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リッスン、とようやく………

ご指摘を含む誤字等を修正いたしました。28.10.16

 今日はお父様が来ましたー。間違えた。今日も、お父様が来ましたー。いや別に正さなくてもよかったわ。まだ数回目だけどいつもの事だし……


 登場も毎回、騒いでくるんだよねー。普通に闇の魔法師様が運搬しているだけなんだけど。会話?いえいえ、した事もありません。お父様が無駄に騒いで話しかけるとかでそれどころじゃありませんから!


 それに――なんか、憐れんでいるような目でこっちを見るんだ。眉を潜めて細目で……絶対にこっちに近寄ってこないから私も放っておくけどね。


 でさ、登場したお父様なんだけど……今回はヌイグルミを持ってきてくれたらしい。なんと、ノルアみたいなリッスンの形。大きさもノルアと一緒でなんだか兄弟みたいだね!


 て事で「ノルアー」って呼んでみる。そうするととたたたたたたー!と走ってくるからまた可愛いのなんの!足元に来たらなあに?って言っているように首をかしげてこっちを見るから可愛さに私、悶絶して死にそうっ。


 そんなノルアに今しがた届いたリッスンのヌイグルミを見せてみる。なんかビクゥ!としたけどちっちゃい手で触ったりちょっとかじってみたり擦りよってみたり――いろんな行動をして最終的に首を捻ってた。もしかして仲間の確認でもしていたのかな?私が動かすと警戒して頬を膨らませちゃった。


「あ、待てクフィー!リッスンは怒らせてはいけないよ。後が大変だから!」


「大変なんですか?」


「あ。そういえばリッスンの特徴とか教えていなかったな……いや、本当はと言うとお試しと面白半分で持ってきただけだったし――まさかなつくとは」


「私も驚きましたよ。娘さんになんて物を持ってきたんですかっ!て怒鳴りそうになりました。けどすぐになついてしまって……あの時は我が目を疑いました」


「私もだ。それですっかり忘れていたんだがな。すまん」


 ポメアが出した紅茶を優雅に飲むお父様とエジーラ様が少しだけ不穏なことを言っているような気がします。我が目を疑ったって、どう言うことですかね?実はリッスンでわけありなの?


 とりあえずリッスンのヌイグルミはノルアにはちょっと気に入らないみたいだからポメアに寝室の方に置いておくよう頼んでお父様の隣に座った。まあ、すぐに膝の上に乗せられたけど。


 何やら詳しく聞かなきゃいけない気がしてノルアも呼んでみた。当事者も必要だよ。そしてやっぱりとたたたたたたー!と走ってきてお父様の足によじよじして私の膝上にちょこんと乗る。うん可愛い。可愛いけどノルアがよじ登ってきた時にお父様が「うっ!?」とか言ったんだけどね?くすぐったかったのかな?


「ノルアって凄い子なんですか?」


 まあ、確かにふわふわしていて、可愛くて、ふさふさで、円らな瞳で、放し飼いもできて、連れ歩ける賢さがあって、私になついてくれて、いざって言う時に助けてくれる勇敢な動物!とは言って貰ったけど。


 それに見会う動物なら後半の賢くてなついてくれて、いざって時に助けてくれる勇敢さがある動物なのだろうね。ペットとしてこのラインナップって結構………絞られるよね。よく見つけたものだ。


「いいのあるわ。少し待っていて」


 そんな手のひらを打って輝かなくても。エジーラ様が一つ頷いてどこかへ取りに行きました。なんでしょう?


 お父様はお父様で上から私とたぶん視界に入るからノルアも見ているんだと思う。触ってもいいか聞いてきたから私もノルアに聞いてみるけど……あっ。ぷいってそっぽ向いちゃった。そしてお父様が苦笑い。なんでかな?


 そんな私はお腹の温もりを抱き締めて頭を撫でているんだなー、これが。いや、言っていたようにふわふわでふさふさだし。気持ちいいのだよ。この揺れる尻尾がまたたまらないのさっ!


「はい。まずはこれを見てみましょうか」


 ノルアで遊んでいたらエジーラ様が本を持って帰ってきた。座ってすぐにページを広げてくれて見せてくれたのは手書きのリッスン。なんだか目が鋭くて可愛いと言うよりやさぐれたリスにしか見えないよ、これ。


 エジーラ様が読んでみて?何て言うから私は少しだけ身を乗り出して読んでみる。えーと……お父様から読んでほしいなって催促が来た。たぶん、少しでも声を聞いていたいのかな。逢っていなかったし。


「リッスンは赤茶色の胴体に短い毛で覆われた雑食の動物である。赤茶色なんですか?(濃いグレーだとは思っていたけど………赤茶色、ねー)」


「あとで聞こうかな。続きを読んでくれないかい?」


「え、あ、はい。………深い森の奥に生息していて、成長しても30センクターの大きさぐらいしか育たず自然の中で暮らす温厚な動物。しかし普段は穏やかに愛嬌のある振る舞いを見せるも、なかなかの気分屋で気に入らないことがあればすぐに頬を膨らませ口の中に蓄えられている唾液を使って水球が高速で放たれるので怒らせないようにするのが身のためである。因みに放たれた水球の威力は岩の強度にもよるが、大抵は貫通する」


 貫通!?………………さっきノルアか頬を膨らませていたのって――口の中の唾液を弾丸のごとく放とうとした、てこと?怖いわー。


「知性が他の動物よりやや高く、人間の言葉をちゃんと理解しているのでリッスンの近くで暴言は吐かないようにするのがいいだろう。空気もちゃんと読み取るので、警戒心が強いリッスンを飼い慣らすためにはリッスンに自ら飼い主である事を見定めてもらう必要がある。飼い主と認めてもらえれば愛玩動物として触れ合えるのでそこを間違えないよえに。なお、リッスンの見定めの基準は未だに解明されていない。飼おうとする者へ、まずは言動に注意することをおすすめする。可愛さ故に捕獲され競売に高値で売り出されるが、リッスンの機嫌を悪くするとその価値より高い損害をする可能性が高いためリッスンは見るだけに留めることも薦める……」


「どうかしら。クフィーちゃんのノルアって実は怒りん坊だったのよ」


 実にお父様がなぜノルアを持ってきてしまったのかを問いただしたい。


「ノルアは気分屋だったんですね」


 こうやってひっくり返してさ、脇に手をやって私の目の高さまで持ち上げてみる。顔が痒いのか、小さな手で顔をもみくちゃにしていた。うん。可愛い。


 でも気分屋なんでしょ?なんで私になついてくれたんだろう?お父様とエジーラ様に聞いてみたら一緒になって首を傾げられてしまった。なつかないだろうと予想していたから、本当にわからないらしい。資料もさっき読んだことしか書いていない。


 まずお試しでも可愛いし、見せてみようか!て持ってきただけなんだって。因みにこれ以外の候補はまだなかったらしい。私も忘れてたからまあいいけど。でも一言ぐらい言わせてね?冒険しすぎだよ!一歩間違えていたら私のどこかに風穴が開いていたからね!?二人ともわかってる?!


 でもふと思ったのです。どうやって持ってきたの?と。確か普通に闇の魔法を使って来たよね?あの影渡り。で、ジャーン!て感じでノルアが入っている篭を私に見せて――どうやって息を止めたのかなこれも知性で悟って?いや、その前に……


「あれ?私と対面した時に両手を出していませんでした?」


「そうなのよね。初めて見る光景で私たちは唖然としたものだわ」


「しかもクフィーはそのまま目をきらきら輝かせて見つめあっちゃうし……篭を渡してしばらく見つめあったと思えば仲良くなっているし……私はけっこう気遣う言葉とか話しかけてようやく連れてきたんだがな?」


「グレストフ一進魔法師様、驚くのはそれだけではありません。クフィーちゃんは私のパーニャを枕にノルアを膝の上に置いたまま寝るのです。その時のノルアの無防備な姿……ウィルと一緒に目を見張りました」


「無防備な姿?……リッスンの警戒心はどこに言ったんだ!?」


「私も聞きたいくらいです。大の字ですよ?普通は丸まっているのに……」


「大の字……見たことないぞ、そんなのっ」


 いや、だいたいはうつ伏せで大の字に寝てるよ?そして気ままに尻尾をふるのさっ!ノルアとお互い見つめあって一緒にねー?て首を傾げたらお父様が噎せて唸った。なぜかポメアが凄い慌てていて向かいのエジーラ様が見開いている。


 私はちょっと分からないのだけど支えてくれたお腹はしっかりと回されているので大した事はないよね?なんて思っていたら騒がしくなりました。ウィル様が登場。


 何したんですか!?とかウィル様もかなり驚いているようです。私は分からないよ。分からないけどお父様がいかに自分の気分がいいのかを説明していくけど、その内容がいつもの親馬鹿な発言だったから放っておく。


 でもウィル様は放っておけないらしい。いいから娘さんを離して落ち着いてください!ってどれだけ興奮しているんだか。てか私がエジーラ様に回収された。家族以外の抱っこは初めてかもしれないね!


 細い腕なのによく私を支えられるものだ。しっかりノルア共々抱きあげて反対のソファーに下ろされちゃったよ。それでお父様を見たらビックリさ!!鼻を摘まんで手を器用に片手で拭いていた!?なんか手と言うか布が黒いよ!?鼻血はさすがにどうした!?って思うからっ!!


「まったく!貴方はクロムフィーア若魔法師に説明しに言ったのでは無かったんですか!?なんで鼻血なんて出してるんですっ」


「クフィーがあまりにも可愛いからだ!!当然だろう!!」


「当然なんですか!?もしかしてと思って早くこちらへ来て正解でしたよ!!説明したらすぐに帰りますからねっ!」


 まるでウィル様がおかんだ。腰に手をあててもう!みたいな感じで怒るウィル様はたまに眼鏡も押し上げてお疲れのご様子。そんなお父様は新しくポメアが持ってきた白?の布を摘まんで笑っています。鼻血を出すほどって、初めてだよね。なんだが私が生まれた時ってどんな様子だったのか聞くのが怖い。感動して泣いたか……興奮して鼻血を出したか――どっちも凄いな。


 それを微笑ましいようにエジーラ様が見ていたから私がエジーラ様を見ているとノルアが私を見ていることに気づいた。なんだか頬を膨らませている気がするけど、その頬を指で撫でてあげると萎むんだよね。そして指に頬ずりしてくるんだよね。


 これのどこが気分屋なんだろうか。呼んだらちゃんと来るし。お願いしたらやれる範囲はちゃんとやってくれる。本当に賢い子なんだけど……


「リッスンが、頬ずり……」


「可愛い。娘が可愛い。娘が可愛いすぎるっ」


「どっちも可愛いわー」


 大人組の統一感がほぼないです。いいのか、十進魔法師。てか個性が強い人が多いよね?今度エジーラ様に残りの二人が誰なのか聞いてみよう。


 わいわいノルアの事を話したりお父様が私を可愛いと叫んだりエジーラ様が微笑んでいたりその時のウィル様が忙しなくなったり――時間がすぎてようやく本題。私の今後は二の次ですか?別にいいけどー。


 まあ話し出してくれたけどね。ウィル様がまたからかわれそうになったから。回避するためにわざわざ「そうでした!」とか露骨すぎるよ。エジーラ様と訴えられる様をいじるの楽しいのに。


 まず、教会のその後。教会って聞いてちょっと真剣になった。少しでも情報を聞き出したいからだ。


 今回の教会大爆破事件は精霊に関してを完全に伏せて、セチェフ子爵家と教会に対して児童虐待。市民への過失。城の業務損害などが訴えられて事件は終幕させたらしい。


 精霊の事をなぜ言わないのかを問えば、精霊に関することが大まかには広まっているがそれだけであり、教会関係者以外にとって精霊は現在ではいないと認知されているから。それと教会が精霊の事を認めないので、今現在ないものを掲げても混乱が生じるだけとわかるので黙ることにしたそうだ。


 それで私は、魔法院は教会の方でまだごたごたしているから――もし、出歩きたいなら騎士棟の方に行くか?と言うお誘いだった。窮屈だろうからそろそろ、と言う意味で騎士棟の方に顔を出さないかって。もちろん頷くよ!トールお兄様にも久しぶりにあえるし!


 でも、その前に教会に関してはまだ色々と調べるのか聞いておく。教会は許せないからね。相手を知らなきゃ何も出来ないもの。


 だからアトラナについて聞いてみた。だっておかしいんだもん。アトラナの存在がどうしてぞんざいに扱われたのか――魔力暴走したくらいなんだから、何かあったのでしょう?無理矢理に泣かせるほどの、なにかが。


 でも、その話はすでにしたらしい。やっぱり気になるところだよね。精霊が宿っている、または精霊がいるとわかれば器であるアトラナを大切にしなかったのか。信者ならそこも気を付けると思うんだよね。


 でも返ってきた言葉は「誰も何も言いません」の一言だ。それで魔力が揺らぎそうになったからお父様が声をかけてくれるんだけどね。守られているよね、私って。


 今後も教会について知りたいです、と言えば渋られたのは痛いけど……ノルアを差し出したら言葉につまりながらもウィル様とお父様は頷いてくれた。ついでにエジーラ様に精霊のことを教えてくれるようにお願いする。


 これで少しは、前進したかな。それはやってみなきゃ分からないけど……ちょっとだけそうだよね、て思える。


 ――騎士棟へは明日にまた迎えに来てくれるって。レーバレンス様を連れて最終的に魔法剣を使うものを決めるらしいから私も頑張らなきゃいけないらしい。窮屈じゃなくなるけど……仕事も窮屈だと私は思うな。


 じゃあ、明日ねって――別れ際にノルアを抱っこして手を振らせてみたら苦笑いされた。可愛いのに……そんな帰る二人を見て笑うのはエジーラ様。


「本当、楽しいわね」


 なんて言って私の髪を撫でる手はやっぱり暖かかった。





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