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うやむやな午前の授業

改訂いたしました。27.8.13

 なぜか、そうっ!なぜか!『野獣の調教師』があらぬ方向へ進んでいき、私は魔法院にいても浮いておりました。げせぬ………


 酷いのは教師役で来てくれる上級魔法師。来て挨拶もそこそこに私を弄りだしたのが原因です。なんで授業をほっぽってまでウーウの事を喋らなければならないのかっ!!魔法と関係ないよ!!


 こんな部屋で上級魔法師が聞いてくるのだから―――そりゃあここにいる今は数が少なくなった生徒である若魔法師がなんだと聞くのは当たり前だよね。てかなんでこんなところでそれを聞こうとするかなあ!?目立ってしょうがない。


 しかし、残念な事に私はウーウの怒りを静めた覚えはないのだ!ほとんど寝ぼけていたので、上級魔法師が求めている立派な答えは持ち合わせていない。なので、本当のことを言うとかなり落ち込んで渋々って言うあからさまな態度で授業に戻るのです。みなさま、私は悪くないと思うんだ。本当に知らないんだよ!隠している訳ではないから!!独り占めとかそんなもんもないから!!


 まあ、上級魔法師のおかげで私に集まってきていた視線は前の方に戻ったんだけどね。ここにいるのは何かと気になったりする貴族がいないのか、誰かがこっそり意地悪な物言いで囁いている声はしない。みんな忙しいらしいからね。


 いつぞやか聞いたような気がするけど、もう一度エリーに聞けば同じことを繰り返したくない貴族がいないんでしょ、ととても辛辣なお言葉。へー、で返してそれ以上は気にしないでおく。


 久しぶりのような気がする授業は、上級魔法師が監視の下、それぞれ黙読する形だった。やり方がそれぞれ違うからたまに困惑しちゃうんだよね。


 今日は光の日。つまりは金曜日。それはどっかに放り投げておく事にして、光属性なのだよ!なんと、ジジルは光属性らしいので光の日はかなり力をいれて授業に取り組んでいるらしい。そりゃビックリだ。まさかの光属性。ヴィグマンお爺ちゃんしかよぎらない新事実っ。


 そういえばそれぞれの属性の最高峰って誰なんだろう?お父様は2つ持ちだけどどっちに入るんだか。十進魔法師なんだからたぶんこの人たちはそれぞれすごいと思うけど………確か、陛下を最優先で守ることを誓った10人、だっけ?誰かがそんなことを言っていたような気がするんだけど誰だったかな。


 当たり前に、彼らは一人前の魔法師と呼ばれる存在。うーん………誰が強いとか拘りとかあるのかな?王宮筆頭ってやっぱり一番って事でしょう?そうなるとお父様とレーバレンス様。お父様は2つ持ち。はて、どっちだろう。そしてレーバレンス様は闇だけど………魔術師って魔法具専門だよね?そう考えると属性が関係ないような気がする。うーん………聞いちゃえ。


「セランダ上級魔法師様、少しよろしいですか?」


「なんだろうか、クロムフィーア若魔法師」


 静まっている部屋で私の声と彼―――セランダ上級魔法師の声がよく響く。


 彼はなかなか細身の体型で、肩幅も狭くて骨なのか角が尖って見える。また、その顔も体に拍車をかけるようなガリッとした頬がちょっと怖かったりするんだよね。髪もまた遠くからだと白に見えてもう力尽きそうな廃人に見えてしまう。近づいてきてくれたおかげで白の髪じゃなくて薄いグレーとわかったけど、どうしても白と言う表現しか思えない。


 薄いグレーならば………血色をよくするために卵色で!アトラナのような水色のような気がするけど、卵色で!!近づいたおかげで分かる目の下に隈を発見しましたが、あえてそこはスルーさせてください!!代わりにどうした?と言うように心配してくれた瞳は濃いグレー!ここでも血色をよくするために暖色系の朱色なんていかがでしょうか!?なんだか瞳にインパクトが強くなってしまったけど、血色をよくするためにはっ―――逆に怖いような………まあ、いいや。


 この人は生きている。大丈夫………なにかの拍子に倒れたりしないし、げっそりとした顔でもちゃんと生気は感じられるっ!


「少し関係のない話なのですが、よろしいですか?」


「いいですよ。人は少ないですし、わからなければ聞く行為は教えがいがあります」


「それでは―――ここに滞在する魔法師の中でそれぞれ属性の代表格の方を教えてくださいませんか?なんだか気になってしまいました」


「いいですよ。自国の優秀な魔法師を知り、それを目指す方もいますからね。せっかくですからみなで考えてみましょう」


 よかった。この人は見た目と違って言葉遣いとか生きてる人と同じだ。なんか言い方がかなり酷いけど、本当にガリッとした顔は怖いのである。片手をあげて注目を集めたおかげでローブが捲れたんだけどね………やっぱり肩幅ほどの厚みは見えないし、筋肉がつまっているようでもない。むしろ衣服が厚手のせいか、完璧にセランダ上級魔法師の体型を捉えることは難しいけどやっぱりどうしても細く見えてしまう。


「まず、【火】から行こう。皆が知っている人でいいから火属性ならこの人がすごい!と言うのをあげてみようか」


 そして何事もないように聞き出すセランダ上級魔法師………いや、本人に至っては何事もないのは当たり前なんだけどね。なんだか私だけ疲れてしまったようだ!


 で、みんなであげていく【火】の代表格に上がる人と言うと―――お父様が出てきました。火を出しているところを見たことがないので何気に納得がいかない。他にはゴーデ四進魔法師様が出てきた。そうか、【火】の人なんだね。じゃっかん顔が思い出せないけど十進魔法師になるぐらいなのだからすごいのだろう………すごいんだよね?


 あと、バーナンガ上級魔法師とケティア魔法師の名が出てきましたよ。2人とも私の知らない人。実力はやはりあるらしい。一人は女性だよね?そう言えば女性の魔法師に出くわさないかも。なんでかな?


「私の見解ではグレストフ一進魔法師殿―――と言いたいところだけどケティア魔法師かな。グレストフ一進魔法師殿はどうも魔力の力押しが目立つからね。それに引き換えケティア魔法師は【火】でありながら実に細かい扱いがうまい」


 なるほどなるほど。いつか逢えたらいいなー。


 じゃあ、次に行ってみよう~、と言うことで【水】。ここでお父様が外れたらもう名前が上がることはない。ここはちょっとだけでも王宮筆頭魔法師の意地を見せてほしいな。


 とか思った矢先でお父様の名前がでた。でもエモール先生の名前も出てしまった!エモール先生と言えば私に魔法を教えてくれて人。この人の属性は知っていたけど、まさか皆が口を揃えてエモール先生の名前を出すほどすごい人だとは………お父様、まだ決まっていないけど形無しだね。それとなぜか私の名前も上がってしまった。これはジジルとエリーによって紹介される。もちろん将来的に、と言う言葉をつけて………


「もはやここはグレストフ一進魔法師殿だろうね。【火】ではケティア魔法師に劣るかな?と思わせるけど【水】は負けないと思うよ。あれほど威力は劣らず最上位まで扱えるのはエモール九進魔法師もすごいけど、あの人は優しいからな………」


「優しいとは魔法に関係するのですか?」


「違いますよ。あまりこう言うのをまだ年端も満たない子どもに教えるのはどうかと思いますが………早いか遅いかの違いか………魔法師の優しいから、と言う理由はですね………自分の手じゃない、魔法で人を殺せるか、殺せないかで優しさが決まります。このままだとグレストフ一進魔法師殿が悪者になってしまうが、違うんだ。確かに出来るか出来ないかを問われるが、出来たからと言ってその人が凄いわけではない。その魔法を最大限に使えるかだ。グレストフ一進魔法師殿は人さえも、と覚悟があるから一進魔法師………陛下を守るための近衛となっている。逆にエモール九進魔法師も同じ立場だけど、魔法で傷を作る事を嫌う人でね………だから優しいと言うんだ」


 それは………なんかお父様のフォローが微妙の気がするが、まあいいか。魔法の使い方の大切さとか教えてくれたし………なんだかなぁ。喜びたいけどストレートすぎる言葉にうまく表現ができない。それに、さっきのはなかったとでも言うように私が褒められた。将来的に。すり替えられた感が否めない。


 でもなんかなー………魔力が高いなら、とか。けっこう推してくるし、最上位もすぐそこだったよな?なんて騎士棟でやってしまった魔法剣を言っているように聞こえる。駄目だね、気にしちゃうなー。


 それから【風】は誰だろう、と言うことでンゼットォラ様の名前が出てきてなんだか気分が滅入った。瞬時にあのマッチョポーズを思い浮かべてしまった私はトラウマだよ………できれば永遠に思い出したくない。でも、土じゃないんだ………なんだが意外だったな~。他にも名前がでたけどやっぱり知らない人の名前ばかりだったので気にしないことにした。名前だけ言われてもねぇ?顔と一致しないだろうからそんな人がいたな、って言うだけでいいと思う。


 で、【土】はなんかセランダ上級魔法師と同級生のペゲルと言う男の子。活発さが印象的で、髪はさっぱりした短さに濃い黒よりはなんだか葡萄の色のような渋めでしっかりとした感じ。目は逆に薄めグレーは色がしっかりした桜色なんかがいいんじゃないかな、と勝手に想像。色がわからないのだから想像するしかないよね。なかなか印象的だったから覚えていたよ。てか、ケヤンとよくいた子だったと思う。その言い合いが始まってしまった。


 名前が出てきたのはウィル様。これはペゲルが推している。しかし、勝負を受けたセランダ上級魔法師はエジーラ魔法師だった。うん、わからない。


 ペゲルが言うにはウィル様の土を扱う技術は多彩で固くも柔らかくも自由自在。範囲はウィル様が見える視界の全てと言う。私が思うに、ペゲルはなぜそこまで詳しいのか気になるんだけどね。ウィル様のプライバシーがないよ。


 かく言うセランダ上級魔法師が言うエジーラ魔法師もプライバシー0で披露された。見た目は見目麗しの綺麗な人で、土の事をよく知っている女性らしい。範囲は広くないかもしれないが、彼女が作り出した土はこの国になくてはならないほどの影響力があるらしく、城で栽培している最高の薬草などはエジーラ魔法師が作った土のおかけだと言う。それと彫刻を作らせるのもエジーラ魔法師の方が繊細らしい。


 ここまで言ってしまったらあれだよね。本人たちは今ごろくしゃみでもしているのではなかろうか。そしてよくペゲルは上級魔法師に対抗できるね。凄い。そして、決まらない。


 個人的にはそういうのは決まっていないと思うし、どちらかが違うわけではないと思うんだ。別にそれを明らかにしなくてはならない正当な議題でもないんだからさ。そんな拘らなくても………


「では、クロムフィーア若魔法師はどちらだと思いますか!?」


「そうだよ!言い出したのは君だよね!もちろんウィル様が凄いってわかってるだろ!決めてくれ!!」


 ………………いや、どっちでもいいって。


 でもそんな事を言えばまたえらい混乱が生むと言うか面倒になるんだろうね。これは発端を作ってしまった私が悪いのか………何て言おうかな。


「私からしてみればどちらも素敵な魔法師様です」


「それだと決まらないだろっ!」


「そうだ!言い出したのは君なのだから君が決めてもらおうか」


「―――あの、今さらかも知れませんが、別にお一人を決めなくてもいいではありませんか。確かに代表格はどなたどすか、と聞きましたが白黒をつけろといっておりません。私の好奇心でどんな人が各属性の代表になるのかな、と思っただけなのです。それに、見方など人それぞれではありませんか」


「しかしだな、君は代表格は誰だと言っただろう?ならばその属性の代表とも言える人を覚えておかなくては後々、自分の属性で師事してもらう方が遠ざかってしまうぞ」


 へー、そんな見方もあるんだ。でもその人に師事してもらうのは絶対ではないよね?


「先ほどから気になっていたのですが………」


「なんだ」


「セランダ上級魔法師様も、ペゲルさんも先ほどから魔法師の情報を漏洩されているのですが、よろしいのですか?」


「あ」


「っ―――しまった」


 あ、駄目なんだ。まあそりゃそうだよね。なんだかポロポロと流出しちゃったけどこれが敵国に知られればさっきの二人は弱点を探られやすい。まあ、敵国とかあるのか知らないけどさ、魔法師として色々やっているのでしょう?属性だけならまだいいかもしれないけどどれだけの範囲とか固さが調節できるとか、ね?しまいには薬草を作るために提供された土が最高に言いとか言われたら狙われるような気がするよ?


 果たしてこの国は狙われているのか、国同士で小競り合いをしているのか………まったくわからないのだけだね。


 私の言いたいことを理解してくれたセランダ上級魔法師は唇を噛み締めてちゃんと駄目な事を教えてくれた。魔法師の個人情報は厳密されるものであり、簡単に漏洩してはならないこと。加えて教えられてものも、無闇にそれを他者へ流さないことを約束させられた。


 なんだかねー。私が発端だけあって、やるせない。しかも、ちょうど鐘がなると言う微妙なタイミングだ。まるでここで打ち止めにしろ!とでも言うような鐘がなる。小さくチリリンとなる音なのにね。無情にも、その音がなかなかに響いていく。


 最後の念押しをしてセランダ上級魔法師は早々に去っていった。対抗していたペゲルは苦虫を潰したような顔でケヤンと一緒に出ていった。間違いなくご飯だろう。ご飯を思い出すと、私もお腹が空いてくると言うね!ジジル、エリー!ご飯を食べに行こう!!


「クフィーちゃんて、けっこう切り替え早いよね!また貴族の人が少なくなっててよかったね。今のだったら絶対になにか言ってたよ」


「まさかあのようになるとは思いませんでしたね。セランダ上級魔法師様はなんだか他の方と少し違うような気がします」


「あ、分かる。私、あの人の授業は今日で3回目なんだけど、いつもまともな授業をしてなかったよ。だからけっこう覚えてる」


「前はどんな事をしたんですか?」


「声をかけたら授業は別のものになるよ。だから貴族の人がわざと質問してそれにかかりっきりで時間を潰していくの。ええとね、さっきみたいに魔法師はなんなのか語りだしたり。騎士と魔法師はどっちが優れているか、とか。魔法師の存在意義とか」


「まさか、魔法に優しいとかあるって思わなかったよね」


「本当ですね。ですがあの言い方では父は人殺しです。酷い言い方でした」


「んー、まあけっこう直球だったよね。ジジルは無視してたけど」


「え?」


「えーと、けっこう本に集中してたかな?」


 そんな首をかしげても可愛いだけですから!!と言うのを飲み込んで、私たちは笑いながら食堂に向かう。長い長い道のりがちらほらと。その中に私たち3人がノロノロと笑いながら向かう。


 どうでもいい情報だけど、あの受付の人は辞めさせられたんだって。貴族との揉め事はあれだけじゃなかったんだとか。そして新しく入った受付のお姉さんはおっとりした人なんだとか。見てみたい!けっこうどうでもいい情報だけど、この長い距離を歩くならどんなお話でも語っていないと沈黙が辛くなるからね。


 けど、ね。とっても便利な移動を持っている魔法師が私たちの行く手を阻むのです。風に乗って―――ニヤニヤしながらその人は私たちの前に現れた。そこの人、目立つから止めてください。





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