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ゆっくり目指しましょう

改訂いたしました。27.11.15

 だいたい同じ事を繰り返して毎日を過ごす。その毎日に新たな発見ができるのだから別につまらなくもないと思えるようになったし、考えなければけっこう面白い。


 城内のとある一室にて………今日も今日とてエジーラ様のウーウ、パーニャをお布団に私のリッスンのノルアを抱きまくらにしてお昼をすごす。


 なんだろうね?たぶん、7歳になってから色々と物騒だったりしていたから気を張っていたせいかね?なんだかここはゆっくり出来る空間だからついついこう………パーニャを見ていると眠くなるんだよねー。んでもってノルアを抱いたらこれがまた至福でっ!


 ころんと横になったらいつの間にか寝ちゃってました!て言うのが続いていますよ!目覚めたあと、エジーラ様の笑顔が眩しいです!いつも起きたときは隣にいてくれるからこっちも笑顔です!にへら~。


 ここ数週間のおかげでエジーラ様との仲も良くなったよ!最初は畏まって「エジーラ魔法師様」なんて呼んでいたら拗ねられちゃったからね。エジーラ様で妥協していただきました。握手も交わしたよ!でも最近は母ポジション―――いや、お姉さんポジションだね。


 こうやってちょっと距離を置きつつも年の離れた妹を心配する姉。接し方がそれに近いね。問題ない。むしろ楽しいしギスギスするより嬉しいから。のんびりは素敵だよ!


 そんなのんびりもたまにお父様が一人で阿鼻叫喚になる。すごいよねー。一人でだよ。ひ・と・り・でね?逢えなくて淋しかったって言うけど私はエジーラ様やノルアもパーニャ(こっちは女の子)がいるしウハウハで実はそんなに………と、思わせるとお父様が酷いことになるんで、ちょっと寂しそうに迎えています。ごめんね、親不孝ものでっ。


 まだまだ、教会と他国の干渉とか収まっていないのだけど教会の方は縛り上げているからもう少し頑張ればっ!て拳を握っておられます。縛り上げるってどういう意味なんだろうね?もう少しっていつだろう?年単位の話がもう少しで終わるってどういう事なんだろうね。


 まあ、たまにこう―――仕事の疲れだよね。すごい発言が混じっているんだよ。エジーラ様と一緒に苦笑いをしているのだけどたぶんお父様は気づいて………いるのかな?わかりません。


 それから一通り家族のお話しをして帰っていく。この帰るときも一苦労でね。てか狙っているのかウィル様が迎えに来ないと帰りません。そんでもってウィル様とエジーラ様を弄らなきゃ帰る気配すらないよ。私も楽しいからいいけどさ!


 まだ三回ぐらいしか来てないけど、お父様がくるとエジーラ様がちょっとだけそわそわしているから効果は抜群だと思うよ!お父様、いい仕事しているよね!


 そんな私はただいま分厚い本を両手ににらめっこ中。まさか―――薬草にこんな落とし穴があったなんて誰が考えていましたかっ。てか私がそれを危惧しなかったんだけどね!


「大丈夫よクフィーちゃん。本物はちゃんと色がちょっとだけ違うだけよ?」


「エジーラ様―――ですから、私にはその色がわからないのです」


「あ。そう、だったわね。でも、こっちの方がなんとなく濃いのではないかしら?」


「………………なんとなく、なだけです」


「そ、そうなの?」


 はい。目の前に2種類の草が3つほどで束になって左右に置かれています。2つとも、なぜか同じ形でタンポポの葉っぱ見たいにちょっと長くて葉がギザギザしている草。左が濃いとエジーラ様が言うけど、私には両方とも黒っぽい物にしか見えない。まっ緑なのかな?


 右に置かれているのは一般的に使われる傷薬の薬草、キズナオ草。名前は即座に突っ込んだよ。まんまじゃん!て。うっかり手の甲でなんでやねんって突っ込んだ。エジーラ様が首を傾げたのは言うまでもありませんっ。


 もう1つの左に置いてある草はこれまた突っ込みたくなるドクデス草。名前から名乗り出ている。自己主張が激しすぎやしませんか?だからこんなに黒っぽく見えちゃうんだよっ。


 もう一度言います。どちらも黒っぽく濃さで言うとほぼ同じ。形もタンポポの葉っぱ。これも同じで難関にぶち当たっています。この2つを間違えたらとんでもない事はわかりきってますよ、さすがに。名前からしてそれは分かる。


 しかし―――どっちがどっちなのか見た目がわからない私には医学に含まれる調合ができなくなる。だって、肝心のこの2つの見分けがつかないのだから………これは、ヤバイでしょ。これができなきゃ本末転倒だよっ!魔学医なんて夢のまた夢っ。遠い夢になってしまうではないですかっ。


「私から見るとドクデス草はこういう葉の繊維が網目で、キズナオ草より色が深い緑でまがまがしいのだけど………葉の表面にある繊維は見えるの?」


「繊維?………あ、なんとか!」


「じゃあ、キズナオ草は見える?」


「こっちは………丸、ですか?でもドクデス草とあまり形が変わらないのですが………」


「え?ドクデス草の方が少し角張っているでしょう?」


「え?そうですか?」


 ………………………そして、沈黙。確認してみたけどそこまで綺麗に繊維が私に見えると言えないので、繊維で見比べよう作戦はあえなく失敗した。


 初っぱなで引っ掛かるなんて思いもよらなかったよ………エジーラ様は毎日これを見ているから~て。親切に教えてくれるんだけどさ。なんだろうね。他に見分けはないのでしょうか?


 引っくり返してみてもどこか違いはないか探してみる。お互いに頭を付き合わせてここの繊維がどうのこうの。じゃあここの枝分かれが―――いやいやわかりませんて。


 重さならとか持ってもそんな草が重いとか聞いたこともない。もちろん、この2つを持ってみても重さなんて一緒としか思いませんでしたよ。エジーラ様もです。微量で違ったとしてもこの確認は駄目だと間違いなく思うよ。私、計量器ではないんで。


 じゃあ葉の裏とか違うかも………?いえいえ。一緒ですから。どことなく色が―――なんて言うけど私には一緒なんですって。どうしたもんか。


 いっそ中身で………なんて言ってみたらそりゃ中身の色は違うから分かるよ、と言われてしまいました。そうなの?と思っていたら触らないことを前提に目の前で千切ってくださいました。ぷしゃっとな………


 おう。葉が薄いくせにキズナオ草はキラキラとしながらポタポタって音を弾かせながら用意された器に溜まる。そういえば調合に使われる薬草って魔力があったんだったな、なんて言葉を脳裏に掠めて次はドクデス草。こっちはゆっくりと雫になってもう一つの器にぽたり。こっちはローションタイプかな。キラキラしてますね。みんな輝いています。


「ね?キズナオ草が水のような透明で、ドクデス草が草の緑色なの」


「………あの、ですね」


「ん?どうしたの?あ、もしかしてドクデス草を千切ったときに飛んじゃったかしら!?」


「いえ、それは大丈夫です」


 そうじゃなくて、別の問題なんです。あわあわしてて美人さんだからなんでも許せちゃうけど、ちょっと落ち着きましょう。今、どうしようか悩んでいるんで。


 実はエジーラ様と一緒にルームシェアみたいな事をしているんだけど、あまりお互いの事情は干渉しあってない。すごい能力を秘めているんだろうな、ぐらいしか思っていません。知りすぎて巻き込まれたら大変だから、と互いに詮索や知っても黙秘することで決めたのだ。その結果がエジーラ様とちょっと口調を崩せるまで親密になれたんだけど………


 私は白黒の世界しか目に映らない、としか言っていない。その………魔力が見えるってあまり言わない方がいいってレーバレンス様に言われたから。その魔力が見える事はどんなに他と違うのか分かるだろう?なんて言われたら、ねー?レーバレンス様が最近、怖いです。


 レーバレンス様が付け足してくれたんだけど、魔素も集めれば光って見えると言うことは魔素の塊である精霊も見えるに等しいんだって。『かも』でも『もしかしたら』でもそれは教会にとってちょっとした大騒ぎになる。可能性があるならそれにすがる者、求める者、奪う者は人間の性だ、って言われたら勝手な行動は出来ません。


 だから無闇に言うなよ?と頭を鷲掴みにして言わなくてもいいと思うんだ!恐怖で頷かせられたと言っても過言ではないよっ!


 しかし、エジーラ様に隠し事はあまり意味がないような気がするんだよね。エジーラ様ご本人からここから出る気はないっ、とすっぱりばっさり。それはもう綺麗な笑顔で言ってくれちゃったからね?ふざけてウィル様が出しくれると言ったら―――なんて聞いたら「ウィルはそんな人じゃないのよ」なんてまた嬉しそうに言われたらねー。ごちそうさまでした。


 とにかく、エジーラ様はここから出ないんだよね。そんでもってここには限られた人しか来ない。別に言ってもいいんじゃない?と思う。でも後からレーバレンス様のアイアンクローだけは受けたくない………


「クフィーちゃん、大丈夫?ポメアちゃんを呼ぼうか?」


「大丈夫です。あの、エジーラ様。私―――」


 ノルアが駆け上ってきましたー。君、私は木ではない。つまり喋るなと言うことかい?わざわざ私の頬をぺちぺちと叩かなくても、いいのだよ?もしかしてノルアはレーバレンス様の使いなのではっ!?


「なにか言おうとしたみたいだけど―――悩んでいる時は、その悩みを一度、忘れなさい」


「え?………忘れるんですか?」


「そう。絶対に答えを出さなくてはいけない悩みなら忘れられなくてまた悩むわ。けど、そうでないものはそのまま忘れちゃうのよ。現実から逃げているとも取れるけど、深く悩む時はどうしても思い出して答えを出さなくてはならない。けどね、少し忘れて別のことをやるでしょう?また同じ悩みを思い出した時、その時の気持ちってさっきより少し違う気持ちがよぎるのよ」


 ほら、今は言おうと思う?なんて聞かれてちょっと考えてみたらエジーラ様は気にしてないように私を見ている。その間にノルアが頬ずりをしてくれるので、意識が別のところに向いてしまっている。じゃあ別に今言う必要なんて、ないんじゃない?て答えが出てきた。


 そう言えば間を空けていたら結局はいっかー、ておざなりにしていたような気がする。多少は忘れちゃ駄目な事もあったけどね。うん。私、こんなゆったりしているところで気を張りすぎだよ。


「なんでもありませんでした」


「そっか。じゃあ、この薬草なんどけど………見た目だけで分かるように、もう少し観察してみましょう」


「それなんですけど、別に触れるのはいいですよね?」


「ドクデス草の中身さえ、触れなければね」


「あの、この葉に含まれる水が魔力を持っていますけど、これを魔力操作で触れたら違いってあるんですか?」


「うーん………クフィーちゃんの魔力操作の自信はどうなのかしら?」


「若魔法師では、合格をいただきました」


「じゃあ動かすことは出来る範囲なのね。それぐらいならクフィーちゃん、やってみましょうか」


 はいどうぞ、と渡されたのはキズナオ草。たぶん。手のひらに乗せられてやってみようなんて言われたらやるしかない。


 そう言えばノルアとかパーニャとか………あとキャロラリンはちょっと論外かな。そうそうウパカラマのメイとかヒッジメィとか私、色々な動物に触れてきたけど私の魔力は驚かないんだね。まあ人間も触っただけで魔力が多いねーて言われるだけで驚かないけど。


 動物が触れる状態で魔力操作しても大丈夫なのかな?ノルアを見ても………てか頭に乗っかっちゃったみたいだから見えないのだけどね。キズナオ草みたら聞いてみよう。今はこっちに集中―――


 今までは手のひらで感じていたから指先で魔力を感じるように集中を………ええと、なんか暖かいかな。ぽわ~んて感じ?じっくりゆっくり広がって伝わると言えばいいのかな。


「はい、次はこっちね」


 今度はドクデス草―――こっちはなんと言うか刺々しいかな?ぽわ~んじゃないね。なんというか違うけど脈打つ感じ。じわっ、じわっ、て。


「どんな感じだったかしら?」


「キズナオ草が優しい魔力で、ドクデス草が怖い魔力です」


「ふふふ。そっか。それが分かればじゅうぶんかな。ところで今クフィーちゃんがやった行動は魔力操作ではないのだけど………知っていたかしら?」


「え?魔力操作ではないのですか?」


「正確には『魔力感知』よ。触れて魔力を干渉させるからみんなまとめて『魔力操作』って呼んでいるだけなの。魔力操作でもあっているのだけど、意識を向けただけで操作するように魔力を操っていないでしょう?でもみんな魔力操作って教えるわ。教本に書いてあるし雑学はそこまで教えるものではないからね。それに、これはちょっとした悪戯なの。最後まで読まないと見習い魔法師の昇格試験を満点に取れない仕組みよ」


 魔法師が意地悪ばっかりのイメージが出来上がりそうです。


「では私は満点を目指します」


「数年後の試験結果が楽しみになるわ」


 そうか。なら私も6年後ぐらい?の見習い試験を頑張りますかね。魔力感知をやれば見分けはつけれるみたいだし?ちょっとは希望が持てたかな。


 因みに魔力感知、魔力操作の次は魔力連鎖。そして魔力解放だそうです。なにそれ聞いたことないよ。て顔をすると笑われちゃいました。まだ若魔法師のなりたてだもんっ。あ、また笑われた!むー。


 魔力連鎖は数ヵ所で魔力操作を行うことを言うらしいよ。魔法師になるための最後の試験には模擬戦があるから、複数の魔法を放てると勝ちやすいんだって。


 魔力解放は身体強化だった。魔法師は結界だけじゃ守れない時もあるから、身体強化で少しでも防御を高めるために解放も出来なきゃ魔法師になれないらしい。でも、解放しすぎると【重圧】になってしまうし、下手をすると体に負担をさせてしまうのでそこの制御も大変なんだって。道のりがずいぶん長いね。


 なんでこんなに長くするのか聞いてみたら、魔力暴走を少しでもさせないためなんだって。長く魔法師の道のりを伸ばすことによって経験が増すからそれなりの対処もできるし、自分の強味、弱味がわかるでしょう?とのことです。確かに長くやっているとなんで自分はできないんだろうって考えるよね。それに気づけたら成長するよ、って言いたいのだろう、魔法師は。


「でも、私に言ってもいいんですか?」


「言いと思うわ。聞いただけだもの。よくて筆記試験が合格するだけよね?実践は積み重ねてこそ得られるものだからクフィーちゃんがいくら魔力が多いからって何もできなくては魔法師になれません」


「エジーラ様が意地悪です」


「でも、魔法師になるのでしょう?だからお勉強もしている。私が育てて魔法師になってくれたら嬉しいわ」


「じゃあ、いっぱいエジーラ様から教わりますからね?覚悟してください」


「いいわよー。クフィーちゃんが来てから毎日が楽しいもの。教えられることがあるなら、私が教えてあげるわ。その前に薬草の見分け方ですけど」


 おう。それは言っちゃいけないよ!今一番の難問を当てられて項垂れたのはしょうがないよね?次に出てきたビー玉みたいな小さい結晶を見分けようね、って言うけどこれまた白っぽい石でわかるわけありません!!


 さっそく根をあげそうになったけどポメアのご飯ですよのおかげで一時休戦できたけどね!!よし、これはお昼に頑張りましょーね!!ささ!エジーラ様ご飯にしましょう!またまだ時間はありますからー!




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