魔法剣のお披露目 前編
ご指摘も含めて修正いたしました。28.11.27
昨日は夕方までどっぷりと寝てしまって結局は部屋でのんびり過ごしていた私です。なぜあんなにどっぷりと寝られていたのだろうか……起きたらエジーラ様も苦笑いですよ。本当にぐっすりとしていたらしい。
因みに……いや、どうでもいいけど夜もばっちり寝てしまいました!寝る子は育つよね!?ね!?ちょっと期待!したいけどアビグーア中隊長の肩の上!そんなすぐに育つわけがありません。いったいいつまで乗れるのか実験していた方が楽しそうです。
そんなわけで、今日は騎士棟で魔法騎士隊のお披露目を見るのです!グラムディア殿下も含めご一緒……だったけど、帝国の方が片付いていないので部隊の人たちだけです。私がすっごく浮いてる!アビグーア中隊長の肩に乗っているから必然的に目立つ!視線がっ……
魔法騎士隊の今日の人数はざっと600に搾ったのだとか。本当は千単位だって。ボカされました。気にしてないから別にいいけどね。近衛騎士が3人と、上級騎士が100。残りは中級と下級騎士が6対4ぐらい。あまり大差はないそうです。アビグーア中隊長が言うには。てかアビグーア中隊長も含まれているんだけど?一緒に並ばなくていいの?
聞けば、私の護衛の方が優先度が高いそうな。本当に?って疑っているけど元々の口数が少ないからか、なんかさくっと回避されました。
陛下から拝命されているのだから、一個部隊より陛下。訓練された騎士より小さい私の方が守らなければならないそうな。でも、あの、なぜ、は聞き流されて会話が終了しちゃうんだからもう聞くまい。
で、なぜ私もここにいなくてはならないのですかね?魔法剣はもう部隊編成まで出来上がっているのだから別に私はいらーない。うん。いらない。むしろ邪魔ですね。
まだ説明もされずにここに来たんだけどね。エジーラ様には笑顔で「騎士棟に行くのでしょう?今日も頑張ってね」なんて送り出されてしまった。なんで知っているのだろうか。私は知らないのに……お披露目の見学に幼女が一人……エジーラ様、私に視線に耐えろと言う応援ですか?
「では、説明を始める!よく聞くように!」
「「「はいっ!!」」」
600人が声を揃えるとすごい。怖いよっ。
出てきたのはちょび髭がダンディなガストレア近衛隊隊長様。あのつるりんなコデギス近衛補佐様もいる。ん?なんですか、誰かわからない魔法師様。あれ、でもローブが魔法師のレベルじゃないや。
最近は黒のローブを見ていたからあれは上級魔法師でしょ。えっと、若草が中級で茶色が下級なんだっけ。このローブの色はわりと薄いグレー。茶色はもう少し濃いと思うから、若草色――かな?
「若魔法師がどこに座っている。下りろ、餓鬼が」
敵だった。
私の目の前に敵が自ら歩いてきた!なんだ。てっきり魔法師の間で今日の段取り的なものを教えてくれるんだとばかり思っていたらこれか。魔法師も大変だ。
せっかくのガストレア近衛隊隊長……ちょび髭様が説明しているから聞いているのに。なにやらこれから属性ごとに魔法剣を放つから順番とか隊列とか説明してるんだよ?邪魔しないでほしいなぁ。
「本人から許可はいただいておりますゆえ、問題はありません」
「はあ?てかなんで若魔法師がいんだよっ」
それは私も聞きたい。中級魔法師がなぜかの騎士棟に?あ、向こうで魔法師と上級騎士が数人と敵と同じ丈と色の魔法師が数人でお話ししているよ。この敵はあちらに混ざった方がいいんじゃないかな?てか私は本当に見ているだけでいいんだよね?小声だけど、この敵はボソボソとうるさい。
「いいかっ!ここは魔法騎士隊の初訓練なんだぞ!?俺たちは今日の試験で魔法剣の監督をし、できれば補助しなければならないっ。それなのになぜ餓鬼が上流騎士の肩の上に乗っているんだ!馬鹿かお前はっ!失礼だろうが!」
あれ。いつの間にか注意になってる。この敵って実はいい奴なのではなかろうか。じゃあ私も親切に教えてあげよう。
「皆さんはあちらに集まっていますが、あなたはいいのですか?」
「えっ!?あ……と、とにかく下りろ!迷惑だろう!」
いやいや。小声なので威力は小さい。そしてなるべく音を出さずに走り去っていく青年に私はわけがわからないのです。なんか、いい人でした。敵じゃないよね、きっと。
遠ざかる髪の毛は白っぽいグレー。何となく白っぽいグレー率が高いような気がする。もしかして、この国って金髪の人とか多いのかな?まあ、もう一度くらい話しかけて来たらもうちょっとガン見しよう。
そして説明が最後になっておりましたっ。くっそう!では準備に取りかかれ!てさ……アビグーア中隊長ー。ちょっと教えてください!
「聞いていませんでした……私やアビグーア中隊長はどうなさるのですか?」
「娘。俺。待機。横」
……とりあえず、私とアビグーア中隊長は待機するんだね、てことはわかった。横とはなんです。場所ですか?横?どこだよっ!
戸惑っていたらちょび髭様がこちらに。説明を聞いていなかった罪悪感が共に歩いてくるよ!ごめんなさいっ。説明を求むっ!
しかし、片手を持ち上げただけだった!まるで挨拶だね!!なんだよーっ。しかし、合図の方だった!アビグーア中隊長の出動だけとかもっと分かんないよー!!はっ――後ろから靴音がっ……振り返ってみたら魔法師たちがついてきた。あ。いつもの見知った魔法師様を発見。名前は知らないけどね。
黒に近い髪だけど黒に見えなくて、でもグレーじゃないんだよね。貴族なのか髪が艶々している。個人的には青紫とかかな。わりとグレーっぽい瞳はアクアマリンとかの色だったら面白いね。目を細めたら濃いグレーになるから本当にこの魔法師は面白い。髪はわりと短めだから左の口元にある黒子がやけに色っぽいです。体の線も細いし、意外な低温ボイスは悩殺ものなんだよね!それでも私の腰は砕けないよ!
「おい、餓鬼。下りろって!迷惑だろうっ」
そこの親切心が裏目に出ている青年よ。言わせてもらうけど
「私が下で歩いた方が迷惑ですよ?歩調がまったく違いますから」
「だからってなんで上流騎士の肩の上に乗ってんだよ!てかなんでここにいるんだよ!邪魔だろうが!」
「喋りかけるお前が邪魔だ、ヤジャル中級魔法師。その少女はお前より魔法剣の貢献した者だ。彼女がいなければ魔法剣はここまで的確に割り出せない」
「ですがっ、上流騎士の上に乗っていいわけがありません!この餓鬼がつけているローブは若魔法師の証拠です。同じ魔法師としてこんな態度は見過ごせません!」
「と、言っているが?」
えー……
「――これはご本人の意思で行われている結果です。季節一つ分も前から私はここにおります。誰かが咎めることはありませんでした。これが失礼であるのなら私では大人に負けてしまいますので貴方が説得してください」
「却下」
「……だ、そうですので気にされない方がよろしいかと」
「節度と言うものがあるだろうっ!」
ん?アビグーア中隊長が立ち止まっちゃった。けど他の人は止まらない。なんで?因みにわーわー言っているヤジャル中級魔法師もストップ。もう少しでぶつかりそうでした。きっとアビグーア中隊長なら壁となって弾き飛ばすんだろうね。
そしてゆっくりと振り返る。そう言えば……さっきから上流騎士って言っていたよね?軍服みたいなのにこれもどこか違いがあるのかな?それよりアビグーア中隊長が誰だか分かんなかったのかな?こんなに背が高いのに。
「っ!?」
「少女の護衛をしているんだが?足元より乗せておいた方が何かと安全なんだが?俺のやり方に口出しする必要はあるのか?」
あ。ヤジャル中級魔法師が負けた。直角のお辞儀からアビグーア中隊長の脇をすり抜けて向こうに走っていっちゃった。その後をアビグーア中隊長がゆっくり追う。私より長い足は大股だからすぐにみんなの後ろに追い付いちゃったよ。ここが集まる所だったみたいだけどね。
それより私は色々と突っ込みたい。まず、アビグーア中隊長が長々と喋ったんだけど!?なんで普段からそう言う風に喋ってくれないの!?前にもあったよね!?口下手とか嘘でしょっ!しかも肩に乗せていた方が安全とかどの辺が!?ねえどの辺が安全なの!?後ろに倒れたら安全が消えるんだけど!?足元よりは安全だね、とは思ったけどっ。騎士棟にいればどこも危険な気がする!!
でも平然としていらっしゃいますね!私がちょっぴり楽だから別に良いけど……
「【火】【水】【風】【土】【光】【闇】の順番に魔法剣を放つ。よく見ているように。気になることは順番に聞くように」
ああ。横って――隊列の側面、て事だったんだ。ちょうど部隊の半分が別れて睨みあっている真ん中の側面。ここから見学するらしい。私から見て右が【火】【風】【光】で、左が残りの3属性。ちょうど反発するように仕組んだがどうとか。
まず最初は【火】。魔法剣の属性の割合は100がちょうど。その内放てるのが2割り程度、かな。ざっと数えて15人以上は出てきた。近衛騎士は当然いる。後はバラバラだね。あ、あそこに見習いがいる。すごいね!もう魔法剣を扱えるなんて……?
「あれ?トールお兄様?」
「あ」
「アビグーア中隊長?トールお兄様も魔法騎士隊に配属されていたのですか?」
「決まった」
「内緒にしていました?」
「いや。忘れていた」
「教えてほしかったです……」
「すまん」
いいけどねっ。でもサプライズだと思えばいいんだから!そこまで怒っていません。驚いただけですよ……お父様も何も言わなかったんだし。つまりは驚かそうとしていたんだよ。きっと。忘れていたんじゃないよ。たぶん。
心の中でちょっと自分を慰めつつ、目線は魔法騎士隊へ。向こう側にも数人の騎士がいて――「構え!!」……すごっ。ここまで聞こえたよ!
その合図と共にすぐに準備を、そして次に「放て!!」と号令されたら騎士が一斉に剣を振りかざす。あの剣って全部がミスリルなのかな?一斉にキラキラと手元を輝かせて(魔力をまとわせて)放った魔法剣は約20人からぶあ!っと炎が巻きおこる。
こっちに被害がないのが凄いと言うべきか。誰か加減を間違えたよね?お兄様も強い輝きを放っていたけど、その奥にいる人の方が魔力のキラキラの量がすごかった。
天までには届かないけど、家一軒分くらいの高さまで登った炎はなかなか消えない。脇にずれていた近衛が魔法剣を放った人を集めだした。
「アビグーア中隊長。あの人はどんな人ですか?」
「どれ?」
「あの……ほかの人より距離がある人です。トールお兄様から右側で後ろの人」
「……あれは下級騎士だな。魔力が多いが魔法文字がかけなくてこっちに回ってきた騎士だ」
「その人は目立ちたがりですか?すごい魔力を込めていましたよ。だから火柱がたったと思います」
「後で私が報告しておきましょう」
おう。低温ボイス。なぜか隣にいたよ。隣で何か書いていますね。まるで秘書だ。違うけど。でもなぜか他にはないかと聞かれてしまった。他は何を気にすればいいんだか……
そう言えば火柱になってしまったけど、これでいいのかな?わざわざ1ヶ所にまとめなくてもいいと思うんだけど?
「これはただの融合ですよ。強い魔法剣がでしゃばってしまったので融合してしまったようです。本来なら騎士から一直線に出るんですよ」
なるほど。そんな事になってしまうのですね?恐ろしい。
ようやく火柱が消えて、次は【水】の騎士たちがやるみたい。ざっと出てきたの人数は【火】の人たちよりちょっと少ないかな。残念ながら見知った人はいないや。
また近衛の人の合図で構えから入り、放つ。うーん。なんだか魔力が足りないみたい。【火】の人たちを見た後だから考慮して魔力を少なくしちゃった?今度は融合もしないで騎士の一直線上に魔法剣が放たれたけど……私の時よりちっちゃい。みんなの腰ぐらいしか氷が出来上がらなかった。
「遠慮してしまったみたいですね。魔力の量などは決めていないのですか?」
「個々の魔力がまばらですから決まってはいませんよ。でも、威力は問題がありそうです」
「ですが、氷ですから相手の動きを鈍らせるためならあれでいいのかもしれませんね。触れた剣から凍らせれば握っていられないかもしれません。どれくらい冷たいのでしょう?」
「触っていませんね。ガストレア近衛隊隊長殿。すみませんがよろしいですか?」
低温ボイスが聞き込みに行っちゃった。別にいいけどその低温ボイスを張り上げられると気になっちゃうよ。しかも相談しちゃってる……あ。触りに行ったのかな?数人をつれてあっちに行っちゃった。魔法剣はまだまだ研究が必要みたいだね。
ところで氷はどうするんだろうか?火柱は消えるのを待ったけど、今は秋だから気温も15度くらいで適温なんだよね。誰か溶かすのかな?
魔法師たちが触って書いて話あって――帰ってきた。彼らは溶かさないらしい。そのままですか?放置でいいんだ。私は部外者だから何も言わないけどね。
そして次が行われる、と。お次は【風】。風属性だから雷になるのかー。これを放ったら大変な事になると思うな。だって、鎧って金属だし。感電は間違いないと思うよ?
皆の装備は鎧をちゃーんと着ていらっしゃいます………………大丈夫なの?見習いと下級は装備が少ないからいかもしれないけど、中級から上の人たちって金属の防具がいっぱいだよ?でも、さすがに雷だって分かっているんだから大変な事にはならないよね。きっとゴム性の手袋とか何か着けているはずだよ。うん。
魔法剣の準備は万端のよう。威力は……弱いほうかな。心なしか人数は【水】と同じくらいだけど人との間が広いように見える。これが対策だったりして。
魔力を剣に通して――魔力はなかなか?本当に大丈夫かな……?いや、大丈夫じゃないと思う。よくよく考えたら目の前の氷を砕いたら雷の熱で溶けるし砕かれるから電気を帯びたちょっと溶けかけの氷が飛んでくるんじゃない?当たったらただですまないような気がしてならないんだけど……?氷に気を付ければいい?飛び散る電流に気を付ければいいの?
いや、でも熱で溶けて水が飛んでくるとか?そもそもそんな事は起こらないとか?なんにしろ怖くなってきたよっ。
「あの、本当に大丈夫ですか……?」
「と。聞いている」
どうすればいい……?どうするって言うかどうなる!?そんな事を言っていたら魔法剣を放っちゃったんだけどぉぉおおお!?心の準備はまだだよ!!ばかー!!




