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今日も怒られてっ

誤字等を修正いたしました。27.3.27


改訂いたしました。27.7.25

「俺の言いたいこと、分かるよな?」


「え………俺?レーバレンス様?」


「娘っ子よ、こればかりは叱られておくんじゃ」


 え、強制なの?逃げられないの?怖いんだけど………まったくわからない、よ?レーバレンス様の一人称が私から俺に変わったんだけど?お、俺?叱られるってなぜ?え?私は何をしたかなっ!?


 さすがにレーバレンス様の怒りが目に見えてアビグーア中隊長が―――庇ってはいないけど、立ち上がってがちゃりと音がなった。たぶんでもなく、剣を携えるためのベルトと取り付けている金具がぶつかったんだと思う。


 この剣呑な空気にウォガー大隊長とユリユア様も警戒体制。すぐに移動できるようにか足を広げてウォガー大隊長はレーバレンス様の方に。ユリユア様は私の方に爪先を向けて臨時体制。剣に手が伸びていないことが、唯一の救いか、な。


「待て。別にここで戦うつもりはない。娘っ子が少しやってくれてな。レーバレンスも疲れておる。少し時間をくれんか」


「そうだな。聞いてからでも遅くはない」


「さすがウォガー大隊長じゃのう」


 つ、つまりウォガー大隊長は魔法を放たれても動けると言うことなのかな!?すごいね!いや、ここで感心するところではなくてだねっ―――


「あの、私は何をやってしまいましたか………?」


「………昨日、俺が言ったことを覚えているよな?抑制魔法具に皹が入ってもしものためにハルディアスと共に行動をしろと、言ったと思うのだが?」


「それは―――昨日だけでは?」


「俺は抑制魔法具が(・・・・・・)完成するまで(・・・・・・)、と言ったはずだ。―――死にたいのか?お前はこの騎士棟で魔法剣の魔力を見ているはずだが………それは属性を持つ魔力が放たれ魔素に還元されるんだが、知らなかったはずはないよな?エモール魔法師あたりに教えてもらっていると思ったんだが違ったか?それに今日はずいぶんと気分がよかったみたいだな。お前の魔力がずいぶんとよくわかるとヴィグマン様が言っていたぞ。おまけにグレストフに余計なことをしてくれやがって。今まで黙ってやっていたものをお前から手紙がきて励まされたと歓喜して騒ぎやがるから書類処理が滞った。………どうしてくれる。なにやってくれたんだ。なにやってんだ?」


「娘っ子よ。こればっかりは、の」


「………………………………………ごめんなさい!!」


 いや!やばい!!やばいって言葉に尽きるっ。やっちまったねっ!どうしよう!?そう言えばそんな事をいわれたと今更ながら思い出しました!!ハルディアスの件なんて昨日までと思い込んでたよっ。これはうっかり病では防ぎきれない重度の事件だっ。


 お父様のなんかむしろ私じゃなくて本人に怒ってほしい。発破をかけたかもしれないけど、それを私に持っていくのは………持っていきたくなるほど、お父様がやらかしたのですかね?とりあえず全力で謝った。椅子から下りて90度より深く、頭を低くして叫ぶほど謝った。しかし、レーバレンス様はまだご立腹のようで、つかつかとこちらに来たかと思えばアイアンクローっ!?いたっ!いたたたたたたたた!?




 ぬぉおおおおおおおうっ―――………




「お前の頭、掴みやすいとは思っていたんだが………丁度いいな。午後からお前の抑制魔法具を作ることにする。お前を野放しにはもうできん。グレストフに逢う約束だったが今日は却下だ。仕事が増えるだけなら褒美はいらんだろう。ハルディアスと昼でも食ってこい………いいな?」


「は、はひ………っ」


「ハルディアス。こいつと昼に行ってこい」


「なんで俺とだよ。俺は昼なんていらねーよ」


「ああ?とっとと食ってこい。食わないなら明日もこいつに付きっきりだ」


「誰があんたの言うことっ!―――っ」


「餓鬼どもが―――てめぇら問題児は素直に聞けねえのか」


「わしが言うのもなんじゃか、レーバレンスよ、素が出ておるぞ」


 これ、素なのっ!?あぁあああああ………………………


 アイアンクローが私のこめかみにちょうどフィットして痛いですっ!勘弁してっ!!もう涙が出そうなほど痛いですっ。だから必死にこの腕を握ったりして何回も謝った。もうとりあえず痛いっ。痛いよおぉおお!


 ―――果たして、何回ほど謝ったのだろうか………私には痛さのあまりに時間はずっと長くあった感覚しか頭に残っていないよ。手を離してもらったはずなのにまだ痛みの余韻が残っているのはなぜだろうか。ああ、涙がっ。


 ついでとばかりにハルディアスを捕まえておいた。服を握る。今日は出来上がるまでもう離れないっ!もうアイアンクローは嫌だっ!!ハルディアス、君も同じくアイアンクローを受けた仲間ならわかるよね!?睨んだって今の私にはアイアンクローの名残の痛さに怖くもなんともないからっ!


「………ちとやり過ぎたのではないか?」


「これが丁度いいのです。甘やかしては碌なことになりません。ハルディアスは日常茶飯事ですので問題ありません」


「ヴィグマン殿がその少年を差し出したように見えたのだがな。まあ、グレストフは怒らないからちょうどいいかもしれん。レーバレンス魔術師殿に感謝する」


「むしろ、事情を知らないとはいえ娘を連れ込んで悪い。他に気を付けなければならないことはあるか?」


「ないとは言い切れない。抑制魔法具は今日中に完成させるので普段通りで構わないだろう」


 ………通りで助けてくれなかったわけだ。ユリユア様ぐらいならちょっとレーバレンス様と反発してくれるかな、とか思った私が阿呆でした。あの内容を聞いて庇っていたら優しすぎるよね。本当、ミスった………


 どうやらレーバレンス様は落ち着きを取り戻したようでいつもの喋り方に戻っている。戻っている?私はまた1つ理解した。素のレーバレンス様は口が悪くなる。これが一番、機嫌が悪いに違いない。間違いない。昨日のお怒りはまだまだ序の口でしたかっ。絶対に怒らせないようにしようとしたのにっ。誓いも立てたのにっ。また涙がっ!


 そんな時にぽんぽんと私の頭を撫でてくれるのがアビグーア中隊長ですっ。この中で一番優しいじゃないかっ!全面的に私が悪いのは分かっているけど、これとそれとは別だ!お怒りは受け止めるけど、付属のアイアンクローは要らなかったよ!!


「………………やり過ぎたか?」


「今ごろか。もっと加減してやっておれば泣いておらんわ」


「まあ、ヴィグマン殿そう言わずに。怒ると言うことはそれだけレーバレンス魔術師殿も心配だったからだろう」


「黙秘する」


 レーバレンス様が圧されてる。さすがユリユア様だ。なんとなく涙は止まってきたけど、ずっとぐずぐずしていたらそんな会話が聞こえてきました。これはレーバレンス様に悪いのでなんとか泣き止んで見せるけど………ユリユア様の眉がきゅっと寄ったね。ああ、目が赤いかも。


 その予想は当たりだったらしい。ユリユア様からちょっと低い声で出歩けないな、て。それはつまりこのまま私を人様に見せるのか、と言う発言のようで―――レーバレンス様が短いため息とともに「飛びます」と言った。影渡りは飛ぶって言う表現でいいのかな?


 そんなわけでヴィグマンお爺ちゃんと私とハルディアスとレーバレンス様でひとっ飛び!場所は………部屋です。どこだかわかりませんが、部屋です。ヴィグマンお爺ちゃんはそのままスタスタと出ていきました。そして私に選択肢が問われます。もうお疲れですか。表情筋が死んでますよ………本当にお疲れさまですっ!


 選択肢はここで食べるか、魔法院の食堂で食べるか、魔法場の食堂で食べるかの3つ。因みにここはレーバレンス様が使用している個室だった。ここで食べるならまあ食堂で手っ取り早くハルディアスがお手軽なもんを運んでもらう感じ。パンだって。ここにそんなのあったんだ。まだ食べてないね。あれ、食べたっけ?それは家か。そしてハルディアスが行くんだね。離れるなとか言ったあとで離れさせていいの?


 魔法院の食堂は私とハルディアスだけで行くこと。魔法場はレーバレンス様も一緒に行くと言うこと。まあ、若魔法師だけが魔法場をうろうろなんて出来ないもんね。じゃあ魔法場は却下で。と、なるとこの部屋か魔法院の方なんだけど………ハルディアスはどっちがいい?


「貰ってくる」


「じゃあ、お願いします。でもパンは何があるんですか?」


「20~30種類ある。好みはなんだ」


「好き嫌いはありませんので、とりあえず全部を」


「は?」


「一種類ずつ、全部を。3人で食べるんですから問題ありませんよね?」


「………お前、食堂のパンは見たことあるのか?」


「ありませんよ?そんなに大きいのですか?」


「普通だろう。余ったらこいつに持って帰ってもらえばいい」


「わかったよ」


 ぶっきらぼうだなあ。でも意外と素直なところがあると言う、ね。レーバレンス様はいつの間にハルディアスを操縦できるようになったんだろうか………


 まあ、二人っきりになったのでとりあえずもう一度謝っておいて、今聞けるものを聞いておいた。魔法剣の魔力大についてとか。ロノウィスくんとドトイルに出された課題とか。あと、アトラナの魔力量とかね、結局のところ聞いていなかったからね。


 では、まず魔法剣からいこうか。共鳴もしていないはずなのになぜ魔力を剣に通しただけで魔法が出てくるのか。中くらいでも大なり小なり出るんだったよね?これはなぜでしょうか?


「簡単に言えば制御されている魔力暴走と思えばいい。魔法は魔素の有無で放てるもの。魔法剣は魔力の有無で放てるもの。魔法は大気の魔素を集め共鳴させてようやく放てるが、魔法剣は魔力を主体に放出し、出ていった魔力が魔素へ還元され、さらにそれを取り込み魔力暴走で無理矢理に発動しているようなもんだ。魔力が多ければ魔力暴走は容易いからな」


「魔法剣には共鳴の必要はない、と」


「魔力暴走を過去数回もしたお前なら分かるだろう?【水】の暴走は大気のものを取り除かれ息ができなくなる。それに共鳴はあったか?ないだろう」


「そもそも共鳴はどういう事を言うのですか?」


「精霊は知っているのか?」


「アトラナの件のさいに少しだけ。自我を持った魔素と言えばいいのでしょうか?昔は人に見えていたが今は見えず、教会の方が必死に何かしているらしいですね」


「アトラナの件に私はそう携わっていないが―――教会か。だからグレストフがあんなに静かだったのか?まあいい。精霊の知識はそれくらい分かっていれば問題ない。共鳴とは精霊と通じあえるか、あえないかを示している。その遥か昔、魔法は精霊が魔法文字を作り、人間が魔力を提供して放っていた。その理由は人間が取り込んだ魔素、もとい魔力が扱いきれなかったからだ。それを見かけた精霊が人間の魔力を半分ほど負担してもらうかわりに魔法を使えるようにしたのが始まりで、魔法を放つさいにお互いの相性が合わなければ魔法が放てないことがわかったから“ 共鳴 ”しあう事を前提に精霊の力を借りて魔法が生まれた」


 共鳴って………精霊との相性だったんだ。


「でも、今は人間が魔法文字を書いて魔素を集めて魔法を放っていますよね?これは人間の進化ですか?」


「いや。記述だけだが、精霊が力を分け与えたと言っている。共鳴に関してもまだ精霊がいると信じているからその言葉を利用しているだけにすぎない」


「―――これは一般常識でしょうか?」


「………………………………今さらだろう」


 え。それって私が一般常識から逸脱しちゃっている感じに聞こえるんだけど!?なんで目を反らしたの!?そりゃあ魔病で一般常識を破っちゃったけどさっ。今さらはないでしょうっ!?はっ―――エリーとジジルも精霊を知っているから大丈夫かなっ!?いや存在だけかもしれないっ!しかもお父様に言うなって………もう、遅いよ………アトラナの件で精霊が、って言ったじゃん………


 あまり口外するな、て言われてもね。教会関係にも精霊の話はするな、って言われてもね………まあ、精霊の話なんて早々しないでしょう。しないよね?


 そんな時にノックが聞こえるんですけど?驚いてレーバレンス様を凝視してしまったじゃないか!レーバレンス様は開けてやれ、と短く促す………別にいいけど、誰だろう。


「わっ」


「どけ」


 開けたら篭いっぱいに―――これパンの匂い?あ、ちょっといっぱい入ってる!慌てて避けて扉を大きく広げたら堂々と入ってくるパン。あ、ごめんハルディアスね。美味しそうな匂いがね、ハルディアスを霞ませちゃって忘れていたよ!


 そして置いたらなぜ私を睨む。パンは嫌いなの?美味しいよ?もう食べていい?いい?はっ!?そう言えば私、お茶いれようかな!って、あれ!?ポメアを置いてきてしまったんじゃない!?今ごろ騎士棟で大変な目にあっているんじゃあっ。


「忘れていたが、お前の侍女は昼から別だ。この部屋に侍女は必要ない」


「あ、そうですね。わかりました。お茶を淹れてもいいですか?」


「余計な事はするな」


 レーバレンス様、それは酷いよ。私だってお茶ぐらい淹れられるんだからね!?お勉強もちゃんとしているし、お母様から合格だって貰っているんだからね!?5種類だけだけど!


 しかし、レーバレンス様は手のひらを私の頭に置こうと伸ばして、しかもちょっとわきわきしだしたので―――全速力でソファーに座らせてもらった。頭をかばいながら。もうアイアンクローは嫌です。余計な事をしないので止めてくださいませ!!


 それを見てハルディアスがなんだか不適な笑みを浮かべるのでちょっと睨み返しておいた。眼力は負けているだろうが。互いに睨みあっても何もないので………パンの催促をする。食べてもいいですかー?お腹が空いてしまったんですけどー?てか、このパン、なんだか大きいやつとボリュームがあるやつがあるんだけど………これが標準なの?家のパンは子供の拳1つ分くらいなんたけど………?2つか、顔ぐらい大きいやつがあるよ?ん?これ、パン?


「食べたかったら食べろ。礼節はこの部屋に存在しない」


「ありがとうございます」


 お茶も貰ったので………じゃあ、この小さめ?のものでも食べようか?なんか私の顔が半分ぐらい隠れるんだけど………中身は………なんじゃこりゃ。


「豆?………ぎっしり………」


「それ、甘いやつだ。俺にそれを寄越せ」


「どうぞ」


 えー………………普通、真ん中に豆を詰めません。こう、なんだ。まばらに―――生地の中に練り込むのが豆パンではなかろうか。てかハルディアスは甘党なの?甘いやつ寄越せって………小豆、かな?あれ。なんか白黒で豆類はちょっとキツい。判断が遅れる。


 次に取ってみたのは―――何やらねじれている長いものを発見したのでそれを食べることに。取り合えず割ってみてですね………なにも、ない、だと!?もういいや。食べよう。お腹が空いた。


「うっ………甘いっ………」


「え、じゃあそれも残りくれ。俺が食べる」


 ハルディアス………今日、初めて私は君の輝く生き生きとした純粋な顔を見たよ。意外な好物を発見だ………あの、普通のどれですか?





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