表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
140/242

合間

改訂いたしました。27.7.26

 もぐもぐと。がぶりがぶりと。はぐはぐと。たまに会話を挟みながらパンをむさぼる私たち。意外とレーバレンス様はできることがあるなら一緒にやってしまおうとするタイプらしい。食べながら書類をやっつけていました。魔法剣に関しての書類だそうです。


 私はと言うと、パンを食べつつ魔法剣について訪ねられたら、わかる範囲で受け答えをするだけ。あ!このパンはクリームパンかな。


 パンを食べて………何個目だろう?数えていないからわからないのだけど、だいたいのパンは何か練り込んだものが5割、中に詰まっているのが4割かな?残りはチャレンジしたパンだね。あれはアレンジではない。チャレンジだと思う。


 一番ビックリしたのは何かの形をしているパン。酷いのは剣や本とか馬車とか道具の形をした見ただけでわかる形のその中に、動物の顔が型どられたパンがあったんだけど………ひょっとこと勝負できるほど歪んでいてわかりませんでした。これなんですか、て聞いたらみんなで考えちゃったよ。ハルディアスが調査のため出動要請をレーバレンス様から受けちゃうし。本当に行っちゃうし………本人も気になったんだろうね。ちょっと間を置くだけで確認しに行ったよ………あの拒絶はどこに行った。


 そしてわかったのが―――動物の顔であると言う事実。衝撃的すぎて、残していたままのパンを思わず凝視した。でね、そのままにして食べ物を粗末にするのもどうかと思うので、とりあえずは一つだけ食べてみたんだよ。お茶を慌てて口に含んだけどね。これなんですかっ!?ぐにゅっとした物が押し込まれているんだけど!?


 私の視界ではちょっと黒めの塊にしか見えなかったから意気込んで食べたのにっ!味は何もついていない生のお肉のように残念だよ!!なんだよこれっ。


「………肉だな。生の」


「………なんで生のまま入ってんだよ」


 生なんかいっ!!うっかりツッコツを入れたらハルディアスがちょっと驚いてた。いや、私の方が驚きだよっ。なんでパンに生をぶっこんでいるんですか!?料理人は何を考えているの!?


 フォローかは知りませんが、レーバレンス様の豆知識が披露されました。なんでも、牛のお肉(ウーモルス)はちょっと焼いただけで食べられる、と古き文献から伝えられているので、パンにもぶっこんだらしい。因みにどこぞの成金な貴族には人気が高いらしいよ。これを食べていれば家のステータスが上がるんだって。生が食べられる貴族は気位が高く見えるとかなんとか………


 あのね、レアは食べたことはないけど、それは焼いてあるからこそ肉汁が出て美味いのであって、パンの生地に包まれて熱を遮断しながら焼いても美味しくないと思う。食べてわかったけど、別に焼いて入れたわけじゃないよね、これ。パンを焼く熱で焼いた、て言うか暖めただけだよ。むしろ不味い。高級食材のはずのお肉がここまで不味いなんてっ………衝撃的すぎて今後はお肉を控えたいと思えるくらい止めてほしいっ!


 ちぎって食べたから残りはハルディアスに押し付けておきました。まあ、中身は高級食材(のはず)だからハルディアスは躊躇いながらも受け取ってくれたよ。そして食べた顔は口があまり動かされず、片方の眉を持ち上げて半目になると言う器用な表情を作っていた。そして追い討ちにレーバレンス様は不味くて評判だ、と付け加えるもんだからハルディアスが睨んでいた。こんなパンは封印してほしい。切に。


 因みにこの歪な形の動物の顔パンの中身―――と言うより、丸じゃないパンは闇の物がほとんどで、生のものが確率的に高く詰め込まれるらしい。今のところ果物が入れられる事が多いらしいが。今日はなぜ肉なんだっ。そして過去、一番酷いものは魚だと言う………パンの焼く行程で熱処理は出来るのだろうか………?


「そう言えばお前、魔法剣をナイフかなにかでやっていたな?今できるのか?」


「魔力を扱うだけですよね?大丈夫ですよ」


 次は………ん?これは………練りパンかな。茶色いパンの色ではないね。それよりちょっと濃い感じがする。中身はなにも詰め込まれてない。味は………なんだろう?草っぽい。………草っぽいね。よもぎとかにしては独特なこう、苦いけど爽やかなハーブが混じったような………


「緑のパンなんてよく食おうと思うよな」


「緑なんですか?じゃあこれは薬草か何か練り込んであるのでしょうか?」


「それは回復薬を練り込んだパンだろう。いつもの水薬が嫌だのどうの言って改良するためにパンが用いられた。―――美味いか?」


「草の味がいいと言うなら」


「それ、不味いんだろ」


「ハルディアスも食べてみます?独特で草の味としか表現ができないのですが」


「いらねーよ。てかお前、まだ食べんのか?」


「もう少し食べます」


「実は隠れデブか」


 はぁああ?


 と思ったらレーバレンス様のアイアンクローがハルディアスを襲うっ!!魔力暴走したらどうしてくれる、と冷たーい言葉に指がさらにハルディアスを襲う………レーバレンス様、止めてあげてっ!私の頭がさっきのアイアンクローを思い出そうとしてこめかみが痛くなってきた!!


 そしてテーブルに置かれる小さめの刃物が3個………ハルディアスは、あのままのようです。ご愁傷さま。スルーの方向で話は進むようです。が、がんばれっ!!私にはレーバレンス様を止める術を持ち合わせていないっ。


 レーバレンス様はこれで私が怖がって魔力暴走をするとは考えられないんですかっ!―――ムッとするけどデブって言われた方が安全のような気がするのは気のせいかな………………さすがにデブで不安にはならないし。………多少の苛立ちがあるだけだよ。


「ちょっと魔法剣を見せてくれ。壊れても構わない物だが、限界も知りたい。じょじょに魔力を注ぎ、魔法剣を作るように」


「わかりました」


 なるべくハルディアスを見ないように………手を拭いてレーバレンス様の手と出されたナイフの1つを手に作り出す。


 私の手のひらから柄へ移動させ、柄から刃へ。移動はゆっくりと、刀身の中心から忍ばせ先端までたどり着いたら刀身の芯全体から流れ出すようにして、外に出てきたら纏わせるようにナイフを包む。これで纏うようになり、魔法剣の出来上がり。うん。キラキラとしている。魔力も安定しているね。大丈夫だ。


「………お前の感覚でそれは魔力小か?」


「はい。たぶんですけど、これ以上の魔力を入れると壊れます」


 私の魔力はレーバレンス様に伝わっていると思っているんだけどね。そのために手を繋いだんだし。触れれば魔力はわかるんだよね?実際ぶつぶつなにかいい始めちゃったし。


 このナイフにこの魔力量で出来上がるのか、とか。小さいから耐久が~とか。考察に没頭してしまう勢いでハルディアスが忘れられているんだけど………ハルディアスが死にそうな顔をしている。


 意識をこっちに向ければハルディアスは忘れるのかな?なんだか可哀想だからここはちょっと私が頑張ってみようか?頑張れるかは別として、たぶん出来るんじゃないかな、と。


 こう、ね。これだと短いからちょっと長くできるように、纏わせたまま魔力の先っちょを伸ばして………これ、出来たらナイフなんていらないんじゃないの?自分で作った方が早くないかな?でも、考えていた魔法剣は形になってくれたので満足かな。ナイフよりもう少し長め。さすがに太くならなかったから針のようになってしまったけど………伸びたね。キラキラの長さも伸びた。先端の方がキラキラが少ないけど。


「………………なんだ、これは」


 あ。ハルディアスが解放されて即座に距離を取った。


「魔法剣です」


「なぜ伸びる」


「魔力をこう―――伸びるように念じて?」


 はい、ため息をいただきましたー。ついでに魔力を入れて耐久を教えろと言われましたのでナイフに魔力を込めて壊してしまいました。再びレーバレンス様の顔の表情筋は絶滅寸前です。す、すみませんでし、た。


 無言のまま次のナイフをお願いされる。私には違いがわからないのだけど、刀身に使われている石が違うとのことです。へー………今度はハルディアスの近くで?魔素を寄せ付けないって言うけど、魔力だから意味はないのではないかな?まあ一応と言うわけでハルディアスが隣に座ったのを確認してナイフに魔力を。


 じょじょに魔法剣を完成させて感じはどうかと聞かれましても………普通です。さっきのよりはどうかと聞かれましても………普通です。魔力の通りがいいかと聞かれても………普通です。しばらく無言になったと思ったら壊せって言われました。またゆっくり流して壊す。流れるように次、だって。あの、お腹が空いてきちゃったんだけど………?


 最後のナイフを渡されて―――ん?これ、なんだか重いね。ちょっと持ち上げるのがダルくなりそうだからナイフをテーブルに立てるようにして握った。なにか視線を感じたので素直に「重いです」と言えば軽く納得される。でもこの黒いナイフ………なんか嫌だ。


「どうした?」


「これ、なんだか魔力で触れたくありません」


「………貸せ」


 ハルディアスが奪うように私からナイフを取った。ちょっと危ないな、と思ったらナイフからなんだか変な空気が出されたような気がする?キラキラがぶわあと広がってレーバレンス様の指先もキラキラした。


 何が起こったのか、状況処理をするのにちょっとだけ時間が必要でした。ハルディアスから突き飛ばされた私はソファーから落とされてテーブルの下に入れられるし。見えない状態でテーブルにダン!と音がするし。そうしたら静かになっちゃうしっ………


 とりあえず私は落ち着いてきたからテーブルから恐る恐る顔を出してみるんだけど………誰もいません。あ、ソファーの後ろかな?………ああ、いたいた。なんだかレーバレンス様がハルディアスの脈でも計っているのかな?手首をもって跪いていた。


「あの、いったいなにが………?」


「あのナイフには俺の魔力を入れていた」


「………え?」


「魔力も放っておけば魔素になる。あれは数年前に魔石をナイフに変えて魔力を注いでいたものだ。もう魔素になっているから魔法剣としてはどうかと思っていたんだが………お前が魔力で触れたくないと言ったのは属性が合わなかったからだろう。ハルディアスは確認か何かで奪ったんじゃないか?私にはわからないが………異能ですべて散ったな」


「ハルディアスは大丈夫ですか?」


「問題ない。眠らせただけだ」


 眠らせたの?眠ってしまったとかじゃなくて?さすがにそんな事を聞けなかったから私は曖昧にそうですかと返事をしてハルディアスがソファーに寝かされた。倒れているんだから首根っこは駄目だと思うんだけど、口答えする雰囲気でもなかったので見なかったことにしよう。


 でも、なんでハルディアスは私を突き飛ばしたんだろうか?異能で散っちゃって、レーバレンス様に眠らされるぐらいなら私を飛ばす必要なんてないんでは………?と言うのは聞いてみた。いや、わかんないんで。そうしたら返ってくるんだけどね。


「魔素の量に驚いたんだろう。ハルディアスは生まれた瞬間から魔素を寄せ付けなかったらしいからな。普段のこいつなら、魔素が寄り付かずに魔素の存在すら掴みにくいだろう。それが道具から大量に溢れ出れば危険だと認識してお前を遠ざけた」


 魔素を寄せ付けない、異能だもんね。いきなりこんなナイフからなにか大量に出てきたらビックリするよね。でも突き飛ばすならソファーの上がよかったな………床って固いから痛いんだよ。


 じゃあ、レーバレンス様はなんの魔法を放ったんですか?と聞いてみると、初級の闇球だ、とのこと。ぶつけたんですかね?え?顔に?痛そう………て思わず言ったら【闇】と【光】は同じ球でも実体がないらしい。目潰し程度にしかならないって。属性の弱点を持っている魔物には有効らしいよ。あと、拷問にもいい、てさらりと言われました。ハハハハッ!


「魔法剣はもう少し別の方向で考えるか………」


「魔力の遠し方と維持する魔力操作の手腕が問われるだけだと思いますけど?」


「お前はどうやって通している?」


「手から繋がった部分、柄からですね。そして刃の中心。表面ではなく立体の中心の中を通って先端までたどり着きましたら刃の中心から外に放出させて、出てきたら剣にまとわりつかせるように操作します」


「立体か………しかし騎士でそんな事ができるのも少ないだろうな」


 まあ、いきなり魔法を教えられても出来ないんじゃないかな?逆に私は剣を振り回せないんだし。ちょっと空気を和ませるために言ったのにレーバレンス様はスルーでまた考え込んでしまわれた………いいもんっ。


 とりあえずまたお腹が空いたような気もするので残りのパンに手を伸ばす。あと5つほどなんだけど、まあお腹と相談したら入りそうなので食べることに。このパン、当たりと外れがあるから止めてほしいよね。真ん丸のパンがあったから食べたけど………味はミートソース。ついにこの中に入っちゃったんだね。パンが汁を吸い込んで具材が何となく空間に残っている感じなんだけど………これはどうやって焼いたのかな?


「それらを食べ終えたら魔法具を作る………お前、もしかしてでもなく食べて回復する奴だな。今度、満腹時にさらに食べたら魔力が増えるか実験に付き合わないか?」


「お父様に相談してからお願いします」


 ちょっと笑顔で言ってみる。なんですか、その誘い文句。新手の虐めですか?満腹なのに食べたらお腹が耐えきれなくてリバースだよ。何もかもが崩壊だよ。最悪だよ。それどころじゃなくなるよっ!なのにしれっとして!もうっ!他の人とやってください!!


 そしてペロリと食べた私は微妙な視線を浴びながら魔法具を作ることに。てか、時間がないからまた魔力をゴリゴリと削られた。今回は抑制魔法具だし、複合でもないからそんなに負担はないと先に教えてもらったから安心してゴリゴリと魔力を提供できた。嵌めた腕輪がキラリと光ります!なんとなくだけどっ!


 それでも少しぐらぐらするんだけどね。訴えたら食べろって言われたんだけどっ。とたんに扱いが酷いっ。いいもんっ!挫けないよっ!だからってまた魔力の提供はしませんからね!?なにさりげなくお願いしてるんですかっ。こっちのお菓子くれる手をさりげなくしてよっ。


 しかし、このお菓子は苦手意識が強くなってきたかのクッキーでした………「ちょうどいい」って言われたんだけど………私に処理しろ、と聞こえたんだけど………レーバレンス様がぐいぐい押すものだから拒否もできずにそれを食べた。そして甘い………………クッキーは、もういらないです。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ