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誰か説明を求む

修正いたしました。28.11.6

 目が覚めました。床とご対面です。お腹にすごい圧迫感。そして込み上げるなにか。たぶん、お昼のものだと思います。消化はまだ出来ていなかったみたいですね。えーと、とりあえずごめんなさい。気持ち悪いんです。んばー……


「んぉおおおお!?なんだあ!?」


「だから、言っただろう。あそこに食器があったからまだ消化してないかもな、って」


「持ち方を直せと言っても止めなかったお前が悪い。片付けてから来い」


 いや、ごめんね?その、起きた瞬間?に口を押さえたけどお腹に食い込んでいるなにかがね?そんでもって頭を下げていたからこう、血がちょっと上っちゃってたから上手いこと動かないし?


 持ち方が悪かったあんたが悪いと思うよ?そりゃあ起き抜けに――ちょっと違うか。まあいいや。とりあえず、小脇に抱えて移動する方が悪いよ。うん。口からちょーっと飛び出ちゃったのは謝るけど。とりあえず、下ろして?


 盛大なため息が聞こえますが、私は悪くない。悪くないったら悪くない。だって小脇。眠らされていたけど小脇はどうよ。どっかに寝かせておいてくれればよかったのに。


 ゆっくり下ろされて「動くな」と言われましたが?頭がふらふらしているのに動ける訳がないじゃない。


 そんなわけで一人取り残されました。あれ、私のポジションってなんだろう。人質とかになるのかな?まあ、今は殺されるっぽくないから大人しくしていよう。てか私を抱えていたのは『帝王』でしたか。声でわかったぞ。


 まだちょっと血が戻っていないのか、ふらふらしています。でも待っているだけではつまらないから回りなんか見ちゃったり。でも暗くてよくわかんないとかね。わかるのはトンネルを通ってるね、て事ぐらいかな。


 私は床に座り込んで待っています。向きは横?それすらもわからないけど、左右の向こう側は白いドームがある。そして私の回りは暗い。ギリギリで手のひらが見える。薄暗いんだね。白色が遠いから結構な距離がありそうだ。


 元から私の衣装は白っぽいのを重視していたから自分の形はわかる。ドレスの裾が広がってる。ちょっと離れたところに私がんばーってしちゃったものがある。掃除用具を早くください。早急に。


 とか思ってたらたぶん『帝王』が戻ってきた。もう一人いるみたいで何か指示を出してる。ついでに布が擦れる音。うーん。声は「かしこまりました」の女性の声だからメイドさんかなにかなのかな?あ、モップだ。モップは白いからわかる。


「チビ、行くぞ」


 見てたら声をかけられた。勝手に歩いていかれます。でもね、やっぱり声は『帝王』なんだけど『帝王』は黒っぽい服を着ているのかな?靴音しか聞こえない。なんとなく……姿が見える。あ、どっちに行けばいいんだろう?


 変わらずコツコツと『帝王』は進んでいったらしい。とりあえず立ち上がったけど……どっち?左の出口?が見えないからあっち?あれ?右もなくなった。あ、メイドさんの仕事が終わったのかな。あれ?どっち?


「何してる。こっちだ」


 こっちだ……左か。あんまり見えないんだけどな。変なの。不安は今のところない。どうしてだろうか。剣を抜いていないから?わからないなー。私が呑気すぎるのか。


 足元を注意しながらたぶん、ついていく。歩幅は違うからかね?たまに靴音が止む。立ち止まったと思う。だから私も立ち止まる。それを繰り返し。『帝王』が前を歩くからやっぱり暗い。いつの間にか手を伸ばしていたらしい。『帝王』から声がかかった。


「その手はなんだ」


 さっきと声のトーンが違うね。お父様と同じ切り替えタイプですか?でもどこから聞こえてくるのかわかりません。摩訶不思議ワールドへようこそ、私の脳内!


 首を傾げてみた。手を伸ばしたまま。手探り状態だね。


「怖いのか?いや、怖いか……ついて来いよ?」


 あ、また歩き始めた。なんか勘違いが……いや、でもあんなところから急に連れ出されたら怖いとは思うよね。私、まだ幼女ですから。


 とりあえずまっすぐ進んで……晴れた。うん。明るい。ようやくトンネルから脱出できたね!


 ちょっとお化け屋敷にいた感じだったからまあ、怖かったけど、急に外にでたら安心した。いや、まだ安心できないんだけど安心してしまいました。だからきょろきょろとおのぼりさんしても――変ではない!


 出てきたところはなんと――あれ?なんか階段を発見であります。その上には椅子が並んでいますね。側面から見ると断面図みたいで面白いわー。そんでもって出てきた隣をよく見たら頭が涼しいあの魔法師を発見。目があったけど指を指されただけだった。


 その指の先は?先に歩いていた『帝王』。なんか衣装が変わってる気がする。全体的に黒っぽかったと思ったんだけどな。気のせいかな?気にしてもしかたないか。


 で?私はあっちに行けと言うのですか?首を傾げたら小声でついていけって言われました。行くしかないから……行くけど。なんか後ろに付いてくるよっ!?変な気分だ!


 慌てたら転けそうだから私の小股で近づいた。どこに立てばいいのか分からなかったから『帝王』の斜め後ろぐらいに回り込もうとしたらぐぃーと、前です。おうっ。どうすればいいの!?


「なんだ、それは」


 混乱してたらどっかから声が。不思議はまだ続くの……?


「『緑の姫』がいなかったので、代わりに」


「幼子を拐ったのか?…………………………はあ」


 うわ。すごい重いため息ですね。ここで礼儀を取るつもりはあまりないので見てやりました、声の出所。それは階段の上に設置されている椅子に座って肘をついている誰かさん。なんかおじさん、のようで王様だよ~て誰が見てもわかるようなちょっと丸めの王冠をかぶっていらっしゃいます。


 顔は陛下みたい見えないわけではないようです。と言うか魔法具の類いを一切、つけていないよ?あれ?王様なんだよね?遠いからちょっと判断できないけど……金髪系なんじゃない?髪は薄いグレー。金髪判定が多いね、私。


「ちょっくら行ってくるとか言ってお前はその幼子を拐ったのか?」


「手ぶらはさすがにまずいと思った」


「ソマディオ、お前は?」


 右側の髪が長い人がソマディオさんね。


「エルダーグに決めさせました。結果がこれです」


「ジャビャ、お前は?」


 つるんつるんがジャビャさんね。言いにくい。てかきょろきょろしてても何も言われないんですが……いいか。


「どうすると聞いたらエルダーグが乗っかった」


「――あのな。余はなんと言った?」


「『緑の姫』を確かめて来い、と」


 え?確かめにってことはちょっと探ってた感じ?明かに誘拐しようとしてませんでしたっけ?


「んで?何しに行ったんだ?」


「ジャビャに闇で移動を頼んで俺とソマディオが乗り込んだ」


「もっと詳しく話せ。ソマディオ」


「ジャビャが運搬。私が魔法の援護。主に結界で道を塞いでいました。エルダーグが乗り込みです。あちらの騎士と三人ほど交えていましたね」


「もう一度言うぞ。余はなんと言ったんだ」


「『緑の姫』を確かめて来い」


「その結果が幼子を連れてくるとどう関係があるんだ!馬鹿者!!」


 あ、その王冠を投げていいのかな。なんか、いいピッチャーになれますよ。片足ぴーん!と伸ばして振りかぶった姿は某キャラクターを思い浮かべます。テレビでちらっとしか映されてなかったけどね。私は詳しく知りません。真っ直ぐ『帝王』へ飛んでいくから、いい腕をお持ちです。


 そしてそれを軽々と受け止めちゃう『帝王』。それをなぜか私にかぶせてくる。いや、私は帽子スタンドではないんで。これちょっと大きいらしいよ?顔が隠れちゃっているから!


「余は確かめるだけと言っただろうが!血生臭いことしに行けとは一言も言っておらんわっ!馬鹿者がっ!!見てくるだけもできんのか!!」


「つまらんだろ」


「くぅぅっ――!!………………はあ………………もうよい。余の書状が完全に意味がなくなったと言う事だけがわかった」


「なんて書いたんだ?」


「この帝国の現状に決まっておろうがっ!!このままだと戦争を仕掛けても仕掛けられても負けるからこちらが最低条件で和平を結ぶと会議しただろう!ソマディオ!ジャビャ!!なぜ事情も聞かずに止めなかったんだ!!」


 ……あれ。


「まあ、やり取りしてからよりもとっとと早くした方がいいと思いまして」


「俺は悪のりだ」


「知っておってこれかっぶあっかものめがあああああああ!!!!!!」


 ……あ、なんかあの王様に同情してきた。王冠をとって王様を見てたら頭を抱えて叫んでます。


 えーと、あの……なんでしょうね。この『帝王』たちが好き勝手動いたのかな?王様の意見を適当に解釈して。


 まず帝国の内情はよろしくないんだよね?戦争を仕掛けても仕掛けられても負けるぐらい弱っている、んだよね?――て事は武力は『帝王』がいるからそっちじゃなくて……知将、とか?なんかやり取りが凄まじいし。それか食料沙汰とかかな。わかんないけど。『緑の姫』が必要なんだから後者が一番しっくりくる。


 たぶん、『緑の姫』または『土の加護』を持つ人。エジーラ様を欲していたからやっぱり食料関係が推してるかな。ほら、エジーラ様の作った土を使えば最高品質になるからね。


 でも王様は『確かめて来い』と言った。拐って来いではない。つまりは『緑の姫』が不確かだから確かめて来い、なんだよね?どこまで情報が流れているのか謎だけど、敵情視察の意味で確かめて来いって言うぐらいなら確認だよね。つまりは本当かどうか調べてね、てことじゃないか。


 乗り込むのはやり方があれだけど内緒だからあれでいいんだよね。きっと。問題はそのあとが王様の大誤算。確認が誘拐に変わって引っ掻き回してきている。


 王様的には帝国で会議までして、和平を結んででも『緑の姫』を借り?ようとしたんじゃないかな。でもこれが現実で……『帝国』は脳筋に違いない。ソマディオさんは適当でジャビャさんは悪ノリ。……この国は大丈夫?


「……そういえばなぜその娘を連れてきたんだ?」


「『緑の姫』がいるだろう情報を手に入れて確かめに行ったらチビと護衛の女魔法師がいた」


「なんで連れて帰ってきたんだ」


「俺を見ても逃げないのが面白い。あとついでにサファリナ国の脅しに使えそうだと思ったな」


「……その幼子にどんな価値がある」


「なんでも、双子王子の片割れの婚約者らしい。いい餌だろう?」


「本当にお前は戦うことしか出来んな………………幼子ならまだ確約もしていないだろう?そうでないなら切り捨てる事も可能だ。あっちは『緑の姫』の代わりに幼子を犠牲にしただけで痛くも痒くもないぞ。帝国の印象がどんどん悪くなっていく………………最初から悪いか」


「だいたい、今さら和平を結ぶのもどうかと思うぞ。議会では承諾したが、握り潰されるだろ?戦争で奪い取るのが帝国のやり方だったろうに……」


「これだから血の気の多い奴はすぐに戦争したがるんだよっ!!んな時代は数十年前で終わっただろうがっ!馬鹿者がっ!お前は納得した上で余に賛成したと言うからお前を使って先に確かめて来いって言ったら誘拐してきたんだろうがっ!!」


 王様が壊れちゃった。誰か説明プリーズ。

 

「……敵国に潜り混むなんて久しぶりだったからな、つい――剣を交えたら楽しいし、血が俺を昂らせてだな、」


「もうお前は黙れ。喋るな馬鹿者。何も言うな愚か者」


 お疲れ様です。そして状況をもう少し詳しく教えてくれませんかね?なんとなく私は巻き込まれちゃった!みたいな気配がぷんぷんする……私が勝手に立ち向かったからいけなかったのかな?


「あの……」


「なんだ、チビ」


「帰りたい、です」


「無理に決まっているだろ」


「私は、殺されるのですか?」


「絶対させん!戦禍の帝国時代は終わり、帝国は生まれ変わったのだ!」


 いや、王様――そんな拳を強く握って語られても、私は帝国の歴史を知りませんから。てか戦禍っておっかないなあ!?


 えー。じゃあ私の待遇ってどうなるの?『帝王』に聞いてみたら王様にトスしてた。あんた、王様の右腕とか言ってなかったっけ?腕っぷしだけですか。てかずいぶんと砕けた態度だよね、この3人。もうソマディオさんとジャビャさんは喋ってないけど。


 トスされた王様は投げやりに受け止めて説明してくれた。相手側の返事を見てから考えるって。殺されはしないけどさっき言ってたように切り捨てられたら困るので安全は確保したい。監視つきでも衣食住はほしいです。でも婚約者はもう違うからややっこしくなるよね?訂正しよう。


「ごめんなさい嘘です」


「「「「……は?」」」」


「婚約者ではありません。私はあの城で働いている魔法師の娘です」


「……なんでそれを今に言う?」


「魔法師と言うと……近くにいた女か?」


「まったく似ていなかったがな」


「待て。嫌な予感がする――娘は誰の娘だって?」


「申し遅れました。わたくし、クロムフィーア・フォン・アーガストと申します」


「はあああああ!?グレストフの娘!?あいつにこんなチビの娘がいたのかっ!?」


「なるほど。ならあの魔力も頷ける」


「あれなら単騎で今の帝国は八割を失うな」


「……ジャビャ!即刻、その娘を返してこい!!」


 えー。なにその拾ってきた猫を戻してきなさい的な言葉。しかも指でビシッとたぶんあっちにサファリナ国があるのか指差しているよ。


 てか最初の印象がかなり違ってもうどこに何をどう突っ込んだらいいのかわからなくなってきた。わりと帝国って面白いね。『帝王』とか怖かったけど今じゃ大雑把な人だし。


 まさか名前を名乗ったらそのまま信じちゃうって言うか納得されたのがどうも、腑に落ちないんだけどね。普通はここで本当か疑うと思うんだけど……ソマディオさんが魔力だけで納得しちゃった。いいのか、それで。


 なんかここって私から見て謎が多すぎるよ。いいの?って思うことありすぎてもうね、ついていけないし。なんだったの?て言いたい。すごく言いたい。誰か私の相談に乗ってくれないかな……


 そんな事を思っていたら背中にゾクリとちょっと寒気が。なんだ!?と思った瞬間は誰かが後ろに立った瞬間で、口元を塞がれ闇が広がる。ああ、この感覚はあれですね?闇渡りなんですね?


 ぱぱーっとした出来事だったからよくわかんなかったけど、闇が晴れたらどことなく知っている視界が見えますね。あ、お父様。


「クフィィイイイイイイイ!!!!」


 うん。忙しい旅路でしたね。何しに行ったんだろう。いや、なんで連れていかれたんだろうね、本当に。


 とりあえずお父様が迫ってきたから手を伸ばして――王冠が手にあるのにビビって固まりました。それはみんな一緒でさすがにお父様も固まった。え?て。


 いやーなんか『帝王』が被せてきて、前が見えないから取ったんだよ。置く場所がなかったからそのまま持っててね。うん。おかげでこっちも頭を抱えなきゃならなくなりました。またあっちにいかなきゃいけない気がしてきたのは……気のせいかな。また王族と話さなきゃならないのは気のせいじゃないかもしれない。


 てかよく帰ってこられたね、私。うん。帰ってこれた!よかった!今回のはなんだったんだよっ!




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