おかしいな……
改訂いたしました。27.7.18
「エリーって不器用ですね」
「うっ、人付き合いが不器用なクフィーに言われたくない」
「人付き合いならクフィーちゃんよりハルディアスくんの方が不器用じゃない?………て言うか下手?だよね」
「いいえ、そもそもやろうとしていませんから。下手もなにもありませんよ」
「でも意外だよね。ハルディアスだったらなんか『やってらんねー!』とか言ってどっか行くと思ってた」
「ハルディアスくんはそこまで言うより睨んでそうだよ。そう言えばクフィーちゃん、あの二人って誰なの?お爺ちゃんと髪が長いお兄さん?」
「私がここで教えるのはまずいと思うのですが………色々と気になっているのでしょう?内緒ですからね?」
「抑制魔法具とか人脈とか気になるね」
「ジジル、そんな細かいことより全部って言った方が早いよ」
「まとめちゃったらクフィーちゃんじゃあ気づかないよ」
「いつの間にか把握されてますね………」
ちょっと頬が引きずってしまったのはご愛嬌だ。ここまで落ち着けるのに、もうなんか色々と考えないようにしたおかげだね。なんかさっきよりは楽。まあ、余計な事を言わないようにと意識を別に持っていっているせいかも知れないけど。
因みに今は男女で別れてごにょごにょしている。ごにょごにょは、ごにょごにょ。むしろ年齢と異性という壁があって話しづらいからちょっと別れただけであったりする。もちろん、なんでこんな団体になったのかはちゃんと2人―――ドトイルとロノウィスくんに説明してある。原因は私です。てね。簡単に友達と口喧嘩したら私が魔力暴走を起こしてしまって、その衝撃で着けていた抑制魔法具が壊れかけたから異能のハルディアスがもれなくついてきました、て。レーバレンス様を怒らせちゃったからみんなはお仕置きでお手伝いしてこい、て言ったら微妙な顔をされてしまったよ、色んな意味で。
それを聞いたロノウィスくんの第一声は「クフィーちゃんとは喧嘩できないね」だった。なんかそれ物理的に危険人物に聞こえるっ!そのおかげでエリーが「そうです。気を付けてください」とか真面目な顔で言うもんだからジジルも乗っかって頷くし。後ろにいたドトイルは小さい頃の私の魔力暴走を思い出したのか額を押さえて唸ってた。………物はもう飛んでこないよ?
ついでとばかりにエリーはこの機会を逃すまい!と意気込んでロノウィスくんにお礼をのべていた。もう私の出番はない。ただ残念なのはロノウィスくんがじゃっかん記憶をたどるのに手間取ったぐらいかな。数年前だからいまいち出てこなかったらしい。慌てっぷりがよく分かる。エリーは気づいていなかったみたいだけどドトイルは呆れと舌打ちしていた。よくあるらしい………私は気づかなかった事にしておこう!
それからアトラナがいるであろう部屋まで行って、お話しなんだけど………ね。さすがに部外者が3人もいるから素直に雑学的な事のお勉強をすることにしたんだ。でも本当はレーバレンス様によると魔法師の補助なんだけどね。レーバレンス様は何をさせるつもりだったんだろう?わからないけど、ロノウィスくんとドトイルは何かをさせるつもりはないらしい。ちょっと休憩と言う名目でしばらく雑談が許された―――ので!女の子組(一人除く。てかポメアが入ってくれない)で、雑談だよ!
私は会話が少なかったのがよくわかったからね。人を知らなければ何も知らないのは当たり前ですよね。と言っても自己紹介をするわけでもないので最近どうだった~?的な内容で埋め合わせ中。もっぱらさっきの話を題材に広めているよ。ロノウィスくんに感謝は伝えられたからね。この後は魔法師として頑張ってから決めるとのこと。まだここから立ち去らないと言質をとったので良しとしきましょうっ。で、ついでに魔力操作を見ています。離れて魔法師である2人が見ているからと許可は出ています!それでいいの!?いいならいいけど!
でもこんな会話をしながら魔力操作ができるほどエリーは器用ではない。ので、あえなく雑談。切り替えはみんな早い。因みに男性組は主にロノウィスくんとドトイルでの会話がちらちらと聞こえるぐらいしかない。たぶんどうするか相談じゃないかな。ハルディアスはそんな2人からそっぽを向いてなにか書いていた。ここからでは読めないね。
で、お爺ちゃんと髪が長いお兄さん?は誰か聞かれたので素直に暴露してあげた。名前だとジジルがしっくりこないかもしれないからそれぞれの地位を発表です!でも、ちょっと普通に言い過ぎちゃったかな?目が点になって動かなくなった。なるほど………これが一般の反応に違いない!たぶん!!
「ウィル様にも逢えたのが奇跡なのに王宮筆頭の魔術師様と魔学医様の顔まで見ちゃった………クフィーの中では他にどんな偉人に逢ってるの!?」
「他にですか?父は知ってますよね」
「クフィーちゃんのお父さんは偉大すぎるから、大丈夫。他の人!!」
「他の人と言えば………まず十進魔法師の一のお父様でしょう。顔だけは四のゴーデ様と五のマルカリア様、最近よくみる八のウィル様、九のエモール様、十のヴィグマン様………あと席はわかりませんけどもう一人、十進魔法師のンゼットォラ様。お父様の繋がりでそちらのロノウィス魔法師様とドトイル魔法師様。あと」
「十進魔法師様とどうしてそんなに出会えるの………………もうお腹がいっぱいだよ………」
「まだいるなんて凄いね………」
「次は騎士棟の方ですよ」
「………聞く」
「うん。ここまできたら聞いた方がいいよね」
え、それはなんの決意?
「ウォガー大隊長と、アビグーア中隊長。それに、門兵のウェルターさん。ウェルターさんはお父様の悪友で家族共々、よくしてもらっていますね。上流騎士と聞きましたよ。前者の2人は魔力をみる時に必然的に話すようになりました」
騎士棟の方は少ないからそんなに親しくなったわけじゃないよ?元はと言えばトールお兄様の見学で立ち寄っただけだし。なんて言っても、ウォガー大隊長の名前を出したあたりでエリーとジジルの動きは変になった。どんな、と聞かれたら壊れた人形かな。ギギギギと動きが途端に悪くなって私を凝視する。私はもう気にしない事にしたよ。見ていて面白いし。この2人は噂を広めないって。広めたところでどうしようもない。
それであの呼び名ね、と言われてもピンとこないんだけどさ!『野獣の調教師』だよ、なんて言われたら軽く目眩が………それ、どこまで引っ張るのかな?私としてはその呼び名はちょっと脇にでも置いてほしいのですがね。むしろ消去してほしい。まあ改めて凄いね、と言われたらそうですよね、としか返せない。なんせ、 最近になってようやく回りを意識したのだ。大人に囲まれてばかりが大変な人たちに合っていたと言う、ね。回りからなにか言われても否定できそうにない。
「そうなると十進魔法師様はあと………二と三と六と七?で、ゼットォラ様がこのどれかだからあと三人なんだっ!?」
「あ、違いますよエリー。ンゼットォラ様です。初めは『ん』からです」
「もうどこを気にすればいいんだろうね。クフィーちゃんといると毎日が驚きっぱなしのような気がしてきたよ」
「否定できないんじゃない?」
「否定できませんね」
私も今さらながら驚いております。本当に遅すぎるっ。まさか十進魔法師がそうほいほい出てくると思わないじゃん!それをスルーしていた私もだけどさっ!けど、それはいいや。何だかんだ言って―――ね!ようやく、この2人との時間ができたのだから………お父様に文句を言ってみよう。魔法院の通いをせめて半々に。ついでにユリユア様………勝てるかな………でもなんとかしてもらおう。いや、その前に2人の秋と冬は魔法院の授業に出るのか聞いておかなきゃね。
話も一段落?ついたところでエリーの魔力操作をもう一度みてみようか。ぶっちゃけ手を握って流れを読み取るだけなんだけどさ。エリーはどうも動かすのが苦手らしい。因みにジジルはなんとなーくで動いている。でもすごく遅い。と、言うことで2人の手を繋いで………私の魔力じゃなくて、自分の魔力を感じ取ってくださいな!?
でもそうだね………魔力を感じとることは出来るみたいなのに動かせない。と、なるとイメージかな、やっぱり。2人が言うには体全体にぼやあ、っと魔力があるらしい。その全体に広がっているイメージをどう移動させたらいいのか今一つってところ。エリーは全体に満たされている魔力の操作に問題があって、ジジルはなんとなく動かせるけど全体を自由に移動と言うより自由に漂わせてるものを感じとった、かな。触るだけってちょっと読み取りにくいね。ヴィグマンお爺ちゃんはこれを感じとるのか………いいな、それ。
んー………対処法、としたら自分の魔力を感じとる事が出来るんだから、それをどう動かすかだけだよね。まず、動かすのではなくて集めてみようよ。大丈夫―――集めるだけなら魔塊は出来上がらないよ。実証済みで問題はなかった。あるとしたら高速回転して円を描きながら濃縮していったら出来上がるよ!真似しないように!教えないけどね!!
では、まずは集めやすいところに魔力を集めようか?私の握っている手に集めてください。これも移動のような気がするけど………操作とか、そんな難しい言葉にするから混乱するんだよ。全部じゃなくていいの。とりあえず集めよう。イメージするんだ!
「ジジルは集めるの上手ですね。もう少し集めましょうか」
「う、うん………でも難しい」
「わ、私は………?」
「エリーは………そうですね、あまり集まっていないので考えを変えましょうか」
ジジルはそのまま集めてね?
まずエリーは感じとった魔力を………小人に変換しようか。体の形をした島を管理するのはエリーだよ。面白い形だよね。そこには数がまばらに小人さんが自由に暮らしているの。エリーは小人を見守るように全体を眺めて管理しているんだよ………そうそう。想像できるもんなんだ―――な、なんでもないよっ。しかし、ここで右足から火事が発生!管理人のエリーは小人を逃がすために私が握っている左手に集めて!慌てないで。ぎゅっぎゅっになったら大変だから列を作って移動するように呼び掛けて!そうっ、ゆっくり!まだ火の手は広がってないから慌てないで移動して。
「消化はどうしよう!?」
「勇敢な水の魔法師が向かっているから大丈夫。エリーは救援の指示を優先です。まだ集まれますから誘導してあげてください」
「わ、わかった!!」
エリーって、想像力があるのにどうして魔力を違う例えとかに出来なかったんだろう。ぶっちゃけ面白くしようと小人って言っただけなんだけど………本当は煙とか、エリーが集めやすいものとか考えさせて教えるつもりだったんだけど、さ。エリーが普通に小人で想像が作れるのだからすごい。そんなに連想しやすかったかな?
でもエリーはなんだか拳を握りながらちょっと唸っている。これで逃げて~とか言ってたら心配ものだよっ。でも効果はあるらしい。ちゃーんと私と握っているエリーの左手に魔力が集まってきている、と言うね。いいのか、これ。ジジルが笑いを堪えているんだけど?しかもジジルもちょっとだけ魔力の集まりがよくなった………魔力は小人でいいのか、2人とも。
「エリー、エリー」
「ちょっと待って!部屋の広さが足りなくてどうしようか悩んでる!」
「………………火は魔法師によって消されました。小人はエリーが全体を確認するまで待機です」
「わかった」
「わかってないですよ。エリー、小人を待機させたまま目を開けてください。ジジルもゆっくり魔力………小人が集まっているのを感じながらですよ」
小人のチョイスはしくじったな、と。思うんです。なぜこの子たちはそれを受け入れてしまったのかがまったくわからない。ストーリーを作らなきゃならないとはちょっと大変だよ。小人の威力がすごいよっ。
そんな2人は目を開けて私をみるなりどうするの?とでも言いたげな顔で訴えてくる。いや、あのね。君たちは魔力操作の練習をしているだけであって、小人の避難訓練を行っているわけではありません。今は教えないけど、後ろでロノウィスくんが声を―――私たちの集中力を削がないように声を殺して撃沈しているから。あれはぷるぷるじゃない。もうマックスは通りすぎてぴくぴくしている………呼吸は大丈夫だろうか?
「小人はまだ集まっていますか?」
「うん。クフィーちゃんが握っている手にいっぱいだよ」
「私もいっぱい避難できた。抜け道を作らなきゃ駄目だね」
「抜け道を作っては駄目ですからね?2人とも違うでしょう。小人は魔力です。魔力操作が出来ないって言うから魔力を小人に変換したではありませんか」
「………………あ」
「忘れてた!」
「どうやって忘れるのですか。むしろ小人でよく想像できましたね。小人はまだ集めたままですよ?そのまま今の感覚を覚えてください」
「小人?」
「小人を?」
「………小人はやり易かったのですか?」
「なんか、やり易かったよ?ほら、自分の島に私だけの小人が遊んでたりしたら楽しいよ?」
「あ、分かる!私だけの島だからなんだか考えるのが楽しいよね!」
え。なにこの疎外感、再び。な感じ。さすがに私は魔力を小人に変換したら………うじゃうじゃでちょっと嫌な感じなんだけど………まあ、魔力操作の感覚を掴んだって言ってるからいいか………いいのかな?とりあえずその小人を元の場所に戻すように言う。もちろん、ゆっくり。そうしたらなんかコツを掴んだらしい。ちょっと早い移動のような気がするけど集まっていた魔力がじょじょに2人の体に広がっていった。
この2人の大満足です、とも言うような顔。私はなにも言うまい。言えないしっ。これで魔力操作操作がうまくできそう!とか喜んでたら何も言い出せないよ!!しかもお礼まで言われたらどうしようも………あれっ。涙がっ。
でも釘は指しておく。複数の人と一緒にやるんだよ。暴走させちゃ駄目だよ。対処できる大人とやるんだよ!?こんなに言ってるのになぜ苦笑いで返されるっ!?おかしいのは私なのでしょうか!?小人がそんなにいいのかっ!?もうわからんぞっ!?
「あー、そろそろやるぞ」
「あ。すみません。お願いします」
「わかりました!」
「………はい」
この切り替えの早さと言ったらっ―――なんだか私だけ納得できないままドトイルがドン!と置いた本の迫力にもう目が遠くを見つめた。今日はぐっすり寝れるね、とぼんやり考えて………魔法師様2人の補助が始まった。




