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暴走、再び

誤字等を修正いたしました。27.4.3

 

 燃え盛る炎の如く髪をメラメラツンツンに立てている男。名をドトイルと言うらしい。


 なんで名前を知っているかって?回りがうんざりした顔で名前を呼ばれて止められているからだよ。


 髪の色はそのまま赤を所望します。ついでに瞳は黒と白の中間色みたいなグレーだから赤で。きっとそうた違いない。むしろそれでいいじゃん。


 でも残念な事にドトイルと言う人は止める事をしないらしい。もう怒りを鎮める気すらないね。てかこれ呆れられるほど定番になっているんだね。


「今日こそ俺が勝ってグレストフ様の助手になる!てめぇがガキの世話してるくらいなら俺の方が優秀に決まってるんだよ!」


 どーん!といい放つけど、なんかこの人って馬鹿っぽいね。外見だけしか見ないタイプなんじゃないかな?


 二人の実力なんてちっとも知らないけどさ。なんか見下してるのがすごくむかつく。


 それはロノウィスくんも同じみたいで、嫌な顔を全開に出して断ってくれた。さすがロノウィス。わかっているね!


 でもこう言うタイプは絶対しつこいんだ。


「そんなガキの相手しか出来ないのかよ!とんだお間抜けだな」


「それで構いません。では」


「待てっつってんだろ!!勝負しろ!そしてグレストフ様の助手を代われ!!」


「それはグレストフ様が決めることです。グレストフ様にお取り次ぎください」


「庶民の分際で無駄口を叩くな!俺に従え!」


「申し訳ありませんが、急ぎの用事がありますので失礼します」


 まだ待てって言ってるよこの人。ちょーしつこーい。ギャル風に言ったらこんな感じ?それぐらいウザイ。


 どうやら相手は貴族様みたいだね。勝負を挑むあたりでは力じゃロノウィスくんが上。それを見込まれてお父様が助手を選んだ感じ?ドトイルはそれに嫉妬。地位で揺さぶろうとする自己中、てところかな。


 分析すればするほどドトイルの評価は私のなかで急降下。ドトイルを背に歩き出しているけどまだなんか叫んでる。


 ロノウィスくんは貧乏くじタイプでもあるんだね。可哀想に。


 逆にロノウィスくんの好感度がうなぎ登りだよ。「ごめんね」て。気遣ってくれるなんて。


 でもそれがいけなかった。すっかりご機嫌ななめなドトイルは殴りかかるようにこっちに突進してきた。


 誰かが止めるように叫ぶけど、間に合わなくて………………すぐ近くの顔が歪んだ。


 それと同時に傾く体が怖くてぎゅっと目を閉じる私。泣かないように歯を食い縛る。


 ドシャって鈍い音がなって………体が少しだけバウンドする。こんな事は初めてなのか、回りが怒声をあげながらドトイルの名を呼んでいた。


「いっ―――ごめん、クフィーちゃん!大丈夫!?」


 心配するならまずロノウィスくんからだよ。私は大丈夫だからっ。


 口元が切れているのか、端からちょっとだけ黒いものが出てる。それって血、だよね………?頬は一部分だけ痛そうなところが黒くなってきていた。それって………青あざ………?


 頭のどこかでなにかのストッパーが壊れたような気がする?大泣きの感覚と一緒。


 鼻の奥が痛くなって。視界がだんだんと歪んでいく。駄目、泣いちゃう。


 衝動にロノウィスくんの頬に触れてしまえば痛そうに一瞬だけ顔が歪んでた。


 その瞬間―――全身に恐怖が、覆った。


「え?クフィー、ちゃん?」


「ゃ………………やー!!!!」


 怖いよ。怖いよ。なんでこんなに怖いの?私がまだ赤ん坊だから?


 すぐに感情が抑えられなくて、泣き出したら一瞬で冷めた頭が一気に暖かい何かが私をまとう。


 それがなんなのか、まったくわからないけど―――体の空気みたいなものが少しずつ抜けていくような気がしている。


 泣くだけでそれは私では止められない。どうしてこんな事が起こったのか、分かるわけがない。不安に押し潰されそうで制御なんて、出来るはずがなかった。


 手の中にあるはずの、私の精神安定剤(唯一の癒し)がなくてさらにどうすればいいのかわからない。


 必死にロノウィスくんにすがり付くけど、ロノウィスくんが大丈夫なのかなんて、滲んだ視界ではわかんないよ。


 頬を殴られただけだから、大丈夫。なんて冷静な私がいるけどね。体は暖かくてなにかを解放してた。やっぱり、抑えられないや。


 泣き出したら最後。どうやって止めればいいのかがわからない。ロノウィスくんの声が、なんとなく聞こえる。


「クロムフィーア」


 あ。お父様の声。どうしよう、お父様。泣き止みたいのに泣き止めないよ。ロノウィスくんが血を出したの。


 抱っこされた気がするけど私はまだ声を張り上げて泣き叫ぶ。でも、それはちょっとだけで終わってくれた。お父様、さすがだね。


 また回りがキラキラと光って輝いてる。これはなんなんだろう。


「これは信じるしかないか………あとで作ろう」


「頼む。それで?誰が説明してくれるんだ?クロムフィーアの泣かせたんだ。それ相応の答えをくれるんだろう?」


「ちーうえ、ちーうえ」


「大丈夫。クフィーを泣かせたのだから特大の罰を与えてやるよ」


 え、なにそれ怖い。


 そんな笑顔で言ってくれちゃって。いや、いい笑顔ですね。そんなお父様大好きです。止めてくれてありがとう。


 キラキラが消えてから回りを見たらなんかドトイルが倒れてるのが見えるんだけど………………お父様、何かやったのかな?あれ、私の癒しヌイグルミがドトイルの近くにある。なんでだろう?


 それとみんながポカーンとした顔でこっち見てる。誰を見てるのかわからないけど。あんまり泣き顔を見られたくないのでお父様にすがり付いておいた。


 しっかり抱っこしてくれてるおかげで顔は隠れたんじゃないかな?


 それからお父様の尋問が始まった。うん。尋問だった。


 冷気でも発してるんじゃないか、てくらい冷たい言葉でこの騒動を聞いていて、笑顔はすでに消えている。因みにドトイルはなんとか気づいて正座しているよ。


 ロノウィスくんの証言と回りの証言のおかげでドトイルくんは30日の謹慎とそれからロノウィスくんに近づかない事を約束させていた。


 魔法師(魔法使いじゃないんだ………)同士のいざこざは魔法を使ってなくても一ヶ月謹慎は決まり事らしい。ついでとばかりに駄目出しをこれでもかとお父様が追加攻撃してたので、ドトイルはもう立ち直るのに何年かかかるんじゃないかな。魂抜けてるよ。


 被害者のロノウィスくんも私を泣かせた理由で反省文を書くことになった。こっちは泣きそうな顔でしょんぼりしてるけど、お父様が気に入っているのかさりげなく持ち上げていた。


 これにて一件落着。


「では、最後に二人へ特大の罰だが………私の愛娘を泣かせたんだから笑顔を取り戻してもらおうか?笑わせるまで魔法棟への出入りは禁止だ。今日中に頑張ってくれ」


「えっ」


「なっ」


 おぉおい。一件落着でさっき締めくくったのにそんな事を言っちゃうの!?しかも何もなかったかのように歩き始めちゃったよ!?


 焦るロノウィスくんは追いかけてきたけどドトイルはどうするんだろ。あ。付いてきた。えー、やだ。


 でもお父様はなにも言わないからさっきの罰則は明日からなんだろうね。ここでドトイルが失敗したら罰則どころか魔法師として人生が終わっちゃうよね。謹慎の前に出入り出来ないんだから。


 そんな二人を俄然と無視して歩く二人。レーバレンス様とお父様。多分、あの部屋かな。


 その前にレーバレンス様。あなた一部分だけ髪が長いんですね。ローブも黒いし背中なんか今初めて見たから気づかなかったよ!


 しかもしっぽみたいに長い髪が………あれ?髪留めがキラキラと光ってる。


「ちーうえ。きあきあ」


「んー?さすがにレーバレンスは光らないよ」


「?きあきあ?」


 光ってるんだけど?それでもお父様は笑いながら違うと言う。なんなんだよー。あそこ光ってるんだよー。でも会話は成り立たなくて。結局はレーバレンス様をからかう材料になってしまって舌打ちされた。


 うん。これはごめんなさい。さすがにあなた様は光ってません。





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