仕返しだけど、なにか?
文中内の長さを表す意味
1センクター→1センチメートル
1メートクター→1メートル
1キロメートクター→1キロメートル
ミリ表記はこの世界には存在しない設定です。
誤字等を修正いたしました。27.4.3
「ドトイル………………お前って奴は―――」
「馬鹿だろ。赤ん坊に宝石とか。馬鹿だろ」
「馬鹿なんて二回も言うもんじゃないよ。私もそう思うが」
「否定しないのか。なら馬鹿だろ」
うん、私も馬鹿だと思う。
何気にみんな(とくに大人二人)が馬鹿と連呼してドドイルを貶していく。そんな本人は言われたショックで顔面蒼白していた。多分、さっきの引きずってるんじだよ。新たな傷ではない事にしておいてあげよう。
部屋についた早々、ドトイルがメイドさん?を引き連れて一緒に中に入ってきた。いつの間に呼んだんだろうね。
それでさっそく、私のご機嫌を取ろうとしてメイドさんに持たせてる箱を私の前に出してきた。
なんでも、これでお前は喜ぶ!と自信満々にいい放つんだけど………なんだろーなー。と開けてもらったらそこには大きめの宝石。指輪とネックレス。
石の大きさから言ってかなり高価なんじゃないかな?指輪なんてそこにはめ込まれている石が赤ちゃんの手のひらサイズだよ?何カラットですか?
もしかして、私たちがこの部屋に来るまでの間にレーバレンス様を怒らせた一件から考えた結果かい?
確かに私は「きあきあ」と言ってお父様が「光って~」に言い直していたけど、ね。
それで私が宝石が好きなんだ、と思ったのか?そうなのか?ずいぶんと単純な人なんだねドドイルって。
こう言うものはね、色がわかんないので愛でれません。私から見たら綺麗にカットはされてるけどゴツゴツした鉱石かなんかだよ。
ネックレスとかにしても………形が良ければすべてよしとはならないから。出直してこい。
普通、赤ん坊に宝石とか見せるものではないよ?手にとって投げるだけだよ?飲みこむよ?私をいくつだと思ってんの。
どっちかって言うとモコモコとかふわふわな物を私は好むんですが?投げつけてあげようか?
さっきのでドトイルの評価は地の底に着いている。もしかしたら底辺を突き破ってもっと奥に突き進むくらい。それぐらい印象が最悪なんだよ。
しかも自信満々に見せるもの?確かに大きくて価値があるんでしょう。それはわかるけど。興味なんか引かれないからね。むしろ避けるわ。
てなわけで、蓋を閉めるように「や!」の一言で片付けさせてもらいました。うん。私、間違ってないよ。嫌なものは嫌なんです。とても素直な子でしょ?
お父様からぶふ!とか聞こえない。私も笑っちゃいそうだから止めてね。
あれ?でも「可愛い!!」なんて聞こえる………のもきっと気のせいだよね。親馬鹿はいつでもどこでも健在できるわけ………ないよね?いや、さっきから私のお父様はフレンドリーだった。ありえるっ。
ドトイルは信じられないっ。とでも言うように私をみるけど、信じられないのは私だから。何度も言うけど赤ん坊に宝石はおかしい。
「君、すまないが赤ん坊のミルクを用意してくれないか?そろそろ昼頃だろう」
「かしこまりました」
お父様、そう言えば聞きたかったんだけど何者なんですか?少なくてもドトイルより権力が高いな、とは思っているけどさ。
他人のメイドをこき使っているよ。ドトイルが何も言わないからいいのかな。
そんなドトイルをほっぽってロノウィスくんは一発合格なんだけどね。ロノウィスくんは私をよく理解している!
お父様の膝の上にいる私に恐縮しまくっているけど、躊躇いながら「怪我がなくてよかった」てさ。いつの間にか転げていたあのヌイグルミをそっと渡してくれたんだよね!
もこもこは好きだから喜んで笑っちゃったよ。気が利くね!でもどうしてあんなところにあったんだろう?無意識に投げちゃったかな?
「グレストフ様、クロムフィーア様を抱っこしてもよろしいでしょうか」
「昼食がくるまでだ」
えー!?やだやだっ!なんでお父様そんな事を言っちゃうのっ!?
「やーっ!やーあ!」
「そんなっ。嫌がるな!」
「ひっぅ」
「ドトイル………………」
絶対に近寄んないよ!なんで命令されなきゃいけないんだ!
否定したらお父様が牽制してくれたからよかったもののっ!もし手が少しでも触れていたら泣き叫ぶ気、満々だったからね!
またガックリと肩を落としてるけど、今は知らないもん。せいぜい遊ばれてください。
そうこうしてる間にメイドさんがみんなのご飯を持ってきたんだから、ほら、時間切れだよ!こっち見ないで。
項垂れる主?にメイドさんが少しだけ憐れんだ顔しているけど、ご飯!ご飯!
「男爵家の面影がないな」
「貴方のせいでな」
「いや、レーバレンスだろう。さっき何度も貶していたじゃないか」
「責任転嫁はよくない。それに赤ん坊に宝石を見せる方がおかしい」
いや、みんなで落としてるよ。ほら、ドトイルがすごく落ち込んで白くなっていく。ボクシングのあの人並みに灰になりそうだよ。風が吹いたら消えそう………
だが私はかまってあげないよ。悪いのはドトイルだ!いきなりロノウィスくんを殴るなんて最低です!
メイドさんにスプーンでミルクをもらって私はご満悦。これ、けっこう時間がかかるんだけどメイドさん、頑張ってね。
最後にゲップも出してもらって、うん。満足満足。この人いいな。笑顔ですごく優しい。思わず笑顔になっちゃうよ。にへら。
あ。メイドさんがすごく嬉しそうな顔で頭撫でてくれる。うん。もうお昼寝しちゃおうかな。
「そちらの揺りかごに」
「かしこまりました」
うわ!ふっかふか!いつの間にこんなの用意してたんだろう!?
メイドにゆっくり入れられた揺りかごの中はふっかふかのお布団。その中に沈む私。たまらんです。しっかりヌイグルミも抱いてすぐに寝ちゃったのはあれだよ。泣き疲れたからかもしれない。
「不謹慎だが、早く見れてよかった。娘の寝顔が可愛いすぎる」
「貴方の家族愛は怖い」
「レーバレンスも早く嫁を見つけて子どもを作れ。可愛くてしかたないぞ」
「私は三男なので問題ありません。今の役職でじゅうぶんです」
「敬語はやめろ。気持ち悪い。爵位は一緒なんだ。問題ない」
「わかった。で?制御はどんな形にするんだ?」
「指輪とネックレスは駄目だな。危険な可能性は捨てたい」
「手はよく使われるみたいなので、ブレスレットを足に付けたらいかがですか」
「髪飾りでもいいと思います!」
髪飾り………………ドトイル、お前は本当にわかってないな。
もし髪飾りが取れて飲み込んでしまったらどうするんだ?口より大きな物を付けろと?それだとクロムフィーアの可愛さが失われるじゃないか。
本当は少し大事になった事でこの事があいつにバレないかが心配だ。まだ帰ってきていないのが幸いしたか。
それにしても―――クロムフィーアの力はどれほどまであるんだ?
レーバレンスと話してる最中に突然だ。強すぎる魔力を感じたと思えばクロムフィーアの暴走。
その場にいた全員が数十センクター浮いていた。全員だ。おまけにヌイグルミが豪速球でドトイルの顔面を打ち抜く。ヌイグルミでよかったものだ。
私とレーバレンスは途中から来たから浮かなかったのだろう。ただ、ロノウィスと、今回はクロムフィーアだけ地面にいた。これはどういう事なんだ?
昨日は部屋のすべての物が浮き上がっていた。見間違いはない。
話からしてドトイルはクロムフィーアにとって敵とみなされた。ロノウィスは味方か?
そう言えば私もすんなりと近づけたな。前回は圧倒される魔力で息も苦しかったはずだったのに。
「ドトイル。お前は確かあの時浮いていたな。抵抗は出来たか?」
「い、いいえ。驚きのあまり、対処しきれませんでした。その後すぐに気を失ったので………申し訳ございません」
「お前は浮いてなかったな」
「はい。違いと言いましたら、一番近くにいた事でしょうか?」
それもあるのか?
「レーバレンス、お前は近づけたか?」
「普通だ」
「そうか」
まさかこんなにも悩みがくるとは。先手を打つのにどれだけ時間がかかるのか。まずは制御魔法具か。
すやすやと眠る我が娘を見て思わず笑ってしまう。大事そうに抱くヌイグルミが形を変えているな。
今度はなにを贈って上げようか。
レーバレンスに名前を呼ばれてすぐに思考を変える。まずはクロムフィーアの安全。さあ、早く作ってもらわなければ。




