので、行こうか?本日のリディお姉様はお留守番です。習い事があるのだとか。淑女って大変だね。
もう一度馬車に揺られて『ミス・トリアーネ』と言ううちの御用達らしい仕立て屋についたら2人に似合うドレスを選ぶお母様。とっても張り切っていらっしゃいます。あ、自己紹介とかは馬車の中で簡単に終わっておりますよ。だって2人ともまだ恐縮しちゃっているからお母様が一方的に喋りかけるしかない。黙るなんてことはないのです。
ついて早々にお母様と店主に捕まった2人を見送って私は用意されたテーブルで眺めるのがお仕事だ。色がわかんないからね。聞かれても判断ができません。デザインぐらいしか何も言えないからセンス抜群のお母様にお任せである。
……やっぱり目を解剖………………診てもらった方がいいかな?あまりにもグロそうだったから即決で遠慮しちゃったけど治る確率があるならお願いした方がいいかな?でも魔塊がねー。お父様にも聞いてみた方がいいかな。まあそれは今は置いておいて。
この店のトリアーネ夫人は未亡人。自宅の1階をお店に変えて趣味のドレス作りに精を出している。髪は作業の邪魔にならないように全部を左の頭部に結い上げ、リボンとアクセサリーで髪を留めてアートを。少し巻いてある毛先まで装飾が施されており、いつも注目を浴びている。
この店も貴族街ではけっこう有名なお店で、公爵のお墨付きまでもらっているんだって。そんな彼女のドレスは腰に大きな布の花――と言うかブーケをアクセントにレースにアーチを描かせた重ねのスカートはこれから流行させるドレスだとか。
因みにトリアーネ夫人は着せ替えが大好きである。私も数えきれないほど着せ替えをさせられたよ……目が回って最後はぐったりするからトールお兄様も、そうならないように出来るだけ好みとか意見を言っておくようにしているらしい。無理強いはしない人だからね。始めに言っておいてほしかったな……明らかに残念だ、と肩を落とすけど。あ、紳士服も売ってるよ。
「来ましたわ!!蜂蜜の髪には淡いコスンの花の色にしましょう!きっと似合うわ!茶色ならこちらのマリゴールのように少し濃いめにいたしましょう!!」
「まあ!素敵な色だわ!形はどうしましょうか?やはりここは秋ですからふんわりとした裾がいいのではなくて?」
「お茶会とお聞きしましたから首もとを飾りませんと!少々お待ちになって!」
うん。張り切っているねー。2人が手を繋いで震えながら私を見ているよ。でもごめん。興奮した大人2人を宥める方法なんて知らないからさ。とりあえず可愛くなるのだから今しばらくの辛抱だよ!頑張って!
それはそうと植物は完璧とまでにはいかないけどなんとか制覇したんだよね。トリアーネ夫人が言っていたコスンの花はコスモスで、その淡い色のドレスを探してくるらしい。図鑑の色はどことなくグレーって言う色だったから、濃いめのピンクでいいと思う。てことはジジルは淡いピンクのドレスだね。
マリゴールはマリーゴールド。私が知っている花の通りで、花びらが多くて1枚1枚の花びらがくるっとしていてボリュームがあるように見える花。真ん中が黄色やオレンジで外側に向かうほど赤い花びらを開花させるんだよね。濃いめだからエリーはオレンジ系かな?
他の職員さんにすすめられてクッキー……激甘クッキーをかじってお茶で流し込みながら考えているとすぐにトリアーネ夫人がドレスを抱えて戻ってくる。数は――山盛りだから多いってことにしよう。両手にいっぱい持ってきているよ……
クリミアのお屋敷に行くのはお昼の近く。朝の9の鐘が鳴って(いたらしい)からここに来ているので時間はまだ余裕である。2人とも、頑張って!
まずは大量に持ってきたドレスから2人の好みを。戸惑いながらも選んでいるね。そして悩み出したらトリアーネ夫人が推してくる、と。うん。私もあんな感じだった。ここで丸投げしたら着せ替え人形だからみなさん注意してね!あ、ジジルが推し負けた。満面の笑みでトリアーネ夫人が職員に選別をしたドレスを渡して着替えを促して次はエリー。
エリーは逆にきちんとこうしたいとか気になるところや好みを言っているみたい。さすが商家の娘、かな。はきはきと答えているようだね。でもトリアーネ夫人も負けないのだよ。今度は主張を取り上げてどれがいいか詰め寄るから!
「クフィーちゃん……助けて……」
ジジルは3着を着ただけでダウンみたい。着替えたけどお母様に首を捻られて別のものにしましょう、て。すぐだったね。そして審査が怖いね!うん。こんなのだった。最初はこんな感じだった!
「お母様、ジジルの髪は短いので襟をつめた首が華やぐ物はどうでしょう?」
「そうね。首もとも寒そうだわ。それとやはりお花ね。首を覆う襟のお花のはありますか、トリアーネ夫人」
「この桃色に薄目の緑でバランカの刺繍を描いているものはどうでしょう?首から胸元にかけて――それから袖と裾にも施されています」
「さ、ジジルニアちゃん。着てみてちょうだい」
「ジジル、もう少し頑張って」
「……うん」
あらら。かなりのお疲れのようだね。これが終わったら是非とも激甘クッキーを薦めてみようかな。でもこれ甘ったるいだけだからさすがのジジルも眉を潜めるかも?
エリーの方は……何やら悩んでいるね。とりあえずお母様がそっちに行って一言、二言?何かを言って帰ってきた。エリーはお着替えだね。
ちょっと待つと先に着替えたのはジジル。職員の手助けがあったおかげで早めに着替えられたみたい。ちょこん、と顔を出して姿を出したジジルはもうね、可愛いんだ!色がわからない事がまさに残念だよっ。薄いグレーの服に襟首とか袖や裾に濃いめの薔薇の刺繍とかシンプルだけどスカートがふんわりしているのもあるし、ジジルがおどおどしているから可愛くてしょうがない!!
「可愛いです!」
「あ、ありがとう……」
「まあ。自信を持っていいのよ?本当に可愛いわ」
「あら素敵だわ。靴もバランカが控えめのものにして、髪留めも小振りなバランカを付けましょう!」
「貴方たち、探してきてちょうだい」
職員さんが駆ける!ジジルなんかホッとしたように私の隣に促されているよ。そして私にいつもこうなのか、と聞かれましてもね?好みを伝えたらほとんど親にお任せなので何時もではないのだよ。ごめん。
ボカして言ったらじと目をされてしまいました。いいじゃない。終わったんだから。ささ、ここのお茶は美味しいから飲んで飲んで。ジジルもエリーのを見ようね。
「クフィーちゃんてすごいね。もう疲れちゃったよ。貴族って大変ってことがよくわかった……私は平民でいいよ」
「慣れたら大変ではなくなるのですけどね。今度は我が家に来てください。もちろん、服はいつものでも構いませんから」
「その時にね?まだお茶会ってよくわかんないから」
「そうですね。気長に待ちましょう」
とか話している間にもせっせと装飾をつけられるジジル。もう流されるままに身を預けてしまったらしい。靴の履き替えもささっとすまされ、髪も耳のすぐ側をひょいっと束ねてパチンと止めるだけ。うん、やっぱり可愛い!
「私はどう?」
ジジルを見ていたらエリーが登場。腰に手を当てて自慢げにスカートを持ち上げてみたり。
エリーのドレスは濃いめのグレー。赤のように濃いめに見えないからやっぱりオレンジだと思う。首もとが少し開いた一色の本当にシンプルなドレス。肩を丸く出させて袖もふんわりとさせて先端はきゅっとリボンで縛る。開いている首もとは同じオレンジかはちょっとわからないけど、もう少し濃いめのグレーでスカーフが巻かれていた。端には宝石のような光るものかキラリと見えるね。それだけではシンプル過ぎるのでたぶん反発していないから同じ色の薄い生地のショールを肩にかけて私には黒っぽく見える花形の留め飾りでずれないようにしている。
髪はもとからストレートだからそのままに留め飾りと同じ飾りのヘアバンド?で顔をスッキリと見せていた。うん、こっちも可愛い。ちょっとお姉さん、て感じがするよ。あ、靴はちょっと高めのヒールにしたんだ。10歳でも女の子だねー。もちろん私とジジルはペタンコだよ!10代で扁平足にはなりたくありません。
「お嬢さんみたいだね~」
「えー。せめてお嬢様にしてよジジル。それじゃあなんだか貴族っぽくないよ」
「でもエリー大丈夫?慣れていないとすぐ足が痛くなりますよ?」
「そうね。少し高めにしたけどまだ若いのだからもう少し低めにした方がいいかしら?」
「これがいいです!この努力こそが綺麗である秘訣なんです!!」
「エリエリーチェちゃんは頑張っているのね。好きな子でもいるのかしら?」
「え?あ、いや、違いますよ!ちょっと思いきってお嬢様らしくなりたかっただけですっ」
ふふふー。本当かな?お茶会の時にぜひとも、聞かせてもらおうかなー。ちょっとニヤニヤしていたら怒られちゃいました。ジジル、絶対に問い詰めようね。よし。ジジルは私の仲間です!
そんなわけで……わー、すごーい。2人のドレスを選んだらもうお昼に近いんですって。早速アマンツェ子爵家に行きましょう、て笑うお母様がなんだか気合いが入っている模様。鼻唄までやり始めたからよほどドレス選びが楽しかったんだね……私のは先にお父様に選んでもらってよかった。ポメア、ありがとう。
では、クリミアに会いに行こうか。急に友達をつれてもOKだなんてクリミアはすごいよねー。内気はどこにいったんだろうか。あったら何を話そうか?とりあえず……聞き手にでも回ろうかな。




