事件はどこでも
改訂いたしました。27.7.5
復活して同じ毎日を繰り返して………て、違うね。アトラナの件がまだ軌道に乗っていないので、あえて間を空けています。これはお父様の案。やっぱり私を怪我させたアトラナとはあまり一緒にいてほしくないらしい。でも、ここまで来たのだからやり遂げたいと言う私の想いを汲んでくれて、あえて距離を置いてみた。なぜなら、やっぱり『共鳴破棄』の詠唱がわからなくて魔法師たちが奔走しているからである。
できたらその詠唱が発見でき、使えるかどうか確実に調べあげてアトラナと精霊の救出作戦が成功できる確率を9割り近く固めるまでは、出来るだけアトラナが不機嫌になる前までを条件に私は面談禁止。ンゼットォラ様がアトラナの不機嫌の前兆とやらを把握しているそうなので、やばそうになったら私が出動となっている。因みに、像?はアトラナには気づかれていないとのこと。なぜかお父様は教えてくれるんだけど………それを聞いて私はどう反応すればいいんでしょうっ。とりあえずンゼットォラ様をよいしょしておきました!………お父様が不機嫌になったよっ!
まあそんなこんなで騎士棟を主に出入りしつつ、魔法院に通いです。あっちにいったりするのは面倒なので、丸一日が騎士棟なら騎士棟。魔法院なら魔法院と決定しています!やっぱりおかしいっ。私は若魔法師なんだよぉぉぉおおおおおお!!―――…
深く考えないでおこう。こう言う時こそ、お母様が言っていた夢を描き続けようと思います。今はこうだけど考えたら休日とかお勉強できるし。魔法師、魔学医になるんだから魔法剣もお勉強の一つだよ、うん。しかしですね―――最近になって変なのを耳にするようになりましたよ?
騎士に魔力操作を教える魔法師様とは別々に私はいつもアビグーア中隊長と一緒に行動している。挨拶が終わったらすぐに肩の上だからね。それにアビグーア中隊長は怖い顔だからみなが近寄らない。魔法師様も怖がって近寄らない。故に別行動となるんだけど………騎士棟へと出向くなり、ひそひそと声が聞こえますよ?
『野獣の調教師』
まったくもって理解に苦しむのです。7歳になってから意味不明な事が起こりすぎて、そろそろ私の脳内キャパがヒートして壊れると思うんです。もしかしたら知恵熱が再発するパターンだと思うんですがね。そう簡単に体調不良なんて起こさないつもりだけどっ!一度あることは………てね。よし、目指せ健康体っ!私は風邪に負けない強い子になるのだ!
―――それはいいとして、みながひそひそと言う『野獣の調教師』とはなんでしょうかね?私の側に野獣と言う動物はうろちょろしてないのですが。むしろいたら抱いて放しません。もふもふします。これ、絶対!しかも調教師ってこう、何て言うの?その野獣を操る的な。サーカスで聞くから訓練?むしろ躾?じゃない?
私がそれをやっていると言うのか………すごいね。
と、冷静に考えるんだけど私はそもそも調教していない。騎士の一部に言われるのだから騎士棟の中で私はそれをやっていると言うことになるんだけど………私、ここではあまり大々的に声をかけたり喋ったりしていません。そういうルールですから。アビグーア中隊長と一緒に、静かに、観戦しているだけですから。
休憩に来てくれるウォガー大隊長とユリユア様に魔法剣についてちょっと喋るだけですから。まったく意にそぐわない二つ名だと思う。と、言うことで―――私ではない!と、信じたい!でも気になったから聞く!
「最近、私とアビグーア中隊長が歩いているといつの間にか『野獣の調教師』と言う呼びなで囁かれているのですが、どう思います?私の勘違いでしょうか?」
「初めて聞くな。勘違いではなかろうが―――面白い。クフィーも二つ名をその年で得られるなんてなかなかにないぞ」
「ユリユア。笑い事ではないぞ?ある意味で娘を目につけている証拠だ」
「今日の訓練も一肌脱ごうか、ウォガー」
「お前は少し自重しろ。大切なら守れ。先に狩るな」
「狩る必要がなければいい。それに、私に小言を言っているがウォガーも楽しみたいのだろう?お前の尾が揺れている」
なんですと!?最近、ウォガー大隊長のしっぽが背中に隠れていて見えないんだけどそんな事が!?さりげなく位置まで真っ正面にきて隠されているんだけどっ!まさか見えないところでそんな事が!?ふさふさのしっぽが喜びに揺れるところ―――是非とも見たい!!アビグーア中隊長っ!出動要請です!!向かうはウォガー大隊長の真後ろにお願いします!
でもそんな事を目の前で言えるはずもなく………………人知れず撃沈した。だって、この距離でそんな事を言ったら逃げられるっ。ウォガー大隊長の身体能力は獣人であるが故に力がすごければ脚力だってすごい。飛び退く距離もそうだしユリユア様の見えない剣筋もなんなく避けちゃうからね。アビグーア中隊長が私を抱えながら回り込めるかなんて出来やしない。いいもん。眼福するからっ!
話を戻して『野獣の調教師』。やっぱり私がなにかしてしまったのかな?勘違いをさりげなく否定されちゃったし。でもアビグーア中隊長に乗っているだけだよ?ふり出しに戻って考えてみるけど―――それで分かるわけもなく。こうしろ、ああしろ、と調教した覚えはまったくないよ!?みんな何を見ているの!?私の自意識過剰がいけないのかね!?
どんな人に言われた?と聞かれましても?白黒だと判断がつかないし、ぶっちゃけ小声で聞こえてきたやつを拾っただけなんです。ここ最近になって聞くな~、て。まあ、言ってみただけである。それを言っちゃたらお仕舞いだけど、なんとなく気になっただけだし。気にしないでくださいませ。
「じゃあ聞けば早いぞ」
「そうだな。私たちがついている。大丈夫だ」
「………気になりはしているのですが………………………止めておきます」
そんなウォガー大隊長とユリユア様をバックに聞けないよっ。もし笑い種の面白半分で付けただけならその人は絶対に名乗り出られないと思う!事件の臭いがするから本当に止めよう!!
気にしていないよアピールで話題を変えたのが功を成したのか、それ以上2人から『野獣の調教師』の話題はなくなった。なんだかわからない汗が出てきた気がするが、いつも通り適温にしてくれる魔法具のおかげで快適である!じゃあ気のせいだっよし!
で、体力をつけるつもりでいるので、走り込みしてもいいですか?と言う話題だったんだけど………あえなく却下されました。それはなぜか―――私が走り回っていたら二人が気になってうっかり見習いに怪我をさせてしまうかもしれないからと言う理由でした。なに、その理由。集中力はどこへいったの。
一応、理由も聞いてみた。きっとそれだけじゃないと思う。そして答えを聞いたら脱力してしまうものだよ。忘れてたよ、お父様………そうだね。もし私が怪我でもしたら一番うるさいのはお父様で、その被害に会うのが責任者でもあるウォガー大隊長だもんね!余計なことはしないでおくよ!だって相談しにきた魔法師様たちにも頷かれたしっ………
でも、そうすると私は眺めているだけだからつまらないんだよね―――別にいいけど。ご飯は美味しいし。いや、でも体力を付けたい………しかし、食わねば体力が云々と言うより人は空腹で倒れてしまうのです!だから今日もたらふく食べるのですよ!!ねー、トールお兄様!アビグーア中隊長!午後から見習い騎士たちも魔力操作をするそうなので、私の出番は少しだけあるさ!!だったら腹ごしらえは必要だよねっ!
「どうやってその体に収まってるんだろうな?」
「そういえばそうですね?すぐに魔力へと還元されているのでしょうか?」
「………私は騎士を目指しているから魔法に関してはクフィーよりわからないぞ。それこそ魔法師に聞けばいいんじゃないか?」
「それもそうですね」
じゃあ、食べたら聞いてみようと思います!本日は山のような形のオムライス~。特盛サイズでございまーす!大きさはそうだね。大人の猫が丸まったサイズかな。なかなかのボリュームが目の前にあります。因みに私はアビグーア中隊長とトールお兄様の間に挟まれてお食事です。守られている感がハンパないっ。
実はこの料理はトールお兄様かせっせと3人分を運んできて下さっていたり。私が一人でこんなうじゃうじゃしている場所を歩いたら前が見えないし。みんな騎士だからいい体をしているんだ。バーゲンセールに駆け込む奥さま方ほどではないけど、小さい私はぶつかっただけではすまないよ。
アビグーア中隊長は見習いより当然、偉いからね!トールお兄様が率先して運んできていたさ!スプーンを手に食べますぜ。そして思うのです。ケチャップはどこだ!!これはチャーハンに平たく伸ばした卵を被せただけっ。本物のオムライスを食べたいよっ!!前世の知恵が少しでもあったことには嬉しいけどねっ。中途半端で泣けてくるっ………てかなんでミートソースあるくせにケチャップがないの!?作り方を知らないからだよね!私もトマトと玉ねぎ煮込んだぐらいしか知らないやっ。くっそう………
「騒がしい………」
「本当ですね。なにかあるのでしょうか?」
んー?食べながらは行儀悪いけど、私は騒がしいと言われる方向を向く。と言ってもまったく分かっていませんが。アビグーア中隊長がなんとなーく向いている方向………は、馬の厩舎がある場所に繋がる出入り口だね。普通に見えるのだけど?何かは起こっているらしいです。みんな耳がいいね。
アビグーア中隊長が一人を捕まえて事情聴取。顔が怖いからかすんなりと返事が返ってくる。半泣きだけどね。なんでも、暴れ馬のキャロラリンが逃げたらしい。それを追いかけ回しているんだって。名前が可愛らしいから雌だと思うけど………アビグーア中隊長がぼそっと「キャロラリンがか」なんて言うからちょっと噴いた。ごめんなさいっ。
で、それを捕まえるために飼育係の当番に回っていた見習い騎士たち―――と、下級騎士が追いかけています、と言うこと。見習い騎士は騎士棟でも馬上は許されていないんだって。でも自分の足で追いかけなきゃ後でこってり怒られるから走っているらしい。今のところ下級騎士の半分が追い詰めているとか。大変だ。どっちも大変だ。
「そんなに気性が荒いのですが?」
「キャロラリンは軍の中で抜きん出て高慢だ。軍の中で一番に力も体力もあり走りが速い、子宝で頭がいい名馬でグラムディア様の愛馬なんだが………ただ、食事も場所も気に入らなければすぐに前足が飛んでくる。最近は大人しくなったと思っていたんだけどな………」
グラムディア様の、愛馬………きっとご本人が付けたんだろうけど、ネーミングセンスを疑ってもいいですか!?
「理由」
「はっ、はい!み!みみみ見習い、の一人が誤ってキャロラリンの厩舎を清掃中!飲み水に足を突っ込みましたっ!それを目撃したキャロラリンが激怒して疾走していますっ!!」
どうしてそんな事になった!?
「新しいのに代えなくてはなりませんね。確か飲み水ように出した桶は木材があまり出回っていない貴重なものではありませんでしたか?」
キャロラリンが女王様にしか見えなくなってきた。そしてトールお兄様はなぜそんなに冷静でいられるんでしょうか。声に出ていたらしい。
「キャロラリンを見ているとリディと被るんだ。暴走時は父上かな」
立派な理由が返ってきたっ。やばいキャロラリンがリディお姉様に変換されていくっ―――
「ウォガー大隊長。キヌスン様。どうした」
キヌスンとは誰ですか。しかし、このスプーン、カレー用なのか大きい。口が痛いよ。
「げっ、現在っ、下級騎士で様子見をするそうです!ど、どうしてもと言う場合はウォガー大隊長が出るそうです!!」
そしてアビグーア中隊長は追い払うのです。もう情報はいいのかな?私も完食してお腹がいっぱいだよ。心の中でご馳走さまでした。
で、みんなが食べ終わったとの事なので………キャロラリンについて聞いてみることに。だいたい予想がつくけど。アビグーア中隊長だと話が長くなってしまうのでトールお兄様に聞いてみよう。キャロラリンってやっぱりあの顔の印象が濃いウママンですか?
「ウママンの種類が騎士と相性がいいからな。キャロラリンも雌のわりには立派な顔立ちで勇ましい。………見たいか?」
「………見れるのですか?」
うん。て。頷いちゃ駄目だよトールお兄様っ!そして私もなに確認してるんだかっ。いや、でも雌だし少しぐらい可愛いげが………濃い顔に可愛さって下手したらおネエじゃないかねっ!?ハハハ………想像が出来てしまう恐ろしさ。やめて。こう言うときだけ記憶力がいいとか泣けてくるっ。
まあ、でも?今、暴れ馬のキャロラリンはこの騎士棟内部で爆走しているらしいので?今は見れないよね?と決めつけて訓練所に行くことにした。さほど気にせずトールお兄様も来てくれるのでキャロラリンに遇わなくて済むと思う。ただ………ひそひそとまた『野獣の調教師なら』とか聞こえるんですが?本当に私ではないよね?止めてよ?
でも戻ってみたらウォガー大隊長とユリユア様がちょっと難しい顔をしていた。やっぱりさっきのキャロラリンが気になるのかね?聞いてみればやっぱりそうだった。まあ、気にならない方がすごいか。なんでも、走っているおかげで助走がついて、下級騎士の真上を飛び越えてこっちに向かっているんだって。この騎士棟、広いね。
もしもの事があったら困るから私は鐘がなるまで撤退と言われてしまった。まあ、馬に轢かれたくもないので大人しく去るけどね。アビグーア中隊長が。これで心配はいらないと思うな。と、言うわけで早速と出ていこうと思うんだけどフラグは成立していたらしい。ドドド!と言う音が向こうから私でも聞こえるな、と思ったら何か飛んできた。訓練所はもちろん、一定の高さで覆われて広大な敷地が使われている。通路もあるよ。ただ、今回は天気がいいからドームがない広い訓練所を使っていてですね………それを飛び越えたんだね。大人一人分と少し高いくらいだから2メートクターはあるんだけどな………
なぜかダーン!と逞しい音と床が粉々に。おかげで少しの土煙のせいで姿が確認できない。なんか、登場が格好いいよ、キャロラリン!お前だろう!?ウォガー大隊長が静まれ!と言っているけど、驚いた数名の見習いは我先にと駆け出していく………きっと午後からの訓練はすごいことになるんじゃないかな!いつもすごいけど!
さて!私も怖いので逃げたいのですが、アビグーア中隊長が動いてくださいません。逃げてくださった方がありがたいのだけど………肩に乗っていますからね。私は逃げられないのですがお気づきですか!?ちょっと失礼だけど頭を鷲掴みしたよ!しがみついた感じっ!でもものともしないアビグーア中隊長っ。髪が長ければ掴んでいたのにっ。ツンツンがちょっとちくちくして痛いよっ。
そしていい具合に土煙が風で流れていき………ウママンが蹄をゲシゲシしながらこちらを見据えていた。俺はは走るぜぇ!の前動作かな?あ、ごめん雌だった。―――ウママンであるからに濃い顔は変わらず。彫りが深く凛々しく片足ずつ蹄の具合を確認していますね―――なんでキラキラ光っているの、君。あ、なんかちょっと量が多いよね?魔力を放出してるのかー………魔力暴走じゃないかね?
「もしかして、キャロラリンは魔力持ちなのですか?」
「よくわかるな。【風】持ちだ。これはいつもより怒りが酷いな………」
「魔力暴走しています」
「「あれは魔力暴走だったのか!?」」
いや驚かれても………しかも、驚いたのは―――久しぶり、双子ちゃん王子。そんなところにいたとは思いもしなかったよ。まだ離れているけど、しっかりこちらに聞こえる声で叫んだ2人は驚愕な顔でキャロラリンを見ていた。
私も見てみるが………どうやら怒りはまだ収まっていないようだね。まだゲシゲシと崩れた床を蹴って準備運動をしているよ。私的には動物に魔力があるんだね!?と言う方が気になるんだけどなー。でも今思うと魔法院へ入ろうとした初っぱなにあった魔………物?には魔力があったんだよね。目が光って見えていたんだし。
そう言えば今さらなんだけど―――魔力暴走している人をどうやって止めてたんですか?自分でもいまいち分かんないんだけど………?正気を取り戻させる?馬の場合はどうするのかな?




