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足掻くも、無念

あきなりシリアスです。

修正いたしました。28.11.6

 えー、はっきり言いまして、お外が怖いです。頻繁に金属が鳴り響くのですが、その中でたまにくぐもった声が聞こえてドンと言う音が2回ほど聞こえた。それとたまにぬちゃ、と、びちゃ――嫌な想像しか出来なくて駆け出しそうになった。


 それでもメルダ様に止められてしまっては駆け出せないので祈るしかない。そう――祈るしか、できないのだ。


 力を分け与えるような事は出来ない。そんなものがあったらたぶんやってる。てかメルダ様がやる。【水】だけはけっこう頑張って色々と覚えた。しかし覚えたものでは手助けできるような魔法はない。今ここで唯一の救いは……誰も、叫ばないこと。


 まだ見ぬ『帝王』が綺麗に凪ぎ払っているのか。不安にさせないように声を圧し殺してくれているのか。声も出せずに終わっちゃったのか――わかんない。不安だからどんどん想像が色んなものを作り上げていく。しかも全部が悪い方へ膨らむから厄介。アビグーア中隊長、大丈夫かな?


 たまに聞こえる鈴の音は……鳴っている。おおよそで『帝王』が何かを喋っているんではないかと思われる。だってさっき喋るたびに鳴ってた。確認のしようがないけど。どうしよう。魔力が揺らぐ。


「クフィーちゃん!」


 メルダ様が叫んで――それと同時に結界が弾きとんだ。私?メルダ様に包み込まれて視界がわかりません。白黒の世界に拍車がかかったよ。真っ暗――そして、疲れた、とでも言うようなため息と、男の声。


「少し切れたか……さて『緑の姫』は――どっちだ?」


「答える義理はないわ。貴方は呼ばれていない。早々に立ち去りなさい」


「俺も上からの命だから簡単に引けぬ。それにそろそろそっちも帝国にいいもん献上して和平を結んだらどうだ?」


「不届き者!和平と言いながらこのような不法は認められない!盗賊まがいの無礼者がっ!」


「別にいいが――帝国は今日、『緑の姫』をもらい受け和平を結ぶと書で契りを交わした。多少は血を流したが不法ではない」


「貴殿の言葉では信用などできない。和平を望んだのであれば、なぜこのような振る舞いを行使するのです。契りを交わしたのであれば、法に乗り定めなさい!」


「……だよな。事後承諾させたかったんだが――うまくいかぬか」


 口だけだったとは……帝国って怖いね!厚かましい……


 そんな事を思っていましたら……ひゅっん――と、ね。とても速そうな、何をどうやったらそんな音が出せるのかわからないような音が近くで聞こえた。とっさに魔法具に魔力を流して結界を張ったおかげで弾いた音が間近で響いてビビる。


 私の視界はまだ、暗いまま。聞こえる声はどうも面倒そうに話しかけていた。てか助けはまだですか!?これはどう考えても相手側が不法侵入して勝手な事をやっているよね!?色々とやばいよ!?




 てか――血の臭いが、す……る………………




「メルダ、様?」


「さっきのはそっちか。で?俺はとっとと『緑の姫』をかっさらって逃げたい。結界を解けばこれ以上の血を流さないと約束しよう――どうだ?」


「断るわ」


「自ら死を選ぶか……では、俺のやり方を通させてもらう」


 言った瞬間にギン!とぶれながら重い音が鳴り響いた。さらにぎゅっと抱き締めてくれるメルダ様は私をかばう気だ。こんな上から聞こえる剣の音……もしこの結界が割れたら――なんて思うとメルダ様をどうにか遠ざけたい。目の前で死なれては困る。怖いよっ……


 すごく苛立った舌打ちが聞こえた。私はまだ魔力を魔法具に……淹れたいけど、これ以上は魔力過多で壊れる。今でもこの魔法具からピキンとか音が聞こえるんだもん。長くは持たない。


 それと――『帝王』は魔法剣を使えるらしい。向こうに魔力が膨らむ感じが捉えられた。どうしようっ――魔力をぶつけられたらきっと壊れる。そして勢いのままメルダ様を斬るかもしれない。


 もし、この『帝王』が勘違いで私をよくわからない『緑の姫』と思っていたらメルダ様はきっと邪魔と思われる。斬られたらこっちの被害はかなり大きい。私が斬られた方がまだ、損害はっ――でも、駄目だね。


 私が斬られてもメルダ様が錯乱してしまえばそれでお仕舞い。土魔法なんて使ったらバレて誘拐。こちらの損害はかなり酷い。てか『緑の姫』がどんな人か教えてよ!!メルダ様を守らなきゃ結局は国なんて傾いちゃうんだから!


「結界を解くから斬らないで!!」


「なっ!?駄目よ!解いちゃ駄目!!まだ応援が来ていないのっ」


「チビの方が賢そうだな。それと、応援なんて来るわけないだろう?俺が一人でここに来るなどできると思っているのか」


「っ――!?」


「待って。……貴方も、それは放たないで」


「……くくくっ。いいだろう。女、ゆっくりそのチビを離して立て。立ち上がったら結界を解いてもらおう」


 間乞うことなく悪人だ。今からその悪人の顔を見るのかと思うと少しだけすくむ。


 メルダ様には大丈夫、と言って抱き締めた。根拠は全くない。今、色々と私にできることを考えている。とりあえずもう少し時間稼ぎが必要。この人がどう攻めてきたのかは知らないけど、少しでも状況を把握して守らなきゃ。


 守るものは――人。メルダ様を死なせてはいけない。せっかくウィル様と両想い。私だってせっかく転生までして生きているのに、アトラナの事も終わっていないのに、ここで終わってなるものですかっ。まだこの世界の色を見てないんだよ!!


 ゆっくり、本当にゆっくりとメルダ様が私の体を離した。心配そうに今にも泣きそうな顔で私を見つめている。私はそれを見返すだけ。何も出来ない。笑えないし、泣いたら魔力暴走しそうで何も出来ないから。軽く頷くだけでメルダ様を立たせた。


 ノルアを抱き直して――初めて『帝王』と対峙する。


 見た目はなんと言うかおじさん。顎とかの無精髭がちょっと目立って細くて鋭い眼光は白っぽいグレー。その鋭さから金色を連想させた。髪は逆に濃いグレー。ちょっと四角く剣山のように短めの髪はダックブルーのイメージ……緑みがある青……視線が冷たくてどうも目が合わせられそうになかった。


 だって、手には大きな剣。そのまとわりつく魔力はキラキラがすごすぎた。いい比較がないが、魔法剣で言う魔力は大。あれを振り回されたら最上位の魔法が飛び出すほどだと思う。その剣先には黒い斑点模様……どこか繋がっているように並ぶ斑点は――お腹を抱えて荒い息をしている白い、頭。アビグーア、中隊長っ……


 叫びそうになったのを必死に堪えて結界を解いた。そうすれば『帝王』も集めた魔力を解いてくれる。意外と律儀?いや、私たち相手なら簡単に終わらせられるんだと言っているのかもしれない。その大剣の剣先はグレーの輝きではなく、黒く染まっている。


「生きているぞ。早く手当てをしないと死ぬがな」


「っ――」


「チビには刺激が強すぎたか?まあいい――その薄い緑の髪、『緑の姫』はお前か?」


「……そのような呼ばれ方をされた覚えはありません」


「ああ、悪いな。それはこっちの呼び方だ。お前が土の加護を得た女か?」


 やばい。メルダ様を狙ってる。どうしようっ……メルダ様がなにか言おうとしたから手で制してみる。これで少しは私の方が格上だと思う……よね?どうしよう。意外と冷静に保てるけど、何も思い付かない。とりあえず遠ざけなきゃ。逃げるなんて事は――出来ないもんっ。


「その呼び方も聞いたことがございません。加護を得た者を知るなど、下々では聞き及べないお話しでございます」


「へぇ……チビにしてはずいぶんと冷静だな?『帝王』を恐れぬとは対したものだ。いやむしろ知らないか?」


 気丈に振る舞ってないと魔力暴走なんかやっちゃいそうだからです!怖いから見ないで!!はっ……てかここは幼女なら怯えるところじゃんか!私のバカッ!!でもメルダ様なんか今にも飛びかかりそうでっ――絶対に私を庇う。駄目、誰かが死ぬのは見たくないよ。


 ノルアの毛に顔を埋めて視線回避。やばい。墓穴を掘りそう。大変だ!きっと次は私たちがなんでここにいるか、だよね。『緑の姫』の疑惑は消えたかな!?ああああああああどーしよっ!?小娘が十進魔法師を従えてこんな本館から離れた部屋に結界まで張って隠れる理由っ。それ相応の理由!!どうしようっ。


「で。チビたちはどうしてこんな所に隠れていたんだろうな?わざわざ乗り込んだんだ。教えてくれるだろう?」


「貴様っ――」


「メルダ、控えなさい」


「っ――」


「陛下に支える、十進魔法師が取り乱さないで。考えて」


「ほう」


 墓穴ってどこまで掘ればいいかなっ、お馬鹿さんっ!これで私は十進魔法師の一人を黙らせるほどの力を持った幼女。『帝王』にも平伏さない幼女。誰か私を殴って!!


 脅しは効かない。さっきの説明を聞いた時点で弱味なんてないでしょうね!『帝王』が乗り込んで来ないでよ!そういう人は王の守りでも固めていてよ!!


「まず、貴方にお話しするほどでは」


「それを決めるのは俺だ。言うこと聞かないとその抱いているリッスンを真っ二つにするぞ」


 そんなグロいもん腕の中で見たくない。私が抱えているのに、小さい手を広げて守ろうとしてるんだよ?こんな健気な子を殺させるわけにはいかない。……一か八か……賭けよう。『帝王』がどれ程こちらの事情を知っているのかな?お願いだからここでこれ以上は暴れないでっ。怖いよっ……


「アーグラム王子の、婚約者です。まだ私は幼いので、ここで内密に過ごさせてもらっているのです。実家では外のお姉様方との面会に疲れてしまいますので」


「確か双子がいたな。今日が成人の。ずいぶんと年が離れているように見えるが、貴族どもだと気にしないか――確かにチビを籠に入れておかねば死んでしまいそうだな」


 死ぬ。なんか死ぬ。寒い。自分で言って寒い。あり得ない。本当に、あり得ない。なんでまたロリコン王子の婚約者にならなければならないんだろっ。あの時は初めての告白――で舞い上がってたから後々バカらしくて冷静になれたのにっ。


 今、この状況で、非常に、冷静な私に婚約者気取りは苦痛でしかない。本当にアーグラム王子の気がしれる。やっぱり恋愛はもう少し大人になってからしたいな。だって相手は15のロリコンだよ。八つ離れたらロリコン……だよね?もうちょっと離れてないと言えないのかな。じゃなくて、なんか向こうはそれで理解してくれたんだよ!?


 これで私とメルダ様の設定は決まったでしょ?そうだよね?騙せているよね?王子の婚約者(私)に支える十進魔法師(メルダ様)。次をどうすればいいのかわかりません。自分で首を絞めてどうするんだかっ。


「俺の情報では、離れた場所に『緑の姫』がいるらしいんだがな?どうするか――」


「エルダーグ。もう持たんぞ」


「さっさとしろ」


 仲間、いたの?


 アビグーア中隊長を跨いで入ってきたのは2人の魔法師。ローブを来ているからそうだと思う。マント型の外套だったら出直してくるんで立ち去っていただきたい。何を言ってるのかもうわかんないよっ。


 そんな2人は私たちを見て顔をしかめた。まだ若そうな青年は右だけがなんだか髪が長い薄目のグレー。瞳は普通のグレー。水色?の髪に青でいいよ。


 もう一人はこれまた頭のてっぺんに素敵な輝きを持っている人だった。目が細いせいで瞳の色が判断つかない。なんとなく黒っぽく見えた。そして日焼けしているのか肌が薄いけどグレーより。ギャルの肌……きっと小麦肌……私の脳がもはや機能低下してます。


「『緑の姫』はどっちだ」


「それが外れみたいなんだよ。チビはチビだけど双子の片割れ王子の婚約者。女はそのお付きの十進魔法師。チビのために女を傍に置いておいたんじゃないか?」


「セランダめっ――使えん奴だ」


「どうする?せっかくここまでして騒いだんだからどっちかは連れてくか?」


「っ――」


 はあ!?止めてよっ。本当に止めて!メルダ様を連れてかれたらどうしようもないし、私が連れてかれたらお父様が暴走すると思う!!てかまだ来ないの!?来てくれないの!?なんで!?


「移動に楽なチビを連れてくか?王子の婚約者を連れていくのも面白そうだ」


 バレた時の私の命はなさそうだけどねっ。


「お前が持て」


「いいだろう」


 よくないよ!!話を進めないでっ!!


 でも『帝王』の間合いだったらしい。走ったのか蹴ったのかよくわからないけど、一瞬にして詰め寄ったのかと思ったらメルダ様が倒れた。早すぎ分かんないよ!!たまらず隣で倒れたメルダ様に叫んで揺さぶりながら呼び掛けるけど気絶しているらしくて起きない。


 ノルアも攻撃をしようとしたらしい。てかしてた。何か飛ばしてたけど『帝王』は軽々と避けて手を離していた私の隙からノルアを奪ってあの魔法師に投げてた。あっちは魔法が完成していたらしい。ノルアがキラキラになった。わかんないけど、結界か何かで動けないんだと思う。


 そして私はあっさりと『帝王』の威圧に動けなくなる。目の前に立たれただけで足が震えた。やだ、怖いっ――


「着いてきてくれるよな?でないと女を殺す。それでも来ないならあのリッスンを殺す。次に――外で寝ている奴を殺して後はお前が頷くまで構わず殺す――どうする?チビ」


「っ……い、いき……」


「待て。エルダーグ。その娘、かなりの魔力を持っているようだ。下手したら魔力暴走で傷だけではすまんぞ」


「……来い」


 それだけ言って、私の腕を付かんで2人の魔法師のそばまで歩かされた。片方は闇魔法師だったらしい。さらさらっと書いて高々に魔素を集めていた。


 かなり濃い魔素を集めたらしい。4人を囲むように覆ったと思ったら私の意識は首筋の痛みと共に簡単なほど落とされ――息を、止められた。




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