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お話ししたし、帰りましょう

改定いたしました。27.8.2

 もしもし。聞こえますか、まぐとり。応答を願います、まぐとり。こちらクロムフィーアと申す。こちらクロムフィーアと申す。聞こえますかわんこ様。応答を願います!わんこ様!!


『聞こえていますよ?どうしました?』


『なんだ。汝は落ち着きがない』


『貴方たちは精霊だからわからないでしょうけど、私にはとても大事な問題が発生したのですっ』


『なんでしょうか?』


『お腹が空きましたっ!!草を食べるキャロラリンが憎いですっ!』


『………………汝よ、緊張感がないな』


『そんなもの、とっくの昔にどこかへ消えてしまっていましたよ』


 ほら―――恥ずかしきかな、私のお腹から爆音が………酷いっ。可愛さの欠片もないっ。ぐうおおおお、お、お、ってなに。そんな腹の虫も憎いよっ。


 そしてなんとも言えない空気でお澄まし顔のキャロラリン。草をもちゃもちゃ。水をぐびぐび………なぜ馬の食べる仕草が優雅に見えてしまったのかが謎である。うらめしや。


 まあ、それは冗談で………いや、あんまり冗談で片付けられて忘れられるのも嫌なんだけど………そろそろ帰りたいです。まぐとりとのお話しも終わったし、幻狼のお話しも終わった。契約(共鳴)については保留にしてもらえたもんね。それでもいいって言うし。それに、アトラナに聞きたい。


 今さらながらふと思ったんだけど、まぐとり曰くアトラナは精霊がほぼあの体を扱っていたらしい。あの体には、人間のアトラナと精霊のアトラナがいるとまぐとりは言う。一つの体に二つの魂………魂?の方が分かりやすいか。でさ、表に精霊がバンバンと出てきて肝心の人間のアトラナが出ていないでしょう?精霊を外に出せたとして、本来のアトラナは支障なく大丈夫なのか、って言う心配が生まれるわけです。


 そんな心配は心の中で言っているからね。まぐとりが聞き取ってこう説明してくれる。


『退化はま逃れないでしょう。ですが、このままアトラナの中に強い力の精霊がいるのはいけません。不釣り合いな魔素と魔力は身を滅ぼすのです』


 例の精霊が言う、爆ぜるってことになるんだね。………今は辛うじて留めている感じなんだって。魔素を貯めさせて少しでも魔力暴走をさせないために居心地を良くして感情とか和らげているんだって。それで和らぐんだ………


 じゃあ、なんで魔力が増えちゃうんだろうか、と言うのも聞いてみた。これは中の精霊が力の配慮をまったく気にせずに、ギリギリの線まで魔力暴走で一気に外へ放出して、このままだと魔力の枯渇で死んじゃうから今度は魔素を量なんか気にせず一気にお腹がパツンパツンになるまで満腹に貯めるおかげで、魔素が魔力に変換された時に増えてくるんだとか。つまり、使ったエネルギーを上回るカロリーを蓄積させているんだね?


 と言ったら沈黙が。なぜ、と首を捻ればエネルギーとカロリーがわからないと言われた。体力と熱量の単位………とりあえず、体力とご飯を変換させて説明した。疲れたらお腹が減るよね。とか色々と付け加えて説明したらなんとなく納得してくれた。精霊はご飯なんか食べないって威張られてもね………まあいいか。


『太陽が真上ですね………城の裏手の森でしたっけ?今から城に戻るとしたらどれくらいで着くんですか?』


『我ならすぐだ』


『キャロラリンなら?』


『たぶん、走りませんから夕方ですね』


 走ってくれないんだ………それは大丈夫なんだよね?と聞いてみると魔物が出てもキャロラリンは強いというお返事が。そう言えばこの前のキャロラリン脱走事件で捕まえようとしていた騎士が宙を舞っていたな、と。人があんなにも簡単に飛んでいくんだな、と………キャロラリンの強さを舐めてはいけない。


『でも、私はこの篭にまた入るんですよね?戦闘の邪魔ではありませんか?』


『邪魔だろう。真っ先に庇わねば汝は死ぬな』


『あれ、行きはどうしたんでしょうか』


 そして沈黙―――真実はキャロラリンのみぞ知る………不安しか残んないよっ!!


 でもまあ、騎士が倒せるぐらいの魔物しかいないから、てまぐとりの慰めが聞こえるんだけどね。騎士の強さは3段階くらいあるんだけど?小さくて可愛い魔物しか見たことのない私にどう判断しろと?まぐとりは意外と雑だね!


『そもそも呼べばよかろう?なぜわざわざ迎えを呼ばんのだ』


『私はどこのお偉いさんですか?方法がありません』


『属性はなんだ』


『一応、【水】です』


『汝、それだけの魔力を持ち、なぜ属性があやふやなのだ。ああ、そう言えば人間はある年齢までに成長せぬと調べぬのであったな』


『いえ、調べは終わっています。ただ、私は3つの属性を持っていて、それが混じっていましたから魔病の恐れを最小限にするため【水】に絞ったのです』


『なんと………それならやはり我と契約した方がよいぞ。我でなくても精霊と契約した方がその危険は魔法具とやらよりも大きく改善される』


『なぜですか?』


『精霊は魔素だ。それくらいなんとでもできる』


 いや、出来る出来ないなんて知りません。呟いたらわんこ様が唸った。これまた押し売りが始まりそうなので………精霊について聞いてみた。


 精霊とは―――魔素に自我が宿った者をいい、遥か昔は人間と力を合わせて仲良くしていたらしい。まあ、冒頭はだいたい一緒だね。そうじゃなくてもう少し深い話を聞きたいのですが………順番に聞け、と怒られましたっ。げせぬ!でも説明は面倒だからあっさり言う、といきなり方向転換。なんだよー!!


『汝が我と契約もせず、我に暇を作らせるからだ!』


『自分勝手すぎる理由っ!』


『はいはい。待つと決めたではありませんか。幻狼は大人げないですね』


『…………………………………………ある精霊が人間に興味を持ったからだ。その人間は夢物語しか紡がんやつだった。人間からしてみれば本当に夢としかない。しかし、精霊からしてみれば簡単なことだった。その人間が願ったことは、『水が出せたら』『片手で火が出せたら』『風が吹けば』『土がよければ』等々、昔は一つのことにすべて労働が付きまとい、すべてか手作業。故に、人間は『楽』を作りたく『夢』をみてたのだ』


『わんこ様って、分が悪くなると黙るか新たな糸口を作り出すかしますよね』


『ん、んん!―――それで興味が沸いた精霊が魔法を使ってその人間の願いを叶えてやったんだ。最初は気まぐれにとやっていただけだったが、人間に感謝されるのがよほど嬉しかったらしい。その精霊から伝わって他の精霊も同じように手伝い始めた。それが人間と精霊の魔法のきっかけだ』


 その後もたまに手伝ったりそのまま側に居座る精霊も出たり。なんだかんだで手を取り合うようになり、関係は築かされていった。しかし、人間が増えるにつれ魔素は減っていく。人間が魔素を取り込んでしまうから精霊がじょじょに減っていく。魔素が増えるのはまちまちだ。まぐとりも魔素が増え続けないようの管理していたから、それは大変だったらしい。


『そこで“ 共鳴 ”だ。今までは精霊がすべて魔法で出していたのだが、人間も欲が出て出してみたいや精霊ばかりにお願いするのも、と下手に出てみたり。色々といたが、結局は精霊も人間に教えたらどうなるのか面白そうとかで、半分ずつで魔法を出せるようになった』


 しかし、これだけでは精霊にとって見返りがない。ので、魔力の枯渇は言わなかったらしい。その時は結構の人数が精霊と不釣り合いな魔力と共鳴したりしてたんだって。それでもし人間が精霊の力に耐えきれず、魔力の枯渇になったらそれは人間が扱えないせいだと理由を付けてあやふやにしていた、と。提供しているのは精霊なので、人間もそれほど文句を言うものかいなかったらしい。


 人間も永眠してしまえばその体が魔素になり還元されるで、精霊としてはいい話だったがそんなものはいつかバレる。で、結果と言えばそこで精霊と人間の決別が生まれたんどけど、人間は精霊と違って欲が深い。人間があの手この手で精霊との仲を繋げ、精霊がいなくても魔法を放てるように教えてもらった。精霊も色々と渋っていたけど、全部の精霊がそうではない。また気まぐれな奴が出てきて研究していき、出来たのが今の魔法である。


 魔法文字はまぐとりが異世界から来た私たちの知恵を借りて文を作らせ、それを聞き届いた精霊がお手伝いする形で規定を作ったことにより、人間が魔法を使う無駄使いを押さえたんだとか。なぜこの漢字を使ったか聞くと、ごちゃごちゃしているからすぐには覚えられないだろう、と………うん。画数が多いほどごちゃごちゃしてしてるもんね。


 詠唱はどうなんだろう、と聞けばそれはただ単に精霊のお願いしますって言う問いかけらしい。なんだか堅い言葉だよね、てついでに言ってみたら考えたのはこちらのわんこ様だった。『我も若かったのだ』と言われても、ねえ?


 それに加え、魔素と、魔力の釣り合いも考慮させて、人間が一人で放てる魔法の出来上がり。因みにこの世界の文字で書いても魔法が発動しないのは、精霊の方が決まりごとを忠実に守っているからだ。魔素が減って自分達の死活問題なら規定は守るよね。なんだか最後は苦労話を聞かされた感じがするけど、いいか。


 それにしても、まぐとりとわんこ様もこの魔法に関してちょっと関わっていたのはビックリだね。長いこと生きてるってさっき聞いたけど、本当に長いこと生きているんだって、驚かされる。そして思うんだ。




 えらいもん聞いちゃったな、て。




 今さらながらまた隠し事が増えたな、て思えた。ちょっと考えれば分かるのにね。未来の私はどうなることやら………他人事じゃないのだけど、この時ばかりは遠くを見つめていたかった………


『む。そろそろ我は去る。もし契約を望むなら我を喚べ。楽しみにしておいてやろう』


『なんでわんこ様が楽しみにしてるんですか………帰るんですか?』


 せっかくのもふもふがっ。


『―――帰る、か………我の居場所はこの大地すべてだ。帰る場所ではない。それと、汝と似た魔力が近づいている。いくら見えぬだろうと、我らの存在は魔素だ。気づかれて面倒となるのは好まぬ』


『お迎えがきてよかったわ。今日は私の話を聞いてくれてありがとうございます。キャロラリンは本当に頼まれただけなので、悪く思わないでくださいね。それでは―――またの縁に導きを………』


 そして去っていく………2匹?今回はこれが考えてもわからない事かもしれない。いや、違う違う。とかなんとか思っていたらあっちの森がわさわさと聞こえる。ちょっと私の真っ正面だ。狙っているのかね?


 そんなことはないはずなんだけど、だんだんと聞こえるがちゃがちゃとぶつかる金属音と、踏み鳴らす多数の足音。私と似たような魔力が近づいていると言うことお父様かな。城の所有する森―――裏手だから所有しているよね!?まあ、盗賊とかだったらさすがに私より耳がいいキャロラリンが警戒する。今のキャロラリンなんかあっちにお尻を向けて水を飲んでいるからね。警戒心が無さすぎだよ。


 そしてようやく姿を出してくれたのは、全身鎧の誰か。私―――むしろキャロラリンを見つけた瞬間に後ろに向き直って「見つかりました!」と大声をあげた。それから回りに展開するように?いや、むしろ中央を開けるために全身鎧の騎士が横に広がって行く。なんか私が包囲されてるよ。悪いことしたみたいじゃんっ。


 そして中央から見えてくるのは………ローブを深く被っている人と、お父様。あ、ウォガー大隊長までいる。やっぱりお父様の魔力を言っていたんだね!駆け出してこないのがちょっと不思議な気がするけど、私は立ち上がってキャロラリンに触れておく。君、いつまで飲んでいるのかね。お迎えが来たよ?自由すぎるよっ。


「クフィー、体調は大丈夫か?」


「だいちょーぶべす!あっ………」


 前歯………忘れてたよっ。慌てて口を隠して俯いたのがいけなかったのかな………いけなかったんだろうね。瞬時に駆け出したお父様が心配して私のところまで来ました。そして揺さぶる―――事はしなかったけど、矢継ぎ早しに私の心配をしてくる。その気迫に圧された私は懸命に頷くしかない!


 因みにキャロラリンはローブを深く被っている人にちょっと小言をもらっていた。声はやはり、グラムディア様。顔はまだ公表してないからね。お忍びと言う感じかな?てかお父様そろそろ………


 警戒していた騎士も呆気にとられているからっ。せっかく来てくれたのになんだか台無しな気がしてならない!!グラムディア様が声をかけるまでずっと心配って………心配しすぎっ。キャロラリンに連れ去られただけじゃん!キャロラリンでも心配かっ!?理由もわからず連れ去られたら心配だよね!!


 そこで、ようやく、私は前歯の話とキャロラリンに連れられてここにずっといたことを説明して帰った。城に。お父様の腕に乗って。なぜ城かと言われたら臭いからだよ。キャロラリンの涎も忘れていたよ!お父様は気にしなくても私は気にするんだよっ!!城に一度戻ってトールお兄様に声をかけたら微妙な顔でお風呂を薦められたよ!!グラムディア様にまで薦められたら行くしかないでしょっ!!


 もうぐだぐだで帰ったら凄いのなんの。魔法棟は【風】の魔法師が総出。レーバレンス様にヴィグマンお爺ちゃんも出動していて、騎士棟は中級騎士までを半分ずつ隊を組んで出動。指揮はユリユア様とアビグーア中隊長。キャロラリンは門から抜けてしばらく真っ直ぐ走ったらぐるりと城の裏手のこの森に来たらしい。捜査は難航していたそうな。


 どうやって見つけたかはウォガー大隊長とお父様の勘だ。冷静を取り戻したお父様がなんとなく「こっちだ!」と思ったらしい。あと、グラムディア様がキャロラリンの好きな場所を絞り、ウォガー大隊長が鼻をかぎわけてこの森に来たらしい。なぜか一向に見つかんなくて困り果てていたそうです。そう言われても私は知りませんよ?


 また後日、お話しがあるそうなので城にきてね、て言われたら断れないよね………場所だけはっ、と思ったけど、ポメアに泣きつかれてそれどころじゃなかった。タイミングがとことん悪いよ、ポメア!そしてようやく寝られる、と………………明日はなんの風が吹くのかな………はぁ。





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