短距離探索
誤字等を修正いたしました。27.4.3
「まずはここ。最初に見たところだよ~」
そうやって見せてくれたのが出入り口のところ。右側(今は左側)にあの本が壁にぎっしりとあるところ。左側(今は右側)は訓練所みたいな感じの。
そしてものすごく簡略して説明してくれるロノウィスくん。女の子をここへ案内してくるのはどうかと思うんだ。いいんだけどね。
そもそもロノウィスくんはすごく悩んでここに来ていたりする。
レーバレンス様の部屋を出てさて、どうしようか。そんなの私に聞かれたってうまく伝えられないのだから先導してほしいものだ。
結局その場でしばらくうーん。と唸るものだから…………痺れを切らした私が適当に指差した。それは偶然にも来た道なだけなんだけど。
それでようやくロノウィスくんは「じゃああっちの魔法棟の中を案内してあげるよ」てな話になったわけです。
ロノウィスくん、君はいくつなのかな?女の子に気を使わせてどうするんだい。赤ん坊の私が言っても意味なんて皆無なんだろうけどさ。
まずは本からだね、なんて言ってどれにしようか悩みだす。いや、私は赤ん坊だからね?絵本を所望します。
しかし、女心をわかっていないロノウィスくんがとってくれたのは―――植物大図鑑。マジか。チョイスが微妙だよ。
「ほら、お花がいっぱいだよ~」
しゃがみこんで見せてくれるけど………………白黒に面白味なんてありません。まだ読みもできないし。
おかしいな。後ろから覆うように抱き締めてもらっている筈なのにこのシチュエーションに悶えない私がいる。想像が乏しくなったのかなっ?
でも見せてくれると言うんだからそれ相応の反応を見せなきゃならない………………のか?我が儘になってもいいじゃないか、私。今ならまだ赤ん坊で許してくれるはず!!
でもせっかくなので見る。最初からじゃなくて真ん中らへんを適当にって。まあ、いいか。お、これ知ってる花じゃない!え、異世界なのに花は一緒なの?
「おはにゃ!」
「そう。おはにゃだよー。これはラフランサ。すっごい汚臭を放つけど薬の調合によく使われるんだー」
へぇー。『ラフレシア』じゃなくて『ラフランサ』なんだ。見た目は一緒だけど名前はやっぱり違うんだね。てか私のチョイスの方がおかしかったか。
「おしゅー?」
「くさいって事」
「くちゃい!」
「うん。くちゃいんだよ」
「くちゃい!くちゃい!」
「………………あ、ちょっとヤバイ。グレストフ様に怒られる未来しか浮かばない………」
指差して言ってやった。ふふふ。いくら私が赤ん坊だからって教えていいことと悪いことがあるのだよ!汚臭を口にした私もだけどね!
これ幸いとロノウィスくんを行儀悪く『くちゃい!』と連呼して笑っていたら慌てたように他のお花を見せて『綺麗』と『可愛い』を教えてくる。その慌てっぷりが面白くてついつい、声をあげてさらに笑ってしまった。
ロノウィスくん、君はからかいがあるよ。それはもう運命なのかもしれない!
しかし、私もここで『くちゃい!』の連呼してるとさすがに変な子と言う扱いされる落ちしか見えないので。ロノウィスくんが選んだ『綺麗』と『可愛い』花を見ることにする。
さて、選んだのは………………薔薇?とこれは蓮かな?んー。ロノウィスくんのチョイスはやっぱり微妙。これはどっちが可愛いんだか。
「こっちはバランカ。花の香りがよくて、貴族のお風呂でよく使われているいい匂いのお花なんだよ!色も豊富でよく見るのが赤かな」
ロノウィスくん。君は狙ってるのかな?なんであえて匂いの話を続けるの?
「こっちはハスン。こっちもいい香りがするんだ!」
匂いの話はもういいよ。可哀想だから『きえい』て感想述べておいた。そうしたらすごくホッとしたような顔。ごめん、からかいすぎた?
でもロノウィスくんは女の子の付き合いに慣れていないのかな?戸惑いすぎだよ。ホッとするの早すぎだって。
「可愛いはこっちかな」
次に見えてくれたのが鈴蘭ですね。うん可愛い。小さいのがいくつもついてる。
「これは花からとても甘い匂いを放つんだよ。花から水が零れたら積み時で、子ども向けの風邪薬なんかによく使われるんだよ」
「かぁーいー!」
「うん。かぁーいーね」
むしろロノウィスくんが可愛いです。さっきから私の真似して言葉を崩してるところがなんとも………………
いくつかは知らないけど無邪気な童顔でそんな赤ちゃん言葉を話してみなさいな。ショタ好きな人にはたまんないキャラだよ。
私なら真っ先に狩に行くでしょう。よかったね、私がそのまま転生しなくて。君は絶対に捕食対象だから逃げられないと思う。色んな人に。いるのかな、この世界にそう言う人。
しばらくお花図鑑で遊んだら今度は反対側。訓練所の方へと歩き出す私たち。見ているだけじゃロノウィスには耐えられなかったらしい。落ち着けない子だね。
因みに私はよたよたと歩いています!ロノウィスくんが後ろから心配そうにしているけど、私は自分の足で進むからね!言わば暇だからとも言う!!
けど、ようやくたどり着いた場所は残念な事に壁なんだよね。スケートリンクみたいに覆われてるんだよね。入れるところがまた遠いよっ。
でも気になることがあったりするのです。この壁は高さは1メートル?までなんだけど、よく見たら壁の先がキラキラと光っていたことが判明。本当になんだろう、このキラキラ。
じぃっと見てたら笑いながらロノウィスくんが抱っこ。うむ。よくやく見渡せるよ。でも人がいたなら言ってほしかったね!ビックリしてヌイグルミ落としちゃったよ!
「なんだ?そのチビッ子。まさかもう………」
「違います。グレストフ様のところの愛娘ちゃんです」
「なんでまたここに。この小ささなら魔力が安定してないだろう?離れた方がいいぞ」
「あ。そっか。やばい。さらにグレストフ様に怒られる」
「おいおい。お前もグレストフ様に選ばれた魔法師なんだからしっかりしろよ。実技以外からっきしでどうするんだ」
「はい」
あらら。ロノウィスくん落ち込んじゃった。
しょんぼりするように肩まで落としちゃって。しかもなんか涙ぐんでる。メンタル弱いな。
仕方ないからここは赤ん坊の私で癒されちゃってください。ここまで世話をしてくれたのだから少しは子ども、好きなんでしょ?
ぺしぺしと頬を叩いて顔を覗きこんでみる。涙は流れそうにないけどやっぱり潤んでるね。さっき拾った(くれた)ヌイグルミをあげようじゃないか。私のじゃないけど。
「おーうぃー?」
「………慰めようとしてるのか?」
「ちょっとクフィーちゃん可愛い。おーうぃーとか俺の事?めっちゃ可愛いっ」
「幼女趣味を開花させんなよ」
「グレストフ様に殺されるんでやりません」
でもしっかりと私を抱き直したよね?まあ言わないけどさ。ロノウィスくんも笑い直してくれているから良しとしよう。
そんなわけでここは危ないから、と言う理由で離れる事に。まだ時間は少し?あるから潰せるならどこでもいいよ。
ぐるっと回って奥に空洞の穴を発見。どうやらそこを目指しているみたいで歩く速度は早めに移動する。
今度はなにを見せてくれるのかな~。
「ロノウィス!!てめぇここであったが百年目だ!俺と勝負しろ!」
なにその古くさい言い回し。私のるんるん気分を返して。
振り向いたその先には………………色はわかんないけど、炎のように真上に髪が逆立っている男の人。つり目ですごく悪人面です。泣いちゃうよ?
しかもオーラもなんとなくメラメラしてるからまず、一人称で相手にしたくない人だよね。
ほら、ロノウィスくんもすごく嫌な顔してる。
ロノウィスくん、うまいこと言って断ってね?私は是非とも全力回避したいので。期待してるよ。
打ちのめしてくれても別に構わないんだけどね!まだ他に回りたいので早急に対処をお願いします。




