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急!障害物捕獲競馬 後編

改訂いたしました。27.8.12

 なにか獣が唸るような声が聞こえた―――気もすることもない。でも起きたばかりだからなんだか把握ができなくて………とりあえず、もう一度あのふかふかなお布団を………


 でも寄りかかったふかふかなお布団から強烈な低い音が聞こえる。なんだろ………「う」じゃなくてそれに濁点をつけるんだけど「ヴ」じゃないんだよ。生粋の「う゛」って聞こえる。面白いねー。


 さっきは可愛く「うーうー」て本当に可愛らしく鳴いていたのに………ああ、だからウーウって言うのかな。でもうるさいよこの「う゛ー」。お腹のところ?響くよ。よしよし。ちょっと元に戻ろうか。


「娘」


「うん?…………んー………」


 手触りは最高ですね。この滑らかさで起きるなんて至福じゃないか。でもなんだか中途半端に起こされたからか頭がスッキリとしない。誰に起こされたんだろう?知ってる声なんだけどなあ。


 そう言えばウーウにもうさぎのツボマッサージは効くのかな?とりあえず耳の辺りでもやってみようか?でもどの辺かわからないんだよね。項垂れるように覆い被さって………私はどこにいるのかな?まあいいや。耳はこの辺?わーどこ触ってもふかふかだよーっ!


「主?」


「もうちょっとー………」


 この素敵なお布団で寝かせてください。気持ちいいのです。この上に乗っても大丈夫かな?響く音はなんだかしぼんでいった気がする。でもまだ「うー」って鳴いてるね。どうどう。


「クロムフィーア?」


「ねむい………のー………」


 こう、触っていたいし。眠たいし。気持ちいいし。ふわふわだし。もこもこ。さらさら。ふかふか。つやつや。なんだかウーウっていいところ全部を備えているね。これ買えないかな?お布団として一家に一台。間違えた。一家に1匹………


「クフィー?」


「ぅうーんー…………」


 そう言えば誰と喋っているのかな、私。ああ、だんだんとウーウも「うー」とか可愛い声をあげてきたね。声が高いせいかそんなに響いてこないや。よしよーし。気持ちかろう気持ちかろう。今度は耳をやってあげようか。あれ、今やっているのってどこだっけ。


「起きる。頼む」


「………………あ!」


 そうだった!なんか競技していたんだった!!ガバッ!と起き出して地面に着地。どうやらウーウに雪崩れるようによしかかっていたらしい。手だけ頭にやっていたんだね。凄い絵面だ。


 慌てて起きたおかげかのし掛かっていたウーウはどすんどすん言わせながら少しだけ距離を取られました。なんだかじぃっとこっちを見ている気もしないけど、私としては声の主だろうアビグーア中隊長に視線を送る。


 逆光もあってその顔は黒く塗りつぶされて見えないけど、放っていた声はどこか呆れが含んでいた。いや、ごめんなさい。転た寝が実によくてですね。しかもお布団がすごく気持ちよくてですね、はい。次に進みましょうかっ!


 なんだか子馬ちゃんも起き出したのか、向こうでぷるぷると首を振りながら近づいてきた。顔を撫でてあげれば嬉しそうに擦りよってきてくれる。さて!どうしようか。次に行こうとか言っておきながらようやく回り始めた思考は問題点にたどり着く。色がわからないんだって。うん。起きたぞ。


「それ。青。当たり」


「え?」


「ウーウ。当たりだ」


 えーと、つまりこのウーウが当たりと言うことはこの子が青い瞳の子?チラリと再び眉毛カーテンを持ち上げて―――だからわからないんだってば。アビグーア中隊長を見る。頭が縦に動いたから頷いたんだよね?逆光で見えませんて。


 まあ、とりあえず当たりと言うなら乗っかろうじゃないか。でもね、またもや問題点に気づいてしまったのだよ!どうやって移動してもらえばいいのかね!?おいで~てやってみるが………来ませぬっ。その眉毛カーテンはちゃんと前が見える使用ですかっ!?


「呼べ。審査」


「あ、そうなんですか?えーと………」


「あれだ」


 あれと言われて指差す方は………ああ、うん。騎士棟に浮いている魔法師様がいらっしゃいますなあ。そしてその人なんだね。軽く見つめていたら来てくれちゃった。さすがです。


「さすが『野獣の調教師』だ。どうやって怒ったウーウを静められたんだ?」


「え?何かありました?すみません、寝ぼけていたので私にはわかりません………」


「なんと………『野獣の調教師』故か?是非に教えてもらおうと思っていたのにな………」


 いや、なんの事かさっぱりなんだけど?とりあえずこの子を見てくださいよ。青い瞳の子でしょうか?なんて促さないと『野獣の調教師』をずっと引きずりそうな勢いだった。


 案の定と言うかなんと言うか………青い瞳か確認しに来たわけでもなく、ただウーウの静め方を聞きに来ただけのような会話でウーウを、と言えば今気づきました!というような反応をしてくれたよこの人っ。もしあのまま流されていたらどうなっていたのかな?まあ、当たりだと言われたからそれでいいか。


 おかけでバリケードの騎士がわっ!と盛り上がった。なぜに。指笛まで聞こえる。そしてどこか涙ぐむ仕草をする人が見える。そう言えば耐えていたんだっけ、君たち。ごめん。次に進むよ!


 子馬ちゃんに跨がってー、苦戦しつつもなんとか乗れたよ!腕に力が入らなくて本当に頑張った!!やっぱり運動した方がいいね。今度からこっそりでも部屋で何かしよう。


 で―――いってみれば向こう側にドーベルが道を塞ぐように1匹、2匹…………凄いね!10匹いる!!あんなに均等に並んでいたら凛々しすぎて近づけないよ。いや、行くんだけどさ。とりあえず近づいて………まだお座りだね。近づいて………お座りだ。


「おかしい」


「何がですか?」


「ドーベル………動かない」


 うーん、まあ、たぶん私だよね。確か魔力を感知できるんだっけ?ウェルターさんところの牧場に行ったとき、確かそんな事を言っていたような気がする。でなんだっけ?警戒が高ぶったら襲われるんだっけ?あれ、じゃあ進んだらやばいよ。


「確かドーベルは魔力探知できるらしいですね。たぶん私の魔力に警戒しているのだと思うのですけど………」


「そうか。―――進もう」


 え、進むの?別にいいけど私は子馬ちゃんをまだ走らせられないよ?てか馬と犬だったらどっちの方が足が速いのですかね!?負けるよ。負けるしか思えない!!


「結界」


 あ。そうだった!魔法を使ってもいいんだった!!思わずアビグーア中隊長を見てしまったよ!忘れていました。そうと決まればやってみよう。ええ、とりあえず近づかなきゃ何時ぞやのエモール先生みたいに弾いちゃうから、大丈夫。私だって授業をしっかり受けてますから………受けると言うより覚えさせられてるだけなんだけどね。まだ本の知識だけだよ。エモール先生、ありがとうございます!


 まず、結界を張るとき―――お一人様であれば、魔素の量で結界の範囲を調節できればいい。では、複数の場合はと言うと、魔素も大事だけど認識も大事。この人たちを守るんだ~と思いながらやると、ちゃんと結界の中に入れます。あと自分の回りの人数とかちょっと範囲指定して考えてみるとか。エモール先生のはそんな認識がなかったからね。本当にごめんなさい。いや、先生が説明しないからああなっただけだよ。先生が悪い事にしておこうっと。


 で、もしイメージしにくいのであれば触れればいいそうです。あと、触れた方が確実に結界の中に入れるね。私はとりあえず、触れておこうかな。もしものために………弾き飛ばされたら目も当てられないもの。


 久しぶりに書く漢字。水余強固之壁斗也自身似覆意護濫(水よ強固の壁となり自身に覆い護らん)………相変わらずごちゃごちゃしているよねー。『覆い』とか『壁』や『護る』ってなんで難しい漢字を使っちゃったのかね。間違っていない事を祈って、と。


「集え―――」


 お。こっちだとすぐに発動するんだ。規模も考えずにやっちゃった感があるけど………まっ、いっか!なんだか広いような気も………するけど、安全を考えれば問題ないよ!


「クフィー………ちょっと、広くないか?」


「嬢ちゃんは凄い子だったのか?こんな大きい結界は初めてみるな」


「まだ入ったばかりだからな。さすがに魔法解禁はまずかったのかもしれん。さて、グレストフをどうやって黙らせようか………」


「なぜか隣から不穏な気配が放たれてきましたが、とりあえず嬢ちゃんそのままゴール目指して頑張れ!!」


 うん。大きいよね。目測で20メートクターは離れているはすのドーベルが弾かれているような様子で跳び跳ねちゃったからさ。うん。ごめん。そしてなんなくドーベルの包囲網は突破させてもらいました。はい。次はなんでしたっけ?


「次は同じ大きさの馬を引くのですが………まあ、嬢ちゃんはいいとしてアビグーア中隊長なら簡単ですね」


「なんだ、レジフォンはまだウーウと戦っているのか?」


「………まあ探すのは難しいって事ですよ」


 レジフォンって誰ですかね。まあいいや。とりあえず魔法を解除………は、ええと確か念じるんだっけ。終われ~―――おお!向こう側がしっかり見える!結界を張るとどうしても向こうって見えにくいからさ、困るんだよね。


 さてさて同じ子馬ちゃんサイズはー………野放しで佇んでいる馬に近寄って~。小さいから相棒はすぐに見つかった。アビグーア中隊長もその小さい子馬ちゃんの近くにいたウママンの手綱を握ったようだ。


 これに関してはただ引っ張るだけだそうなので、声をかけてあげたらぽこぽこと着いてきた。たまに子馬ちゃん同士じゃれあいながら進むので、落ちないかちょっと怖いです。でも大丈夫だったけどね!!


 そのままユリユア様とウォガー大隊長、それによくわからない上流騎士。あ、トールお兄様もゴール前で待っていてくれたんだ!そうしてようやく到達した瞬間にユリユア様に抱っこされてしまうんだがな!!おめでとう、と言われて私ははにかみながら頷いておく。


 じゃあ帰ろっか、とか実にばっさりと帰りの支度をして帰ったんだけどね。余韻に浸るとかはまったくない。そう言えばこれはなんの意味があったんだっけ?乗馬訓練にしてはなかなか凝っていたよね。


 帰り際では騎士見習いから始まり、こぞって『おめでとう』と言われてしまった。なんだかこんなに大人数で言われてしまったら照れてしまうではないか!!でもなんでですかね?『野獣の調教師』は伊達じゃねえな!て太鼓判を押されたのですが?ねえなんで?みんなもなんで頷いちゃったのよ?ウーウの時は凄かったって言われても私にはさっぱやわからないのだけど!?


 しかし、誰も教えてくれない悲しさっ!さっそうとユリユア様が歩くから止まってくれないし聞けないし!ユリユア様に聞いても「可愛かったぞ」としか返ってこない矛盾さっ!別にいいもんね!トールお兄様がいるから!!家に帰ってさっそく聞いてみた、ら


「怒ったウーウを宥めていたぞ。本当にどうやったんだ?」


「怒った………?まさか、私の寝相で怒ったんですか!?」


「いや、アビグーア中隊長様が蹴ったから怒ったんだ。ウーウは怒り出したら低い声を出して長い耳を鞭のように唸らせ尻で押し潰すように攻撃したり、普段は隠れて見えないが固い牙で噛みついたりするんだ。だけどクフィーが怒ったウーウに抱きついてしばらくしたら元に戻ったんだよな………抱きついただけなのか?」


「ええ?ウーウってそんな狂暴なのですか!?そう言えばなんだか低い唸り声のような音を聞いたような………?えーと………………………寝起きでしたから―――あまり覚えていません。あ、触ったりはしましたよ。あのウーウってすごく抱き心地がいいのです!家で飼えませんか?」


「………………父上に相談してくれ」


「あれ?トールお兄様、お疲れですか?」


「ああ、本当に疲れてしまったようだ」


 そんな、頭を抱えてふらふらといかないで下さいな。なんだか私が悪いみたいじゃないか。いや、悪いよ、ね。ウーウってあんなに狂暴だったのか………でもなんでヒップアタックが出来るんだろう?どすん、て言わせて動いていたからきっと重いだろうに。爪先でも潰すのかな?


 と、言うわけで最近は妙に博識になってきたポメアに聞いてみた。ウーウについて。そうしたらなぜかお叱りを受けました………ぬあぜっ!?しかもお母様まで呼ばれてしまった!?ええー?


 それからお夕飯までこんこんとお説教です。どうも、さっきのウーウの状態はかなり危険らしい。ウーウって集団行動するから、1匹が怒ったらつられて回りも怒り出して聞いた通りに攻撃してくるらしいですっ。トールお兄様!そこも詳しく教えてよっ。


 危ないどころじゃなかったのよ!と最後に締め括り、ウーウが欲しいな、なんて言えるはずもなく―――私のペットのおねだりは呆気なく幕を閉じました。ぬ、ヌイグルミで我慢するよっ。


 因みに今日のお父様は夜遅くに帰ってきたらしい。翌日、みんなと同じような言葉でたしなめられた。その中には寝顔を大衆に見られた!とかすごい私情が挟まっていたけど………ここは素直に聞いておくよ。朝食がなんだか味気なく思えるのはきっと、これ以上なにか言われる前に逃げようと素早く食べたのが原因だと思いたい。




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