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我慢の幢

修正いたしました。28.11.6

 落ち着きました。誰がって?みんながだよ。


 まず、帰ってきた私にハグしようとしたお父様は私が持っていた王冠に阻まれて唸ってます。てかよくお父様が暴走しなかったよね。あれ、もしかして私への愛情は嘘だったの?


 疑問に思ったけど、私を連れ出すのに影渡りをしてくれたレーバレンス様ともう二人の闇魔法師様がダウンしちゃったので……そっちの方が大変でした!


 まあとりあえず落ち着こうよ、と言ったのはグラムディア様。何時までも持っているわけにはいかないので、王族の方に王冠は預かってもらってお父様とハグ。うんいいよ。私もちょっと――やっぱりどこか不安だったみたい。本当の意味でホッとした。


 で、私はお父様の膝の上で色々と状況確認。これは相手の影渡り対策でもあるんだって。ほら、私の影を作らないために、なんだとか……本当は休ませてあげたかったけど、て言われたんだけどね。レーバレンス様とか気になっちゃったし。でも、こればかりは早く処理したいから聞くことにした。何かあったらお父様へ、だそうです!


 えー、まず今日は無の日です。お休みです。だからこの日に成人式をやったんだよね。私が誘拐されたのも無の日。すごい短時間で誘拐されて救出されました!濃いな……ただいま、夜の6の鐘が鳴った後なんだって。お昼を食べて――だからまあ大体3、4時間ぐらいの事件ですよ。


 私が誘拐された時に駆けつけたのはウィル様とンゼットォラ様。もしもの時に光魔法師と、騎士を10人ほど引き連れて駆けつけてくれたのだとか。でも新しく出来た結界のおかげで通れなくて四苦八苦。その間に私は誘拐です。かなり強力な土と光の結界が張ってあって解けなかったそうです。


 結界が解けた瞬間に駆け込んだけど、駆け上がってみたら伸びてる騎士2人にお腹を刺されて蹲っているアビグーア中隊長。それを介抱しようと布を押し当てて止血を試みていたメルダ様――エジーラ様がいただけで賊が入った事を悟ったらしい。


 すぐにアビグーア中隊長は光魔法師の手によって一命をとりとめた、とのこと。一命……なんだって。危なかった事実にちょっとだけ怖くなった。お父様が気づいて頭を撫でてくれたから落ち着いたけど……アビグーア中隊長、無事でよかった。


 それからエジーラ様から事情を聞いたウィル様と騎士が残って後片付けと護衛を兼ねて残り、連絡にはンゼットォラ様が動いたんだって。ただ、この時の主催席の状況は立食パーティーみたいな気軽にみんなでお話ししましょう、と言う状況で陛下も孫と息子も出席していて王族を四方八方と近衛で固めていたのだとか。


 騎士が7人。魔法師が4人も。その中にお父様がいて――伝えるのにちょっと手間どったんだって。私、後からもっと早く伝えていれば……みたいな流れになんなくって心の底から安堵してます。


 で、なんとか用件を陛下に伝えたらやっぱりお父様が大暴走――しかけて、止めるのに苦労したんだとか。単身で乗り込む気満々でどうやるつもりか知らないけど結構な高さの窓から飛び降りようとしたんだって。声を抑えるのが大変だったとか……


 成人式に出席していたトールお兄様と付き添いだったお母様が駆けつけてなんとか宥めて魔力暴走とかにはならなかったんだけど――どうしても乗り込むって言う主張は消えなくて、事情を把握したお母様まで乗り込むとか言い出しちゃって大変だったらしい。


 そこでリディお姉様が召喚されて、二人を止めるために「落ち着いてくださらないお父様とお母様なんて嫌い」と言えばショックで動きが停止、さらにトールお兄様も「こんな取り乱した父上なんて……」最後を濁して顔を背けた効果は絶大だったって。瞬時に切り替わったお父様がレーバレンス様に賭け事を吹っ掛けたのだとか。


 私はこの時点で誘拐されて数時間ほど経っているのですが……心配されてた?されてたけど……されてたけど!なんかおかしい……何かがおかしい。何がおかしいんだろう。まあいいか、寝てたし。


 賭け事は闇渡りだ私を取り戻せるか。出来ないなら短期で突っ込んでいく、と言うやり取り。


 闇渡りは便利だけどいくつか欠点がある。一番に問題なのは向こう側に影があるか。その影から出られる場所と範囲はあるか、で影渡りの利用度が決まる。しかし、今回に関してはまだ欠点というか難しい事が多い。私が連れ去られた場所ですね。そして、誰が連れていったか。


 エジーラ様はちゃんと説明しているので『帝国』の『帝王』に連れ去られました、は伝わってます。ですから私を取り返すためには帝国にいかなきゃいけないんだけど、この国と帝国はかなり距離があるらしい。どれくらいか聞いたら地図出さなきゃいけないから今度って言われました。しかたないな……


 それで王城から帝国との距離がかなりあるからレーバレンス様でも片道をギリギリでしか行けいけないんだって。つまり、一人では往復が無理。じゃあ人数を増やすか、となると荷物的な負担が魔力にかかってまた大変なんだとか。


 後はそれが出来たとして、向こうに姿を見せて私を闇の中へ引っ張り混んだときの『帝王』がどうでるか。凄腕の剣士だから反射神経は並みではない、とのこと。獣人のウォガー大隊長に匹敵するんだって。あの人は人間ですか?――人間だよ、て真顔で返されました。


 お父様がこの提案をして、失敗したら即ざに乗り込みます。て言い切って色々な人が渋ったけど私の心配もあって決行したらしい。行きは倒れないためにも4人の闇魔法師で。帰りはレーバレンス様を主体に影渡りでぽぽん!と。盾役として騎士を2人連れて強行突破です。


 結果はご覧の通り、私は無事に帰れましたとさ!レーバレンス様は倒れちゃったけどね……魔力の使いすぎだそうです。ご養生くださいませっ!!


 とまあそんな事があったんだよ、と言うノリで今度は私の話。エジーラ様の確認と、もし何かあるならあっちで分かった事を教えてほしい、と言うこと。特にあの王冠をなぜ私が持っていたのか知りたいそうです。ええ、順番にお話しさせて下さい。でもご飯がほしいです。


























「誰か、あちらの国の事情に詳しい奴はいるのか?」


「外交を担っております、ミャイリー様なら詳しいかと」


「呼んできてくれ」


 グラムディア様がささっとお願いして傍にいた執事っぽい人が出ていきました。ミャイリーさんとは何方かね?


 はい。ご飯もほどほどに行儀もちょっと悪くお話ししながらあっちの事情をお話ししました。お父様の「あーん」は慎んで断ったよ!恥ずかしい!でも膝の上だけは譲らなかった……お父様はお腹が空いていないのだろうか?


 とりあえずお父様を軽く無視してお話しを。えー、帝国は戦争を仕掛けても仕掛けられても負けるほど困窮していて、『緑の姫』に助力を求めていることなどを簡単に。私の誘拐に王様はまったく関係なく、『帝王』の出来心にしておいた。あっちの王様、見るだけで可哀想だったんだもん……王冠の話も『帝王』のせいなんだよ、それで王様が怒って投げつけたんだよって教えたらみんなこめかみを押さえ始めた。可哀想だよね、あっちの王様。


「書簡なら私宛だろう。……少し確認してくる」


「陛下」


「いい機会だ――お前が采配しろ。しっかり吟味し、断ち切るんだ」


 そう言って陛下は立ち去った。帝国の書状を確認しに行ったんだって。そりゃあ国宛なんだから陛下宛だよね。でもグラムディア様の絶ち切るってどう言うことだろう?


 でもここで教えてくれる訳がない。てか聞けないし。お父様が私のお腹に回している腕をぎゅっとやったらそっちに気が向いてしまう。大体の話が終わったよね。疲れちゃったね。


 上から「よかった」て。本当に心配させちゃった。エジーラ様もちょっと離れたところで安堵してる。でもあの場でエジーラ様を庇ったことは怒られた。まあ当然だからそれは甘んじて受けますよ。じゃあ、挨拶に行きましょうか。


 この話はグラムディア様が考えるそうなので私たちはお暇です。明日、また来てくださいと言われたのでみんなで頷いていく。


「まず、アビグーア様のところに行きましょうか。私も、けっこう取り乱していたからお礼を言わなくてはならないわ」


「お父様。アビグーア中隊長は今はどちらに?守ってくださったお礼を言いたいです」


「私も言わなくては……トールもあちらにいるだろう。クレラリアもリディもここにいるから、順番に行こうか」


「はい」


 お父様の腕に乗せられてまず、騎士棟になりました!説明だけだとさすがに疲れるからね。お父様はまだ不安なのかな。魔力は安定しているけど、私を離さない。混沌となっていなくてよかった。お父様ならやりそうだもんね。


 ンゼットォラ様を使って王宮からホール付近まで飛んで騎士棟へ向かう。お父様に運ばれる私と隣にエジーラ様とウィル様。ンゼットォラ様は追い返してた。まだやることがあるらしいよ。お父様曰く、で。


 でもなんか後ろから「待てー!!」とか。ドドドド。ガチャガチャと激しい音を鳴らす何かが聞こえてくるんです。4人してなんだ?と振り返ったら5人ほど駆け出してくる騎士を発見。何やら懇願しながら追いかけてる。その伸ばされた片腕はなんなんだろうか。


 私たちにはさっぱりわからないんだけど、なぜかこっちに向かってくるからどうしようか、てね。まだ距離があるけどこのままじゃまずいんじゃないかな?それより5人で地鳴りさせるなんて凄いね。実は後ろにまだいるのかな?


 どうする?とかすごい勢いで迫っているのに動揺しない十進魔法師。さすがです。私は『帝王』より怖くないのでさほど驚きません。でもあれに轢かれたくないよね、て。皆さんの意見は一緒でじゃあウィル様が魔法で進行方向に穴でも開けたら?て事になりました!……え?いいの?


「ここから先のホールでまた騎士の失態を見せるべきではありません。キャロラリンのはまだ払拭も出来ていないんです。さすがにこれ以上の失態は防いだ方がいいでしょう」


「ああ。あのクフィーちゃんがキャロラリンに拐われたと言う事件ね………………クフィーちゃんは何か誘拐される素質でもあるの?」


「ありません」


 まだ3回しかやっていません!


「……なあ、ウィル。あれはなんだと思う?」


「どれですか………………」


「足元の………………」


「――見えませんよ」


「でも何か追いかけているのよね?」


 私も見えません。待て、と言うくらいだから何かは追いかけているんじゃないかな?


 だんだんと近づいてくるけど……やっぱりみんなわかりません。このままだと衝突してしまうから捕まえるのだし目の前に大きな穴をデン!と掘ることにしました。掘ると言っても魔法でぽん、と穴ができちゃっただけね。穴の部分の土はどうなったか聞くと、穴が空いたように見えるけど実は押し込んだだけのようです。だから魔法で開けた穴は回りが固いんだって。


 落ちたら痛くないですか?て聞いたら――彼らは鎧を着ているから多少なら大丈夫ですよ。とのこと。何かあったらお父様が責任を負うそうです。頼もしいね。そして待つこと気持ち1分……


「あら?」


「どうしました?エジーラ」


「もしかして追いかけているのは――ノルアじゃないかしら?」


「ノルアですか?なぜ追いかけられて……」


「逃げ出そうとしたので――いえ、探しに行こうとしたのでしょう。クロムフィーア若魔法師が戻るまで専用の檻で保管していたのですが魔力で気づいたかもしれません」


「ノルアは魔力を察知できるのですか?」


「違うよクフィー。動物のたいていは魔力に敏感なんだ。動物は感覚が人より磨ぎすまされているからね」


 ああ、なるほど。犬の嗅覚とか人の倍だもんね。そんな事を言っていたらようやく私もノルアを確認できました!リス可愛い……あんなに小さいのに、たたたたたたたー!!って。可愛い!


 ノルアは元から私に気づいていたんだろうね。真っ直ぐ私に一直線で向かって最後は穴を飛び越えるすごいジャンプ力を見せて飛び込んできてくれた。もちろんキャッチだよ!


 逢いたかったよー!て、すりすりしてくるから私もすりすりー!可愛いー!!可愛いー!!エジーラ様が言うにはやっぱり結界で閉じ込められていたんだって。助けたときずーと頬袋を膨らませてきょろきょろして警戒していたんだとか。つまりは銃を構えて警戒してたんだね?ちょっと危ないからあえなく檻に入れてたとか……


 心配をかけてごめんよー!!最後は『帝王』に放り投げられてキラキラで囚われていたもんねっ。大丈夫だった?いや、それより今はノルアを抱き締めて再会を堪能しなければっ!


「うわっ」


「ぎゃー!」


「うあぁあぁあ!?」


「あー!!」


「ちょっ――」


 あ。見事にダイブしたね。ノルアもきょとんとして私の腕の中ですよ!


「………………大丈夫か?」


 お父様が声をかけるけど……一番下の人は目を回している模様。目は閉じているけどかなり唸ってますね。でも5人ともダイブしちゃったから態勢を戻すに戻せなくてガチャガチャがすごいわー。


 広くもないけど狭くもないちょうどいい空間(穴)で一番上にいる人が退こうとするんだけど……掴まる所がなくて下の人を台に押し込んだら悲鳴が聞こえる。痛がった人は痛みから逃れようと動き回っちゃうからバランスが崩れてこんがらがってます。見ているこちらは何もできません。みんなどうしようかと思案顔だよ。


「水を貯めて浮かせるか?」


「止めてくださいよ。収集がつかなくなります」


 ええと、ノルアを捕まえようとしてたけど……脱走を取り押さえようとしてくれただけだよね?助けてあげませんか?


 そんな事を言っていたら向こうからまたガッガッガッて。この5人とほぼ同じ鎧を来ているのに音が違うのは何でだろうか。あっちはプロですかね?


 この場はウィル様とエジーラ様が納めるそうなので、私たちは騎士棟へ向かうことになりました。早く安心させなきゃ行けないからね!そろそろ暗いし!


 エジーラ様から言伝ても預かったから行きましょうか。ノルアを抱き直してお父様、出発です。早くしなきゃ真っ暗だよ。私も早く無事な姿を見たいのですよ!


「行こうか――みんな心配したんだぞ?……いや、怖い思いをさせて悪かった」


「いいえ。意外と頑張れました」


「クフィー、いくら中身が大人であっても外見は子どもなんだ。頑張ることはいい事かもしれないが、本来ならクフィーは守られる側だ……それに、慣れる事のない出来事だったろう。泣き叫んでも、よかったんだよ」


「………………誰かが消えるって考えると、怖かったんです」


「怖かったか――よく頑張った。偉いぞ、クフィー。頑張ったな。よく耐えたな」


「……………………っ、ずるいですっ――我慢、してたのに――」


「私の子が私の前で我慢する必要はない。泣いていいぞ、クロムフィーア」


 ああ、なんだ気づいていたんだ。


 あんなに気丈に振る舞って『帝王』と対峙したり、泣かないようにお気楽思考にして考えないようにしていたのに。お父様ってすごいな……


 色々と聞かれるってわかってたから我慢してた。けど、父親に気づかれてしまった。やっぱり()の親なんだね、お父様。


 言い当てられて、頭を撫でられたらもう涙腺は崩壊した。緊張とか、我慢してたから鼻の奥が痛くなったらすべてが緩んで泣きじゃくった。ようやく私は溜め込んでいたものを吐き出すように泣いて――数時間前の恐怖を、忘れるように側の温もりにすがり付く。


 怖かった!本当は怖かったんだよっ……




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