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急展開

ご指摘を含め誤字等を修正いたしました。28.10.16

「……」

「いいかい?エジーラ――じゃなくてメルダの言うことをしっかり聞くんだよ?」

「はい。でもお父様、これはやりすぎでは?」

「備えがいっぱいあっても損はしないだろう?」


 だからってここまで厳重にするのはどうかと思うんだよね。


 ただいま、厳重に厳重な厳重で厳重すぎる結界の中にいます。クロムフィーアです。あ、一人じゃなくてエジーラ様と一緒です。エジーラ様は名前を変えてメルダ様になっていますよ。一応、偽装をしておくんだそうです。メルダ様ね。メルダ様メルダ様メルダ様ー……これで間違わないかな?今から言っておかなきゃ間違えそう。


 ここでは私が囚われの姫役ですよ。砂を吐き出しそう……エジーラさ、じゃなくてメルダ様は十進魔法師としてここに残るんだとか。因みに七の席の人だった!


 えー、この度……秋色に染まりまして少し肌寒くもなった今日、成人式が執り行われます。アーグラム王子とローグラム王子がめでたく成人するそうですよ。つまりはトールお兄様も成人です!そして、グラムディア様の復活際でもありますっ!!


 この二つを盛大に騒ぎ立てよう!!と言うのが今日なのです。ですから、私はいつものようにとある一室でエジー……メルダ様と共にひっそりとここでお祝い。揉みくちゃは嫌だから別に寂しくはない。嘘も含んでいるけど。同じ境遇の人が傍にいるからね。寂しさはほんの少しだよ。てか元々イッエーイ!!とか騒ぐ人じゃないから。インドア派です。小説を読んでうはうはしているのが私だ。


 で、なぜ厳重なのかと言うと――教会の方はシェムピス司教を捕まえて現在、この城の牢獄に捉えられております。


 なんでも根掘り葉掘り掘っていたら精霊にかなり心酔してて、精霊に会うため人体実験をしていたんだって。なんで調査をした時にすぐに分からなかったかと言うと、爆破で半壊したから。資料とか吹っ飛んだらしい。それで人から人へと聞き回ってなんとか証拠を掴んだのが数週間前。式の準備とかあるのに大変だよね。


 で、お父様が言うには教会の件はなんとか終わらせたけど別の――他国の密偵が潜んでいる可能性があって、まだまだ用心しておかなければならないんだと言うことです。なにそれ?って顔をしていたら言われちゃいました。相手国はあまり仲がよろしくない所で、私の存在は隠したいらしい。


 エジーラ様だけじゃないの?なんでまた私を隠すんだろう?という顔が出ていたらしい。お父様がいつぞやかレーバレンス様が言っていたような事を言っていました。私の魔力が大きいから、捕らわれたりして兵器にされるからとか。そんな事言っていたらフラグが立っちゃうんだけど……


 と、言うかこんな一ヶ所だけ厳重にしていたら怪しいと思うんだけどね?なんでそこは思わないのかな?まあ、別に駄々こねて逃げ出そうとは思わないんだけどね。聞いてみたら結界の魔法は他にも二重に付けているところはあるし、結界石はあんまり感知されないらしい。


 だから部屋の外――廊下?とか窓とか庭園の回り、外側を光魔法で結界を張り巡らせて。さらに部屋の隅々に結界石。メルダ様が発動でしょ?ついでに私とメルダ様に何かあったときの結界が出るように魔法具を持たされている。予備付きで二個も。厳重すぎて怪しさ満点だよ。


 なんで結界でまとめているのかと言うと、護衛騎士にアビグーア中隊長と、3人の護衛しかここを守れないから。陛下の警備を固めなきゃいけないから他の警備を手薄に出来ないんだって。


 だからこれぐらいしておかなきゃお父様が心配で式にも集中できない!みたいな事を言っていたから仕方なくだね……まあ、いいんだけどね!私にはノルアとパーニャがいるし!いつも通りここでまったりしていればいいんだよ!!


 そんな訳で挨拶も済ませて(お父様は最後まで粘ってた)ただ今読書中です。今?午前中かな。


 朝からパレード行進。双子ちゃん王子を乗せて街まで下りて片道1~2時間。布で姿を隠したグラムディア様とセレリュナ様を連れて再び戻るのに片道1~2時間。揉みくちゃ決定だから時間はアバウト。だいたいお昼に終わるんじゃないかね?だって。


 城に戻ったら城門で儀式とグラムディア様の復活宣言。ここで魔法剣とか色々と宣伝して認めてもらい、お昼を含めて午後から貴族は挨拶回り。平民はどんちゃん騒ぎ。私はまったり引きこもり……


 城の方は午後から色々な人が出回るらしいけど、この場所は本館からかなり離れた場所らしいから安心して過ごしていいんだって。だから気にせず過ごしますとも。


 魔力操作は溜めると私の場合、周囲が驚いてしまうから今日は読書を中心に。魔法は使っちゃ駄目だよ、と言われちゃいました。仕方ないからあとはお昼寝とかノルアと遊んだりして時間を潰すよ!


 そういえば魔法剣部隊も今日から出動するんだよねー。キャロラリンのおかげでなんだか慌ただしくなっていたけど、完成度はかなり高いと思う。みんな頑張っていたからね。


 近衛騎士クラスは前から魔法剣の存在を知っていて魔法もそこまで毛嫌いしていない人たちだったから結構スムーズにできてた。中級騎士から下はもうちょっと……という人が多かったけど、それでもじゅうぶんすぎるほどだと思うってお父様が。魔法剣の維持がずいぶんと安定したとか。


 あと、やっぱりミスリルじゃない剣で魔法剣を操れる人は限りがあった。レーバレンス様が言うには、魔力があり、ある程度の操作ができ、想像が豊かな人ではないと難しいのかもしれないとの事です。


 どうも、私がやる中心から流して出てきた魔力を剣の回りにまとわりつかせる事が難しいと言っている人がいるらしい。どうしても中身の中心ではなく、外側から見た中心になっちゃうみたい。


 それを他の奴でやっているだけなのに、どうも調整が難しいのだとか。同じ形の剣ならまだしも斧とか槍となるとイメージがつきにくいらしいね。よく手にするものが剣であって、あまり馴染みのない武器はちょっとうまく出来そうにないみたいだ、って言ってた。


「エ……メルダ様、お昼からはどうしましょうか?」


 ちょっとだけ休憩。体が固くなっちゃうからね。


「クフィーちゃんがよければヴィーラを弾かない?実は今度ウィルと一緒に演奏するの。下手な演奏は出来ないわ」


 おやあ?


「メルダ様、いつの間にウィル様と?」


 あ。にやにやが止まりません。私の顔を見たメルダ様がすごいあたふたとし始めたよ!顔がグレーに染まってきたからきっと真っ赤に違いない!にやにや。


 お昼からね!と言って本で顔を隠されてしまったよ。なにこの可愛い美人。美人で可愛いとかどんだけ得してるんだろうっ。


 本当はもうちょっと突っつきたいけど怒らせてあと半日をギスギスした空間で過ごしたくないのでやめておく。私も読書に戻ってお勉強だ。因みに教本だよ。じゃっかん飽きてきたのは内緒です。


 そしてお昼。魔力を使ってないから普通の量でお食事。メルダ様にはなぜか少ないけど大丈夫なのか心配されたけど、今日はこれぐらいで大丈夫です。違うところで大丈夫じゃなくなったけどね!大食漢だと思われるよっ!いやあああああ………………


 チリリン――…


 うん?何か聞こえましたかな?可愛らしい鈴の音が聞こえたと思うんだけど……朝の12の鐘の音はもう聞いたよね。……あれ?メルダ様が普通だ。私をまだ心配しているよ。おっかしいなー。


 まあ、とりあえず話題を変えるならウィル様の事を聞けばそっちを気にしすぎて慌てちゃうなら反らそう。私の大食いはわけありなのです!そこは間違ってはいけません!!


「メルダ様はウィル様のどこが好きなんですか?」


「クフィーちゃん!?あああああああのね!?そういうのはクフィーちゃんにはまだ早いと思うわ!」


「ええー。誰が好きとか、私たちだってお話ししますよ?(たぶん。別におませさんではないはず)」


「う、嘘っ……私の頃はまだそんな浮わついた話は駄目だったのに………………最近の子どもはいいのかしら――?」


 何がですか。それより真剣に悩まないで下さいよっ。確かに話は反れているけど私が聞きたいのはウィル様とのお話ですよ!砂糖1杯ぐらいのお話をポロリと期待していたのにっ!!


 意外とこういうのは本能か何かで避けちゃうんだよね、メルダ様って。面白いからいいんだけどさ。うーん……ウィル様のネタはこれ以上引っ張れないかな。今ごろくしゃみを耐えているんだろうな、って想像しておこう。耐えるのって、辛いよね。


 チリリン――…


 あ、また聞こえた。まるでお迎えみたい。何の、かは考えないよ。怖いから!


「メルダ様、何か聞こえませんでした?」


「え?何かって――何が聞こえるの?」


「ええと――鈴の音、ですかね?」


「鈴の音?呼び鈴でも鳴らしてしまったかしら?」


 そういえばそんなベルがあったね!でも今日は誰も中に入れちゃ駄目だよ、って言うことでポメアも護衛騎士も出しちゃったよ?結界の範囲が広いからせめて負担を減らすために守る対象である私たち二人だけを囲ったじゃん。


 本当に緊急的な意味で何かあった時だけ、この呼び鈴を鳴らしてね?ってお話だし。私はその呼び鈴を鳴らしていない。メルダ様も鳴らしていない。じゃあ、何だろうね、この音。


 チリリン――…


 ほら、また聞こえた……なんだろう?あっちから呼ばれても式が終わるまで誰が来ようとも開けない約束だし。てか誰か来たらなる呼び鈴は撤去したよ。


「気のせいですかね?」


「気のせいかしらね。て、あ!」


「どうしました?」


「そう言えばヴィーラは一つしかなかったんだわ。もうっ……せっかくこっそり練習できると思っていたのよ?お昼は別の事をしましょう」


「私がメルダ様のヴィーラを聞いてはいけませんか?聞きたいです」


「え。でもあまり触っていなかったからちょっと変な音が出るかも知れないわ」


「本番にウィル様に聞かせるより、よほどいいと思いますけど……しかたありませんね」


「そうだったわ!ぜひとも聞いて!」


 美人さんが操られやすいです。もしかしたら気が緩みまくっているのではないでしょうか?最初の頃はもう少し大人っぽくて第三のお母さんポジションだったんだけどな……


 今日はなんだかそわそわしている感じ。もしかして、式とか見たかったのかも。そう言えばメルダ様っていつからここのいるのかな?いそいそとヴィーラを持ってきて綻んだ顔で準備までしているよ。やる気満々ですね。


 楽譜は地球と一緒で五線譜のおたまじゃくし。けどドレミって呼ぶんじゃなくて番号。おたまじゃくしの隣に番号が書いてある。この番号が玄の何本目で、おたまじゃくしが音階で指の調節ポイント。けっこう分かりにくい。てか私は未だに理解していません。だって音楽は聞く専門ですから!


 そんなメルダ様は最初はぎこちなくても慣れてくるといい音色を奏で始める。変な音とか言っておきながらしっかり奏でているよっ。意地悪だ!!


 チリリン――…


 また?メルダ様に言っておくけど……聞こえていないらしいんだよね。なんなんだろう。アビグーア中隊長に聞いてみようかな?外へ訪ねるだけなら問題ないし。


 気になるから聞いてみようかな。と言うことで聞いてみる事にした。メルダ様と共に外へ繋がる扉まで。向こう側にはアビグーア中隊長と護衛が一人……だったっけ?交代でやってたんじゃなかったかな。まあいいや。アビグーア中隊長は24時間フル稼働するって言ってたし。


 ノックしたら結界に変な影響が出るかも知れないのでこのまま声をかけましょう。――あれ。私ってアビグーア中隊長とうまく会話できるのかな?


「アビグーア中隊長」


 …………………………あれ?


「アビグーア中隊長?」


 チリリン――…


「可愛らしい声が向こうから聞こえるが?扉の向こうには何があるのだろうか?」


「お見せすることは出来ません。お引き取りください」


 チリリン――…


「控えろ。たかが上級騎士より、私の方が上だ」


「控えるのはどちらか。帝王がなぜここにいる。ここをサファリナ国と知って踏みいったか」


 ………………あんれー?なんかやばくない?すっごくやばくない?帝王ってどう飛躍していいのかな?てかアビグーア中隊長の声がするんだけどペラペラ喋ってない?あれ?あの人はすっごい片言だったと思うんだけど!?


 メルダ様も目を見開いています。限界に挑戦するほど、見開いています。やばいまずい……二拍子しか出てこないよっ!?


 とりあえず音を出さないように扉から離れてお父様――は駄目だ。十進魔法師は陛下から離れられないっ。お昼をすぎて挨拶回りのパーティーだからまだ傍にいなくちゃいけないはず。まずンゼットォラ様に伝えてそれからっ――


「クフィーちゃんは駄目。それは私がやるわ。落ち着いて」


「――はい。あの、帝王って……二つ名、でしょうか?それともまさか国王では、ありませんよね?」


 なんだか怖いのでこそこそ。なんだろう……あっちの気配がただならぬ感じで怖い。


「二つ名よ。なぜここにいるのかしら――彼は帝国の皇帝の右腕と呼ばれている凄腕の騎士よ。彼が戦場に出れば屍が嫌と言うほど積み上がるの。その強さの頂点には帝国。皇帝の代わりに立つ者として『帝王』とも呼ばれているわ。よし……これでウィルに伝わったわね。クフィーちゃんは私から離れないで」


「はい」


 なんだか緊迫した空気が!メルダ様が通信機みたいな水晶に魔力を送ったから連絡はこれでいい。なんでもウィル様の魔法具と繋がっているんだとか。あと、ンゼットォラ様にも片道で連絡が行くようになっているヤツを使って報告は完了。後は外の動きによって対応です。


 メルダ様のおかげでちょっと不安ですよ。帝王とかそんな強そうな名前持ちがなんでこんなところにいるのかまったく分からないから。当然です。だからノルアを呼んで抱き抱えておく。せめてモコモコで癒されねばっ。


 ただ――驚いた事にノルアの毛が逆立っていました。なんというか……警戒、だよね。怒っているのとはまた違う。


 ウィル様たちが本館にいるとして――ここの部屋までにどれだけの時間がかかるか……部屋の中央に身構えてアビグーア中隊長の声を待つ。早く「大丈夫だ」って言って!


 でも、聞こえてくるのは金属がぶつかり合う音。なんで?なんで戦っているの?帝王って人はなんでここにいる?メルダ様を狙いに来たなら私、どう動けばいい?


 怖いからまだ片付けていなかった銀食器を手にとる。もしもの時の防衛に魔力を使ってもいいはず。本当はなにもしない方がいいんだろうけど……怖いもんは怖いからね!?


「落ち着いて、取り乱しては駄目よ。しっかり呼吸をして」


「っ――すぅ……はぁ………………………………大丈夫です。もし、入ってきたらどうしますか?」


「たぶん――いいえ、間違いなく帝王なら魔法師の私では敵わないわ。どちらを狙っているのか分からないけど、ウィルたちがくるまで時間稼ぎはするつもりよ。結界魔法具の準備だけはしておいてね」


「はい」


 大丈夫、だよね?また私が巻き込まれているけど、これって私が引き起こしている訳じゃないよね!?偶然だよねこれ!?


 なんだか分からないけど、まだ鳴り響く音にノルアを落とさないためと言って強く握りしめた。なんか変な声が聞こえた気がするけど、さすがに冷静でいることは難しそうです。ごめんねノルア。いざとなったらメルダ様と逃げてほしい、な。


 まだ、剣のぶつかり合いは終わってないけど……大丈夫だよね?大丈夫、なんだよね!?誰か助けてー!!




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