気分は外野
ご指摘を含め修正いたしました。28.12.11
ノルアはお留守番なんだって。さすがに陛下とかいるところに動物は駄目だった……まあ、当然だけどね!でもなぜか今回のノルアは駄々っ子だったんだよね。
伏線じゃないよね、ノルア。まさか王族が絡んでいるところにアチャー!て、大乱闘が始まるとかそんな伏線じゃないよね。そんな伏線はいらないよ?僕も連れていけっ、とかそんなんじゃなかったはず。しっぽが揺れていた。私は見逃さなかったよ。
きっと朝食に密取りの蜂蜜(ミツミツだって。虫は考えません。だって元は花の密って言うじゃない!)を食べたから美味しくてもっと!て、せがんでいたんだと思われます。どうして分かるかって?私の掌はミツミツの匂いがするからだよ。
それはなぜか――屋敷に戻ったけどノルアはちょっとお気に召さなかったようなんです。挙動不審にずっと戦闘の準備OK。頬を脹らませて発射はいつでも行けます!みたいにすごかったから。ポメアがこれをどうぞ、って言うからあげたんだよ。リッスンは蜜とか好きらしいです。雑食だよね?甘いものに弱いのか……
しかし、それでも食べてくれないノルア。仕方ないから最初にやってあげたみたいに掌に乗せて食べさせてあげたんだ。これはご主人様の匂いと共にご飯だよ~ってわからせる方法。人からもらうと言うことはリッスンに取っておっかなびっくりだから、匂いを嗅いでこの人はいい匂いだー、なんて思ったらなつくんだそうです。本の知識は偉大なり。早く動物系を制覇せねば。
でもね、思うのです。君、ここに来るの2回目だよね?何に警戒しているわけ?
ノルアが喋ってくれるなんてしないので謎なんだけどね。そして君は明らかにこのミツミツに対してのおねだりだと私は推測するのだよ。
朝にそんな事があったな、と思いながら「あれはあながち間違いではないかも知れなかった」と今、思うのです。
「可愛いだろ~?お前みたいな無精髭を適当に生やしたおっさんにはわからないかもしれないがクフィーは七歳にして可愛いんだ。おっさんが触れたことによってって言うかむしろその濁った視界に入ってしまった事によって体調を崩すくらいに大事に育てているのにこんな可愛いクフィーに何を謝らせているんだおっさんめ。私の可愛い可愛い娘になにさせているんだ帝王のおっさんめ。なんで来たんだおっさんめ。おっさんが来るからこっちは面倒な人員移動を誰がどこに配属しなければならないのか考えなくてはならないんだぞおっさんめ。私も魔法師と話し合ったりどうするこうするで下から文句を聞いて黙らせてクフィーの可愛さに癒されながら仕事をしているのになぜ帝王のおっさん自ら歩いてくるんだよおっさんめ。歩く面倒事がこっちに来るんじゃない、おっさんめ。クフィーを見るなおっさんがっ」
「お前、戦場でも妻がどーの息子がどーの娘がどーの言ってたがまだ足りなかったのか?てかなんでこんなちびがいることを黙っていやがったんだよ。それを知っていたらこんなつまんねー事に賛同しなかったんだがな?おっさんはてめえも一緒だろうが」
てな感じで睨みあってます。あ、因みに私はレーバレンス様のローブの中です。あ、語弊が。いや、でも合っているよね……?
はて。なぜこんな事が起きてしまったのかと言うと原因は私ですね。こればっかりは私だね。レーバレンス様の舌打ちがよく聞こえます。そう――珍しくレーバレンス様の腕に乗っておりますよ、私。姿を隠すためにローブを被せられたんです。ちゃんと顔は出せるよ!
最初は滞りな~く行っていたんですよ。謁見の間なので陛下と近衛の騎士が2人とエモール先生とヴィグマンお爺ちゃん。そしてグラムディア殿下。謁見の間ってどこも一緒なのかね。長い階段と高さの頂点にこの6人が帝国から来た使者を見下ろしていますよ。
そんな私は使者から見て右手に待機。宰相様は今回はこっちで私の補佐。王冠を渡すだけだから補佐はいらないと思うんだけど……隣はお父様です。ここは譲らないと真剣な顔で宣言していたよ。そして私は見た。騎士様たちはわからなかったけど顔が見える魔法師たちや宰相様の呆れる顔を。なんだか恥ずかしくなったのは言うまでもない。レーバレンス様の表情筋が死んでしまったのと同時でした。お疲れさまです。
そして名前を名のってもらって「取りに来ました」「ではこれを」て陛下に呼ばれたから私がしずしずと帝国から来た外交官さんに渡して、魔力結び蝶で持ち去られた経緯とか調べて、本物でした!じゃあ後は視察団として来たこいつらをよろしく、て感じで来た3人から今度は紹介をもらう。
因みにそこにいたのは『帝王』と右側に髪が長い人。右の人でいいや。とコデギス近衛補佐と比べられないつるりん。貴方はつるりんです。この3人、すごく見たことがある。
だから、目も合わさずにレーバレンス様に促されたからこっそりと帰ろうとね。早く休憩したいなー。エジーラ様のところに行ってお話していたいなー、って考えていた矢先です。なにか来ました。何かとは人だったのです。そんでもって『帝王』の声でした。むしろ『帝王』でした。
場の空気が凍ったのは当たりまえ。あちらの外交官さんが頭を抱えながら怒鳴っているけど、『帝王』は聞きもしない。不揃いの無精髭を撫でて……ニヒルに笑いながら代金を請求されました。目を点にしたのは誰だって同じである。
あの早さなら逃げ出しても捕まるな、と判断したからこの場を借りて服を汚してごめんなさい。私はお金を持っていないので請求はお父様へ丸投げしたよ。そうするとなぜかお父様と『帝王』のいがみ合いが始まって――話がいつの間にか娘自慢になっていました。もうぐだぐだだよっ。
そんな私は今のうちに、て事でまずレーバレンス様が頭を掴みながら誘導するので後退したのだけど、お父様からそのままだと『帝王』に変な目で見られているとかがどうとか……私を隠そうとしているのでレーバレンス様のローブが登場。お父様からご指名でした。本当にすみません。で、当たり前だけどローブが長くてズルズルするから舌打ちと共に抱き上げられたんだよね。
じゃ!てな感じで消えようとしたけど、今度は右の人が飛び入り参加。仮にも謁見の間、この国は陛下の御前で途中退出が許されるのかと挑発。仕方ないから陛下に挨拶をしようとしたらお父様と『帝王』がヒートアップしてこっちの雰囲気はぶち壊しで出るに出れなくなった。そして、また舌打ちがっ――
もうさ、黙って行っちゃいません?てレーバレンス様に囁いてみたんだけど、帝国の目があるからもう黙って出ていけないんだって。本当は駄目だけど、気づかれなきゃ別に途中退出はいいんだとか。ただ、さっきのように指摘されたらこの場合は国が貶されるんだって。黙ったままバレずに退場できていたらそれでいいんだけど、いくら相手が野蛮人であっても、向こうから注意を受けてしまえば無効。礼儀がなってないって言う意味になるんだってさ。抱えられるのはいいの?あ、注意を受けていないからいいんですか。そうですか。
そうすると動けなくなるから立ち往生。お父様たちもヒートアップしっぱなしで収集がつかなくなった。誰がこれを止められよう。顔がわからないけど陛下が頭を抱えているようです。腕がそんな感じで見えます。
ここにもしノルアがいたら……発砲してもっと大騒ぎになるんじゃないかな。うん。間違いない。でさ、もしかしてこれってば私がお父様に声をかけて沈めなきゃ……静めなきゃならないのかな?しかし、ここは他人のふりと言うものに徹したい。見て。私の顔もレーバレンス様に負けず劣らず能面です。私も疲れちゃったよ。
「これ、いつまで続くのでしょう……」
「知らん。お前が止めろ歩く弊害め」
そんな事ないのに……いや、これに関しては私が原因なんだろうけどさ。お父様があんなに食いつくからいけないのではないでしょうか?
本当だったら今ごろ――王妃様とエジーラ様と3人でお茶をしながら内心は王妃様にびくびくで、でも何とかお茶を……と、思っていたんだけどなあ。うまくいかないものだね。
陛下も、なんで黙ったままで……ああ、うん。放置って大事だよね。さっきまで頭を抱えていてはずなのにグラムディア殿下と一緒に見えません、とでも言うように向こうは話が進んでいるようです。外交官さんと右の人とかつるりんが一生懸命スルースキルを発動させて話し合っています。ちょっと右の人!
内容?お父様たちの方が近いし声が大きいしで聞こえません。私たちは置き去りだよ。いいのか、謁見の間がこんなんで。『帝王』だから騎士も迂闊に動けないのかな?
そんな感じでもうどこを見ていればいいのかわからなかった――ので、宰相様にお伺い。この人もため息を出すほど呆れているようだよ。お父様、もう止めて。娘は恥ずかしいよ……
とりあえず、こっちもまるっと無視して並ぶことにした。ちょっと遠くなった気がするけど、騎士がさりげなく陛下側に近づいて並んで私たち魔法師組は後方よりに。レーバレンス様が珍しく下ろしてくれないからこれもまるっと無視することにした。
後ろだからやはりと言うか陛下の会話は聞こえません。ええ。何も。むしろ帝国の使者はよくあんな遠い陛下の声を拾えるものだね。私には無理だよ。混乱するわ。
そしてお辞儀して帰っていく……『帝王』は忘れていくみたいです。いいのかな?てかこっちに来た。
「あれ、適当に始末しておいて構いません」
右の人がにんまりと笑ってる。『帝王』って凄腕なんでしょ?つまりは出来るんだったらやってみれば?みたいな挑発に聞こえる……こういう風に考えてしまう私はひねくれているかな?
「またあったな、嬢ちゃっ!?」
「帝国の醜態をこれ以上は晒すな馬鹿野郎どもっ!!」
あ。この人は苦労人だ……
右の人とつるりんの首根っこを引っ付かんで撤退してる……王冠の入った箱を背負うとかおかんに見えてきたよ。箱が赤ちゃんでやっちゃな子ども(右の人とつるりん)を引きずるおかん。帝国の生まれじゃなくてよかった。きっと苦労人になるね。
そして陛下も宰相様たちも退室です。私たちの回りには騎士と魔法師が数人。そして私たち。なんだろう……レーバレンス様と共に見捨てられた気がする。
「もう行きませんか?私、恥ずかしくて早くこの場を離れたいです」
「俺もあんな親が陛下の前で言い合いを見せるぐらいなら何を言われようと黙って姿を消す。だが勝手に出ていくとさらに騒がしくなるのが事実だな」
てかこれおかしいから。帝国の印象が『帝王』によって悪くなるのに、なんで『帝王』ってこんなざっくばらんと言うか我が道を好き勝手に平気で出来るんだろう?それだけ『帝王』って強いの?エジーラ様の説明もすごかったけど、そこまで?
あれで凄いんだぜ、って言われても好き勝手は出来ないと思うんだけどなー。と、言うことをレーバレンス様に聞いてみたら呆気なく帝国の、『帝王』の事なんか知るか。て返されました。そうだよねー。レーバレンス様、怒っています?一人称が『俺』になっているんですが。
「これ、ユリユア様のお屋敷に閉じ込めておけるのですか?」
「無理だろう。さらに制限をつける話になっている」
「そう言えばこのローブの内側がキラキラとしているのですが魔法が施されているのですか?」
「付加魔法陣を書き込んである。性能は魔法師にでもなれば嫌でも分かるだろう」
「……もう、行きませんか?」
「お前が勝手に消えるとお前の父親は暴走するぞ。せめて一言でも声をかけてやれ」
えー……あの低レベルまで下がった会話――会話?悪口とか言い合っているんだけど……?その中に私が声をかけるの?止めてよ。絶対に振り向くじゃん。でもレーバレンス様の言うことはもっともだと思うんだよね。なんてこったい。後で騒ぎを聞き付けるか、今騒がれるか……
「そう言えばレーバレンス様。魔法騎士のお披露目と言えばいいですか?それを見たのですが話は聞いていますか」
「……今、ウィルとか魔法師と検討している。それと左目に痛みがあったと――聞いただけで特定は出来ないが、【火】はそのまま上空で散ってそこで広がったが【風】は地上で広がった故に影響が出たのだろう。最上位とそれを押さえ込もうとした強めの魔力。威力がわからないが少ない反応は出る。腕輪に皹が入っていないことからそこまで強かったと言うわけではないはずだ。これが魔法なら……恐らく、魔法具が壊れていただろう」
「魔力より完成した魔法の方が魔素に……なりやすい?の、ですか?」
「魔法は魔素と共鳴しているからな。元素と混じれば魔法の方が魔素に還元されやすい。魔力は体を器にしたものだ。不純物が混ざりすぎて魔素になりにくい」
ふむふむ。じゃあ私って、魔法場に行くのはちょっと危険なのではないかね?全属性が揃っていると言っても近くでその影響を受けちゃったら倒れるよね?私は魔法師になれるのだろうか……
とか思い耽っていたらお父様が私を呼びますよ。え、なんですか。ここには人数も少なくなってきたから私の他人のふりが出来ないじゃないか。2人してこっちなんか見てさ……反応、したくありません。
「クフィー!このおっさんに言ってやりなさい!親父が駄々こねていないでお家に帰れと!」
「ちび。んなこったー言わんでも帰らねぇからな」
「………………」
どーでもいいよ……
「お父様、もうそろそろお待ちしている方にご心配をかけてしまいますから行きますね」
「あ、そうだな。待たせてはいけないね。こんなおっさんは放っておいて行きなさい。レーバレンス、頼んだぞ」
「それでは」
と私が合図をした瞬間からスタスタとはっやい歩きで退場するレーバレンス様。てっきり影渡りかと思っていたのだけど、違うらしい。後ろから『帝王』があー!お前は!とかなんか言ってる。そんでもってお父様がぷぷー!気づかなかったのか?とか煽っているよ。
その頃には出口?までにはすごい距離があったにも関わらず出て扉がしまっちゃうんだけどね。そして魔法を使ってワープ。因みになぜここで使ったのか聞いたら「自ら素性を明かす馬鹿はいない」だって。うん。最後にバレてたけどね。
どうやら設定はペダニア様の影らしい。ワープしたらペダニア様の後ろ姿が!そしてご本人様は振り返って微笑み返し!!私が献上された!?
「珍しい」
「魔力結び蝶の名残が気になりました。それとグレストフと『帝王』が暴走しかけていたので一応は目隠しです」
「わかった。待っていてくれ」
私は待つよ。けど説明がほしいな。まあそういう事だったんだねって納得したけど。
ペダニア様が待っていてくれって言ったらこつこつと歩く音。そして座らされる私。たぶん、ソファー。そしてローブを取られました。視界が明るいね!そんでもってそれをレーバレンス様に返す。はい、とか渡し方は雑でした……指先じゃなかったのが救い?せめて畳みませんか、ペダニア様。――丸めないだけマシ?ぐいっと差し出すのはいかがなものか。謎だね、この人。
そしてもらったレーバレンス様は腕にそれをかけて、実は私の目の前にいた王妃様に会釈をして帰っていかれました。私の帰りはペダニア様なんだって。
「はい、クフィーちゃんはこっち」
「え?」
「大丈夫よ。妹の髪とかよくやっていたからかここの女官たちにも負けないつもりよ」
「え?」
「鏡は私が持つ」
うわ。ぐちゃぐちゃ……ハーフアップの頭部がもちゃもちゃしているよ……
「男どもは雑だな。私もいた方がよかったか?」
え!?ユリユア様までいたの!?
「まあ。ユリユアはわたくしのお相手をしてくださらないの?久しぶりにあったのに……寂しいわ」
「すまないティルリエ様。そのように私を求めてくださっても、私はなかなか逢えない姪が気になってしょがないのだ」
「クロムフィーア嬢はみんなに愛されているのね~。わたくしもクフィーと呼んでいいかしら?」
「ど、どうぞ」
そんな事しか言えません。絶賛、脳内が慌ただしく会議を開いておりますから……えーと、王妃様とお茶でも~とは聞いていたから王妃様は問題ない。心の準備は万全だった。エジーラ様……じゃなくてメルダ様!メルダ様メルダ様メルダ様――よし、間違えないぞ。
メルダ様は今日から王妃様の護衛(だよね?)でペダニア様のお世話役にもなっていたから、ここにいてもおかしくはない。ペダニア様だって元から王妃様に付いているような事を言っていたからおかしくはない。じゃあ、ユリユア様は?前情報がまったくないのですが!?視察団の人たちを管理しますよ、ぐらいの前フリしか聞いてないよ!?それなのになんでここにいるのか議論は続くよ!?続けちゃうよ!?
「はい、出来たわ……クフィーちゃん、どう?変かしら?」
「これを見る」
いや、鏡を押し付けないでくださいませ、ペダニア様。あ、大丈夫ですよメルダ様。編み込みしたんですね?私は出来ないので素晴らしいと思います!!
まだ混乱の渦中だけど大きく頷いて笑顔を振り撒いておきましょう。うん。振り向いてようやく見渡せた。そうすれば堂々と王妃様の隣に座るユリユア様……混乱が余計に増した瞬間です。
私をソファーの中心に両脇はメルダ様とペダニア様。すでにお茶も用意されていて、さっそく私の髪の毛の話題からお茶会の始まりである。
……すみません。休憩に入らせてくださーい。もうどこを突っ込めばいいの?とりあえず……ユリユア様、なぜここに?




