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気がかりすぎるグレストフ

改訂いたしました。27.7.5

 クフィーが倒れたそれだけでやるせないと言うのにこの仕事場は私に色々と仕事を押し付ける。これもすべて私が確立させた地位のせいだろう。これほど悔やんだことは家族の事以外でない。


 屋敷に戻り、早々にベッドへと寝かせた。まだ熱に魘されていて体がぐったりとしている。おまけに抱き上げてわかったのだか、ヴィグマン様が言うように右目とクフィーの魔力が呼応していた。これがどんな意味を持っているのかはまったくわからないが、今は危険に思えるような危なさはない事だと不思議とわかる。ただ、魘されているクフィーの顔がとても痛々しいっ。


「ポメア。見ていてくれ」


「私もクフィーの傍にいてもいいですか?」


「当たり前だろう、クレラリア」


 今にも泣き出しそうなクレラリアにそっと口づけて背中を押した。大丈夫。クフィーは熱だけ。そう言い聞かせているのはクレラリアに対してか、私自身へのまじないか………


 ヴィグマン様と隣へ移動して魔病―――魔塊(まかい)について詳しく聞くことにした。まず、初めてあった時は魔塊らしきものは感じられたが小さなもので、幼すぎるクフィーにはまだなにもできなかった。この報告はその場で受けたのでいい。ただ問題はこの前グラムディア様のお顔を治したときにヴィグマン様はクフィーを診てくださると言ってその報告を受けていない。私はほぼ陛下のお側にいたからこそ、話をふる機会がなかったのかと思いきや忘れていた、と。少しだけ殺意か沸いたのは内緒だ。


 ただ、今ヴィグマン様の見解を聞くと少々―――いや、かなり不思議な事になっている。魔塊とは一般的に言えば魔力の循環が滞りたまって固まってしまったもの。その症状は体に少しの不具合が生じられるだけであまり危険視はされていない。まあ、放っておくと危険は増すが。それは年単位だ。魔塊はそうそう固まるものでもないし、固まるにも時間がすごくかかる。


 しかし、クフィーの場合はおかしいとも言える………いや、前世の記憶を持ったとして我々にとってはおかしいが彼女からしてみればおかしい事なんて何一つない。3歳で診てもらい、魔塊を発見。その後5歳で魔力操作。意思がはっきりしている彼女が魔力操作を行って魔力の循環を定期的に回していたら、魔塊の大きさが変わっていなかったのも頷ける。ようは魔力の循環さえうまくできれば魔塊はできないし、溜まらないのだから大きくならない。


 魔法師ではない一般は魔力操作を知らない。なら、なぜ大きくなるかと言えば循環が悪くなっている事が癖のように当たり前になるからだ。そしてそれは定期的に行われ、魔塊が大きくなっていくのだろう。


「でも、おかしいのですよね。魔塊は大体わかりましたがなぜ属性が別々なのか―――私の場合は確か混ざっていたはずなんですが………」


「それが奇妙なんじゃよ。前回は魔塊があり、頭の方でうねるような魔力を感じ取った。これは間違いない。しかし今回で調べた結果は別々じゃ。さすがにこんな嘘はつけんぞ」


「わかっています。ただ、魔力自体は混ざっていたはずなのに魔塊が別々になっているのはおかしい。抑制魔法具にそこまで出来るとは考えにくいですから………クフィー本人が私たちの知らない何かをやったとしか思えない」


「それは娘っ子と話をせねばならぬ………」


 問い詰めてみよう。これはお父様と娘の団欒でいい機会かもしれない。クフィーが元気になって私の休みをなんとかもぎ取って―――いや、ここはレーバレンスに少し押し付けて時間を作ってもらえれば…………それともヴィグマン様に色々と仕事を回るように仕組んで時間を作るか。両方でもいいな。


「今のところ娘っ子に害はない。ただの熱じゃ。魔塊も気になるが抑制魔法具のおかげで【火】が起こる事もなかろう」


「何かあったら全力でクフィーを助けてください。でないと私は治療の薬と文献を世界各国へ探す旅に出ます」


「なに真剣な顔で言うておるっ!」


 とぼけられたら困るので。


「まあ、いいです。では私はクフィーについていなくてはなりませんのでこれで失礼します。馬車の手配はしてありますので使ってください」


「おお、すまんの………………待て。お主も戻るぞ。なに流れに乗って留まろうとしておるのじゃっ!?」


「私にはクフィーの傍にいなくてはならない大役がございますので。どうぞ、お気にせず」


「馬鹿者!王宮筆頭魔法師がなに勝手に大役を作っておるのじゃっ!お主は陛下に使える十進魔法師でもあるのだぞ!?陛下より娘かっ!?」


「娘です」


 当たり前じゃないですか。と言えばしわのよった顔が少し赤くなって眉間あたりがさらにしわがよってしまった。………撤回する気はないのだが、ここで帰ってきたトールが私の背中を押すので渋々いくことにする。トール、お前が私の代わりにクフィーの傍にいるんだぞ?クレラリアにも断りを入れてからしかたなく―――し・か・た・が・な・く、ヴィグマン様と城に戻ることになるんだ。今夜は絶対に維持でも帰らねばならないな。


























「グレストフ一進魔法師様。報告があります」


「ロノウィスとドトイルか………………私に帰ってもいい知らせか?それなら一瞬で準備ができるので行こう!」


「違います。アトラナの件です」


 そうか………結局、昨日は夜遅くになってしまったがクフィーは起きなかった。本当は今日も傍にいたかったのたが、レーバレンスとウィルが来てしまってはクフィーの傍にいられることは叶わなくなってしまった………あれは絶対にヴィグマン様の差し金だ。あの二人はまったく私の意図を汲んではくれないっ。泣くぞ!?


「一応、これから私一人で行くことになりました。引き続きアトラナには『お母さん』や『自由』の事などを調べるつもりですが、グレストフ一進魔法師様は他になにかお気づきの点はありますか?」


「………いや、今日はンゼットォラを呼んでくれ。アトラナとの接触はなしだ」


「なぜですか?」


「アトラナはクフィーに少しだが心を開いている。余計なことをしてクフィーとの関係性に皹が入り、今後の詮索に影響がでるような事は避けたい。ロノウィスに絶対の自信があるならかまわないが」


「グレストフ一進魔法師様に従います」


 そうか………ならば、今回は別の仕事をやってくれ。魔塊について片っ端から調べてほしい。


 そういえば傍にいたドトイルでさえも目を丸くした。私はそんな変なことを言っただろうか?まあいい。私は陛下のところへ向かわなければ。魔塊はあの二人に課題として調べてもらうからそれでいいじゃないか。早く、と促せば脱兎の如く駆け出す二人………互いにいい目標と好敵手らしく、前よりずいぶんと息もあってきた。


 ただそれ故に心配だ。私が招いた種でもあるのだが、私は純粋な魔法師ではない。逸脱した異常魔法師。一つの属性を持つ彼らの繊細さは私より綺麗で淀みがないだろう。たまたま私の方が彼らより魔力や魔法が上なだけで、私が弟子を持つのも甚だしい。ロノウィスのはほんの気まぐれだ。真っ直ぐと憧れていますと言われて舞い上がった私の浅はかにも安易に受け入れてしまった。それをドトイルが悔しがって火種が膨らみ、収集を付けるためにこうして二人を私の弟子のしたのだが………さらに張り合っているのだが、うまく交わしあっているし―――大丈夫だと思いたい。それより




 クフィーが魔法師になるなら弟子を取らなかったのにっ!!




 まあ、過ぎたことはしかたがない。しかもクフィーは魔学医になりたいと言っていたし………それは私の管轄ではないよ、クフィー!でも、親としてはその道を導いてあげたいが魔学医といえばヴィグマン様。最近になって記憶力が乏しくなってきていると思う。いや、しかし………でも陛下はそんな事が見受けられない。陛下は何だかんだと言って色々と覚えている。さすがだ。


 まあ、これに関してもいいとしよう。どう足掻いてもこれはクフィーの人生。できる限りは手伝おう。止めはするが。あの子ならトールと一緒でざっくり切り込んできそうだが………ああいや、でもクフィーだし。もしかしたら私を頼ってくれるのではないか!?大きくなれば逢う機会は減るかもしれないが同じ城にいるなら昼食だって取れるはず!私だってやればできる。よし、陛下に言って時間をずらしてもらおう。


 そうだ。帰りもやはり私が一緒に三人で帰れるようにウィルに時間調整を………いや、夜の方は私ではないとならない仕事がっ。はっ!?待て。そうだ一度帰って戻ってくればいいじゃないか!!そうすれば家族全員からもう一度『いってらっしゃい』と見送ってくれる!!これはいい!!


「おい。あいつは仕事をしながら顔を崩して喜びかなんだか知らないが震えだしたぞ。なにか薬はないのか?」


「陛下、見てはなりません。もしかしたら伝染するかも知れませんから」


「はっ―――そうか。あの魔法具を家族全員に持たせて私と連絡を取ればいいっ!」


「レーバレンス。ウィル。そいつを正常に戻せ」


「………………陛下。お言葉ですがこれがグレストフ一進魔法師の正常です」


「正常なゆえに、家族以外はどうにでもならないと思います」


「…………………………………………………………………そうだったな」


 しかし、クフィーの魔力だと私の魔力と時間があわない。トールとリディは一般量だし、クレラリアはなかなか持っているがクフィーとだと私が力尽きてしまうな。もう少し考慮しなければならないのかもしれない。それとも王城の近くに新しく建ててしまおうか。そうすれば魔力の減りが少ない。今後を踏まえてさらに検討してみるか?


 後は―――魔法剣は上々な滑り出し。魔法師と手を組んでいるだけに魔法剣の使い勝手がまた一段とあがった。これもクフィーのおかげだな。今度、影からこっそりグラムディア様が拝見されるからクフィーは驚くだろう。


 よし、色々考えていたら少しは落ち着いてきたぞ。窓の外を見ればもう夕日か………仕事をしていると早いな………


「では、これで失礼します。ウィルは一緒に来てくれ。アトラナの件でまとめてほしい」


「―――わかりました」


「お前、もう少し仕事に集中しろ」


「ん?陛下、私は仕事に手など抜いていませんよ?お疲れですか?」


「………………もういい。早く行け」


 では、遠慮なく。


 えーと、夜の6の鐘はなっていたからンゼットォラが来るのはもう少しあとか。じゃあロノウィスたちは魔法棚のところで調べてもらっているはずだから私の私室へ行こう。


 ―――ん?私室についたらクレラリアに渡している伝達用の魔法具が光っていた。つまり!クレラリアがなにか私に緊急で伝えたいことがあると言うことで………クフィーに何かあったのか!?


「私だ」


『―――お父様、クロムフィーアです』


「クフィー!!」


 ついありったけの声を出してしまった。一緒にいたウィルが目を見開いて私を見るぐらいだ。だが私の興奮は収まらない!熱をだしてあんなに魘されていたクフィーか起きたのだ!!声からしてまだ本調子ではないようだが私は色々と心配していた事を聞いた。


 右目は大丈夫だろうか?熱は下がったか?気持ち悪くないか?体が重くはないか?喉が痛くなったりはしていないか?無理はしていないか?魔力はおかしくないか?不安ではないか?大丈夫、クレラリアがクフィーの傍についているから寂しくないぞ!それよりも起き上がって大丈夫なのか?まだ寝ていた方がいいのではないか?辛いなら無理をしてはいけない。こうして魔力操作をやれているのだから大丈夫であろうが一日も寝ていたんだ。体力などが落ちているだろう。けど、今はゆっくり食欲があるなら消化にいいものを食べて寝ていなさい。今日はクフィーのために、人形も買ってきてあげよう!そうすれば寂しくもないし帰ったら私もクレラリアも傍にいるのでさらに寂しさなんて吹っ飛ぶぞ!


「なに娘に長ったらしく語ってるんですか。それこそさっさと止めて寝かせてあげた方が病人のためですよ」


「ウィル、今、私は忙しい!すっごく忙しい!!クフィーが心配でたまらないんだ!!」


「まだ大人しいと思っていたのですがね………ここで爆発しましたか」


『―――あの、お父様?お父様、聞こえますか?私、お母様に無理を言ってお願いしたのです。聞いてくださいますか?お父様?』


「なんだいクフィー!クフィーの頼み事はなんでも聞くぞ!!人形がほしいなら国の作り出されたすべての物を今なら集められる!」


『―――え、お父様。ヌイグ、人形はまた今度で………あ、ああああの、ヒッジメィの人形が欲しいですね!ですから私の話を聞いてください!緊急なのです!』


「わかった。ウィル、ヒッジメィの人形を買ってくるんだ。雄と雌で色が違うから二つとも買うんだぞ。戻ったら私は帰るっ!」


「馬鹿な事を言ってないで娘さんの話を聞いてあげてくださいよ!!緊急なんでしょうがっ!!」


「っ―――痛いぞ、ウィル。どうした」


「~~~っ!」


『―――お父様、お話しを聞いてくださらないならウィル八進魔法師様に代わってください。本当に緊急なのです』


「聞こう」


『―――アトラナですが、魔力暴走をもうさせないようにお願いします。あと数回もすればあの部屋は特大の炎が渦巻くでしょう。仲間思いの精霊とお話しをしてきました』


 クフィー、精霊とはまた遠い歴史を持ってきたな………当然、クフィーが知るわけがない話だ。教会関係は教えていない。魔塊と熱となにかがあるのか?


「………クフィー、まだ体調がよくないし魔力操作もまだ不安定だ。一度切りなさい。私が繋げる。ウィル、書留る準備を」


「―――わかりました」




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