それがどうしたー
誤字・脱字・加筆・修正いたしました。27.4.5
悩ましい。実に悩ましい。キラキラにこんな意味があったなんて………
レーバレンス様の告白にみなが騒然とするなか、私はすんなりと納得してみせて笑っておいた。にへら。
赤ん坊だから笑うしかないんだけどね。でも、笑っておけば無邪気っぽいでしょ?
そうする事によってレーバレンス様はしゃがみこんで、私を見るなり石ころを見せてくれる。それも2つ。片方はキラキラしていて、片方は何の変鉄もない石ころ。
「キラキラしてるのはどっちだ?」
そんなの、こっちに決まってるでしょ!と言う感じにキラキラと光る右を触る。手まで輝いて見えるからちょっと面白い。
「じゃあ次はどっちがキラキラだ?」
今度はなんかの小瓶。中身は液状みたいです。勿論、キラキラしてる左を選んだよ。
レーバレンス様は無表情で私を見つめてくるけど、何も言わずに頷いてる。
次はアクセサリーと来ましたか!ネックレスとイヤリング。小粒でちょっと可愛い。キラキラと光っているから、これなら石の塊じゃなくて宝石に見えるかも。
これもどっち?て聞かれるからキラキラを選ぶ私。因みに両方ともキラキラしているから片手づつ掴んで笑って見せた。
ちょっとほしいな、と思ったので手放すのに苦労してしまったのは内緒。レーバレンス様が手だけ焦っててなんか笑えた。
お次はお花。さっきの鈴蘭。なんだっけ?スーランだっけ?を持って、もう片方は………………キラキラしてるだけでわかりませんっ。
でも、キラキラしてる方はどっち?と聞かれるので何も見えないキラキラを触る。あ。なんかべちゃっとした。
「確定だな。選んだものがどれも魔力を纏っているものだ。小さいのは魔力を光として関知している」
「………将来は自慢の淑女で好きな奴と結ばせるか、いい縁談を薦めるつもりだったんだが」
「それは小さい奴の今後の身の振り方によるな。父としてグレストフが導けばいい。魔法師でも結婚してる例があるだろ。伯爵」
なんだか言い聞かせるようにレーバレンス様が言ってる。私は楽しく生きれればそれでいいや。
そう言えば赤ん坊、て言う事ですっかり将来の事を考えていなかったね。と言っても、貴族令嬢の振る舞いで人生を終わらせるつもりはもっとうないんだけど。
べちゃべちゃなままの手をレーバレンス様に見せて無邪気に笑って見せたら無言でロノウィスを指差した。まあ、確かにロノウィスくんは布巾を持ってるけどさ。
何度も何度も言うけど、私は赤ん坊。言う事を聞くような年齢とついでにそんな性格ではありません!
なんか難しい話を始めちゃったから面白半分にレーバレンス様に手をのばす。ロノウィスくん?まだ距離あります。
べちゃべちゃの手のひらでわざわざレーバレンス様の膝タッチ!
瞬間に固まったレーバレンス様に笑顔を向けて笑い声をあげます。苛めじゃないよ、挨拶です。にへら。
そうすれば無言の圧で抱き上げた私をお父様に引き渡されたのはもちろんの事で―――楽しそうに笑うお父様と共に笑っておいた。後ろではロノウィスくんとドドイルがわたわたしててすごく面白いよ!
「どうやら小さいのもグレストフの血を色濃く引いているらしいな」
「私の娘だからね。当然だろう」
「今はとりあえずこれを身に付けさせておけ。ヴィクマン様が戻ってこない以上、そんな小さい奴に抑制魔法具は無理に付けることは出来ない」
「そうだな」
あ。お父様に何かを渡したと思ったらレーバレンス様がそのままどこか行っちゃった。すんごいお冠のご様子でさっさと行っちゃったよ。
後ろ姿でしっぽを揺らしながら離れていく姿にちょっとつまんなそうに見つめていたらお父様が抱き直してくれた。その衝動に顔を見上げればあのままの笑顔でまだここにいたいかを聞いてくる。
今の時間ぐらいならだいたいヌイグルミで遊ぶ時間だし。せっかくあの部屋から出てきたのなら私はまだここで遊びたい。
それを表すのは私が大きく頷くだけで承諾される。え。本当にいいの?
「ドトイルが今日までにならなければいいな」
おぅ。お父様、私はそんな事なんか忘れていましたよ。そう言えば今日中に私を笑わせなきゃドトイルは出禁だったね。
ちょっと嫌だけどしかたないかー。遊んであげるよ?もちろん、私なりの遊び方で楽しんであげよう。
この後のお父様はレーバレンス様のお手伝いに行くみたいだからロノウィスくんに任せるらしい。おや?弄る対象が増えたね。
笑顔全快で返事したロノウィスくんに私が委ねられて早々に3人になった私たち。あ、メイドさんも入れたら4人かな。さて、どうするのかな?
とりあえず、私が1歳である事を知った上で遊んでね?二人とも。とくにドトイルや。
子どもなんて、どう扱えばいいなんて分かるわけがない!!
ロノウィスの腕の中で無邪気に笑う敬愛なるグレストフ様の愛娘。名をクロムフィーアと言うらしい。
愛称で呼ぼうにも、グレストフ様が怖いのでクロムフィーア様と呼ぶことにしよう。
なに、ロノウィスにできて私に出来ないことはない。先程の失態は情報がなかったからだ。小さき事にすぎないな。
ロノウィスとは魔法棟へ入籍して以来の、私の好敵手だ。この私が認めた、たった一人のライバル。
平民で、私と魔力は互角。技量は奴が上。しかし、雑学などは私の方が上だ。なのに―――
グレストフ様の臣下に、とのお触れで選ばれたのは私ではなく、ロノウィス。この私ではなく、ロノウィスだった。
臣下は次の十進魔法師へと連なるための特別な場所だ。言い換えて言うなれば弟子である。その地位を欲するものはこの魔法棟にいるみなが望むもの。
まだ五年しかたたぬロノウィスと私。それになぜロノウィスが選ばれたのかが、未だに納得がいかなかった。
これは嫉妬なのだろう。分かっている。しかし、口に出てしまうものはすべて考えておいた言葉と正反対だ。なぜこうなってしまうのだろうか。
「ドトイル様。なにをして遊びますか?」
「………クロムフィーア様はなにが好きなんだ?」
「え、さあ?」
「お前、私より長くクロムフィーア様といただろ!」
「ほんのちょっとと言えるぐらいですよ!植物の本を見せてあげたぐらいの少しで、分かるわけがありません」
なんと言うことだっ。それでは私たちはどうすればいいと言うのだ?
色々と話しているくせに、クロムフィーア様がなにを求めているのか、何が好きなのかわからない、だと?
下がいなかった私には到底、なにをすればいいのか分かるはずがない。たくっ、本当に実技だけの奴だな!初めからこうすればよかったのだ!
「おい。クロムフィーア様と遊べ」
「か、かしこまりました」
私に仕える侍女を使えばいい。なんて頭がいいんだ。これでロノウィスを出し抜ける。
そうだ。私には権力があるのだ。ロノウィスに―――いや、私は己の力でこいつを屈伏させたい。
使えるものは使えばいい。そして私に『負けました』と言えば今後、私の従者になる事を許そう。いや、鈍そうだからいらないな。このままの方が………いや、だから………なんだっ!?
任せたメイドのルナンの様子を伺いながら私は小さく笑う。ルナンも私の侍女だ。これでクロムフィーア様が笑えば私の手柄でもある!
「ええと、クロムフィーア様。まずお手を拭きましょう」
「う?あい!」
「失礼しますね」
そうだな。まずその不快な思いを取ってやらねば。
「あ、クロムフィーア様。こちらの花も魔力があると言われているのです。どうでしょう?」
「ん?きあきあー」
「ここには他にもいっぱいありますよ。順番に見て参りましょうか?」
「あい!」
「じゃあ、そのきらきら探しでもしようか」
なに!?それは私の考えた案だ!なぜお前が先に言う!
後ろで見ていたのがいけなかったのか?クロムフィーア様は頷くと同時にしゃがみこんで花を愛でている。
これは遊びなのか!?そうなのか?!私にはわからない。これでどう遊べばいい!?
しばらく眺めると言う―――とても我慢ならない時間に悶々と私は考えた。ルナンもまさか鑑賞を薦めるとは思いもよらないやり方だ。
私はどうすればいい?見ているだけでいいのか?それだと遊んだ事にならないだろう?声をかける?私なら邪魔だと思うぞ!?どうすればっ。
「おーいぅー」
「はっ!?な、なんだ………………どうしたんだ!?」
「ぶっ。ドトイル、様っ。おーいぅー………っ!」
「貴様。なにがおかしい」
「っ―――いいえ。っ、クロムフィーア様がお呼びですよ」
「呼ばれた覚えがないが?」
「おーいぅー!きゃー!」
「はあ!?ちょっと待て!」
なぜ駆け出すんだ!?危ないだろう!!そしてなぜお前らは追いかけないんだ!!あーっ!!躓いているではないか!!??
慌てて追いかけた私は当然だがすぐにクロムフィーア様を捕まえて―――よかった。怪我でもさせてしまえば私はグレストフ様になんと言われようか。
―――おい。この後はどうすればいいのだ。
両脇から持ち上げたまま足を前後に揺らし始めたクロムフィーア様は面白いと声をあげて笑っている。おい。本当に私はどうすればいいんだ!?
これはなんだっ。遊びなのか!?遊んでいるのか!?
「レーバレンス、見るんだ!クフィーがあんなに楽しそうに笑っている!」
「………………ドトイル、頑張れよ」
「帰ったら私もやってみよう!!」
「手伝う気がないならとっとと小さいの連れて帰れ」
「え。帰っていいのかい?」
「いない方が平和だ」
「そんなっ」




