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レーバレンスの憂鬱

誤字等を修正いたしました。27.4.3

 

 とりあえず、言いたいことがたくさんある。なんで俺がハゲの後釜をしなきゃならないんだ。


 王宮魔術師になってもう7年くらい。『創成の黒魔術師』と言われてからもうそんなに経つのか。


 この呼び名はあまり好きではない。よくからかわれてうんざりするからだ。


 なにがお前の髪と瞳は黒っぽいから黒魔術師なんだ。安直すぎる。考えた奴は誰なのかを問い正したい。私の髪と瞳は藍色だ。


 短く息を吐いて落ち着かせる。しかし、考える事が別のものに変わるだけであまり落ち着けなかった。まだ出来上がっていない魔法書の製作が残っているのに………………


 王命とかふざけてる。こんな時に使わないでほしい。俺には使わないと言うから宮廷魔術師に入ったのに。


 ため息を吐き出して俺は鬱憤を吹き飛ばす。こうでもしないと溜まっていく一方だ。


 まあ、変わりに面白いものが見られたからいいとしよう。そうする事にする。


 偶然が重なってグレストフの娘が城にきた。本来なら、例外を除いてあり得ない事だ。


 なんでも魔力が多すぎるから制御魔法具を作ってくれと言う。確かに例外だ。その例外をなぜ今持ってくるのか、腹立たしい。


 ハゲに言ってから俺に言うのなら手間が省けただろう?なんて俺は嬉しくない。この時間の穴埋めを誰がやると思ってる。


 始め聞いているとまた親馬鹿でも始まったのかと思っていたのだがな。グレストフもなんでまたここまで家族愛がひどいのか………私に語るな。鬱陶しい。


 娘をロノウィスに任せて聞き出すのに時間がかかる。早く本題に入ってくれと、と思う。


 もうこの人とも五年となるのか………………気づけば隣にいるような存在だ。この性格は天性のものか。


 俺とグレストフとは10も歳が離れている。出会いは俺が魔法棟に初めて足を踏み入れた時だ。もともと俺も魔力量が少し多い。そのためにすでにここに来る事は決まっていた。抵抗はない。


 どうせつまらないだろうと思ってもいた。孤立するだろうとも思っていた。


 7の認定式が終われば即座に城の魔法院に入れられた時から表情が作れなくなったからだ。回りに合わせる事はもう出来ない。


 そんな中、最初に出会ったのはグレストフ。当時25の若い魔法師。


 伯爵家であるにも関わらず、同じ爵位までなら気安く話しかけてくる人だ。それは今でも変わらない。魔法棟には平民もいるからそう言う差別はしないようにしているらしい。


 とくに俺は笑わない、と言う無表情にグレストフが気にかけてよく面倒を見てくれた。面倒を見てくれていたとはまったく思ってもいないが。


 嫌な顔も何一つ見せないでよく俺の隣で笑っていたものだ。


 3年も経てば俺と10人の魔法師が王に認められ、グレストフが十進魔法師となった。


 十進魔法師とは、接近戦に向いていない魔法師が進んで捨て身へと投じる10人の姿を見た王が賞賛と十進魔法師と言う魔法師で構成された近衛部隊のことだ。今ではもっとも王に尽くす魔法師が認められたものに送られた称号だろう。


 そしてそれとは別枠で王宮魔術師、を俺はみなに押し付けられたがな………魔法具が作れるからってなんでまたこんな重っ苦しい称号を背をわなければならないんだ。それなら私も十進魔法師と名乗り、後は他の9人に押し付けたい。陛下を守れるは別だがな。


 そもそも魔法と魔術を別けたのは誰だ?要らぬことを………


「それで?早くも暴走していたがどうするんだ?まだ3つにはなっていないんだろ」


「そこが問題だ。魔力がまだ馴染んでいない体を無理矢理に抑えるとどうなる事か………」


「先程のも凄かったですよね。浮くだけでよかったです」


「俺はなにか投げつけられたがな」


「それは自業自得と言うんではありませんか?それをクフィーちゃんが感じ取ったのでしょう」


「クフィーちゃん?ロノウィス、私は許してないよ」


「………………別に構わないだろ」


 突っ込めば大変、素晴らしい笑顔で否定してきた。しかも長い話が始まったようだ。


 娘がどれほどまで可愛くてどんな婿を迎えるだとか、心底どうでもいい。頼むから他へ渡ってほしいものだ。


 しかしながら真っ向から受けてしまった(受けさせられた)ロノウィスは聞くしかなく、時間だけが過ぎていく。




 誰かまともな奴はいないのか。




 そう願うも、何も起こらない現実にげんなりと顔を少し歪めた。


「仕事が残っているんだ。帰れ」


「レーバレンスはクフィーを見捨てると言うのかい?まさか、こんな可愛い私の娘を、見捨てると言うのかい?」


「同じ事を二度言うな。あんた、本当に年上か」


「今、年齢は関係ない。レーバレンスの意識の問題だ」


「俺はあんたの思慮の問題だと思う」


 もういい。どうせこのまま押し問答みたいになるくらいなら自分からさっさと終わらせた方が早い。


 まだ文句を言っているグレストフをロノウィスに押し付けて早々に可愛い愛娘とやらに近づく。


 まず、魔力がどれくらいなのかを大まかにみないと作れるはずがない。作るのにどれだけ時間がかかると思っているんだ。私は魔法師より魔術師だぞ。


 白で丸いごわごわした物を抱えている小さな物体に近づいて、まず頭に触れた。


 魔力の一番たまりやすい場所は心臓だが、これだけ幼ければどこにあるかわからない。一番濃いところを少し押さえるだけで暴走は抑えられるだろう。


「んー…………う?」


「………………寝てろ」


 頼むから泣くなよ?気づいていないグレストフが後ろにいるんだ。騒ぎだすに決まってる。


 幸いか、まだ眠ってくれるらしい。静かに触っていたらそのまま瞼を下ろしてくれた。助かったと言っておこう。


 それにしても気になるのが魔力の流れだな。頭に集中しているような気がする。


「グレストフ」


「まさかっ。クフィーになにかあったりしないだろうな!?」


「知らん。そんな事よりこいつはなにか頭に病気でも患っているのか?」


「………………馬鹿にしてるのか?」


「どうしてそうなる。お前も頭を触れてみろ」


 場所を譲ってやれば慌てるようにグレストフが小さいのに触れた。魔力を感じとるなら誰でも出来ることだ。すぐに俺の言いたい事がわかったのか、思案顔で首をひねり出した。お前、さっきからそいつを乗せていただろうが………なぜ気づかない。


 ついでにロノウィスとドトイルにも触らせる。グレストフが何か言っているが、二人で考えるよりここは四人で考えた方が早いだろう。どうせ魔法棟の中で知れわたっているんだ。問題ない。


「なんか、足も触ってみたのですが随分と頭の方に魔力が溜まっているようですね?」


「ドトイル。お前は私の許可なくどこを触っているんだ?」


「え、えと………すみません」


「お前、どんだけ娘が好きなんだ」


「言葉では言い表せないほど。あえて言うなら目にいれても痛くない」


「これが十進魔法師の実態か」


「でも、グレストフ様の実力は誰もが認めていますからね」


 そうだな。誰もが認める器用な奴なんだ。高い位置にいると言うのに、憎めない奴。


「あ。そう言えば前に三回ほど気絶したと乳母が慌てて報告しに来たな」


「見ていないのか?それに気絶?昼寝の間違いだろう」


「三児の父なのですから、それくらいは見分けつきますよね?」


「………………実は、長女のリアディリアが産まれた時、私たちがあまりにも可愛がりすぎてな。乳母に叱られてクフィーの場合はあまり遇わせてもらっていない。それに示し会わせたかのようにここ最近は魔物が騒がしかったからな。伝聞だけだ」


 今、昨日きた長女があんなにもデカイ顔で歩いていた、と言う噂が合致した事はない。そうか。可愛さばかりに甘やかしすぎて鼻高になっていたのか。噂って侮れないな。


 多分、同じ事を二人も思ったらしい。なんとも奇妙なものでも見るような顔でグレストフを凝視してた。気持ちはわかる。


 後半だけなら同意してやろうと思ったがまさかそんな理由で娘を知らなかったとは。言葉を失うには十分だったな。


「見てもらったんだろう?どうだったんだ」


「それが専属の医師に念入りに調べてもらったんだが異常なし、の一言で終わりだ。最後から半年経っているが気絶はしていない」


「魔法具を作る前にハゲ――――ヴィグマン様にみてもらった方がいいな」


「レーバレンス、本音が出ているぞ。やはり先にヴィグマン様からだったか。魔法具造りの魔術師殿がいるから手間が省けると思っていたんだがな」


「でも、医学がダメなら魔学も診てもらった方がいいんじゃないですか?もし、の場合を考えて」


 そうと言うが、あのハゲはあと最低で一ヶ月は戻ることができないんだがな。付け加えるように言えばまるで俺が悪いとでも言うように胸ぐらを捕まれた。剣幕な顔でなにやら脅し始めたが右から左に流しておこう。


 はぁ。書類はまだ残っているんだ。早く解放してくれないか?







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